Windows 10からWindows 11に移行する際に必須なのが、必要なデータの移行です。また、そのためには必要なデータのバックアップを取る必要があります。そこで、今回はどんなデータをバックアップすればよいのか? バックアップを取るにはどんな方法があるのかを解説します。
ちなみに、自分のパソコンはWindows 11の動作要件をクリアしていて、そのままアップグレードできるからバックアップは不要! なんて思っている人もいるでしょう。しかし、アップグレード時にエラーが発生してデータがまるごと消える可能性もゼロではありません。バックアップはパソコンを新規購入する人だけでなく、アップグレードする人にとっても必須の作業なのです。
※本記事は2025年6月12日時点での情報を元に作成しています。システムアップデートなどによって機能が追加されている場合があります。
Windows 11への移行時に大事なデータを移し忘れないためにも、移行前に必要なデータと不要なデータをしっかり分けておくことが大事です
Windows 10からWindows 11環境に移行するに当たり、以下にバックアップが必要なファイルやデータをピックアップしておくので、実際にバックアップを取る際の参考にしてください。
・ユーザーが保存した個人用ファイル
文書、写真、動画など
・メール
ローカルに保存してあるメールデータ
・ブラウザー設定などのデータ
・各種ソフトの設定や有料ソフトの購入情報
・MS-IMEのユーザー辞書
また、バックアップデータがなるべくコンパクトにまとまるように、これを機に不要なデータは削除しておくのがおすすめです。
まず真っ先に思いつくのが、ユーザーが保存した個人ファイル。これは文書や表などのドキュメントファイル以外にも、写真や動画、音楽など、多くの種類があります。
・ユーザーフォルダー内のデータ
ドキュメント(文書)
ピクチャ(写真)
ビデオ(動画)
これらの個人ファイルは、標準設定では「ユーザーフォルダー(ユーザー名のフォルダー)」内にある「ドキュメント」や「ピクチャ」、「ビデオ」などの各フォルダーに保存するようになっています。まずはユーザーフォルダー内のデータを確認しましょう。
個人フォルダー内はこのようにわかりやすい構造になっています。ここから「ドキュメント」や「ピクチャ」「ビデオ」「ミュージック」など必要なファイルをバックアップしましょう
なお、別の場所や別ドライブにファイルを保存している場合は、そちらも忘れずにバックアップしましょう。
これらは外付けストレージなどへのドラッグ&ドロップでバックアップが可能です。
ユーザーフォルダーがデスクトップにない場合は、デスクトップを右クリックして「個人用設定」を選択。設定が開いたら左のメニューで「テーマ」を選び、関連設定の下にある「デスクトップアイコンの設定」をクリックします。ここで「ユーザーのファイル」にチェックを入れれば、ユーザーフォルダーをデスクトップに表示できます
続いてメールデータですが、これは利用しているメールの種類によってバックアップの要・不要が変わります。なお、メールの種類には大きく、「POPメール」と「IMAPメール」の2種類があります。
「POPメール」はメールデータ自体を自分のパソコンにダウンロードする方式で、受信したメールはサーバー上に残りません。この場合は、受信済みのメールデータをバックアップする必要があります。以前、プロバイダーメールなどで主流だった方式がこれに該当します。
いっぽう、「IMAPメール」は受信メールが常にサーバー上に保存されており、パソコンではサーバー内のメールを表示して使う方式です。受信メールがサーバーに残っているため、別のデバイスでも同じ状態で利用できます。「Gmail」や「Outlook.com」など、「Webメール」と呼ばれるメールがこれに該当します。IMAPの場合はメールデータがサーバー上にあるので、バックアップは不要です。
近年ではプロバイダーメールもIMAP方式へ移行していますが、IMAP方式に切り替える以前の受信メールはパソコン内にしか保存されていないため、バックアップが必要です。この際、連絡先やスケジュールもあわせてバックアップするのを忘れずに。
メール関係でバックアップしたいデータ
・送受信したPOPメールデータ
・メールソフトのアドレス帳
・メールアカウントやサーバーの情報
・メールサービスに付蔵するスケジュールなど
