皆さん、こんにちは。金融文筆家の田代です。
下記のチャート(2023年7月〜2025年1月6日)のとおり、暗号資産の代表的通貨であるビットコイン(BTC)は、昨年2024年に史上初めて10万ドル(当時のレートで約1,500万円)を超えるなど非常に強い展開が続いています。ニュースなどでビットコイン価格の上昇が伝えられる機会も増えているので、暗号資産取引に興味を持ち始めた読者もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、前半(Part1)で最近のビットコイン価格上昇の背景について解説。後半(Part2)では暗号資産取引の第一歩となる、「取引所の口座開設」の際のポイントや流れを説明します。
昨年2024年、ビットコインの価格は通年で2倍以上価格が上がりました。この価格上昇の背景としては、下記の3つの動きが原動力になったと考えます。
2024年1月、米国において、暗号資産業界の“悲願”だった「ビットコイン現物ETF」(ETFは上場投資信託の意味)が「承認」され、証券会社の口座を通じてビットコインを取り引きすることが可能になりました。
それまで、ハッキングや分別管理(※)の不徹底などのリスクから、ビットコインへの投資を避けていた個人投資家や機関投資家にとって、この「承認」は“安心材料”となったようです。新たな投資マネーがビットコインに流入するきっかけとなり、ビットコインは、金融商品として一段上のステージに上がった印象を受けます(このあたりの事情は、下記の関連記事で詳しく解説しています)。
※分別管理
金融商品の取引業者が、顧客から預かった資産を、自社の資産と区分して管理する制度。海外の暗号資産交換業者の中には、分別管理が不十分な業者もあり、業者の破綻により顧客が資産を失うケースもあった(編集部)。
「ビットコイン現物ETF」は、2024年、米国に続いて香港やオーストラリアなどの証券取引所にも上場し知名度が上がっていきました。日本においては、法改正の必要性などから「ビットコイン現物ETF」は承認されていませんが(2025年1月時点)、米国などでの成功例が日本での承認を後押しする可能性はあります。国内の業界団体からの提言もあり、徐々に議論が進んでおり、仮に承認されれば話題になるでしょう。
ETFでビットコインに投資できるようになり、大きな話題に
続いては、ビットコインの「半減期」についてです。ビットコインは、約4年に1度の周期で、マイニングでもらえる報酬が半減する「半減期」を迎えるのですが、2024年がまさにそのタイミングでした。2024年4月の「半減期」では、マイニングの報酬が「6.25枚」から「3.125枚」となりました。
マイニングは、ビットコインの取り引きが正しく行われているかの検証・承認の作業(取り引きなどのデータをブロックチェーンに保存する作業)を指します。そして、この作業の報酬としてビットコインを獲得することを含めてマイニング(採掘)といい、マイニングに参加している人や企業のことをマイナー(採掘者)と呼びます。
「半減期」はビットコインの需供の引き締めが目的
「半減期」は元々ビットコインにプログラムされている仕組みです。マイニングの報酬を半分にすることで、供給過多によるビットコインの価格下落を防ぐ目的があります。2024年以前に実施された3回の「半減期」では、いずれも、その後ビットコイン価格が上昇しました。この結果を受けて、2024年4月の「半減期」前後で、「今回も価格が上がるかもしれない」といった「思惑的な買い」が入ったと考えられます。これも、2024年にビットコイン価格が上昇した要因のひとつになりました。
最後はトランプ氏の米大統領再選です。米大統領選の投開票前の2024年11月1日時点で、1ビットコイン(1BTC)は1,080万円ほどで取り引きされていました。しかし、同5日の大統領選投開票前後から急騰し、同21日に1,500万円を超えるなど、連日のように過去最高値を更新しました。
この急騰劇には、トランプ氏の暗号資産に対する姿勢が関係しています。トランプ氏は、大統領選挙期間中、暗号資産に関して次のような「公約」を掲げていました。
・米国にマイニング事業者を集中させて、すべてのビットコインを「Made in USA」とする。
・司法省が保有する約21万BTCを財務省管理とし、「戦略備蓄」として利用する。
いずれも実現するのはかなり難しいと見られていますが、それよりも、この「公約」により、トランプ氏が明確に“暗号資産フレンドリー”な姿勢を示したことが重要でした。実際、トランプ氏が大統領再選を果たした後には、トランプ氏同様“暗号資産フレンドリー”な考えを持っていると見られている人物の政権入りが発表されるなど、暗号資産価格上昇の追い風となる動きが起きています。
また、暗号資産規制に厳しかった民主党支持のゲンスラーSEC(米証券取引委員会)委員長が、2025年1月20日に退任すると発表されたことも、ビットコイン価格急騰の背景にあります。
このように、2024年のビットコイン価格の上昇にはいくつかの要因が考えられますが、なかでも夏以降のトランプ氏の動向の影響が大きかったと見ています。2025年のビットコインや暗号資産の価格も、引き続き、トランプ氏の動き次第となるでしょう。
暗号資産取引においては、2025年もトランプ氏の言動から目が離せない!?
