5月1日以降に通信キャリアから発売されるスマートフォンのSIMロックが解除可能になる。その背景やメリット、注意点とは何か?
スマートフォンや携帯電話、モバイルWi-Fiルーターなどには、SIMカードと呼ばれる小型のICカードがささっている。このSIMカードは、IMSIと呼ばれる固有番号が記録されており、通信キャリアの回線と接続する際の認証に使われる。言うなら、SIMカードは、通信キャリアに接続するカギのようなものだ。
しかし、2015年5月1日以降に、各通信キャリアから発売される端末は、このSIMロックが一定の条件のもと解除可能になる。これにより、通信キャリアで買った端末に、別の通信キャリアのSIMカードを挿して使うことができるようになるのだ。
SIMカードには固有の番号IMSIが記録されており、通信キャリアのネットワークに接続する際のカギとしての機能を備える
SIMロックが解除されるのには、いくつかの目的がある。そのうちのひとつは、通信キャリア間の公正な競争をうながすことだ。通信キャリアでは、新しい料金プランや各種の割引が整備されているものの、通話料は変わらずに高い水準となっている。これは、SIMロックされた端末と回線を通信キャリアが一体で扱っているため、通信キャリア間の競争が偏った形で行われていることが理由のひとつである。だが、SIMロックが解除されれば、今まで以上に格安SIMを使える端末が増えるので、通話料の引き下げにもつながりやすいと考えられている。
もうひとつの目的は、手持ちの端末を海外でも手軽に使えるようにすることだ。SIMロックの施された携帯電話やスマートフォンを海外で使う場合、通信キャリアの用意する割高なローミングサービスを使うことになる。だが、SIMロックが解除されていれば、現地の通信キャリアなどが発行する割安なSIMカードを差し込んで使うことができる。
SIMロックが解除された端末は、SIMカードを原則として自由に組み合わせることができるが、いくつか注意点もある。
端末と回線の結びつきの弱いスマートフォンやタブレットなどは、SIMロック解除の恩恵を受けやすい。しかし、携帯電話は、他社のSIMカードに差し替えても、音声通話とSMSの送受信は可能だが、メールやWebコンテンツなどのデータ通信については利用に大きな制限が生じる。そのため、携帯電話の場合“音声通話とSMSしか利用しない”場合以外は、SIMロック解除の恩恵は少ない。
また、スマートフォンであっても、通信キャリアの端末は、その通信キャリア専用として設計されているので、他社のSIMカードを差し込むと、機能に制限が生まれる場合がある。端的に言うなら通話エリアが狭くなったり、通信速度が遅くなることが考えられる。テレビ電話など通信キャリアが独自に用意する機能についても、利用できなくなる場合がある。
また、SIMを差し替えて通信を行う場合、その端末が対応している通信方式と、通信キャリアの通信方式が合致していないといけない。今まで、通信キャリアは自社の回線に最適化した端末を用意していたので、ユーザーは、利用する端末が対応する回線を意識する必要はなかった。だが、SIMカードを差し替えて利用する場合、対応する回線に注意が必要となる。
以下の表で、主要4キャリアが提供している通信サービスを一覧としてまとめてみた。
※B28の△は現在準備中
※NTTドコモのB9(東名阪バンド)は、全面的にLTEへ切り替えの予定で、現在移行作業中。
この中でも注意したいのが、auの採用するCDMA2000方式だ。auでは、CDMA2000方式は、データ通信に加えて音声通話やSMSに利用されており、auのスマートフォンに他社のSIMカードを差し込んでも3G通信や音声通話、SMSの送受信は行えない。「Galaxy S6 Edge SCV31」のように、わざわざW-CDMAにも対応していることが必要になるだろう。また、auのスマートフォンに、NTTドコモやソフトバンクなどのW-CDMA系のSIMカードを差し込んでも、同じような制限が生じる。
NTTドコモの場合
NTTドコモの場合、すでに4年前の2011年4月からSIMロックの解除が原則として行われていた。SIMロック解除の手続きについては、5月以降に発売される端末では扱いが変更され、新たに6か月間の解除制限期間が設けられる。
加えて、今までドコモショップで行われていたSIMロック解除の手続きは、Webでも行えるようになる。Webでの手続きは無料(ドコモショップでの手続きは3,000円税別)。
auの場合
先に解説したように、3G通信にCDMA2000方式を採用するauは、SIMロックを解除しても技術的な制限がある。ただ、すでに発売済みでSIMロック解除の対象になっているGalaxy S 6 Edgeのように、W-CDMA方式にも対応している端末であれば、他社のSIMカードを差し込んでも比較的スムーズに利用できるだろう。
なお、SIMロックの対象となるのはGalaxy S6 Edge、および5月1日から発売される端末で、購入後180日を過ぎたものとなる。解除手続きは、auショップのほか、Webページから設定ファイルをダウンロードすることで自分でも行える(解除手続きは無料)。auショップでの対応は3,000円(税別)。
ソフトバンク、ワイモバイルの場合
現在、ソフトバンクでは「BLADE Q+」、「301F」、「201HW」、「009Z」、「008Z」のAndroidスマートフォン5機種についてはSIMロックの解除機能を備えているが、主力のiPhoneや大多数のAndroidスマートフォンは対象外となっている。
技術的な背景もあり、ソフトバンクおよび同グループのワイモバイルはSIMロック解除の影響が大きく現れる可能性がある。ソフトバンクの回線を使ったMVNOの格安SIMカードは、現在存在しない。しかし、上記の回線の対応表からもわかるように、ソフトバンク(ワイモバイル)とNTTドコモは、通信方式が大筋で共通しているので、SIMロックを解除すれば、NTTドコモやNTTドコモの回線を使った格安SIMカードが利用できる可能性が高い。
なお、SIMロック解除については、現時点でまだ発表されていない。5月1日までに何らかの発表があるはずだ。
Q 今使っているスマートフォンはSIMロックの解除ができるの?
A 2011年4月以降に発売されたNTTドコモのAndroidスマートフォンなら、従来からSIMロックの解除が可能。ソフトバンクでもBlade Q+、301F、201HW、009Z、008Zの5機種については、SIMロックの解除が行える。ワイモバイルについては、Nexus 6などSIMロックがかかっていないものが一部存在する。auについては、Galaxy S6 EdgeからSIMロックの解除が可能になる。
Q SIMロックを解除すると、今までの通信キャリアのSIMは使えなくなるの?
A SIMロックを解除しても、今までの通信キャリアのSIMカードはそのまま使うことができる。通信キャリアを戻すために再度SIMロックが必要になることはない。
Q iPhoneのSIMロックは解除できる?
A 通信キャリアが現在発売しているiPhone 6シリーズなどは、SIMロック解除の対象外。ただし、SIMロックフリーのiPhoneはアップルから今も発売されている。次世代のiPhoneについては、通信キャリアから正式な表明はないが、2014年12月22日に改正された総務省の「SIMロック解除に関するガイドライン」に従えば、SIMロック解除の対象になるものと見られる。
Q SIMロックが解除されると、SIMカードに何かが変わる?
A SIMロックは、端末側に施されているので、SIMカード側には影響はない。