利用中のメールサービスがPOP方式かIMAP方式かわからない人は、メーラーのアカウント設定を開いて確認しておくとよいでしょう。確認した結果、POPメールだった場合はさらに設定内を確認し、受信メールをサーバーに残すオプション設定をオンにしているかを確認します。
POPメールでもサーバーにメールを残す設定になっていれば、受信したメールがサーバーから消えないため、メールデータのバックアップは不要です。サーバーに残さない設定になっている場合は、受信したメールデータはパソコン内にしかないため、バックアップしておく必要があります。
POPかIMAPかの確認はOutlookから簡単にできます。確認方法は以下の手順となります。
1.Outlookの設定ボタンをクリック
標準メーラーのOutlookの場合、ウィンドウ右上の歯車アイコンをクリックして設定画面を表示します
2.アカウント情報から確認
アカウント設定の画面が開くので、「メールアカウント」の下にあるアカウント情報を確認します。アカウント名(もしくはメールアドレス)の下に「POP」か「IMAP」、もしくはWebメールサービス名が表示されており、ここでメールの種類を確認できます。なお、別のメーラーを使っている場合も、同様にアカウント設定でメールの種類を確認できます
利用中のメールがPOPメールの場合、メールのバックアップが必要ですが、ややこしいことに「Outlook」には、以前の標準メーラーだった「メール」から切り替わった無料の「新しいOutlook」と、Officeに同梱されている「クラシック Outlook」の2種類があります。「クラシック Outlook」の場合は、「ファイル」メニューの「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」 から「Outlook データ ファイル(.pst)形式」でメールのバックアップが可能ですが、「新しいOutlook」には従来あった「エクスポート」のようなバックアップ機能がありません。なお、「Microsoft 365」に加入すればOffice版の「クラシック Outlook」に切り替えてバックアップを実行できます。ただし、こちらは利用料金がかかります。
このため、パソコン内にダウンロードしてあるメールをバックアップするには、OutlookにGmailなどの別のWebメールを追加し、メーラー上で複数のメールをまとめてドラッグ&ドロップで移動する方法が楽です。
Outlook以外のメーラーを利用している場合は、それぞれのソフトでバックアップ方法が異なるので確認してみてください。
1.Outlookのアカウント設定画面から「アカウントの追加」
新しいOutlookのアカウント設定を開き、「アカウントの追加」ボタンをクリック。プロバイダーメールとは別にGmailなどのWebメールのアカウントを追加します
2.必要なメールをドラッグ&ドロップしてバックアップ
アカウントが無事追加されるとOutlookの左列にプロバイダーメールと、追加したWebメール(今回はGmail)のメールボックスが縦に並んで表示されます。まず、プロバイダーメール側のメールボックスを開き、バックアップしたいメールをまとめて選択します。続いて左列をWebメールのメールボックスが見える位置までスクロールし、選択したメールをWebメール側のメールボックスにドラッグ&ドロップします。これでWebメール内にバックアップが完了です
ブラウザーのブックマークや、各種サービスのログイン情報が含まれた「Cookie(クッキー)」などもバックアップが必要です。ただし、近年のブラウザーは各種Webサービスのログイン情報などを保存しておき、自動入力できる機能が備わっています。この機能を使用している場合は、忘れているログイン情報がないか確認しておきましょう。
・設定の同期機能がないブラウザーのブックマーク
・ブラウザーに保存してあるWebサービスのログイン情報
標準ブラウザーのMicrosoft Edgeをはじめ、近年のソフトには同アカウント内での同期機能が用意されているものがあります。ソフトの同期機能の有無と、同期設定がオンになっているかを確認しましょう。オンになっている場合は、ソフトの設定やデータなど同期される項目はバックアップが不要です
普段使っているソフトのなかには、設定のエクスポート機能が用意されているものがあります。長年使い続けた快適環境を、いちから構築し直すのはなかなか大変です。利用中のソフトに該当機能がないかを確認し、もしあるようなら設定ファイルを書き出しておくとよいでしょう。
