スマホとおカネの気になるハナシ

“大幅値上げナシ”の裏に潜む「Pixel 10」シリーズの注意点とは?

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スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説する「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、2025年8月21日に発表された、グーグルの最新スマートフォン「Pixel 10」シリーズを取り上げる。大幅な値上げは行われなかったが、モデル構成を詳しくチェックすると狙いや購入のポイントが明確になる。

※本記事中の価格はすべて税込で統一している。

グーグルは2025年8月21日に新デバイスを発表。スマートフォンの新機種「Pixel 10」シリーズ4機種も含まれている

グーグルは2025年8月21日に新デバイスを発表。スマートフォンの新機種「Pixel 10」シリーズ4機種も含まれている

「Pixel 10」シリーズは4機種構成。前シリーズから外観に大きな違いはない

最近の「Pixel」シリーズは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に加え、2025年7月からは新たに楽天モバイルが「Pixel 9a」の取り扱いを開始している。近年の相次ぐ値上げで、魅力だったコストパフォーマンスの陰りは否定できないが、販路を広げて対抗しているようだ。それだけに、「Pixel」の新モデル「Pixel 10」シリーズにおいて、内容やラインアップ、そして価格がどう変化したのかは大きな関心を呼ぶところだろう。

発表内容から確認すると、ラインアップは前モデルの「Pixel 9」シリーズと同じ4機種構成となった。具体的にはスタンダードモデルの「Pixel 10」と、「Pixel 10」と同じサイズ感で性能を向上させた上位モデルの「Pixel 10 Pro」、その大画面モデルとなる「Pixel 10 Pro XL」、そして横折りタイプの折り畳みモデル「Pixel 10 Pro Fold」だ。カラーなど細かな部分に変化はあるものの、グーグルの検索バーを意識した楕円形のカメラバーを採用するなど、外観は「Pixel 9」シリーズと大きな違いがない様子だ。

強化されたワイヤレス充電と望遠カメラ

変化しているのが機能・性能面で、なかでも大きく変わったのが背面のワイヤレス充電だ。従来の「Pixel」シリーズも「Qi(チー)」規格によるワイヤレス充電に対応していたが、「Pixel 10」シリーズでは新たに、「Qi2(チー・ツー)」規格に対応した新しいワイヤレス充電「Pixelsnap」を搭載している。

「Qi2」は、最大15Wのワイヤレス充電ができるのに加え、アップルの「iPhone」で採用されている「MagSafe」と同様、充電器をマグネットで装着できるようになったことが、従来の「Qi」との大きな違い。「Qi2」に対応した「Pixelsnap」では充電器をマグネットで装着でき、対応する充電用アクセサリもサードパーティーなどから販売されるようだ。

「Pixel 10」シリーズは「Qi2」規格に対応したワイヤレス充電の「Pixelsnap」を搭載。iPhoneの「MagSafe」のように、マグネットで対応する充電器を貼り付けられるようになった

「Pixel 10」シリーズは「Qi2」規格に対応したワイヤレス充電の「Pixelsnap」を搭載。iPhoneの「MagSafe」のように、マグネットで対応する充電器を貼り付けられるようになった

そしてもうひとつ、大きく変化したのが望遠カメラだ。特に「Pixel 10」は、従来のスタンダードモデルには備わっていなかった望遠カメラを新たに搭載。全モデルが広角・超広角・望遠の3眼構成となった。

スタンダードモデルの「Pixel 10」は、カメラが2眼から3眼構成に変更。光学5倍相当の望遠カメラが搭載され、最大で20倍のズームが可能だ

スタンダードモデルの「Pixel 10」は、カメラが2眼から3眼構成に変更。光学5倍相当の望遠カメラが搭載され、最大で20倍のズームが可能だ

とはいえ、機種によってその性能には違いがある。「Pixel 10」の望遠カメラは光学5倍相当で画素数が1080万画素、最大20倍のデジタルズームが可能であるのに対し、「Pixel 10 Pro」と「Pixel 10 Pro XL」は光学5倍相当で画素数は4800万画素、最大で100倍のデジタルズームが可能となっている。

発売直後から日本語対応のAI機能を搭載

「Pixel 10」シリーズはチップセットも強化されている。4モデル共通でグーグル独自開発の新しいチップセット「Tensor G5」を搭載。「Tensor G5」は、とりわけグーグルが力を入れているAI関連処理性能が強化されていることから、4機種はともにAIを活用した機能の充実が図られている。

「Pixel 10」シリーズはいずれもチップセットに最新の「Tensor G5」を搭載。スマートフォン上でこなすAI関連の処理性能を向上させている

「Pixel 10」シリーズはいずれもチップセットに最新の「Tensor G5」を搭載。スマートフォン上でこなすAI関連の処理性能を向上させている

従来の「Pixel」シリーズでは、発売当初から利用できるAI関連の新機能はカメラ関連に限定されていた。言語の違いが影響して日本語ではそれ以外のAI関連の新機能がかなり遅れて提供されることが多かった。特に「Pixel 9」シリーズはその傾向が強く、当時の新機能「Pixelスクリーンショット」「Pixelスタジオ」などが日本語で利用できるようになったのは2025年3月のこと。「通話メモ」に至っては、いまだに米国英語以外での提供がなされていない。

しかし、「Pixel 10」シリーズでは発売当初から、カメラ関連以外でもAI関連の新機能が日本語でも利用可能だ。具体的には、異なる言語同士で音声通話をする際、AIで双方の音声を自動的に通訳してくれる「マイボイス通訳」や、AIが先回りしてユーザーが必要とする情報や機能を提示する「マジックサジェスト」などがそれに当たる。

