アメリカン・エキスプレス・インターナショナル(アメックス)は2025年3月4日、中小企業の経営者や個人事業主向けのビジネスカード「アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード(以下「アメックス・ビジネス・ゴールド」)」のリニューアルを発表。これに合わせ、最大17万ポイントをプレゼントする入会キャンペーンも始まった(各種条件あり)。
アメックス・ビジネス・ゴールドの主な変更点は以下のとおり。
・年会費は13,200円アップし49,500円に
・従業員向けの追加カード(付帯特典なし)は年会費無料で、最大99枚発行可能
・カード利用金額に応じて年間2泊分のホテル特典が追加
・通常3,300円かかるポイント優遇の特典が初年度無料
・携帯電話料金50万円の利用達成で5,000ボーナスポイント
赤字は今回修正、追加されたスペック
本カードは価格.comでも人気のビジネスカード。そこで、このカードの特徴と、今回変更・追加された点を中心に紹介していく。
「アメックス・ビジネス・ゴールド」のリニューアルを発表する、アメリカン・エキスプレスの須藤靖洋日本代表/社長
アメックス・ビジネス・ゴールドについて触れる前に、まずはビジネスカード全般の特徴を説明していきたい。
法人向けのクレジットカードのうち、個人事業主や中小企業向けのカードは「ビジネスカード」、大企業向けのカードは「コーポレートカード」と呼ばれている。
そして、ビジネスカードには主に以下のメリットがある。
(1)年会費を経費として処理できる
(2)プライベートとビジネスの支出を区別できる
(3)会計ソフトと連携でき、経理処理の効率化に役立つ
(4)支払いが利用の1か月程度先になり、資金繰りに役立つ
(5)国の助成金の申請支援サービスなど、ビジネスをサポートする特典が付帯
フリーランスとしての働き方が浸透し、企業間の取り引きでもキャッシュレス決済が普及していく中、ビジネスカードはカード会社の注力分野のひとつ。
三井住友カードやJCBなど大手カード会社はここ数年、新たなビジネスカードをリリースしてきた。アメックス・ビジネス・ゴールドの今回の刷新も、この流れに沿った動きと言えそうだ。
アメックス・ビジネス・ゴールドは2003年に発行開始された、歴史のあるビジネスカード
アメックス・ビジネス・ゴールドは、ほかのアメックスのカード同様、年会費は決して安くはないが、豪華な特典が付帯する点が特徴だ。
価格.comのゴールドカード人気ランキングでも7位に入ってきている(2025年3月18日時点)。まずはこのカードの特徴を6つに分けて紹介していく。
価格.comのゴールドカード人気ランキングで7位に入っているアメックス・ビジネス・ゴールド(2025年3月18日時点)
最初にあげられるのが、開業直後でも申し込みできる点。
アメックス・ビジネス・ゴールドは、決算書や登記簿謄本の提出が不要なため(個人事業主の場合)、起業直後の状況などでも申し込み可能。この仕組みは、これから起業するという経営者にとっては利点になりそうだ。
通常、ビジネスカードでも利用限度額が定められていることが少なくないが、アメックス・ビジネス・ゴールドは一律の利用限度額が決められておらず、会員ごとに設定される。
また、利用限度額を超えそうな場合、増額を相談できる「事前承認」という制度もある。事前承認は急な出費が予想される場合や、特定の月に支出が集中する場合に役立つサービスと言えそうだ。
券面も個性的。アメックス・ビジネス・ゴールドは2021年に、本会員の券面を従来のプラスチック製から、メタル(金属)製にリニューアルした。重厚感と高級感があるメタル製クレカは今、高級カードの象徴として人気を集めており、この点も本カードの大きな魅力となっている。
アメックス・ビジネス・ゴールドはカード利用100円ごとに、アメックスのポイントプログラム「メンバーシップ・リワード」が1P貯まる(税金や公共料金の支払いは200円で1P)。
貯まったポイントの交換先は複数あるが、人気があるのはマイルへの交換。ANAマイルは「2,000P→1,000マイル」(5,500円の年間参加費が必要)、JALマイルは「3,000P→1,000マイル」に交換可能。このほか、カード年会費に「1P=0.3円」で充当することも可能だ。
