スマートフォンやモバイル通信、そしてお金にまつわる話題を解説する「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、ワイモバイルの新料金を解説しつつ、大手4社でそろった低容量プランを中心にした比較&解説をお届けする。
※本記事中の価格はすべて税込で統一している。
ワイモバイルが新料金「シンプル3」を開始したことで、携帯大手4社の低・中容量プランが出そろった
携帯各社の料金値上げが相次ぐ2025年。すでにNTTドコモ、KDDI、楽天モバイルは料金の値上げ、あるいは実質的に値上げを図る新料金プランの導入を打ち出してきたが、唯一ソフトバンクだけは動きを見せていなかった。
だが2025年9月25日より、低価格のサブブランド「ワイモバイル」で新料金プラン「シンプル3」を提供開始。メインブランド「ソフトバンク」の新料金プランはまだ打ち出されていないが、少なくとも携帯4社の低価格帯の料金プランはおおむね出揃ったと言える。
そこで改めて各社の低価格帯のプランを振り返ると、その内容には共通した傾向がありながらも、いくつか違いが出てきているようだ。今回は、サブブランドを中心とした携帯4社の最新の低容量・低価格プランを比較しよう。各社の傾向と選び方についてまず概要を表にまとめた。
まずは、ワイモバイルの新プランである「シンプル3」の内容を確認しておこう。これは従来の「シンプル2」と同様、通信容量に応じて「S」「M」「L」の3つから構成されているプランで、通信量と月額料金は、「S」プランが5GBで3,058円、「M」プランが30GBで4,158円、「L」プランが35GBで5,258円。従来の「シンプル2」と比べた場合、「S」プランで693円、「M」と「L」の両プランは143円の値上げとなる。
ワイモバイルの新料金プラン「シンプル3」。「シンプル2」と比べ基本料金は値上げされているが、割引適用後の料金は変わらない
ただその分強化がなされたものがいくつかある。ひとつが付加価値だ。「シンプル3」では新たに海外でデータ通信が2GB利用できる仕組みや、スマートフォン決済「PayPay」の利用回数に応じて通信量を増量できる「PayPay使ってギガ増量キャンペーン」などを追加。加えて値上がり幅が最も大きい「S」プランは通信量が5GBと、「シンプル2」から1GB分増量されている。
値上げがなされたぶん、海外でのデータ通信が2GB利用できるようになるなど付加価値の強化もなされている
もう1つ強化されているのが、自社グループのサービス利用による割引だ。ワイモバイルの料金プランは従来、「SoftBank 光」などを契約することで適用される「おうち割 光セット(A)」と、クレジットカードの「PayPayカード」で料金を支払うと適用される「PayPayカード割」の、2つの割引を組み合わせることで最も大きな割引が受けられる仕組みで、その点は「シンプル3」も変わっていない。
だが「シンプル3」では、これら2つの割引が増額されている。「おうち割 光セット(A)」は、従来「S」プランと、それ以外の2プランで割引額に違いがあったのだが、「シンプル3」では全プランともに月額1,500円に統一され、「S」プランの割引幅が大きくなった。また「PayPayカード割」も割引額が月額330円に増え、すべて適用したときの料金は「シンプル2」と変わらない額となる。
さらに「PayPayカード割」は、年会費11,000円の「PayPayカード ゴールド」で支払うことにより、割引額が550円に増額され、Sプランであれば月額858円で利用できる計算となる。年会費がかかるゴールドカードと、節約志向のワイモバイルとは相性に疑問を感じる。だが、それでも2人以上で契約している場合は、ゴールドカードによる支払いのほうがお得になるとしている。
「シンプル3」の割引の仕組み。「おうち割 光セット(A)」「PayPayカード」の割引額が強化されたのに加え、「PayPayカード ゴールド」での支払いでさらに安く利用できる
一連の内容を見るに、「シンプル3」は低価格のプランを中心にベースの料金を値上げするいっぽうで、自社グループのサービス利用でお得さを実現することに、より重きを置いたことがわかる。ワイモバイルは定着率が低いとされる小容量の「S」プランをあえて廃止しなかったこともあり、ゴールドカードでの割引を強化するなど、系列サービスの利用を増やし解約を防ぎたかったように見える。
ワイモバイルの「シンプル3」に傾向が近いのが、NTTドコモの新しい低価格プラン「ドコモ mini」である。「ドコモ mini」は通信量に応じて4GBと10GBのプランが用意され、月額料金はそれぞれ2,750円、3,850円となるが、「Amazonプライム」が最大3か月間、追加料金なしで利用できるなどの付加価値が用意されているのに加え、グループのサービス利用による割引も強化されている。
具体的には、「ドコモ光セット割/home 5Gセット割」(月額1,210円引き)「dカードお支払割」(月額220円引き)に加え、新たに「ドコモでんき」の利用で適用される「ドコモでんきセット割」(月額110円)を用意。シンプル3と同様、dカードお支払割には「dカードGOLD」以上の契約で割引額が550円に増額される仕組みも提供されている。
NTTドコモのWebサイトより。「ドコモ mini」を最も安く利用するには、「ドコモ光セット割/home 5Gセット割」「dカードお支払割」「ドコモでんきセット割」と、3つの割引を適用する必要がある