有料ソフトを利用している場合は、購入時にシリアルナンバーなどを受け取っていることがあります。メールで知らされている場合は、メールデータとしてバックアップできますが、自分で購入情報をメモして保存してある場合などは、該当のメモをバックアップしてきましょう。
ソフトによっては本体と同じフォルダー内に、データやライブラリ、プロジェクトファイルを保存する仕様のものがあります。たとえば、「Apple Music」のライブラリや、年賀状ソフトの作成データなどが考えられます。この場合は各ソフトの設定などでデータやライブラリファイルの保存先を確認し、バックアップしておきましょう。
最後に忘れがちなのが、日本語入力システム「Microsoft IME」のユーザー辞書です。普段から単語登録をしている人は忘れずにバックアップしておきましょう。また、パソコンゲームをプレイするという人は、古いセーブデータなども忘れずにバックアップしましょう。
・普段使っているソフトの設定や作成データ
・有料ソフトのシリアルナンバーや購入情報
・ソフトのライブラリファイルやプロジェクトファイル
・年賀状ソフトの作成データや宛名情報
・ゲームのセーブデータ
バックアップで忘れがちなのが、Windows標準の日本語入力システムである「MS-IME」のユーザー辞書。普段からまめに単語登録しているという人は、忘れないように注意しましょう。
1.Windowsのタスクバーをクリック
タスクバーの右側に表示されている「A」、または「あ」を右クリックして「単語の追加」を選択します
2.「単語の登録画面」から「ユーザー辞書ツール」を選択
「単語の登録」画面が開くので、左下にある「ユーザー辞書ツール」ボタンをクリックします
3.ユーザー辞書の「ツール」メニューから「一覧の出力」を選ぶ
ユーザー辞書が開き、登録済み単語が一覧表示されます。「ツール」メニューから「一覧の出力」を選択すれば、登録単語をまとめてテキスト形式でバックアップできます
バックアップの作業と並行して考慮しておきたいのが、バックアップデータの移行方法です。バックアップ作業は念のためで、同じパソコンのままWindows 11にアップグレードする場合は不要ですが、新しいパソコンに買い換える場合や、クリーンインストールし直す場合はデータを移動する手段が必要となります。
バックアップデータの移行方法
方法1:クラウドサービス
方法2:SBメモリーや外付けストレージでデータを移動
方法3:Wi-Fi内でネットワーク接続してデータを移動
バックアップデータがまとまっても移動する手段がなければ、移行作業はスムーズに進みません。データを移す方法はいくつかありますが、それぞれにメリット・デメリットがあるのでここで解説しておきましょう。
バックアップデータを移す最も手軽な方法は、クラウドサービスの活用です。特にWindowsには「OneDrive」というクラウドサービスが組み込まれています。OneDriveはMicrosoftが提供するクラウドサービスで、Microsoftアカウントがあれば無料で5GBのストレージが利用できます。バックアップもパソコン内のOneDriveフォルダーにデータを入れるだけでクラウド上にデータを保存できます。これを利用する方法がいちばん手軽です。
ただし、OneDriveの場合、無料で利用できる容量は5GBまで。バックアップデータが5GB以上ある場合は、移行のときだけ有料プランを使って容量を増やす必要があります。なお、利用料金は200GBで月額260円、1TBで月額1,290円となります。さらに大容量のプランもありますが、1TB以上使う場合は大容量の外付けストレージを買うことも検討しましょう。
OneDriveはWindowsの標準機能として組み込まれており、通常のフォルダーと同じ感覚で、エクスプローラーでファイルを出し入れできるので手軽です
なお、OneDriveを利用するには「Microsoftアカウント」が必要になりますが、いずれにしてもWindows 11ではMicrosoftアカウントの利用が必須となります。現在、ローカルアカウントを利用しているという人は、以下の手順で「Microsoftアカウント」を作成しましょう。
1.Windowsの「設定」から「アカウント」を開く
Windows 10の「設定」を開き、「アカウント」画面で「Microsoftアカウントでのサインインに切り替える」をクリックします