国内主要空港およびハワイの空港ラウンジを、会員に加え、同伴者1名まで無料で利用可能だ。旅行傷害保険は海外で最高1億円、国内で最高5000万円が付帯しているほか(いずれも利用付帯)、海外旅行時には出発時と帰国時にスーツケース1個を配送してくれるなど、トラベル関連のサービスも充実している。
※アメックスは「空港ラウンジ特典」の対象空港を2025年6月1日から変更することを発表
公式HP:空港ラウンジ
グルメ関連では、全国約200の対象レストランで、2名以上のコース料理を予約すると1名分が無料となる特典が付帯しており、これは接待の際に活用できそうだ。
このほか、大手会計ソフトと連携し、カードの利用情報を自動的に取り込むことが可能。また、補助金・助成金検索サービス、情報交換を目的とした会員同士のイベントを開催するなど、ビジネスをサポートするサービスも豊富だ。
メタル製のアメックス・ビジネス・ゴールド(左)と、今回新たに導入された年会費無料の追加カード(右)。無料の追加カードの券面はホワイト
こうした特徴を持つアメックス・ビジネス・ゴールド。今回のリニューアルにおける注目点は4つある。
まずは年会費。
従来、アメックス・ビジネス・ゴールド本会員の年会費は36,300円、そして、空港ラウンジや手荷物宅配サービスなどの付帯特典が付いた追加カードの年会費は1枚13,200円だった。
今回のリニューアルで、本会員の年会費が13,200円アップし49,500円になった(2025年5月21日以降の引き落とし分から、この年会費が請求される)。
付帯特典ありの追加カードの年会費は13,200円で変わりはないが、今回、付帯特典がない代わりに、年会費無料の追加カードも発行できるようになった。この2種類の追加カードは「最大99枚」まで発行可能だ。
これによって、「従来の付帯特典ありの追加カードは役員に、新しい追加カードは従業員に」という選択肢が新たに生まれ、幅広く従業員に持たせられるようになったのは利点となりそうだ。
付帯特典なしの追加カードでも利用することでポイントが貯まり、本会員のポイントと合算できる。さらに、追加カード1枚ごとに利用限度額を設定することができ、「出張が多い従業員には限度額を高く」といった形で柔軟に対応できる。
ただ、無料の追加カードを1年間(4月1日〜翌年3月31日)で1度も利用しないと、1枚につき管理手数料3,300円が発生する点は注意が必要だ。
ホテル優待として追加されたのが「ビジネス・フリー・ステイ・ギフト」だ。年間300万円以上のカード利用があると1泊2名分、500万円以上のカード利用があると、追加で1泊2名分のホテルギフトが贈られる。
対象となるのは東急が運営する、定額宿泊のサブスクサービス「TsugiTsugi」に登録された全国の約300の施設。ビジネス・シティホテルやリゾートホテルなど、さまざまな施設が登録されている。
参考HP:「TsugiTsugi」公式サイト
条件達成時には、無料宿泊の予約コードが贈られ、「このコードを従業員に渡して福利厚生のひとつとして活用したり、取引先へのお礼として利用したりすることも可能」(アメックス・加納伸昭副社長)だという。
この特典は1泊2名分なら2万円相当とされ、年間500万円利用時にはその倍の4万円相当の特典を受けられることになる。
今回のリニューアルの目玉の特典となる、「ビジネス・フリー・ステイ・ギフト」について説明するアメリカン・エキスプレスの加納伸昭副社長
アメックスには、ポイント関連のオプションサービス「メンバーシップ・リワード・プラス」が用意されている。このサービスを利用するには3,300円の年会費が必要になるが、登録すると主に下記の3つの優遇が受けられるようになる。
(1)ポイントの有効期限が最長3年間から無期限に
(2)ポイント移行・交換レートのアップ(下記参照)
「メンバーシップ・リワード・プラス」登録後の交換レート(主なアイテム)
〈ANAマイル〉未登録2,000P→1,000マイル 登録後1,000P→1,000マイル
〈JALマイル〉未登録3,000P→1,000マイル 登録後2,500P→1,000マイル
