レビュー

マウスコンピューターの新旧スティック型PCを比較してみた

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マウスコンピューターが2014年12月に発売し、人気を集めたスティック型PC「m-Stick MS-NH1」(以下MS-NH1)。その新型「m-Stick MS-PS01F」(以下MS-PS01F)が2015年4月30日に発売された。MS-PS01Fは、ファンレスだったMS-NH1のスペックを継承しつつ、新たにファンを搭載したモデルだ。新旧モデルの違いはファンのあり・なしだが、実際はどう違うのだろうか。ベンチマークを取るなどして調べてみた。

上がファン付きのMS-PS01F、下がファンレスのMS-NH1。MS-PS01Fのサイズは125(幅)×14(高さ)×37.6(奥行)mm。MS-NH1のサイズは100(幅)×9.8(高さ)×38(奥行)mm。こうして並べると、それほどサイズの違いは感じられない

左のファン付きのMS-PS01Fのほうが、右のファンレスのMS-NH1よりもボディは厚い

左のファン付きのMS-PS01Fのほうが、右のファンレスのMS-NH1よりもボディは厚い

新モデルのMS-PS01Fの本体と付属品。HDMIの延長ケーブル、電源コード、ACアダプターが付属する。MS-NH1も同じ内容だ

スティック型PCとは?

まずは、スティック型PCの特徴について、簡単に説明しよう。発熱が低いCPUなど、タブレットPC向けのパーツを採用することで、コンパクトな筐体を実現したパソコンだ。最近の製品では、CPUにタブレットPCでも採用されている「Atom Z3735F」を、ストレージにフラッシュメモリーのeMMCを搭載することで、タブレットPCと同等の性能を備えているものがほとんど。さらに、HDMI端子を装備しているのも特徴で、液晶テレビなどのHDMI端子に接続し、ACアダプターから電源を供給することで、液晶テレビをデスクトップPCとして利用することができる。なお、ほとんどのスティック型PCは、キーボードやマウスが別売りとなっているので、別途用意する必要がある。今回試した2機種は、USB端子が1個しかないので、検証では、マウス操作も行えるロジクール製のタッチパッド搭載ワイヤレスキーボード「Wireless Touch Keyboard k400r」を用意した。

スティック型PCは、HDMI端子を搭載した液晶テレビや液晶ディスプレイを用意すれば、省スペースパソコンとして利用できる

MS-PS01F にはUSB端子が1個しかないので、今回は、マウス操作も行えるロジクール製のタッチパッド搭載ワイヤレスキーボード「Wireless Touch Keyboard k400r」を利用した

MS-PS01FとMS-NH1のスペックは、以下の表の通り。OSやCPUなどのハードウェアは同じだ。ファン付きのMS-PS01Fのほうがひと回り大きく重いが、気になるほどの差ではない。

CPUやメモリー、ストレージは同じ。MS-PS01Fはファンを搭載している分、サイズが大きくなっている

CPUやメモリー、ストレージは同じ。MS-PS01Fはファンを搭載している分、サイズが大きくなっている

スペックは同じだが、パフォーマンスは「MS-PS01F」のほうが上

続いて、実際にベンチマークを取って、性能を計ってみよう。その結果は、意外にも差が出た。

まず、「Windows エクスペリエンス インデックス」を表示する「WIN SCORE SHARE」を使用すると以下の結果になった。「メモリ(RAM)」のみ同じ5.5だが、それ以外は異なり、MS-PS01Fのほうが全体的に高いスコアを記録した。特に「プロセッサ」は、MS-PS01Fが5.9、MS-NH1が3.4と差が出た。これは、搭載されているAtom Z3735Fのバーストモードが関係しているようだ。ファン付きのMS-PS01Fは、バーストモードが有効になっており、最大1.83GHzで動作している。これに対して、ファンレスのMS-NH1は、温度上昇を抑えるために、バーストモードが無効となっており、ベースクロックの1.33GHzで動作している。

左のMS-PS01Fは「プロセッサ」が5.9というスコアを記録。ファンを搭載してバーストモードが有効になっており、最大1.83GHzまでクロックが上がるようだ。右のMS-NH1の「プロセッサ」のスコアは3.4。ファンレスで温度上昇を抑えるために、バーストモードが無効になっている。そのため、ベースクロックの1.33GHzで動作する

グラフィックスの性能も異なる

Windows エクスペリエンス インデックスのスコアでは、グラフィックス性能(「グラフィックス」と「ゲーム用グラフィックス」)もMS-PS01Fのほうが高くなった。MS-PS01Fは、「グラフィックス」が3.6で、「ゲーム用グラフィックス」が3.8。MS-NH1は、グラフィックス」が3.2で、「ゲーム用グラフィックス」が3.5である。

