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サイバーパンクな世界を実現させる? ドコモが目指す6Gを使ったサイボーグの世界

NTTドコモの技術展示会「docomo Open House’22」が2022年1月17日から19日にかけて完全招待制イベントとして開催されている。NTTドコモやNTTグループのさまざまな技術が数多く展示されているが、それらの中から、人間拡張技術など6Gで実現を目指す注目の技術や、今夏にサービス開始が迫った5G SAを使った技術について紹介しよう。

超低遅延の6Gを生かし、知覚や運動能力の強化と共有を実現する「人間拡張技術」

2030年頃の実用化が想定されているモバイルネットワーク「6G」では、神経の伝達速度よりもはるかに速い超高速ネットワークが実現されるという。そんな6Gを人間の感覚や運動能力の向上に活用するのが「人間拡張技術」だ。突飛に思われるかも知れないが、生身の体をはるかに超えた性能のロボットやサイボーグを、人間の脳で意識するだけで高速にコントロールできることを目指した、SF小説のような技術だ。

人間の神経や脳波をモニターすることで、運動や感覚、感情や思考を外部から読み取ったり、外部からの電気刺激を筋肉の動きに反映する技術は、すでにある程度まで確立している。こうして読み取った身体情報は、デジタルデータとして他人と共有したり、機械の動作制御に応用できるが、ここに6Gを組み合わせることで、生身の体よりも速く動くサイボーグのようなものを作る道が開けるという。

人間拡張技術が確立されれば、職人の持つ匠の技や、アスリートの持つ高度な運動技術のような、個人の身体内に閉じ込められていた情報をデータとして抽出して共有することが可能になるという。ネットワークを通じて、アスリートの動きを直接体験することも可能になるかもしれない。

運動情報を他人に伝えるデモンストレーション。センシングデバイスを装着した後方の人が手や指を動かすと、アクチュエーションデバイスを装着した前方の人にその動きが電気信号として運動神経に伝わり、同じような動きをする。人ごとに異なる感覚や運動情報を最適化しているのが技術上のポイントという

運動情報を他人に伝えるデモンストレーション。センシングデバイスを装着した後方の人が手や指を動かすと、アクチュエーションデバイスを装着した前方の人にその動きが電気信号として運動神経に伝わり、同じような動きをする。人ごとに異なる感覚や運動情報を最適化しているのが技術上のポイントという

体の動きをロボットに伝えるデモ。左の説明員の腕に取り付けた装置が神経の動作を読み取り、右のロボットがその動きをトレースする

体の動きをロボットに伝えるデモ。左の説明員の腕に取り付けた装置が神経の動作を読み取り、右のロボットがその動きをトレースする

高度な身体制御が求められるウインドサーフィンだが、人間拡張技術を使えばインストラクターの体の動きを直接体に伝えることができるので、短期間での習得も可能。この実演ではヘッドマウントディスプレイやサーフボードを動かすアクチュエーター、扇風機といった機器を加えることでより現実的な感覚を再現している

高度な身体制御が求められるウインドサーフィンだが、人間拡張技術を使えばインストラクターの体の動きを直接体に伝えることができるので、短期間での習得も可能。この実演ではヘッドマウントディスプレイやサーフボードを動かすアクチュエーター、扇風機といった機器を加えることでより現実的な感覚を再現している

6Gに向けた宇宙や海中のエリア化に向けた取り組みや研究

6Gの開発目標のひとつに、今までエリア圏外だった空や宇宙、海上および海中の通信エリア化実現がある。この課題に対して、2022年1月14日、エアバス、NTT、NTTドコモ、スカパーJSATの4社はアライアンスを締結した。これにより、電動飛行機を使った高高度プラットフォーム(以下、HAPS/ハップス)と、静止軌道衛星および低軌道衛星を組み合わせ、空、宇宙、海上をエリア化する非地上ネットワークを作り上げる道筋が開けた。

HAPSの実験機体としてはエアバスの「Zephyr(ゼファー)」を使用する予定だが、2021年11月には試作機「Zephyr S」を使った電波伝搬の実証試験に成功している。宇宙の6G通信エリア化は、将来普及すると思われる宇宙旅行時代に備えたものと言える。空のエリア化は、飛行機の中や、災害時、人口密度の低い山間部の効率的なエリア化としても有望だ。なお、HAPSの実用化は2025年頃を予定しており、6G時代の到来を待たずに現行の5Gでも利用可能となりそうだ。