2.サインイン画面で「サインイン」あるいは「作成」を選択
Microsoftアカウントのサインイン画面が表示されるので、すでに持っている場合はアカウント(メールアドレス)を入力して「次へ」をクリック。持っていない場合は、入力欄下の「作成」部分をクリックして新規作成します
3.タスクバーからOneDriveにログイン
Microsoftアカウントへの切り替えが完了したら、タスクバーの右にあるOneDriveのアイコン(雲のマーク)をクリックし、OneDriveにもMicrosoftアカウントでサインインします
4.エクスプローラーから「OneDrive」フォルダーを確認
OneDriveにサインインして初期設定を完了すると、エクスプローラーに「OneDrive – Personal」というフォルダーが表示されます。ここにファイルやフォルダーを入れると、自動でクラウド上のストレージスペースと同期される仕組みです
2つめの方法は、USBメモリーや外付けストレージを使う方法です。現在では大容量製品でも安くなっており、移行後もデータの持ち歩きやバックアップの保存先として利用できるので、この方法が最も一般的かもしれません。
機器をパソコンにつないでファイルをドラッグ&ドロップするだけなので、手間はクラウドの利用と変わりません。ただし、以前と比べて安くなったとはいえ、かなり大容量の製品や高速転送できる製品だと、それなりの価格になります。また、バックアップデータが確実に入る容量が必要なため、容量の見極めが重要です。
とはいえ、活用の幅は広いので、USBメモリーや外付けストレージをまったく持っていないなら、ひとつ持っておいてもよいでしょう。今買うなら、転送速度が高速で物理的な故障も少ないポータブルSSDがおすすめです。
パソコンに接続すればエクスプローラーに表示されるので、バックアップしたいデータをコピーするだけ。容量が大きいと時間がかかりますが、ドラッグ&ドロップで済むため手軽ではあります
3つめの方法はWi-Fiを利用し、家庭内で2台のパソコンをネットワーク接続する方法です。すでに自宅でWi-Fiを使っているという人なら、すぐに利用できる方法ですが、当然ながら新旧2台のパソコンが揃っている必要があります。
また、各パソコンでネットワーク設定やオルダーの共有が必要となりますが、近年のWindowsではそれもかなり簡単になってはいます。とはいえ、なかなかつながらないなどのエラーが発生する可能性もあるため、対処するためにある程度の知識は必要です。
一度設定してしまえば、エクスプローラーの「ネットワーク」内に同一ネットワーク内のパソコンが表示されるので、後はドラッグ&ドロップでデータをコピーするだけです。
ちなみに、Wi-Fiがなくても、それぞれのパソコンにLANポートがあればLANケーブルで直接つないでデータを移動するという手もあります。この場合、LANケーブルは一般的に利用されている「ストレートケーブル」ではなく、「クロスケーブル」が必要となります。
一度ネットワーク設定さえしてしまえば、以降は同じWi-Fi内のパソコンが自動検出されます。ただし、各パソコンのネットワーク設定やWi-Fiルーターの設定、共有フォルダーの作成や接続ユーザーの許可設定など、なにかと設定項目が多く、トラブル時には解決のための一定の知識が必要です。このため、初心者にはあまりおすすめできません
今回は、Windows 10でバックアップすべきデータの種類と、データを移動するための手段を解説しました。長年使っていたパソコンだと、もうどこに何があるのかわからない……なんてことも多々あります。
これを機に一度パソコン内のデータを、スッキリと整理しておくのがおすすめです。なお、せっかく整理しても、いろいろな場所にデータが散らばっているままでは、移動時にコピーし忘れが発生する恐れがあります。バックアップデータをまとめる際は、「なるべくコンパクトに」と「なるべく1か所に」の2点を意識するとよいでしょう。
ちなみに、現在のパソコンでアップグレードする場合と新たなパソコンを購入する場合は、移行後も元のデータは残ったままです。なので、バックアップに漏れがあってもさほど気にする必要はありません。ですが、現在のパソコンを一度初期化して、キレイな状態でWindows 11を入れ直す「クリーンインストール」を行う場合は、バックアップし忘れが取り戻せなくなるので注意しましょう。
次回は、Windows 10に標準で用意されているバックアップ機能の使い方を紹介します。