2点の「公約」の実現性はかなり低いとは思いますが、規制緩和など、なにかしら暗号資産の追い風となる動きを見せてくるのではないかという期待感を抱いてしまうのは事実です。世界における暗号資産の取引量などを考慮すると、多くの投資家を抱える米国での動きは重要です。したがって、2025年もトランプ氏の言動から目が離せない展開になると考えます。
暗号資産を取り引きするには、暗号資産交換業者の口座が必要になります。一般社団法人「日本暗号資産等取引業協会」(JVCEA)の調査によると、国内の暗号資産取引所の口座数は、2024年1月時点の約917万口座から、2024年11月には約1,150万口座へと急増中です。ビットコインなど、暗号資産価格の推移に注目が集まるなか、実際に取り引きしてみたいと考える人が増えているようです。
暗号資産取引への関心が高まっているようです
日本では、2017年に資金決済に関する法律(資金決済法)が改正され、それにともない、日本国内において日本人を対象に暗号資産取引サービスを行う(「業」)ためには、金融庁・財務局への登録が必要となりました。
2024年12月25日時点で、一定のルールにしたがって金融庁・財務局に登録している業者は、関東財務局所管の登録業者が27業者、近畿財務局所管の登録業者が2業者で、合計で29業者あります。これから暗号資産を取り引きしてみようと考えている人は、まず、これら29業者で口座を開設するのが基本的な考え方になります。
ちなみに、海外の暗号資産交換業者で口座を開設することも可能ではあります。しかし、海外の暗号資産交換業者は資金決済法の対象外です。何かトラブルが起きたときに適切な保護が受けられないなどのデメリットがあり、おすすめはできません。
国内の業者から暗号資産取引のパートナーを見つけましょう
次に暗号資産取引における2つの取引方式、「取引所方式」(以下、「取引所」)と「販売所方式」(以下、「販売所」)の違いに触れておきます。暗号資産交換業者によって、「取引所のみに対応」「販売所のみに対応」「取引所と販売所の両方に対応」と対応状況が分かれています。
一番大きな違いは、投資家が取り引きする「対象」です。「取引所」は投資家同士で取り引きしますが、「販売所」は運営している暗号資産交換業者と投資家が取り引きします。
「取引所」では投資家同士の需要と供給によって暗号資産の価格が決まりますが、「販売所」では業者によってあらかじめ決められた手数料を加味した価格が提示されます。したがって、同じ暗号資産でも「取引所」と「販売所」では価格が異なります。
また、「取引所」は主に板取引(※)なので、「指値」や「成り行き」など注文方法が複数あり、注文方法によって、「約定」(売買が成立すること)するまで時間がかかる可能性があります。
※板取引
取り引きの参加者が売買したい数量と値段を提示して取り引きを行うこと。かつて証券取引所にあった、銘柄ごとの売買注文が一覧で記載された「板」がもとになっている(編集部)。
いっぽう、「販売所」は、運営する業者が価格を提示するので、売買価格はひとつだけです。投資家がその価格で売買の意思を示せば、ほぼ確実にその価格で「約定」します。「取引所」と比べると注文方法や仕組みがシンプルなので、初心者の人であれば、まず、「販売所」から取り引きを始めてみるのがおすすめです。
ただし、「販売所」であっても、相場の急変時には注文から約定までの時間に価格が大きく動くケースがあります。その場合、「投資家が売買の意思を示した提示価格」と「約定価格」が大きく異なる可能性もあるので注意しましょう。
取引所、販売所には異なる特徴があります
次に、実際に口座を開く暗号資産交換業者を選ぶ際のポイントを具体的にお伝えします。
「取り扱っている暗号資産の数」は、暗号資産交換業者によって違いがあります。これを確認するには、前出の一般社団法人「日本暗号資産等取引業協会」(JVCEA)の公式サイト内にある、「取扱暗号資産及び暗号資産概要説明書」が便利です。JVCEA所属の暗号資産交換業者が扱う暗号資産の数が一覧で確認でき、取り扱い状況に変化があると、随時情報が更新されています。