〈楽天ポイント〉未登録3,000P→900楽天ポイント 登録後3,000P→1,400楽天ポイント
〈カード年会費に充当〉未登録1P→0.3円 登録後1P→1円
(3)対象店で貯まるポイントが100円で3Pにアップ(通常は100円で1P)
〈ポイントアップの対象店〉
Amazon、Yahoo!ショッピング、Yahoo!オークション、App StoreやAppleのサービス、Uber Eats、ヨドバシカメラ、ヨドバシ・ドット・コム、石井スポーツ、アートスポーツ、JAL公式ウェブサイト、一休.com、HIS公式ウェブサイト、アメリカン・エキスプレス・トラベルオンライン
今回のリニューアルで、アメックス・ビジネス・ゴールド会員は、「メンバーシップ・リワード・プラス」を初年度無料で利用できるようになった。対象店には備品購入や出張での利用機会も多いAmazonやJALなどが含まれており、これらのサービスで高還元になるのはメリットと言えそうだ。
ただし、無料で利用できるのは初年度のみ。2年目以降は通常どおり3,300円の年会費が必要になる点は注意が必要だ。
また、ビジネスを進めるうえで利用頻度の高い、携帯電話やガソリン料金を一定額以上利用するとボーナスポイントを獲得できる特典も導入された(主な内容は下記のとおり)。
【携帯電話料金】
50万円利用達成で5,000ボーナスポイント
対象サービス:NTTドコモ/ソフトバンク/au
【ガソリン】
20万円利用達成で5,000ボーナスポイント
対象サービス:コスモ石油
【オンライン家電用品】
100円につき2ポイント
対象サービス:ビックカメラ.com/コジマネット/sofmap.com
【コンビニ広告】
100円につき3ポイント
対象サービス:ローソンエンタテインメント/ミニストップ
アメックス・ビジネス・ゴールドの今回のリニューアルは
・年会費が13,200円アップし49,500円に
・特典が追加され、内容が充実
という2点にまとめられる。
そして、追加された特典の目玉と言えるのが「ビジネス・フリー・ステイ・ギフト」だ。年間300万円のカード利用で1泊2名分(2万円相当)、500万円以上の利用で2泊分(4万円相当)のギフトが贈られる。
この利用金額の条件をクリアできるなら、年会費アップ以上のメリットが出てきそうだ。また、このホテル優待に加え、「年会費無料で最大99枚まで追加カードを発行できる」点に魅力を感じる場合も、保有する価値はありそうだ。
ただそのいっぽうで、年会費が5万円近く(49,500円)にアップしたことに対して、SNSでは「(カードの)利用頻度が少ない人にはつらい」などの声も見受けられる。
たとえば、同じハイステータスのビジネスカードとして知られる「セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」の年会費は22,000円で、初年度は無料(ただし、2025年8月請求分から年会費33,000円にアップすることが発表された)。
また、「apollostation PLATINUM BUSINESS」は22,000円の年会費で、価格.comから申し込むと初年度の年会費は無料になるキャンペーンが実施中だ(2025年4月30日まで)。
そして、この2枚のカードともに、アメックス・ビジネス・ゴールドには付帯していない、
・航空券やレストランの予約などに対応する「コンシェルジュデスク」
・世界各地の空港ラウンジが利用できる「プライオリティ・パス」
のサービスが付帯しているため、こうしたカードとの比較・検討も必要に応じて行うとよさそうだ。
以上、アメックス・ビジネス・ゴールドのリニューアルについて説明してきた。今回の変更は「年会費の値上げ」と「特典内容の充実」という、ユーザーにとって改悪と改善という2つの側面を持つ。
SNSなどを見る限り、今回のリニューアルに対するユーザーの評価は定まっていない印象。価格.comのゴールドカードランキングでも、アメックス・ビジネス・ゴールドは7、8位の座を行き来しており、現在のところ、リニューアル前後で順位の大幅な変動は見られない。
今後、ユーザーが今回の変更をどう評価し、それがランキングの順位にどう現れていくのかに注目していきたい。