スマホとおカネの気になるハナシ

「Xperia 10 VII」と「AQUOS sense10」直接対決!? 2025年秋冬スマホ戦線レポート

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

スマートフォンやモバイル通信、そしてお金にまつわる話題を解説する「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、2025年秋に一斉に登場したお手ごろ価格のスマートフォンを取り上げる。全体的な傾向から各製品の特徴などを比較しつつ見てみよう。

※本記事中の価格はすべて税込で統一している。

ソニーのスマートフォン新機種「Xperia 10 VII」。従来秋に投入されていた「Xperia 5」シリーズの開発見送りの影響を受けてか、夏から秋に発売時期がずれている

ソニーのスマートフォン新機種「Xperia 10 VII」。従来秋に投入されていた「Xperia 5」シリーズの開発見送りの影響を受けてか、夏から秋に発売時期がずれている

お手ごろなスマホの発表が集中する秋

アップルが「iPhone」シリーズの新機種を発表する9月から10月にかけては、秋から冬に向けたスマートフォンの新機種が多く発表されるシーズン。それだけに2025年も、「iPhone 17」シリーズや「iPhone Air」などアップルの新機種が発表された9月に前後する形で、多くのメーカーから新しいスマートフォンが発表されている。

夏の新機種では、とりわけミドルクラス以上、ハイエンド未満となるミドルハイクラスのスマートフォンが急増していたが、今シーズンの新機種にはどのような傾向が見られるだろうか。9月以降に発売された、メーカー各社のラインアップを大まかに振り返ってみると、国内メーカーのミドルクラスのスマートフォン新機種が、この時期に集中して投入されているのが、最大の注目ポイントといえるだろう。

そこにはソニーが、ミドルクラスの「Xperia 10」シリーズの新機種「Xperia 10 VII」を2025年10月9日に発売したことが影響している。Xperia 10シリーズは例年、フラッグシップモデルの「Xperia 1」シリーズと同様、夏ごろに発売される傾向にあったのだが、例年この時期に投入していた、コンパクトハイエンドの「Xperia 5」シリーズの開発を見送っている影響から発売が秋にずれたようだ。

特徴だった縦長ディスプレイをやめた「Xperia 10 VII」

そして「Xperia 10 VII」自体も、前機種「Xperia 10 VI」と大きく変わっている部分が多い。変化を象徴しているのが背面カメラの配置で、「Xperia 10 VI」までは「Xperia 1」シリーズを意識して縦に並んでいたのが、横に並ぶデザインへと変化している。

「Xperia 10 VI」(右)と並べてみたところ。カメラの位置が縦から横へと、明らかに変わっている

「Xperia 10 VI」(右)と並べてみたところ。カメラの位置が縦から横へと、明らかに変わっている

機能面でも大きな変化がいくつかあり、1つはディスプレイの比率が21.5:9から19.5:9へと、より一般的なスマートフォンに近い比率に変更されたことだ。

そしてもう1つは「即撮りボタン」の追加である。これはカメラのシャッターとして利用できるボタンで、半押ししてフォーカスを合わせるなど高度な機能はないものの、上位モデル「Xperia 1 VII」の要素を取り入れることで、Xperiaらしさを打ち出す狙いが大きいだろう。

新たに「即撮りボタン」が追加され、「Xperia 1」シリーズのようにボタンでシャッターを切ることができるようになった

新たに「即撮りボタン」が追加され、「Xperia 1」シリーズのようにボタンでシャッターを切ることができるようになった

AIをさらに普及させる「AQUOS sense10」

シャープのミドルクラス機である「AQUOS sense10」も、2025年10月31日に発表された。こちらは、前機種である「AQUOS sense9」のデザインやコンセプトを踏襲しつつ、チップセットを強化するなどして改良がなされた製品と言えよう。

「AQUOS sense10」は前機種のデザインやコンセプトを維持しつつ、新型のSoC「Snapdragon 7s Gen3」を搭載、AI機能も強化された

「AQUOS sense10」は前機種のデザインやコンセプトを維持しつつ、新型のSoC「Snapdragon 7s Gen3」を搭載、AI機能も強化された

注目の機能として「Vocalist」がある、これは、登録したユーザーの声情報をもとに、音声通話に混ざる騒音を差分として除去、デモにおいて強力なノイズキャンセリング能力が披露された。なお、標準の音声通話以外の通話アプリやVoIPアプリにも対応する。このほか、上位モデルに搭載されていた写真に写る影を除去する機能も備えるなど、AI機能で独自性をアピールしている。