海中のエリア化に関する研究では、従来からの音波通信にMIMO技術を組み合わせることで、通信速度を向上させる「海中音響通信」と、それを使用した水中ドローンが公開されていた。従来の音波通信では32kbps程度の通信速度が限界だったが、MIMOを使うことで200kbps以上の通信速度を実現するという。これにより、水中でもワイヤレスで動画の送受信が行えるようになった。

HAPSと静止軌道衛星および低軌道衛星を組み合わせた、NTTドコモの空・宇宙の6G通信エリア化。来たる宇宙旅行時代を想定したものだ

HAPSと静止軌道衛星および低軌道衛星を組み合わせた、NTTドコモの空・宇宙の6G通信エリア化。来たる宇宙旅行時代を想定したものだ

海中の6G通信エリア化に向けて、音波を使った水中ドローンを開発している

海中の6G通信エリア化に向けて、音波を使った水中ドローンを開発している

海中音響通信では、10Mbps程度の通信速度を目指す

海中音響通信では、10Mbps程度の通信速度を目指す

5G SAの実用化にともない、携帯電話の永年の課題だった通話遅延が解消

6Gのようなやや遠い未来の話だけではなく、近い将来を見据えた技術ももちろん展示されている。NTTドコモでは、2022年夏に、5Gのフル機能に対応する5G SAモードの一般向けサービスの開始を予定している。ただ、5G SAは注目のサービスではあるものの、現在発表されているサービス内容では、現状のNSAモードと比べて通信速度はむしろ低下するため、ユーザーにメリットがわかりにくいのも事実だ。

そうした5G SAの実感しやすいメリットとして、超低遅延を活用した音声通話サービス「COTOBA Talk」が実演されていた。「COTOBA Talk」を使用することで、音声通話に関わる一連のレスポンスが向上し、通話先の相手と一緒に歌ったり、じゃんけんを行うなど、遅延が理由で難しかった、細かいタイミングを合わせた行動や遊びなどが可能となる。携帯電話における音声通話の遅延は、長年通信業界が抱えていた課題だっていたが、5G SAが実用化されることで、技術的な解決のめどが立ったことになる。

5G SAを使った音声通話サービス「COTOBA Talk」。その低遅延性を生かして、今までの携帯電話では難しかった、相手と細かなタイミングを合わせた行動や遊びができるようになる

5G SAを使った音声通話サービス「COTOBA Talk」。その低遅延性を生かして、今までの携帯電話では難しかった、相手と細かなタイミングを合わせた行動や遊びができるようになる

また、5G SAでの注目技術「ネットワークスライシング」の比較デモンストレーションも行われていた。ネットワークスライシングは、ユーザーに合わせてネットワークの性能を、超低遅延型や超低消費電力型などにカスタマイズできるようにするもの。今回行われていたデモンストレーションは、超低遅延型ネットワークに最適化されたもので、動画のリアルタイム配信において、「ネットワークスライシングなし」、「ネットワークスライシングあり(遠方に「UPF」設置)」、「ネットワークスライシングあり(配信元の近くにアップロード用5Gサーバー「UPF」設置)」の3パターンで比較を行った。「ネットワークスライシングなし」では遅延が大きいうえに音の途切れやコマ落ちが目立っていたが、「ネットワークスライシングあり(遠方に「UPF」設置)」では処理落ちがなくなり、遅延が減少していた。また「ネットワークスライシングあり(配信元に5Gサーバー「UPF」設置)」ではさらに遅延がほとんど目だたなくなる。ユーザーがリアルタイムで参加するような動画配信では、ネットワークスライシングを使ったほうが臨場感や一体感を強く感じやすくなることが実感できた。

ネットワークスライシングを使った動画配信における遅延の比較。ネットワークスライシングを使用することで、安定した通信速度と遅延の少ない一体感のある配信が可能となる

ネットワークスライシングを使った動画配信における遅延の比較。ネットワークスライシングを使用することで、安定した通信速度と遅延の少ない一体感のある配信が可能となる

5G SAの実演では、NTTドコモで販売中の5Gルーター「SH-52A」にソフトウェアアップデートを施したものが使われていた。既存の5G端末でも、アップデートで5G SAに対応できる余地はありそうだ

5G SAの実演では、NTTドコモで販売中の5Gルーター「SH-52A」にソフトウェアアップデートを施したものが使われていた。既存の5G端末でも、アップデートで5G SAに対応できる余地はありそうだ

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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