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次世代移動通信「5G」って何? 2020年の暮らしはどう変わる?

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携帯電話が登場したのは1980年代。当時は、出先や移動中に電話ができるだけで驚きだった。その後データ通信が加わり、携帯電話でメールやインターネットの利用ができるようになるなど利便性が向上し、今ではスマホで動画視聴も当たり前の時代になった。こうした進化を裏で支えているのが、現在のドコモやソフトバンク、KDDIなどの携帯キャリアが持つ無線データ通信網の技術革新である。特に、通信システム(インフラ)と携帯端末の両方を、根幹からそっくり入れ替え、大幅な通信速度向上を実現する節目とその仕組みを“世代”(Generation)と呼ぶ。現在日本で主流なのは第四世代、いわゆる「4G」だ。

そして今、2020年の実用化を目前に話題になっているのが、次世代の「5G」である。5Gでは当然、通信速度の向上が図られるが、ほかにもIoT時代に即した「同時多接続」や「低遅延」といった要素が盛り込まれ、人々の暮らしを一変させる可能性を持つ。今回は、5Gが浮上した背景や技術動向、5Gがもたらす未来の生活を紹介しよう。

携帯通信の歴史をパパッとおさらい。通信速度は数万倍に高速化!

日本の携帯電話(移動電話)の歴史は、1979年に日本電信電話公社(現NTT)が開始した「自動車電話サービス」で幕を開ける。アナログ方式の第一世代通信システム(1G)で、通話は都市圏に限られるなど制約が多かったが、社用車やハイヤーなどを中心に自動車用の移動通信サービスとして利用された。1Gでバッテリーやアンテナも含めて携帯できる電話が登場したのは1985年で、その名は「ショルダーホン」。重量約3kgの肩かけ式だ。そして、1993年にデジタル方式の2Gが運用を開始する。デジタル化によりメールが利用可能になり、ポケットベルやPHSが登場したのがこのときである。

そして2001年には、それまでとは桁違いな数Mbpsの高速データ通信が可能な3Gの運用がスタート。国際電気通信連合 (ITU) が定める「IMT-2000」 (International Mobile Telecommunication 2000) 規格に準拠した通信システムで、日本ではNTTドコモとJ-フォン(現ソフトバンク)が「W-CDMA」規格、KDDI(au)が「CDMA2000」規格でサービスを展開した。携帯電話でインターネット利用を行うことが一般的になってきたのもこの頃だ。

多様化するニーズにあわせて進化してきた携帯通信。画像は、今年2月にKDDIが行った5Gネットワーク開発に関する記者発表会のスライドより

現在4Gと呼んでいるサービスのうち、「LTE」と「WiMAX」は上記の「IMT-2000」を高度化したもので、「3.9G」と呼ばれ区別されてきた。4Gに限りなく近い3Gというわけだ(後から、LTEも4Gと呼称してよいことになった)。正真正銘の4Gは、「MT-Advanced」規格に準拠する「LTE-Advanced」と「WirelessMAN-Advanced」(WiMAX2)が該当する。複数の電波による通信を同時利用することでより高速なデータ通信を実現する技術「キャリアアグリゲーション(CA)」が肝で、2015年前後から各キャリアがサービスを順次開始し、利用できるエリアや端末が広がっている。たとえばNTTドコモは、2017年3月より「PREMIUM 4G」で、下り最大682Mbpsをうたうサービスを開始した。

携帯通信の歴史をまとめてみると、大体10年代ごとに世代交代を経てきている(※画像はクリックで拡大)

携帯通信の歴史をまとめてみると、大体10年代ごとに世代交代を経てきている(※画像はクリックで拡大)

なぜ5Gが必要なのか?

スマホでメールやSNSを送ったり、音楽や動画を楽しんだりしている範囲では、現状の4G通信速度でそこまで大きな不満はない。ところが、今後はIoT化が急速に進み、身のまわりのありとあらゆるモノがインターネットに接続することで、トラフィック(通信回線を利用するデータ量)の急増が見込まれる。

たとえば、家庭の中に無数にある各種家電、いつも身に付けるウェアラブルデバイス、自動運転カー、産業用ドローンなどがその代表格。ほかにも、遠隔医療(診断)、遠隔手術、農業用センサー、道路や橋梁の異常検知センサー、セキュリティカメラおよびセンサー、高齢者や子どもの見守り機器、ペットの見守りアイテムなど、例をあげようとすると枚挙にいとまがない。それらの機器がワイヤレスで通信を行うことは間違いなく、そこで本命視されているのが5G通信網というわけだ。また、映像の8K化や立体化など、コンテンツのリッチ化においても、衛生放送や光ケーブルによる伝送はコスト面を含めて限界があるため、5G通信による解決が期待されている。

過去の「5G Tokyo Bay Summit」でNTTドコモが展示していた、将来におけるコアネットワークイメージのパネル。デバイス制御はもちろん、ITSやヘルスケア、遠隔医療など、日常生活におけるさまざまサービスがネットワークにつながることが見込まれ、トラフィックの爆発的な増加が予想される

5Gでは通信速度が10Gbpsに

5Gでは、通信速度を10Gbps程度に引き上げる方向で検討されている。採用される技術や詳細は策定中だが、通信速度を向上するためには800MHz〜1GHzの帯域幅が必要で、現在の4G(最大3.5GHz程度)よりも高い周波数帯の電波を用いるのは確実だ。ほかにも、高い周波数の電波を低消費電力で確実に届けるアンテナおよび伝送技術、Wi-Fiなど他の伝送経路も活用するソフトウェア技術など、多角的な技術検討がなされている。