AQUOS sense10で追加された新機能「Vocalist」のデモの様子。自分の声をあらかじめ登録すれば、AI技術により通話中に自分の声以外の騒音などをカットしてくれる

AQUOS sense10で追加された新機能「Vocalist」のデモの様子。自分の声をあらかじめ登録すれば、AI技術により通話中に自分の声以外の騒音などをカットしてくれる

似てきている「Xperia 10 VII」と「AQUOS sense10」

このように、「Xperia 10 VII」はディスプレイサイズの変更などによって、ある意味でXperiaらしい尖った要素が抑えられ、より普遍的な「AQUOS sense」シリーズのユーザー層に近接した印象がある。そのうえで、両機とも特徴となる機能で差別化もはかられている。端末価格も「Xperia 10 VII」が74,800円に対して、「AQUOS sense10」は8GBメモリー+256GBストレージモデルが69,300円で近接している(いずれも、SIMフリーモデルの価格)。

それに加えて両社はともに、日本では長年のブランドと実績がある国内メーカーだ。そうした意味でも「Xperia 10 VII」は、「AQUOS sense10」の直接的な競合となってきたように感じ、ミドルクラスのスマートフォン選びが少し面白くなってきた。

シャオミは高コスパを前面に打ち出した「Xiaomi 15T」「Xiaomi 15 T Pro」を投入

では海外メーカーはどのようなスマートフォンを投入しているのか。シャオミはハイエンドモデルの「Xiaomi 15T」シリーズ2機種を2025年9月26日に発売しているが、これらはいずれも独ライカカメラと共同開発した3眼カメラを搭載しているのが大きなポイントだ。

なかでも上位モデルの「Xiaomi 15T Pro」は望遠カメラの性能が光学5倍相当で、デジタルズームであれば最大100倍ズームが可能であるなど、ズーム性能が強化されている。チップセットにも台湾メディアテック製の最上位となる「Dimensity 9400+」を搭載しており、FeliCaにも対応するなど充実した機能、性能を持つ。

シャオミの「Xiaomi 15T Pro」はライカカメラ共同開発の3眼カメラを搭載、望遠カメラは光学5倍相当で最大100倍のデジタルズームが可能であるなど性能が高い

シャオミの「Xiaomi 15T Pro」はライカカメラ共同開発の3眼カメラを搭載、望遠カメラは光学5倍相当で最大100倍のデジタルズームが可能であるなど性能が高い

いっぽうの「Xiaomi 15T」は、望遠カメラが光学2倍相当に、チップセットが同じメディアテック製の1つ下のクラス向けとなる「Dimensity 8400-Ultra」を採用しており、FeliCaを搭載しておらず「おサイフケータイ」が使えないなど、性能面で差がつけられている。ただその分価格にも大きな違いがあり、Xiaomi 15T Proは109,800円からと性能を考えれば十分安いのだが、「Xiaomi 15T」は64,800円からと、さらに4万円近く安いのには驚きだ。

こちらは下位モデルの「Xiaomi 15T」。カメラはXiaomi 15T Proと同様3眼構成だが、望遠カメラやチップセットの性能を引き下げているぶん、価格が6万円台からと非常に安い

こちらは下位モデルの「Xiaomi 15T」。カメラはXiaomi 15T Proと同様3眼構成だが、望遠カメラやチップセットの性能を引き下げているぶん、価格が6万円台からと非常に安い

AI機能を強化した縦折りスマホ「motorola razr 60」を発表

またモトローラ・モビリティも、2025年9月30日に新機種「motorola razr 60」シリーズを発表している。こちらはその名前のとおり、同社のフラッグシップモデルとなる縦折りタイプの折り畳みスマートフォン「razr」シリーズの新機種となり、スタンダードモデルの「motorola razr 60」は2025年10月10日に発売。最上位モデルの「motorola razr 60 Ultra」は2025年12月発売予定だ。

