ランニングの距離やペースを測れるスマートウォッチは、ランニングやウォーキングを楽しむユーザーにとって、もはや定番アイテム。しかし、「どれを選べばよいかわからない」という人も多いでしょう。そこで、GPS精度が高いとされるミドルクラスのスマートウォッチ3本を徹底比較します。
GPS精度が高いとされる3モデルをテストします
高級なスマートウォッチ3本でのテスト結果が気になる人はこちらの記事もチェック↓
筆者は趣味のランニングを通じて、日々さまざまなスマートウォッチをテストしています。近ごろのスマートウォッチは心拍数や睡眠の質、ストレスレベルの計測など、健康管理の機能が充実していますが、いちランナーとして最も重視したいのは、やはりGPSの精度でしょう。GPSが正確であれば、走った距離や、走行中のペースもリアルアイムで追従できるので、日々の成果が細かく記録できるわけです。
現在発売されているGPS搭載スマートウォッチの多くが、その精度の高さをうたっているなか、「本当に正確なのかだろうか」という疑問が湧きあがり、複数本を比較するテストを実施しました。
今回紹介するのは、以下の3つのモデルです。
・ガーミン「Forerunner 265」
・カロス「PACE Pro」
・Zepp Health「Amazfit T-REX 3」
価格的には多少バラつきがありますが、5万円以下のミドルクラスから3本を選出。テストの前にそれぞれのスマートウォッチを簡単に解説します。
ガーミン「Forerunner 265」、価格.com最安価格48,950円(税込。以下同)、2023年3月2日発売
“GPSと言えばガーミン”と言えるほど、位置情報の精度が評価されているブランドです。「Forerunner 265」は、走行距離やペースなどを計測する一般的なランニング機能のほか、ランニング中の足の接地時間や上下動の大きさなど、ランニングフォームに関するデータが記録できるのが特徴。また、本人の実力に合わせたトレーニングプランを作成できるなど、ランナーに寄り添った機能が満載です。
・重量:47g
・ディスプレイサイズ:1.3インチ
・駆動時間:GPSモード+光学式心拍計 / 最大約13日間、マルチGNSSマルチバンドモード / 最大約20時間
・GPS:GPS / GLONASS / Galileo /みちびき / GNSSマルチバンド
カロス「PACE Pro」、公式サイト販売価格49,940円、2024年11月上旬
2014年登場にしたカロス(COROS)は、トレイルランニングやトライアスロンに参加するような、ガチなアスリートから支持されている新しいスマートウォッチメーカーです。今回テストする「PACE Pro」は、ルートの作成が簡単なうえ、正確なGPSと併せて使用することで、山の中でも迷わず走るための機能が搭載されています。また、ランニングのレベルアップのためのトレーニングプランが、バリエーション豊富に用意されていることも、アスリートから指示されている理由でしょう。
・重量:49g(シリコンバンド)、37g(ナイロンバンド)
・ディスプレイサイズ:1.3インチ
・駆動時間:日常使用モード / 最大約20日間、全システムオンモード / 最大約38時間
・GPS:GPS / GLONASS / Galileo / Beidou / QZSS / 二重波
Zepp Health「Amazfit T-REX 3」、37,290円、2024年10月10日発売
「Amazfit」は、低価格ながら、高機能で、ロングバッテリーなモデルが多くラインアップされています。「T-REX 3」はアウトドア環境にも対応するタフなモデルで、機能はほぼ全部載せ。さらに、スマートウォッチに音声で呼びかけることで、生成AIの「Chat GPT オムニ」を操作できる機能が搭載されています。スポーツシーンはもちろん、普段使いでも活躍できる多様性の高い一本です。
・重量:約68.3g(バンド含む)
・ディスプレイサイズ:1.5インチ
・駆動時間:スマートウォッチモード / 最大約27日間、GPSモード / 約180時間
・GPS:GPS / GLONASS / Galileo / BDS / QZSS / NaviC / デュアルバンド
ではここからは、各スマートウォッチの実力をテストします。今回はGPSの正確性と視認性の高さを主にチェックするために3台のスマートウォッチを同時に装着して走ります。ちなみに心拍数の計測は、3台同時に使うとバラつきがでるため、確認しません。
正確な距離を測るために、400mトラックを使用してランニングを実施。同じレーンを使用して3回走るのに加え、すべてのデバイスを狭い場所での移動軌跡までも記録できる「トラックランモード」で計測します。
スマートウォッチ3台を同時着用してのランニングは初めてです
