シャオミは2024年1月より、一部のスマートフォンやタブレットを対象に、新OS「Xiaomi Hyper OS」(以下、「HyperOS」)の配布を行っている。この新OSがどのくらい進化したのか、人気の11インチタブレット「Xiaomi Pad 6」を使って試してみた。従来のOS「MIUI」との違いを詳しくレポートしよう。
「HyperOS」をインストールした「Xiaomi Pad 6」。Google Playのアイコンが見える
「HyperOS」は、シャオミが自社のスマートフォン・タブレットに搭載する新しいOSだ。2024年2月27日時点では、タブレットでは「Xiaomi Pad 6」が、スマートフォンでは「Xiaomi 13T Pro」「Xiaomi 13T」などが、このOSの安定版のアップデート対象としてアナウンスされている。
「HyperOS」は、これまで搭載してきたOS「MIUI」と同様、Googleが開発するAndroid OSをベースにUIや操作性をカスタマイズしたもの。当然、Googleアカウントをそのまま利用できるし「Google Play」にも対応している。基本的にAndroid 14をベースに設計されているのも「MIUI」との違いだ(※「MIUI」の最新版はAndroid 13ベースの「MIUI 14」)。
さらに、「HyperOS」では、名称が変わっただけではなく、自動車を含むIoT製品まで一貫性を持たせることも目標に掲げている。今後のシャオミ製品に広く影響する技術のひとつとなることだろう。
スマートフォン
Xiaomi 13T Pro
Xiaomi 13T
Xiaomi 11T
Redmi Note 11※Android 13ベース
Redmi 12 5G
POCO F4 GT
タブレット
Xiaomi Pad 6(8GB+128GB・6GB+128GB)
左が「HyperOS」、右が「MIUI14」のシステム情報。「HyperOS」ではAndroidのバージョンが14になっている
「HyperOS」は、これまでの「MIUI」の基本的なデザインを継承しつつ、標準アプリのアイコンやUI、タブレットの操作性が見直されている。パッと見では大きな違いがないように見えるかもしれないが、細かいところがアップデートしている。
設定画面を比較(左が「HyperOS」で右が「MIUI」、以下同)。「HyperOS」で機能が削除されていることはほとんどないようだが、配置が微妙に変化している
ホーム画面を比較。一部アプリのアイコンが刷新されているのがわかる
電卓アプリを比較(上は「HyperOS」、下は「MIUI」)。機能は同じだがUIが異なっている。なお、標準アプリとしては、音声録音のレコーダーや、QRコード読み取りなどのスキャナーなどのUIも変更されている
画面の右上からスワイプで表示されるクイック設定パネル。「HyperOS」(左)では、「MIUI」(右)にあった時計がなくなるなどUIが多少異なっている
「HyperOS」の操作性については、アプリの切り替え操作が大きく変わった。「MIUI」では、画面下部から上部にスワイプするとアプリ切り替え画面が表示される仕様だった(※画面下部・中央からのスワイプだとアプリ切り替え画面が、右側と左側からのスワイプだとタスクバーが表示される)。これが「HyperOS」では、標準のAndroid 14の操作と同じになり、画面下部から上部にスワイプするとまずタスクバーが表示されるようになった。そのまま指を離すとバーが固定され、さらに指を上にスワイプするとアプリ切り替え画面に移行する仕組みだ。
どちらが使いやすいかの比較は主観によるが、他社のAndroid製品を使っているなら「HyperOS」のほうがなじみやすいと言えるだろう。
なお、画面上部の右側から下にスワイプするとクイック設定が、左側から下にスワイプすると通知画面が表示されるという「MIUI」のメニュー操作はそのまま継承している。
アプリの切り替え画面を比較。「HyperOS」は、Android 14と同じ操作性になり、中央のバーを上部にスワイプするとタスクバーが表示され、さらに上部にスワイプすると最近使ったアプリが表示される。「MIUI」にあった「フローティングウィンドウ」のコマンドはなくなっている
「HyperOS」は、アプリを並べて同時に使うマルチウィンドウの機能も向上している。
「MIUI」では、アプリ起動中にタスクバーから別のアプリを並べて起動しようとすると、画面の端までドラッグ&ドロップする必要があったが、「HyperOS」は、タスクバーからアプリをドラッグ&ドロップすると、フローティングにするか、左右にアプリを並べるかがよりわかりやすくなった。並べたアプリの片側だけを閉じるような操作も可能だ。
