ここ1か月間程度のキャッシュレス関連のニュースの中から、マネー担当の編集部員やライターが気になったものをピックアップしてお伝えする当連載。
今月のトップニュースは、PayPayの「ポイント運用」に「ビットコインコース」が追加された話題について。2025年1月13日よりサービスが始まっており、お試し感覚でビットコインを取り引きできると話題です。いっぽうで、同サービスの既存の運用コースと比べて高めの手数料がかかるため、利用する際は注意が必要です。
このほか、楽天カードの上位カード会員を対象とした新特典プログラム「楽天カードプレミアムプログラム」や、JR東日本がリリースした新アプリ「JRE WALLET」、現在開催中のキャッシュレス関連キャンペーン(計3本)についてもお伝えします。
〇PayPayの疑似運用サービス「ポイント運用」の運用対象にビットコインが登場
〇ビットコインの値動きに連動して「PayPayポイント」が増減
〇ビットコイン取引のエッセンスを体感できるサービスだが、手数料には要注意
2025年1月、PayPayで資産運用の疑似体験ができる「ポイント運用」サービスの運用コースに、ビットコインの値動きに連動する「ビットコインコース」が加わりました。これにより、「PayPayポイント」を使って、昨年以来、価格上昇がたびたび話題となっているビットコイン取引のエッセンスが体感できるようになりました。
2024年に大きく価格が上昇したビットコイン。PayPay「ポイント運用」の「ビットコインコース」では、ビットコインの実際の値動きに連動して「PayPayポイント」が増減します
※価格.com「暗号資産(仮想通貨)・ビットコイン取引所比較」」では、ビットコインなど主要な暗号資産の価格チャートを確認できます。
PayPayの「ポイント運用」は、PayPayでの買い物などで貯まる「PayPayポイント」を使って、投資信託やETF(上場投資信託)などの疑似的な運用を体験できるサービスです。ユーザーは、あらかじめ用意された運用コースの中から好きなものを選択し(複数選択可)、そこに手持ちの「PayPayポイント」から希望する量のポイントを追加します。追加した「PayPayポイント」は、運用コースが連動する投資商品の値動きに合わせて増減し、増えたタイミングで“支払いに使える状態”に引き出すことも可能です(逆に、減ることもあります)。
「ポイント運用」の仕組み
PayPayによると、2024年12月末時点でユーザー数は1,900万人を突破。2020年のサービス開始から5年間が経過し、かなりの大規模サービスに成長しています。
PayPayの「ポイント運用」には、これまで、8つの運用コースがありました。ここに、今回、「ビットコインコース」が加わり、運用の選択肢がさらに充実しました。PayPayによると、ユーザーからの、「変動性・価格上昇期待の大きいコース」の新規取り扱いを望む声に応える形での導入だったようです。
PayPay「ポイント運用」の9つの運用コース(2025年2月4日時点)
(1)【NEW!】ビットコインコース……ビットコイン価格への連動を目指すコース
(2)スタンダードコース……アメリカを代表する複数企業に分散して運用するETFに連動
(3)チャレンジコース……アメリカを代表する複数企業の株価に連動して3倍上下するETFに連動
(4)金(ゴールド)コース……金で運用するETFに連動
(5)逆チャレンジコース……アメリカを代表する複数企業の株価と反対(逆)方向に3倍上下するETFに連動
(6)テクノロジーコース……ベンチャー企業向けのナスダック市場で代表的な企業に投資するETFに連動
(7)テクノロジーチャレンジコース……ベンチャー企業向けのナスダック市場で代表的な企業の株価の約3倍の値動きとなるETFに連動
(8)テクノロジー逆チャレンジコース……ナスダック市場で代表的な企業の株価と反対(逆)方向に約3倍の値動きとなるETFに連動
(9)アメリカ超長期国債チャレンジコース……満期まで20年以上の米国債価格の約3倍の値動きとなるETFに連動
現物のビットコインの価格は、値動きの速さや激しさに特徴があります。最近の価格上昇は気になりつつも、「ハイリスクハイリターン」の傾向が強いため、実際にビットコインを取り引きすることには抵抗のある人も多いかもしれません。
