家庭のWi-Fi整備は今や必須。新生活準備の一環としてホームルーター(置くだけ・挿すだけWi-Fi)の導入を考えてはいかがだろうか? ホームルーターに関して知っておきたい選び方を解説しつつ、各サービスの特徴を解説しよう。
設置してコンセントに挿すだけでWi-Fiが使えるホームルーター(置くだけWi-Fi・挿すだけWi-Fi)のおすすめの選び方を紹介
今やインターネットを使う機器は、スマートフォンだけにとどまらない。パソコンやタブレット、さらには大画面で動画サービスを楽しむためのスマートテレビなども、利用するにはインターネットが必要だが、そうした機器でインターネットを接続するにはWi-Fiを自宅に整備することが不可欠だ。
とりわけ進学や就職で新生活を始めた人の場合、これからWi-Fi環境を整備したい人も多いことだろう。そこで手軽にWi-Fi環境を用意できるサービスとしておすすめしたいのが、いわゆる「ホームルーター」である。
一般的にホームルーターとは、スマートフォンなどで利用しているモバイル回線を使い、Wi-Fiなどで自宅にインターネット環境を整備できる機器とサービスのことをいう。NTTドコモやKDDIなどの携帯電話会社と、その代理店が提供しており、携帯電話ショップや家電量販店などの店頭では「置くだけWi-Fi」「コンセントWi-Fi」などさまざまな呼び方がされているが、ここでは「ホームルーター」で統一して説明したい。
自宅のWi-Fi環境を整備する場合、光回線などの固定ブロードバンドサービスを契約するのが一般的だ。しかしながらホームルーターには固定ブロードバンドにないメリットもいくつかある。そのひとつが導入の手軽さである。
光回線などを引くには自宅内の工事が必要なので導入に時間がかかるし、自宅の環境によってはそもそも導入できないこともある。特に注意が必要なのが賃貸の集合住宅で、都市部であっても光回線を自由に引けなかったり、引けたとしても速度がかなり遅かったりするなどの問題が生じることが多い。
だがホームルーターは、携帯電話ショップや家電量販店などで契約をした後、「ルーター」と呼ばれる専用の機器を置き、コンセントを電源に挿すだけでWi-Fiが利用可能。モバイル回線を用いるので工事が一切不要ですぐ使い始められるのが最大のメリットだ。建物の環境にも左右されにくいので自宅にスマートフォンの電波が入っていれば、ほぼ利用可能と考えてよい。
コンセントに差し込むだけで使い始められる手軽さは大きな利点
また、工事が不要なことから、仕事などで引っ越しが多い人にも適している。光回線であれば引っ越しのたびに手続きをして工事が必要になるが、ホームルーターの場合オンラインで引っ越しの手続きをし、新居で電源を入れなおせばすぐ利用可能になる。
ただホームルーターには弱点もある。各家庭に一本ずつケーブルを引く光回線などとは異なり、スマートフォンと同じモバイル回線を共有して利用することから、通信速度はどうしても遅くなってしまう。特にアップロードの速度は光回線より低速になりがちなので、動画をひんぱんにアップロードするような人は注意が必要だろう。
また自宅周辺の電波環境、あるいは室内の電波環境によっても通信速度が左右されやすいことにも注意が必要だ。通信速度が遅いと感じた場合は、より電波がよく入る場所に置き換えるなど、設置場所にも配慮が必要なことも覚えておきたい。
見通しのよい窓際や、窓の見える部屋などなるべく電波をさえぎりにくい場所に設置するのがよいだろう。
加えて、ホームルーターのサービスは基本的に通信量無制限だが、やはりモバイル回線を使用している関係上、度を越えたデータ通信をすると制限がかかってしまうことがある点にも注意が必要だ。ただし、その条件はサービスによって異なり、「一定期間内に大量のデータ通信をした場合」など明確な基準を設けていないことが多いようだ。
それゆえ通常の動画視聴など一般的な使い方をする分には問題は生じにくいだろうが、4Kや8K動画視聴が多い場合や、データのアップロードやダウンロードを多用するなら、通信量の制限を気にする人は制約が少ない光回線サービスを選んだほうがベターだろう。
これらのメリットとデメリットを考慮してホームルーターを契約する際には、どの会社のサービスを選ぶべきかが重要なポイントとなる。先にも触れたように、ホームルーターを提供しているのはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯4社であり、代理店が提供しているのも、基本的にはその4社のいずれかのサービスをベースにしたものだ。
ではいったい、どの会社のサービスを選べばいいのかというと、選ぶポイントは大きく2つある、1つは料金だ。ホームルーターはモバイル回線を使ったサービスだが、実は光回線などと同じ固定ブロードバンドサービスとして扱われている。
そのため、契約しているスマートフォンと同じ会社のサービスを契約すると、指定の固定ブロードバンド回線をセットで契約することでスマートフォンの料金が永年で割り引かれる、割引サービスの適用対象となることが多いのだ。
この割引は、NTTドコモ、au、UQ mobile、ソフトバンク、ワイモバイルが用意している。ただし、すべての料金プランにこの割引が適用されるわけではなく、NTTドコモの「ahamo」やソフトバンクの「LINEMO」など、オンライン専用のプランやブランドは割引対象外となる。またNTTドコモであれば「irumo」の0.5GBプラン、UQ mobileであれば「コミコミプラン+」といったように、サービスによって割引対象外のプランもある点に注意したい。
