掃除機と言えば、今やコードレスが当たり前。価格.comの「掃除機」カテゴリーの人気売れ筋ランキングの大半はコードレスのスティックタイプの製品が占めているし、なかにはハンディタイプにもなるようなコンパクトな製品も見受けられる。
ランキングの上位は掃除のメインとなるような製品が目立つが、ここで取り上げたいのは掃除のサブとして活躍しそうなハンディ掃除機。気軽に購入できて、毎日手軽に使える1万円以下(2023年9月27日現在)の3機種をピックアップ。
自宅コーヒーミル周辺の掃除のため、という限られた用途をまっとうするためにぴったりの製品を3か月かけて選定した。佇まいの美しさ、吸引力を含む機能性、扱いやすさという3項目を評価基準に、最終的に導入した製品は?
中央の3本がテストしたハンディ掃除機。左から、レコルト「RSC-2」、アンカー「Eufy HomeVac H11」、FUNMAXJAPAN「CellCube CC-VC01」。いちばん右は比較対象として置いた580mlペットボトル
上記のとおり、ここに登場するハンディ掃除機はあくまで家庭でサブ機として活躍しそうな3製品。もちろん、これは筆者の自宅にメインの掃除機がすでにあることに由来しており、あえてサブ機を導入するならば、どれがよいのか? じっくりと検討した結果をここでお伝えしようというものだ。
いちおう筆者宅の掃除機事情を説明しておくと、まずメインで活躍しているのは全自動のロボットタイプ。さらにスポットで使うためのスティック掃除機も控えており、今回選ぶのは“抑え”のサブ掃除機ということになる。
スティック掃除機があるのだから、これ以上は必要なさそうに思われるかもしれないが、そんなことはない。それは毎朝使う電動コーヒーミルの周辺が存外に散らかるからだ。
愛用中の電動コーヒーミルはボンマックの「BM-250N」。ダイヤルで豆をひく荒さを簡単に調整できる機能性、ほどよい価格、レトロな外観、どこをとっても非常に気に入っている
「BM-250N」に対してただひとつだけ不満がある。それが豆をひくと、かなりの具合で粉が飛び散ることだ
ドリッパーを直接セットしてコーヒー豆をひくと、粉が飛び散る
かなりの具合で飛び散る
ブラシで粉を落としていくと……
どうしてもさらに飛び散る
そんな遠くまで? という場所にも飛び散る
実は専用の受け皿があるのだが、受け皿に粉がまとわりつくこと、受け皿からドリッパーに粉を移す際にそれはそれで粉が飛び散るという理由で使っていない
そういうわけで思いいたったのが、コーヒーミルの脇に置いておけるハンディ掃除機を使う方法。毎朝飛び散るコーヒーの粉を吸い取るために廊下に置いてあるやや大きめのスティック掃除機を持ち出すのはあまりに面倒だからだ。
そもそも、粉を飛び散らないようにする工夫もいくつか(粉の射出口にアルミホイルを巻く、静電気の発生を抑えるスプレーを使うなど)試したものの、根本的な解決はできなかった。コーヒー豆をひくまえに濡れたスプーンで豆を混ぜる、豆に少し水をかけて湿らせるという方法も効果的だが、これはこれで別途スプーンや皿を用意する手間があるうえ、粉の飛び散りがゼロになるわけではなく、ルーティーン化にはいたらなかった。
最終的に「都度吸う」という力業に頼ると決めたのは知人宅での出来事に由来する。かつて喫茶店を営んでいたことのある人の自宅で「BM-250N」を発見したのだ。その知人が粉の飛び散り対策をどうしているかと確認すると、本体の下に大きめのトレイを敷くという方法をとっていた。もはや諦観(ていかん)を感じさせる境地……。
「BM-250N」でコーヒーの粉が飛び散るのは、もう仕方のないことなのだ。しかし、翻って筆者宅でトレイを導入するかと考えると、さすがにその境地にはいたっておらず、ハンディ掃除機で毎回処理するという、やや強引だが合理的な方法をとることにしたのだった。
前置きが長くなってしまったが、ここからピックアップしたハンディ掃除機3機種を紹介する。まず触れておきたいのは、選定の基準について。あくまでサブ機であること、コーヒーミルの脇に常に置いておくという運用方法が前提のため、以下の条件で独自に(見た目が好みであるかどうかを重視して)選出したところ、今回の3機種が残ったのだった。
独自の選定基準
●価格は1万円以下(2023年9月27日現在)
●それなりにコンパクトであること
●白系を基調とした本体で、佇まいがよいこと
はじめに紹介するのはアンカー「Eufy HomeVac H11」。価格.comの最安価格が3機種の中で最も安い5,985円。とはいえ、特にスペック上で見劣りすることはなく、外観はシンプルにまとまっている印象だ。本体は3色展開されており、インテリアとのマッチということもしっかりと考えられているのだろう。気になることと言えば、フタとの接合部にあしらわれたパープルのリングが安光りしていることくらい。長く使うならば、何らかの方法で塗装したくなるテカり方だ。これは実物を見ないとちょっとわかりづらい部分だった。