その点、PayPayの「ポイント運用」であれば、貯まったポイントを原資として、現金不要でビットコイン取引を疑似体験できます。ビットコインの“お試し取引”としては、格好のサービスと言えるかもしれません。
ただし、いくつか注意点もあります。たとえば、既存の8つの運用コースであれば24時間365日取り引きができますが、「ビットコインコース」は、平日の午前8時5分〜翌日午前6時55分までに取引時間が限定されます。また、最小取引単位も、既存8コースが1Pから運用可能なのに対し、「ビットコインコース」は100P以上1P単位となります。
そして、もっとも注意が必要なのが手数料です。既存8コースでは、ポイントを追加する際に1%のスプレッド相当が発生します(※)。要は、100Pを運用に投じると、実質的な手数料として1Pが引かれ、99Pが運用されるイメージです。
※100P未満のポイントを追加する場合はスプレッド相当は発生しません。
しかし、「ビットコインコース」では「変動性のスプレッド」が採用され、かつ、ポイントの追加時と引き出し時の両方にそれが適用されます。「変動性のスプレッド」は、通常時4.5%程度に設定されており、実質的に9%程度が手数料として引かれることになります。これだけ見ても、既存8コースと比べるとかなり高く感じられるのに加え、「変動する可能性がある」という点も気になるところです。
PayPayのプレスリリースによると、これらの独自ルールは、「他の8コースと比較して、ポイントの変動幅が大きくなる可能性」(原文ママ)を考慮したものとのこと。確かに、ほかの運用コースが連動する金融商品と違い、ビットコイン価格の変動幅は大きく、また、今後の変動予測もきわめて困難です。PayPayの「ポイント運用」には追加できるポイント数の上限がないため、仮に、ビットコインの価格が想定を超えて上昇した場合、PayPay側の負担が許容範囲を超えてしまう可能性も考えられます。その意味で、これらの独自ルール(主に手数料ですが)には、PayPay側のリスクヘッジ的な目的があるのかもしれません。
そのため、あまり考えたくないことですが、せっかくビットコインの価格が大きく上昇しても、引き出し時のスプレッドが当初よりも広がってしまい、「あまりポイントが増えなかった」と肩透かしを食らう可能性も否定できないでしょう。これらを踏まえると、本サービスは、あくまでも「ビットコイン取引を試してみる」という目的にとどめて使うのが現実的かもしれません。
本記事の編集担当(野)も、先日、2,000P弱のポイントを「ビットコインコース」に追加。ポイント追加時に、引き出し時にかかる目安の手数料も引かれて表示される仕様となっており、「けっこうな手数料が取られた」感覚がありました(ただし、運用自体は、引き出し時にかかる目安の手数料も込みで行われているようです)。しばらく運用を継続してみて、新たに判明した注意点などがありましたら当メディアでお伝えする予定です
▼当メディアでは、ビットコインをはじめとして、暗号資産の値動きや取り引きの基礎、口座開設のポイントがわかる記事をまとめています。当ニュースと合わせて参考にしてください。
価格.comマガジン「暗号資産関連記事」
〇楽天カードが、年会費が有料のカードを対象とした2つの新特典をスタート
〇内容は、楽天銀行の普通預金金利アップと楽天損保の保険料への3%還元
〇既存特典を含めて「楽天カードプレミアムプログラム」の名称で展開
楽天カードは2025年1月より、「楽天ゴールドカード」、「楽天プレミアムカード」、「楽天ブラックカード」の会員を対象に、新たな付帯特典として「楽天カードプレミアムプログラム」の提供を始めました。
画像は楽天のプレスリリースより(新設された特典部分を抜粋)
これまでも「楽天ゴールドカード」以上のグレードのカード(年会費が有料のカード)を持つ会員に対しては、楽天証券における「クレカ積立」や「楽天市場」のポイント還元率が優遇されるなど、年会費無料の「楽天カード」(一般カード)にはないおトクな特典が付帯していました。
今回、「ゴールド以上」のカード会員に対して、新たに下記の2つの特典が追加されました。