モトローラの折り畳みスマートフォン新機種「motorola razr 60」。ベースの性能自体は上がっているものの、ハード面での変化は多いとはいえない

モトローラの折り畳みスマートフォン新機種「motorola razr 60」。ベースの性能自体は上がっているものの、ハード面での変化は多いとはいえない

ただ両機種ともに、実はハード面での進化はかなり限定的で、チップセットこそ新しいものを採用しているが、カメラや背面ディスプレイなど、主要部分の性能は前機種「motorola razr 50」シリーズとあまり変わっていない。では何が大きく変わったのかというと、昨今話題のAIを活用した「Moto AI」を大幅に充実させたことだ。

具体的には、メッセージアプリの通知を要約してまとめ、返信などもできる「とりまリスト」や、録音した音声の文字起こしや要約ができる「おまとメモ」、音声やスクリーンショットなどを保存し、適切な場面で後から確認できる「お気に入リマインダー」などが追加されている。日本語で利用できるAI関連機能が大幅に増えたこともあり、折り畳みスマートフォンでAIをフル活用できることを最大の特徴としてアピールしているようだ。

最大の注力ポイントは独自のAI関連機能「Moto AI」。カメラ関連以外でも日本語で使えるAI関連機能が強化されている

最大の注力ポイントは独自のAI関連機能「Moto AI」。カメラ関連以外でも日本語で使えるAI関連機能が強化されている

販路を広げたモトローラとSIMフリー専売のシャオミ

尖った要素を備えながらもタイプが大きく異なるシャオミとモトローラの新機種だが、両者を比べると製品の内容だけでなく、販路にも特徴的な違いがあるようだ。実際、「motorola razr 60」シリーズは前機種扱っていたドコモとソフトバンクに加え、新たにKDDIが「motorola razr 60 Ultra」を販売することが明らかになるなど、携帯大手3社の販路開拓を積極化している。

「motorola razr 60 Ultra」はKDDIの「au」ブランドから2025年12月に発売される予定であることが明らかにされている。モトローラ・モビリティが同社に端末を供給するのはおよそ13年ぶりのこととなる

「motorola razr 60 Ultra」はKDDIの「au」ブランドから2025年12月に発売される予定であることが明らかにされている。モトローラ・モビリティが同社に端末を供給するのはおよそ13年ぶりのこととなる

それに対して「Xiaomi 15T」シリーズは、前機種を扱っていたKDDIやソフトバンクが販売せず、オープン市場に向けた「SIMフリー」のみの販売となっている。ただいっぽうで、シャオミはXiaomi 15Tシリーズの発表に合わせて、自社で展開している独自の店舗「Xiaomi Store」を現在の2店舗からさらに拡大することを発表している。

実際2025年11月には埼玉県と千葉県に2店舗をオープンする予定であるほか、12月には「Xiaomi Store カメイドクロック店」で東京23区内にも進出する。さらに、2026年には大阪、名古屋エリアにも拡大していく方針が打ち出されており、自社ショップでの販売を大幅に強化しようとしている様子がうかがえる。

シャオミは自社独自の「Xiaomi Shop」の拡大を打ち出しており、2025年11月には「Xiaomi Storeイオンレイクタウンkaze店」など2店舗をオープン予定だ。画像はプレスリリースより

シャオミは自社独自の「Xiaomi Shop」の拡大を打ち出しており、2025年11月には「Xiaomi Storeイオンレイクタウンkaze店」など2店舗をオープン予定だ。画像はプレスリリースより

【まとめ】メーカーの戦略が多様化し、「どこで買えるか?」にも注意がいる

販路の違いは購入できる場所の違いにもつながり、とりわけオンライン販売に慣れていない人を取り込むうえでは非常に大きな違いとなってくる。先のミドルクラス2機種とは違い、ともにタイプが異なり選ぶユーザーもあまり重複しないと考えられることから単純な比較はできないのだが、販路の違いで販売の数、そしてユーザーの評価がどう変化してくるかは今後関心を呼ぶところかもしれない。

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
記事一覧へ
田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
本ページはAmazonアソシエイトプログラムによる収益を得ています
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×