価格.comでレビューが多くしかも高評価の製品を紹介する企画。第2回は価格.comロジクールの「MX Master 3S Advanced Wireless Mouse」を取り上げます。本記事執筆時点(2025年3月26日)1万円を超える価格ながらレビュー数は63、それでいて評価も4.29と平均を上回り、マウスカテゴリーの売れ筋ランキングでも11位の製品です。その理由を探るべく実機を試したところ、とにかく使いやすさが段違いでした。今回はそれを詳しく解説していきます。
ロジクール「MX Master 3S Advanced Wireless Mouse(※以下MX Master 3S)」、1万3,990円(税込、価格.com最安価格。ページ内の情報はすべて2025年3月26日時点のもの。以下同)
「MX Master 3S」を見ると、最初に下部左側にハウジングが飛び出ていることに気がつきます。これは「MX」シリーズの伝統的なもので、握ったときに親指を支えてくれるフィンガーレストとも言える部位となります。
構造としては 左/右クリックボタン・戻る/進むボタン・アプリの切り替え・ホイールモードシフト、ミドルクリック、それにスクロールホイールとサムホイール(サイドホイール)の7ボタン+2ホイールマウス。ロジクールMX Masterシリーズ独自の形状・構造ですね。
7ボタン+2ホイールのワイヤレスマウス。フィンガーレスト部はジェスチャー操作時に使うボタンとなっています
フィンガーレストがある側面を見てみましょう。2つのサイドボタンの上に銀色のパーツがありますが、これはサムホイール。初期設定ではウィンドウ内を水平/横スクロールしたいときに使います。
特徴的な側面のサムホイール。主に水平スクロールで使います
こちらはねっとりとした重みがあるのが印象的。垂直/縦スクロールと違って、回しすぎを防ぐ仕様としているのでしょう。
手のひらを支える後部は、左側面から続いている滑り止め加工が施されています
ボディ全体は右側に傾いています。手首を曲げすぎなくてもマウスが操作できるように、人間工学ベースの形状となっていることがわかります。
右側面はシンプルな形状
内蔵バッテリーはUSB Type-Cで充電できます。満充電で公称70日間の利用が可能。1分間の充電でも、3時間は動かせます。
前方底面部に充電用のUSB Type-Cポートが備わります
興味深いのはホイールのマウント角度です。マウスの傾きには合わせず、テーブル・マウスパッド面と水平になるように取り付けられています。最初はやや違和感を抱いたものの、後述するホイールの挙動に慣れてくると、人さし指の収まりが絶妙によくて、操作がしやすいと感じる角度になっているものだと実感できます。
マウス本体は傾いているのですが、ホイールはテーブル面と水平になっています
電源スイッチ、ペアリングデバイス切り替えスイッチは底面にあります。またセンサーは200〜8000dpiまで50dpi刻みで設定可能で、ガラス面を含めたほぼすべての面でトラッキング可能とする高精度センサーを採用。やや重いけれども滑りのよいパッドと合わさり、微細な操作がしやすくなっています。
光沢感のあるテーブル、ガラステーブルでも不具合なくマウスポインターが動かせるセンサーを採用しています
「MX Master 3S」とPCやスマートフォン、タブレットとの接続には、Bluetoothまたは付属USBレシーバー「Logi Bolt USBレシーバー」を用います。なお有線接続には対応していません。
Logi Bolt USBレシーバーは、USB Type-Aコネクタとなっています。近年のロジクール製ワイヤレスキーボードも同じレシーバーで使用可能となっており、安定性にすぐれています。
付属のLogi Bolt USB。なおマウス本体側に収納スペースはありません
さて、実際に長大なレポートを書いたり読んだり、Excleのシートをチェックしたりする作業を行ってみたところ、「MX Master 3S」は世の中にある数多のポインティングデバイスの中で最高レベルの操作性を実現していると感じました。特に以下がポイントです。
・スクロールを容易にできる“ホイール”
・”サムホイール”による水平スクロールと「Logi Options+」による”カスタマイズ性”
・クリック音が気にならない”静音スイッチ”