楽天銀行を、楽天カードの引き落とし口座として利用すると同行の普通預金の金利がアップ。楽天銀行の普通預金の金利は通常時年0.1%ですが、「楽天ゴールドカード」会員は年0.13%、「楽天プレミアムカード」会員は年0.14%、「楽天ブラックカード」会員は年0.18%になります。
※年会費無料の「楽天カード」を利用し、引き落とし口座として同行を使う場合は年0.12%。
楽天損保の自転車保険「サイクルアシスト」、またはゴルフ保険「ゴルフアシスト」において、2025年1月14日以降の新規契約の際に保険料を楽天カードで支払うと、対象保険商品の保険料に対して3%分の楽天ポイントが付与されます。ポイント還元率は、「楽天ゴールドカード」、「楽天プレミアムカード」、「楽天ブラックカード」で共通です。
※年会費無料の「楽天カード」で支払った場合は2.5%還元。
また、これと合わせて、既存の特典を含めて「楽天カードプレミアムプログラム」という名称が付与され、プロモーションが展開されています。内容が充実したのはもちろんですが、「プログラム」として名称を明確化したことには、年会費有料カードのおトク感をより際立たせる狙いがありそうです。
〇JR東日本が、デジタル資産を一元管理できるアプリ「JRE WALLET」をリリース
〇Suicaとの連動で、Suicaの利用履歴に基づくクーポンの配布が特徴
〇将来的には、Suicaの利用履歴に応じて、さまざまな企業からサービスが届く計画も
2025年1月、JR東日本は、新しいアプリ「JRE WALLET」の提供を開始しました。
「JRE WALLET」は、ユーザーが保有するクーポンやチケットなどのデジタル資産を一元管理できるアプリのこと。最大の特徴は、「JRE WALLET」にSuicaを連携することで、Suicaの利用履歴に応じて、さまざまな買い物やサービスに利用できるクーポンが届くことです。受け取ったクーポンは、ほかのユーザーとシェア(譲渡・受け取り)することも可能です。
アプリのイメージ画面(JR東日本のプレスリリースより)
興味深いのは、将来的に予定されている、さまざまな企業などのアプリとの連携機能です。JR東日本のプレスリリースによると、ユーザーの同意を得たうえで、Suicaの利用履歴をJR東日本以外の企業(共創企業)に提供することで、その企業からSuicaの利用履歴に基づいたサービスなどが届くようになる計画とのこと。たとえば、「Suicaでよく利用する駅や地域に関するおトク情報」などが想定されているようです。
鉄道会社の枠を超えた取り組みとして、今後の展開に注目です。
※「JRE WALLET」の公式サイトにて、モバイルSuica連携機能でエラーが出る事象が報告されています(2025年1月27日)。最新情報は、公式サイトでご確認ください。
最後に、編集部がチョイスした3つのキャッシュレス関連キャンペーンをご紹介します。
期間中、「ビットコインコース」において下記2つの条件を満たすと参加できます。
・「自動追加設定」を行い、各月末時点で継続している
・月に100P以上を追加(自動追加・手動追加が対象)
これらの条件を満たしたユーザーを対象に毎月抽選が実施され、1等は各月に追加したポイント数の100%(毎月100名)、2等は同5%(毎月1,000名)、3等は同1%(毎月1万名)の「PayPayポイント」がプレゼントされます。
期間:開催中〜2025年3月31日まで
期間中、タッチ決済対応マークのあるJCBカード、もしくはJCBカードを設定したスマートフォンなどを利用して、対象の公共交通機関の「タッチ決済乗車」を利用すると、利用金額の30%(上限500円相当)がキャッシュバックされます。
期間: 開催中〜2025年3月16日まで
松井証券は、2025年5月より、JCBカードを利用した「クレカ積立」サービスを開始予定です。現在、それを記念したプレキャンペーンを実施中です。
期間中、「JCBオリジナルシリーズ」(プロパーカード)に新規に入会し、キャンペーンにエントリーした人が対象。その状態で投資信託を積立購入することで、積立金額に対してJCBカードの基本還元率以上のポイント還元を受けられます(エントリーから最大3か月間)。本キャンペーンで適用される還元率は、各種条件の達成状況によって変化し、最大6%還元(ポイント付与上限は1万8,000P)まで目指せます。
期間:開催中〜2025年5月31日/適用期間:エントリー月を含む最大3か月間