いっぽうで、KDDIのサブブランド「UQ mobile」の新料金プランは2社とやや傾向が異なる。新プランの中で競合に直接対抗するプランとなるのは「トクトクプラン2」で、通信量30GBで月額4,048円なのだが、通信量を5GB以下に抑えると1,100円の割引を受けられる。ワイモバイルで言えば「S」から「M」プランまでの領域をまとめてカバーするプランと言えるだろう。
こちらも指定の固定ブロードバンドサービスや電力サービスの契約で受けられる「自宅セット割」(月額1,100円引き)あるいは、「家族セット割」(月額550円引き)のいずれかと、「au PAY カードお支払い割」(月額220円引き)の2つが使用でき、「自宅セット割り」適用で月額2,728円、通信量5GB以下に抑えれば1,628円で利用できる仕組みだ。しかし、ゴールドカードで割引が増額される仕組みなどはない。また、付加価値サービスも、対象サービスの契約でポイント還元率がアップする「サブスクぷらすポイント」などに限られている。
KDDIのプレスリリースより。「UQ mobile」の「トクトクプラン2」は段階制の採用で小〜中容量をカバーし、2つの割引で安く利用できる仕組みだ
今回の主題である低容量プランとはずれるが、囲い込み意識の薄さは中容量プランである「コミコミプランバリュー」にも現れている。こちらは通信量35GBと1回10分以内の国内通話かけ放題がセットで、月額3,828円。付加価値として、KDDIが経営参画するコンビニエンスストア「ローソン」などでお得なクーポンなどが利用できる「Pontaパス」(月額548円)がセットされるなど付加価値は強化されたが、前プラン「コミコミプラン+」と同様、割引は存在しない。
それには「コミコミプラン+」のさらに前身に当たる「コミコミプラン」が、NTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo」に対抗するべく設けられたプランであったことが影響している。「トクトクプラン2」を含めても競合より系列サービスの利用に対するこだわりが弱い印象だ。
同じくKDDIのプレスリリースより。トクトクプラン2の上位プランとなる「コミコミプランバリュー」だが、「Pontaパス」が追加されたいっぽうで、従来の「コミコミプラン」と同様、割引は用意されておらず「ahamo」対抗の位置付けは変わっていない
これは、KDDIが、新料金プランだけでなく既存プランの値上げも図ったことも影響していそうだ。UQ mobileも2025年11月1日より既存プランの料金を値上げする予定している。NTTドコモやソフトバンクとは違い、安くてもユーザーへの負担がかかる複雑な囲い込みよりも、値上げであっても、わかりやすさを重視したと言える。そのため、系列サービス利用による割引が弱い要因となっているのではないだろうか。
では楽天モバイルの料金はどうか。2025年10月より「U-NEXT」をセットにした、上位プランというべき「Rakuten最強U-NEXT」が提供されることから、低価格帯をカバーするプランは「Rakuten最強プラン」になる。
「Rakuten最強プラン」は新しいプランではないのが、通信量に応じて料金が変化する段階制を採用しており、3GBまでなら月額1,078円、20GBまでなら月額2,178円、以降は無制限で月額3,278円。割引なしでも競合サービスより安いが、「家族最強プログラム」などの割引適用によって、さらに月額110円引きとなる。
楽天モバイルのWebサイトより。「Rakuten最強プラン」は割引なしでも3GBまでなら月額1,078円、20GBを超えても月額3,278円で利用でき、お得さなら依然高い優位性を持つ
加えて「楽天市場」で買い物をする際にポイントがアップするなど、楽天グループのサービスと連携した施策も多く用意されている。競合が値上げに動いているだけに、大容量通信を安く利用したいなら内容が大きく変わっていない「Rakuten最強プラン」が有利であることは間違いない。
ただそれだけに、楽天モバイルは契約数の増加によって通信品質の低下を指摘する声が目立ち始めているのが気がかりだ。また、黒字化に近づきつつあるとはいえ、インフラ投資を大幅に抑制していることや、およそ1年後となる2026年9月末にKDDIとのローミング契約が終了する予定であり、それ以降のインフラ整備計画が見えていないことなど、依然不安も多くある。全国どこでも使える通信品質や、地方でもショップで手厚いサポートが受けられる安心感などを求めるなら、ほかの3社のサービスに依然優位性があることは変わらない。
各社の一連の内容を考慮するに、携帯4社の低価格プランを選ぶに当たっては、まず楽天モバイルのサービスで満足できるのか、そうでないのかを考えるべきだろう。そしてNTTドコモ、UQ mobile、ワイモバイルの3社は程度の差はあっても、固定ブロードバンドや電力、クレジットカードなどを、契約する会社の系列サービスに乗り換え・集約できるかが、これまで以上に重要になったと言える。
それゆえ逆に、すでに「PayPayカードを持っている」「auひかりを引いている」など、特定の携帯電話会社系列のサービスを利用しているのであれば、携帯電話サービスをそちらに合わせて選ぶのも手だ。物価高によって市場が変化し、安く利用するには携帯電話料金だけを見直しても不十分になったことを、消費者の側も認識しておくべきだろう。