類まれな操作性を支えているのが、上部にあるホイールです。金属製のパーツが使われており、勢いよく回すとフライホイールのように慣性モーメントが付き、自然に止まるまでずっと回り続けてくれるのです。
このホイールは「MagSpeedアダプティブスクロールホイール」と名付けられています。自動、あるいはトップボタンを押すことで、1行ずつスクロールするときに便利な「ラチェット」モードと、ストッパーがなく慣性のままに回転し続けてくれる「フリースピン」モードの切り替えが可能です。
トップボタンを押すことでも、スクロールホイールのモードを切り替えられます
フリースピンモードにして、ホイールをはじくと3〜4秒は回り続けてくれます。ロジクールは同機構によって、1秒間に1000行のスクロールが可能だとアピールしていますが、あながち間違っていないと感じるくらい、長文のデータを確認するときの助けとなりました。
1行ずつのスクロールも、一気にまとめてスクロールする際にも効果的なホイールボタン
サムホイールはホイールボタンのようなラチェット感/フリー感はありません。前述したように動きは重め。でも操作はしやすいですね。
専用カスタマイズアプリの「Logi Options+」を使うことで、水平スクロール以外の機能を割り当てられます。横幅が広いデータを確認するのでなければ、またはWebブラウザーのように水平スクロール機能を使うケースが限られているアプリに関しては、タブ間の移動や、キーボードショートカットの設定を行ったほうが操作しやすくなりますね。
アプリごとにサムホイールのアクションを設定すると、操作性が向上します
仕事で長時間操作し続けてもストレスを感じにくい「MX Master 3S」。その理由のひとつに、クリックの静音化が効いているとも感じました。前モデルの「MX Master 3」と比較して、静かですし、軽く押して操作できます。
クリックボタンは静音スイッチを採用しています
マウスポインターの動きもきわめて高精度です。また、場所を選ばずに操作しやすいセンサー性能にも助けられます。「MX Master 3S」に慣れると、ほかの外部マウス、ノートPCのタッチパッドを使ったときに生産性が下がってしまうかも、といった不安すら感じてきます。
「MX Master 3S」は、「Photoshop」などのクリエイティブアプリでの利用にも向いています。特にジェスチャー操作との相性がよいですね。筆者の場合は移動ツール、切り抜きツール、自動選択ツール、カンバスサイズと、書き出し:Web用に保存のショートカットを割り当てていますが、「MX Master 3S」のセンサー精度が高いため楽に、目的の機能を呼び出せます。
ジェスチャーボタンを押し続けながらマウスを動かすと、ジェスチャー操作が可能になります
またサムホイールの存在も大きいですね。拡大したときの上下左右スクロールがしやすく細かなレタッチも素早く行えますし、サイドボタン+ホイールボタンに水平スクロールを割り当て、サムホイールにドキュメントの切り替えなどの機能を割り当てることで、同時に何枚もの写真を編集する際の助けともなってくれます。
「MX Master 3S」の人気の秘密。それはきわめて高い操作性能にあるということがわかりました。大きめのボディのため、手が小さい人には扱いにくいと感じるかもしれませんが、筆者にとっては1つひとつの操作がストレスを感じにくく、13,000円以上のお金を払う価値があると感じています。
高価ですが、生産性が高まることを考えると、これはよい買い物となるでしょう
ところで価格.comをチェックすると、前モデル、実質的には2つ前のモデルとなる「MX MASTER 2S」も併売されていることがわかります。ポインティングデバイスとしての方向性は、操作時の高級感も含めて同じベクトルであり、8,000円台で購入できることから、コスパで選ぶならこっちかな……と考えたくなりますが、筆者としては「MX Master 3S」を推します。
なぜなら、センサー精度の向上や、静音スイッチの採用、ホイールの電磁化など、積み重ねてきた改善ポイントがいずれも快適性に直結しているためです。数年間、仕事道具として日々使い続けることを考えると、高価であっても最新モデルの完成度の高さが買い、ですね。
ただし「MX Master 3S」は快適すぎるので、オフィスでも自宅でも、カフェでも使いたくなるのが悩みどころ。そんなときにセカンドマウスとして「MX MASTER 2S」を選ぶというのはアリですね。