カメラ以外のAI関連機能充実も図られており、外国人との通話を通訳してくれる「マイボイス通訳」ではAIの活用で通訳するだけでなく、その内容を話した人の声で相手に伝えてくれる

カメラ以外のAI関連機能充実も図られており、外国人との通話を通訳してくれる「マイボイス通訳」ではAIの活用で通訳するだけでなく、その内容を話した人の声で相手に伝えてくれる

加えて、新たに自身で用意した情報や資料をまとめるのに役立つ「NotebookLM」が新たにプリインストールされており、それにともなって文字起こしができる「レコーダー」との連携も可能となっている。

売れ線の最安モデル「Pixel 10」(128GB)は価格据え置き

「Pixel 10」シリーズは、よりいっそうAIを活用しやすいスマートフォンに進化しているが、多くの人が気にするのはやはり価格だ。2025年は「Pixel 9a」が大幅に値上がりしてしまっただけに、価格に注目する人も多いだろう。しかし、「Pixel 10」シリーズの価格を確認すると、実は「Pixel 9」シリーズとあまり大きく変わっていないようだ。

特に、「Pixel 10」は、ストレージ128GBのモデルで128,900円からと、前モデル「Pixel 9」から価格が据え置きとなっている。ようやく「Pixel」シリーズの価格が“上げ止まり”したことは朗報だろう。

ただ、上位となる「Pro」モデルの3機種に関しては、そうはならなかった。実際、「Pixel 10 Pro Fold」は256GBモデルで価格が267,500円と、257,500円だった前モデル「Pixel 9 Pro Fold」と比べ1万円値上がりしている。

折り畳みタイプの「Pixel 10 Pro Fold」は、前モデルと比べ1万円の値上げに。発売も2025年10月9日と、やや先になる

折り畳みタイプの「Pixel 10 Pro Fold」は、前モデルと比べ1万円の値上げに。発売も2025年10月9日と、やや先になる

「Pixel 10 Pro」の最安128GBモデルは国内販売が見送りに

「Pixel 10 Pro」と「Pixel 10 Pro XL」は、とも256GB以上のモデルのみが販売され、海外では販売される「Pixel 10 Pro」の128GBのモデルが、日本では販売されない。256GBモデルの価格は「Pixel 10 Pro」が174,900円、「Pixel 10 Pro XL」が192,900円と、ともに前機種「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro XL」から据え置かれているのだが、128GBモデルが投入されないことで実質的には値上げとなってしまった。

「Pixel 10 Pro」(左)と「Pixel 10 Pro XL」(右)の2機種は、日本ではストレージが256GB以上のモデルのみ販売され、価格は据え置きだが実質的には値上げとなっている

「Pixel 10 Pro」(左)と「Pixel 10 Pro XL」(右)の2機種は、日本ではストレージが256GB以上のモデルのみ販売され、価格は据え置きだが実質的には値上げとなっている

機能の違いは少なく価格で棲み分けを図る狙いか

なぜこのようなモデル・価格構成となったのか。あくまで筆者の推測となるが、理由のひとつはハイエンドモデルを購入する人ほどストレージ容量の大きさを求める傾向が強いこと。そしてもうひとつは、スタンダードモデルと「Pro」モデルを明確に差別化したいグーグルの思惑だろう。

「Pixel 9」シリーズを振り返ると、「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」の価格差はおよそ3万円で、両機の大きな違いは望遠カメラの有無と、RAM容量(「Pixel 9」が12GB、「Pixel 9 Pro」が16GB)くらいだった。それが「Pixel 10」シリーズでは、「Pixel 10」の望遠カメラを搭載したことで、さらに違いが減った。

しかも、RAM容量が大きな違いになりそうなAI関連機能に関しても、現時点で両機種に決定的な差はない。そうしたことから「Pixel 10 Pro」の128GBモデルを投入しても、価格差の割に見劣りが少ない「Pixel 10」に顧客が流れかねない。128GBモデルをあえて外し価格にも差を付けることで、両モデルの違いを際立たせる狙いがあると考えられる。

安く買うならキャリアの端末購入補助や旧モデルを念頭に

「Pixel 10」に関しては、スタンダードモデルだけに今回の新機種の中では最も多く販売が見込めるモデルでもある。そして先にも触れたように、グーグルはここ数年来の値上げでシェアを確実に落としているだけに、これ以上販売を落とさないためにも価格を維持する必要が考えられる。幸い、最近の為替レートは1ドル当たり150円をやや切るくらいと、2024年から大きく変わっていないだけに、為替影響による値上げをこれ以上する必要も薄そうだ。

それだけに「Pixel 10」シリーズは、「Pro」以上のモデルを安く買いたい人には注意を要する内容となった。しかし、スタンダードモデルとの価格差が大きくなったことで、両機種の棲み分けが進み、機種選びはしやすくなった側面もある。ただ、いずれの機種も10万円以上の高額であることは「Pixel 9」シリーズと変わらない。かつての「Pixel」シリーズの安さを期待する人には悩ましいところでもある。

もっとも、「Pixel 10」シリーズは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、そして楽天モバイルの携帯4社すべてが取り扱う。それゆえ安く利用したいなら携帯各社の端末購入プログラムを利用できる。また、携帯各社が旧モデルになる「Pixel 9」シリーズの価格改定に動くことも予想される。

「Pixel 10」(128GBモデル) 一括価格と実質負担金の比較

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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