まずは、ガーミン「Forerunner 265」の結果から確認してみましょう。3回のランのいずれも走行距離410mという同一の数値を示しました。この結果は、「Forerunner 265」が、走行距離を高い精度で計測できることを示しています。一般的にGPSを利用した計測では、環境要因や衛星との通信状況によって、計測値にブレが生じる可能性がありますが、同じスマートウォッチ内ではブレなく計測できているよう。また、マップでの走行軌跡も、キレイにオーバルトラックをなぞってトレースされています。
ガーミンの専用アプリ「Garmin Connect」での計測結果。走行距離がまったく同じでした
続いて、ディスプレイの視認性をチェックします。「Forerunner 265」は有機ELディスプレイを採用しており、表示が鮮やかなので、ランニング中の各種データを確認する際に非常に役立ちます。さらに、ディスプレイのベース部分の黒が深く、それに映えるように色彩も鮮やかで、屋外での視認性も高いです。どの方向から見ても鮮やかに表示する広視野角で、画面サイズも1.3インチと大きく、チラ見でも数値を確認しやすかったです。
ディスプレイはコントラストが高く、視認性がよいです
ディスプレイのデータの配置場所をカスタマイズできるのも魅力です。たとえば、確認する頻度の多い、心拍数、ペース、距離を大きく表示することで、トレーニング中のモチベーション維持につながります。また、タッチスクリーンに対応しており、直感的な操作で各種機能にアクセスできます。
カロス「PACE Pro」は、今回実施した400mトラックでの計測において、3回連続で正確に400mを記録するという、驚異的なGPS精度を示しました。これはスゴい!この高い精度は、搭載されているデュアル周波数GPSが効いていると言えます。
公式スマホアプリ「COROS」では、走行距離、時間のほか、運動強度を数値化した「トレーニング負荷」も一目でわかるように表示されます
もちろん、どこを走ったかを記録する走行軌跡の表示も可能。トラックをなぞるようにかなり滑らかにトレースされていました
カロス「PACE Pro」は、1.3インチの大きなディスプレイを採用しており、情報が見やすく表示されています。操作面は、タッチスクリーンに加えて、物理ボタンとデジタルダイヤルも使用でき、直感的な操作が可能。走りながらの扱いやすさは抜群です。
有機ELディスプレイの視認性は良好です
「Amazfit T-REX 3」で計測した走行距離は、401m、402m、406mと数メートルのバラつきがありましたが、400mの走行距離から最大で6メートルの誤差に収まったので、十分実用的な精度です。走行軌跡は、滑らかなラインで正確にトレースされており、「T-Rex 3」に搭載されている多様なGPS衛星に対応した高性能アンテナと、高度な測位アルゴリズムが機能している証拠です。
公式スマホアプリ「Zepp」でのランニング計測結果
テストした3モデルの中で、最も大きい1.5インチの有機ELディスプレイは、小さい数値も精彩に表示。さらに、「グローブモード」では、2mm厚までの手袋を着用したままでも、タッチ操作ができるので、冬場のランニングにはありがたい機能でした。また、「T-REX 3」は、米国の軍用規格MIL-STD-810Gに準拠しているので、ディスプレイの強度も魅力です。
ディスプレイが大きい分、表示も大きく数値が確認しやすいです
GPSの精度は、環境要因や衛星との通信状況によって、計測値にブレが生じることが一般的なので、今回の計測で生じた、数メートルのズレは誤差の範囲内であり、いずれのモデルもきわめてGPS精度の高いモデルでした。なかでもカロス「PACE Pro」は、3回の計測すべてで完璧な400mを叩き出したことは、GPSの精度を重要視する人にとっては、魅力な結果と言えます。いっぽう、ディスプレイは、いずれも大きなサイズの有機ELディスプレイを搭載し、屋外での走行中にも関わらず、しっかりと表示内容を確認できました。
左から、カロス「PACE Pro」、ガーミン「Forerunner 265」、Zepp Health「T-REX 3」
今回は、GPSの精度とディスプレイの視認性に絞ってテストをしました。結果として、GPSの精度はどれもきわめて高く甲乙付けがたいのですが、今回の結果だけを踏まえ、GPS精度の順位を付けるのなら、カロス「PACE Pro」、ガーミン「Forerunner 265」、Zepp Health「T-REX 3」の順となりました。ただし、機能面にはそれぞれ違いも多いので、自分に必要な機能を見極めて選んでみてください。
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