また、5GではIoT時代を見据え、「多接続性」や「低遅延」の実現も大きなテーマ。IoT時代には、身のまわりのデバイスに加え、目に見えないセンサー等も含めると、数兆個の機器がインターネットに接続すると考えられ、ひとつのセル(アクセスポイント)が扱える機器のキャパシティも増やす必要がある。また、自動運転カー、遠隔手術、触覚フィードバックといった分野では、通信に遅延があると使い物にならない。機器間同士で数ミリ秒以内の低遅延性が求められる。4Gで10ms(0.01秒)程度だった無線区間の遅延を、5Gでは1ms(0.001秒)と1/10まで短縮する方向で検討されている。

上記3つの画像は、今年2月にKDDIが行った5Gネットワーク開発に関する記者発表会のスライドより。他接続に対応し、低遅延を実現するため、エッジコンピューティングの導入やネットワーク・スライスを採用する

大予想! 5Gのある未来の生活

5G時代を迎えると、われわれの生活はどのように発展するのだろうか? 技術説明だけではイメージしづらいので、少し未来の予想も含め、具体例をあげてみよう。

【ケース1】自動車
自動車分野で大きく期待されるのは、自動運転カーの実用化だろう。車が自律的に道路状況を判断して走行し、さらに信号機、近隣を走行する自動車や自転車、歩行者などからも情報を取得するようになれば、より安全性が高まる。先行車からの情報や道路の混雑状況も把握し、ルートを最適化することで、時間短縮や省エネも実現。万が一の際は、遠隔操作(運転)も可能になる。また、車速やさまざまなセンサーから得た情報を共有することで、異常のある車はトラブル発生前に安全に停止させたり、迅速な救護やメンテナンスも行える。

NTTドコモのニュースリリースより、5Gを利用した自動運転の実証実験例(自動運転車両の遠隔管制における5G活用に向けた共同実証実験に合意:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/notice/2016/11/11_00.html)

【ケース2】ドローン
5G通信によってドローンをコントロールできる範囲が広がり、日本を縦断する広域型の登場も期待できる。宅配や、橋梁、道路の保守点検など、現在期待されている用途に加え、ドローンの活用領域がさらに広がっていくことになる。

【ケース3】造成/建築
すでに土地の大規模造成現場で、ドローンで俯瞰および測定を行い、ショベルカーやダンプカーが設計図面に従って高精度に造成を行うシステムが実用化されている。今後、GPSの高精度化や5Gの登場により、街中の小さな現場も無人化が可能に。重機の操作や現場監督も遠隔から操作できるようになるかもしれない。

【ケース4】遠隔手術
医療分野で期待されるのが遠隔地からの手術だ。離島などにいながら、都市圏の専門医の施術を受けられるようになる。手術ロボットが検出した触覚をリアルタイムで執刀医に伝えることができ、より高度な手術も確実に行える。
●遠隔手術で実用化されているロボットの例:Intuitive Surgical, Inc.「da Vinci」(https://www.intuitivesurgical.com/jp/)

【ケース5】8K映像の伝送
エンタメ分野での5G利用に関する展望もご紹介しよう。現在、4K映像の伝送には20Mbps前後の帯域が必要とされている。これが、8Kではさらに2倍程度が必要であると見込まれており、放送衛星を用いたブロードキャスト等は多チャンネル化が難しくなる。そこで、5Gで平均100Mbps(最大10Gbps)の通信が実現すれば、8K伝送の普及に貢献しそうだ。さらにその先として、ホログラム立体化、オーディオのハイレゾ多チャンネル化など、コンテンツのリッチ化をめざす場合も、5Gに期待がかかる。こうした映像の高精細化、情報量の増大は、上記のすべての分野をより高度化するのにも役立つのだ。

セコムによる5G通信網を活用したセキュリティサービスの展望イメージ

セコムによる5G通信網を活用したセキュリティサービスの展望イメージ。活用領域を広げるドローンや、構成画像の伝送など、各要素を組み合わせて強化したセキュリティサービスの実現が望まれる

さて、続いては筆者が5G時代に「実現したらいいな!」と思う、夢の未来をご紹介したい。

【5Gで実現してほしい1】ネットで実車自動車レース!
広大な砂漠にサーキットを設け、遠隔操作が可能なフォーミュラーカーを配置。参加者は、スマホゲーム感覚で実車レース体験を行う。5Gなら遅延時間が短く、リアルタイム性が要求される高速レースにも対応可能だろう。

【5Gで実現してほしい2】分身ロボットが代理出張!
分身のように操れるヒト型ロボットが登場。視覚、聴覚、触覚、嗅覚といった五感に関するフィードバックも可能で、実際にその場へおもむいたような感覚が得られる。世界を旅行するもよし、実家に帰って家族と過ごすのもよし、宇宙へ冒険に出ることも可能だ。出張の多いビジネスマンは、遠隔地のレンタルロボットに乗り移って、自宅にいながらワープするように仕事を行える。

さいごに

5Gのある未来は、まるでSF小説のように感じるかもしれないが、2020年の運用開始をめざして実際に検討が進められている真っ只中だ。56年ぶりに開催される東京オリンピックを、自動運転カーで会場に向かって楽しむか、はたまた、自宅にいながら8K解像度のVRで疑似体感するか。いずれにしても楽しみである。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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2018.1.15 更新
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