なお、アプリを全画面で起動した状態で、3本指で左右スワイプすると画面分割して複数アプリを起動できる機能は「MIUI」と同じだ。
2画面分割の操作方法も異なる。「HyperOS」(上)では、右方向にアプリをドラッグ&ドロップするとすぐに分割の表示になるので、後は手放すだけだ。いっぽう「MIUI」(下)の場合、右端までドラッグしないと画面分割の表示にならなかった
さらに「HyperOS」では、画面上部に、ウィンドウをコントロールできる3つのドット(…)が表示されるようになったのも改善点だ。アプリを起動した状態でドットをタッチすると、「ウィンドウの分割」「フローティングウィンドウの起動」「アプリの終了」といった制御が可能だ。
画面上部に3点ドットがあり(左画面)、これをタッチするとウィンドウのコントロールが可能(右画面)。ウィンドウの分割、フローティングウィンドウの起動、アプリの終了といった制御ができる。なお、これらの制御は、2画面分割の状態でも、それぞれの表示中のアプリに対して実行できる
「HyperOS」ではパフォーマンスの最適化がうたわれており、具体的には、タスクの平均時間14%削減、クリティカルタスクの待機時間72時間削減、割り込み遅延14%削減といった改善が施されている。
このあたりの改善がベンチマークアプリのスコアに影響を与えるのか複数のアプリを使って試してみた。従来の「MIUI」と比較しながら結果をレポートしよう。
グラフィック性能を計測する「3DMark」の結果。左が「HyperOS」で、右が「MIUI」(以下、同)。「HyperOS」は4238、「MIUI」は4274でスコアに差はほとんどない
処理性能を計測する「PCMark」の結果。「HyperOS」は14593で、「MIUI」は14934。「HyperOS」のほうがやや良好な結果だが、誤差の範囲内とも言える
「Geekbench」のCPUテスト。「HyperOS」はシングルコアが1337、マルチコアが3515。「MIUI」はシングルコアが1324、マルチコアが3489。はっきりとした違いを読み取るのは難しい
こちらは「Geekbench」のOpenCLテスト。「HyperOS」は3363、「MIUI」は3389。やはり差は出なかった
上記のベンチマークアプリの結果を見る限り、「HyperOS」と「MIUI」ではっきりとした違いは読み取れない。ゲームアプリとして「原神」を実行してみたところ、画面の描画のスムーズさに差があるように感じたが、あくまで感覚的なものだ。
逆に言えば、OSのアップデートで処理が重くなることはないようなので、エントリークラスの製品であっても、それほど性能の低下を心配しなくてよいだろう。
「HyperOS」は、特徴的な機能として「ワークステーション」を搭載している。これは、基本的には外付けキーボードやマウスの操作性を高めるもので(接続しなくても利用はできる)「PCのように使えるUI」に変更するというものだ。
「ワークステーション」では、アプリはすべてフローティングウィンドウで起動することになり、PCでアプリを起動するように、複数のウィンドウを切り替えて操作ができる。また、複数のアプリ間でドラッグ&ドロップも可能で、写真をメモアプリに貼り付けたり、ブラウザーのリンクをメッセンジャーに貼り付けたりといった操作も可能だ。サムスンの「DeX」などをキャッチアップした機能と言えるだろう。
「ワークステーション」のホーム画面。PCのデスクトップのような表示になる
アプリはすべてフローティングの状態で起動する
通常のタブレット操作と「ワークステーション」のどちらが使いやすいについては、筆者がPC作業に慣れていることもあって、複数のアプリを行き来して作業をする場合は「ワークステーション」のほうが使いやすそうだと感じた。キーボードとの相性も確かに良好だった。
別売のキーボードを装着したところ。ノートPCライクに使用できる
従来の「MIUI」は、高機能ではあるが、操作性のカスタマイズが多く、「Xperia」シリーズや「AQUOS」シリーズのようなAndroidの標準的な操作が好まれやすい日本市場では、敬遠される理由にもなっていた。
しかし、新しい「HyperOS」は、操作のクセが多少減っているうえ、マルチウィンドウも使いやすくなった。基本的に最新OSのAndroid 14ベースなのも見逃せない点だ。Android 14自体は新機能が多いわけではないが、最新OSなのでセキュリティ面で安心できるのは大きい。
いずれにしても、順当かつシャオミ製品の間口を広げるバージョンアップと言えそうだ。