上記の回線品質の問題もどこの「ホームルーター」を選ぶかが大きく影響する。都市部と異なり、郊外のモバイル回線の整備状況は、実は携帯電話会社によって意外と違いがある。とりわけ5Gで高速通信できる「サブ6」と呼ばれる高い周波数帯でのネットワーク整備は、都市部であっても住宅地では意外と進んでいないことが多い。
それだけに、ホームルーターでより高速な通信をしたいというのであれば、スマートフォンで契約している会社によらず、自宅でより高速な通信が可能な携帯電話会社のサービスを選ぶ手もある。携帯各社はエリアマップでネットワークの整備状況を示しており、自宅周辺のネットワークが4Gなのか5Gなのか、5Gであってもより高速なサブ6で整備されているのかを確認できる。
携帯各社は利用できるエリアのマップを公開しているので、これを基に自宅で高速通信が入る会社のサービスを選べば、ホームルーターをより快適に利用できるだろう(画像はUQ WiMAXのエリアマップより)
その情報を基にホームルーターを契約すれば、お得さは失われるがより快適な通信環境を得られる可能性が高い。ただ1つ注意が必要なのは、スマートフォンとホームルーターでは4Gにおいて使用している電波に違いがあること。より具体的に言えば、1GHz以下のいわゆる「プラチナバンド」はホームルーターでは利用できない、あるいは利用に制約がある場合が多いので、とりわけ地方や郊外、都市部でも入り組んだエリアなどで、つながりやすさ重視でホームルーターを選ぶ際には十分注意を払うべきだろう。
ここからは、携帯4社が提供するホームルーター製品とサービスの特徴を紹介しよう。ホームルーター選びの基準として活用してもらえれば幸いだ。
NTTドコモの最も新しいホームルーター製品は、ダークグレーのカラーが特徴的なシャープ製の「HR 02」。モバイル通信の速度は下り4.2Gbps、上り218Mbpsで、プラチナバンドの800MHz帯に接続も可能。Wi-FiもWi-Fi6に対応するなど性能は高く、WPSやQRコードで簡単にWi-Fi接続できる仕組みも整っている。
なお、NTTドコモのホームルーターは、5G(サブ6)や郊外などをカバーするプラチナバンドをフルに利用できるため、スマートフォンとエリアや速度は技術的にはほとんど同じだ。もし、手元に5G対応のドコモのスマートフォンがあるなら、エリアや速度の参考になるだろう。
利用できる料金プラン「home 5Gプラン」は月額4,950円で、通信量は無制限。「home 5Gセット割」の適用が可能で、「eximoポイ活」や「irumo」(3GB以上)とのセット契約で月額1,100円の割引が永年で受けられる。
KDDIはauブランドと、傘下企業のUQ WiMAXがホームルーターサービスを提供しているが、いずれも最新端末は「Speed Wi-Fi HOME 5G L13」。こちらもモバイル通信の性能の高さに加え、専用アプリ「ZTELink JP」を用いることで、スマートフォン上からホームルーターの電波やネットワークの状況などを確認できるのが大きな特徴だ。
ただ料金には違いがあり、よりお得に利用できるのはUQ WiMAXの「WiMAX +5G ギガ放題プラスS」で、月額4,950円とauの「ホームルータープラン 5G」(月額5,170円)より安価ながら、UQ mobileの「自宅セット割」だけでなくauの「auスマートバリュー」にも対応している。こちらもデータ通信は使い放題だが、郊外エリアや建物の奥などもカバーしやすいプラチナバンドを利用するには月額1,100円の「プラスエリアモード」を追加する必要がある点に注意したい。
ソフトバンクは2024年に最新のホームルーター「Airターミナル 6」を提供開始している。
モバイル通信の速度は、NTTドコモKDDIと比べると若干性能は落ちるのだが、Wi-Fiに関しては最新規格の「Wi-Fi 7」に対応し、モバイル通信と同じ最大2.7Gbpsの通信速度を実現するとしている。Wi-Fi 7対応のスマートフォンやノートPCと組み合わせて使いたい製品だ。
いっぽう、使用する料金プラン「Air 4G/5G共通プラン」は、月額料金は5,365円。ソフトバンクの料金プラン「ペイトク」などであれば「おうち割 光セット」で月額1,100円、ワイモバイルの「シンプル2」であれば「おうち割 光セット(A)」で、Sプランで月額1,100円、M/Lプランでは1,650円の割引を受けることが可能だ。
なお、プラチナバンドを使用しないなど、4Gのエリアについてはスマートフォンとの違いが比較的大きい点には注意したいが、高速通信が可能な5Gエリア(サブ6)については共通している。
楽天モバイルもホームルーター「Rakuten Turbo 5G」を提供中。2025年1月に発売されたばかりの新モデルは、ルーター自体の価格が41,580円と比較的安価ながら、5Gによる通信にも対応し下り最大2.1Gbpsの通信速度を実現している。WPSやQRコードによる接続などにも対応し、基本的な機能はしっかりしている。
その料金プラン「Rakuten Turbo」も月額4,840円と、各種割引を適用しなければ紹介した4社の中では最も安い料金を実現している。「Rakuten最強プラン」とのセット契約による割引は設けられていないが、元々の料金が安いので割引がなくても十分安価に利用できるだろう。
なお、対応エリアだが、4GにおいてKDDIのプラチナバンドを使ったパートナー回線が利用できない点がスマートフォンと異なっている。いっぽう、5G(サブ6)の対応エリアはスマートフォンと同じだ。