もう少しくわしく性能をチェックするために、「ドラゴンクエストX」のベンチマークソフトも使用してみた。なお、Atom Z3735Fに内蔵されたGPUは、タブレットPC用に設計されたもので、もともと3Dゲームには向いていない。

結果は、やはりMS-PS01Fのほうが高いスコアが出た。MS-PS01Fは、スコアが1047で評価が“重い“。MS-NH1は、スコアが810で評価が“動作困難”になった。どちらも、3Dゲームに向いているとは言えないが、わずかであるがMS-PS01Fのほうが高い結果となった。

左のMS-PS01Fは1047で“重い“という結果に。いっぽう、MS-NH1は810で“動作困難“という判定になってしまった

ストレージの速さも違う?

最後のベンチマークとして、ストレージの速度を「CrystalDiskMark」でチェックしてみた。Windows エクスペリエンス インデックスの「プライマリディスク」のスコアは、MS-PS01Fが6.0、MS-NH1が6.9で、MS-NH1のほうがやや高い結果となった。CrystalDiskMarkでは、リードとライトのスコアが細かく測定されるので、よりわかりやすい判定が行える。

結果は、Windows エクスペリエンス インデックスと同様にMS-NH1のほうが全体的に高いスコアが出た。特に、リードの「Seq Q32T1」と「4K」の項目以外は、すべてMS-NH1の高いスコアになっている。デバイスマネージャーでeMMCを確認してみると、MS-NH1がサムスン製の「BWBC3R」、MS-PS01Fがキングストン製の「S10032」になっており、eMMC自体の性能差が出ているようだ。

CrystalDiskMarkの結果は、左はMS-PS01Fよりも右のMS-NH1のほうが全体的に高いスコアが出ている

CrystalDiskMarkの結果は、左はMS-PS01Fよりも右のMS-NH1のほうが全体的に高いスコアが出ている

左のMS-PS01Fのデバイス マネージャーでは「Kingston S10032」が確認できる。右のMS-NH1では「Samsung BWBC3R」となっている

ファンの音は気になる?

CPUやグラフィックスの性能は、ファン付きのMS-PS01Fのほうが上だということがわかったが、気になるのはファンの動作音だ。リビングPCなど、テレビの近くで使用するパソコンの場合、ファンの動作音は気になるもの。そこで、実際にファンの動作音を録画してみたので確認してほしい。

ファンの動作音は、本体に耳を近付けないとわからない程度で、本体から30cmほど離れると聞えなくなった。特に、リビングPCとして動画を再生する場合には、コンテンツ自体の音声もあるため、まったく気にならないだろう。また、常にファンが回っているわけではなく、負荷が高くなったときに回転するようで、Webサイトを閲覧する程度の負荷であれば、ファンは停止したままで無音の状態であった。

MS-PS01Fから約10cmの距離にカメラを設置し、停止した状態からCPUに負荷をかけてファンが回転する様子を撮影した。ファンの回転音を拾うために、ここまで近づいて撮影したが、本体から30cmほど離れるとほとんど聞こえなくなる

まとめ どっちを選んだらいい?

実際にMS-PS01FとMS-NH1を使い比べてみた限りでは、Webサイトの閲覧や、「YouTube」でのフルHD動画の視聴などの用途であれば、両モデルでレスポンスや使い勝手に大きな差はなかった。ベンチマークテストでは、たしかにCPUやグラフィックスなどに差は出ているが、リビングPCとしての使い方であれば、ほとんど差に気がつかないだろう。

気になったのは、ファンレスのMS-NH1の発熱。2〜3時間動作させたあとに本体を触ってみると筐体が温かくなっていた。もちろん、MS-NH1は発熱しても、動作には支障はないように作られているが、CPUパワーをフルに使うような高負荷を長時間続ける場合など、パフォーマンスが落ちる可能性もある。それに対して、ファン付きのMS-PS01Fは、長時間使用しても、ほとんど温度は変わらなかった。MS-PS01F であれば、CPUなどの性能を100%引き出して利用することが可能だ。

2015年6月30日時点の価格.com最安価格は、MS-PS01Fが約20,000円で、MS-NH1が約18,000円。価格差は約2,000円。安定したパフォーマンスで選ぶならMS-PS01F、より低価格に手に入れたいのであればMS-NH1を選ぶとよいだろう。

山野 徹(編集部)
Writer / Editor
山野 徹(編集部)
新しいもの好きで、アップルやソニーと聞くだけでワクワク・ドキドキ。デジタル好きだが、最近はアナログにも興味が出てきたアラフォー編集者。
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