2024年12月25日時点では、各業者の合計で101の暗号資産が取引可能となっており、ビットコインやイーサリアムなどの有名な暗号資産についてはほとんどの業者が扱っています。
暗号資産の売買に関する手数料は、各業者の公式サイトや、価格.com「暗号資産(仮想通貨)・ビットコイン取引所比較」のような比較情報サイトで、事前にしっかりと確認しておきましょう。手数料は各業者によって異なり、また、同じ業者であっても、「販売所」と「取引所」で異なる場合もあります。一般的に、「販売所」のほうが高め、「取引所」のほうが低めに設定される傾向があります。
また、口座への日本円の入金や出金にかかる手数料も業者ごとにまちまちです。同じ業者であっても、利用する時間や金融機関などによって手数料の有無や額が変わることがあります。
レバレッジ(証拠金取引)サービスは、事業者に預けた証拠金の最大2倍(国内の業者の場合)まで暗号資産を取り引きできるサービスです。こちらも各業者の公式サイトなどに、サービスの有無や詳細が記載されています。
外国為替証拠金取引(FX)であれば、最大で証拠金の25倍まで取り引きできるので、それと比べるとあまり大きなレバレッジがかけられない印象を受けるかもしれません。これには、暗号資産の価格の変動率(ボラティリティ)の大きさが関係しています。投資家保護の観点からレバレッジが2倍までとされていると理解しておくといいでしょう。
暗号資産取引では、ボラティティの大きさに注意する必要があります
暗号資産貸出サービス(レンディングなど)は、投資家が暗号資産を長期に保有することを前提に、持っている暗号資産を暗号資産交換業者に貸し出すことで利息が受け取れるサービスです(暗号資産で受け取れるケースが多いです)。難しい内容のサービスではないのですが、それなりの取引経験を積んでから利用を検討すべきサービスだと思いますので、初心者の方はさほど気にしなくてもいいでしょう。
口座を比較する際は、暗号資産の最小取引単位もチェックしておきましょう。
たとえば、ビットコインの場合、通貨としての最小単位は「0.00000001BTC(1億分の1BTC)」(単位は開発者の名をとった「Satoshi」)です。しかし、国内の暗号資産交換業者の多くは、取り引きできる最小単位を「0.0001BTC」から「0.00001BTC」程度に設定しています(これより小さな単位で取り引きできる業者もあります)。
また、同じ暗号資産交換業者でも、「取引所」と「販売所」によって、最小取引単位が異なる場合もあります。最小取引単位によって取引に必要な資金も異なってきますので、口座選びの際は気に留めておいたほうがいいでしょう。
画像は、価格.com「暗号資産(仮想通貨)・ビットコイン取引所比較」より。各事業者別に、手数料やレバレッジなどが一覧で確認できます
最後に、口座開設から取り引きを始める前までに必要な手順を簡単に説明したいと思います。手順は業者によって多少異なりますが、おおむね下記のとおりです。
公式サイトやアプリからメールアドレスを登録するなどして、アカウントを作成します。
基本的な個人情報を登録し、あわせて電話番号などによる認証で本人確認が行われます。
本人確認書類を提出します。最近は画像での提出が主流です。
最短5〜10分程度で開設が完了する業者もあります。
対応する銀行口座からの入金が一般的です。なかにはコンビニ店頭での入金などに対応する業者もあります。
事前に流れをつかんでおくと口座開設もスムーズです
下記の関連記事では、「暗号資産の仕組み」「値動きの大きさ」「暗号資産に関係する税金」など、本記事では触れられなかった暗号資産取引の特徴やリスクをまとめています。ぜひ、本記事と合わせて参考にしてください。