本体色はホワイトを選択。高さは335mmで、コーヒーミル脇に置いたときの収まりは良好。あくまで主観ではあるが、ワンポイントのパープルがとても気になる
「Eufy HomeVac H11」の主なスペック
●吸引力:最大5500Pa
●最長運転時間:約13分
●充電時間:約150〜210分
●フィルター丸洗い:○
●本体色:ホワイト、ブラック、ミントグリーン
●寸法:74(幅)×74(奥行)×335mm(高さ)
●重量:560g
●佇まいの美しさ:★★★
●吸引力を含む機能性:★★★
●扱いやすさ:★★★★
使用時はフタを外す。このフタはスタンドにもなっている
狭い部分の掃除に便利なブラシ付きノズルが付属
充電口はMicro USB Type-B。本体裏にあるため、立てたまま充電できる
本体の手入れ時にはフィルターを分解して、左の3つを水洗いする。手入れのしやすさにも違いがあるかと予想していたが、この点は3機種ともほぼ同様。なお、本機の交換用フィルターはオフィシャルオンラインストアで1,690円(税込、4個セット)で販売されていた
作りはいたってシンプル。先端のグレーのケースが集じんボックスになっていて、吸引口にはシリコン製の弁が付いている。内側から吸引すると、この弁が開いて、ゴミを吸い取る仕組みだ
肝心の機能性や扱いやすさはどうか。これがなかなか使いやすかった。ほかの2機種と比べると、ハイパワーで吸引するモードがなく、常に一定の強さで吸引するしかないのだが、そのシンプルさが「Eufy HomeVac H11」の美点になっているのだ。
電源ボタンを押せばしっかり吸い込み、もう一度押せば止まる。ほかの2機種は吸引モードの切り替えが同じボタンをもう一度押すというトグル式のため、使うと使わざるとに関わらず、必ず強/弱モードの両方を“通る”必要があった。これが結構わずらわしい。そういうマイナスのない分、「Eufy HomeVac H11」の「扱いやすさ」は加点した格好だ。
吸引力は数値上「5,500Pa」とあり、3機種で言えば真ん中の吸引力だったようには感じられた。ただし、この数値はあくまで参考値として考えたほうがよさそうだ。結果から言えば数値に比例するほどの機種ごとの力の強弱は感じられず、「Eufy HomeVac H11」の吸引力は、筆者宅では必要十分だった。
いちおう、以下にコーヒーの粉を吸引した際の写真を掲載する。しかし、どれも本体を吸引面に当てる角度さえ気をつければ棚板のすきまでも残らず粉体を吸引できる能力があったことを始めに報告しておこう。ゴミを吸引しづらい場合は本体の角度を吸引したい面に沿わせることを意識し、それが難しい環境の場合は付属のノズルを使うことになるだろう。
価格を考えればテスト機で最もコストパフォーマンスが高かったことは間違いなく、もう少し見た目が落ち着いていれば……という点が悔やまれる。
吸引口がぴったりと吸引面に沿うように当てることが、吸引力を発揮するためのポイント
次に紹介するのは、レコルトの「RSC-2」。スペックからわかっていたことだが、高さ370mmで写真のとおりやや大きい。セレクトした本体色はナチュラルホワイトで、ベージュがかった落ち着いたトーンが好ましい。フタがスタンドを兼ねているのは「Eufy HomeVac H11」と同様で、掃除機然としすぎない、うまいデザインだと思う。
機能的には液体を吸引できることがほかの機種にはない大きな特徴と言える。今回の趣旨にはフィットしないものの、幼児の離乳食や食べこぼしを吸引したり、ひげそり後の水場を掃除したり、幅広く活用できそうだ。
370mmと背が高く、存在感は大きめ
レコルト「RSC-2」の主なスペック
●吸引力:最大3,800Pa(Hiモード)/最大3,000Pa(Loモード)
●最長運転時間:約15分(Hiモード)/約20分(Loモード)
●充電時間:約240分
●フィルター丸洗い:○
●本体色:ナチュラルホワイト、ペールブルー
●寸法:寸法:85(幅)×85(奥行)×370(高さ)mm
●重量:660g
●備考:液体も吸引可能
●佇まいの美しさ:★★★
●吸引力を含む機能性:★★★★★
●扱いやすさ:★★★
フタをとると吸引口兼集じんボックスが表れる
ノズルが4種類付属するのも特徴。左から時計回りに、細かい場所を吸引するための「先細ブラシノズル」、引き出しなどで物を入れたままホコリだけを吸うための「格子ノズル」、液体も乾いたゴミも吸いやすい「ウェットノズル」、ラグやカーテンに推奨される「ファブリックノズル」
充電口は本体裏にあり、端子形状はUSB Type-C。カバーがされているのは、水分を吸引する製品だからか。付属ケーブルを接続すると、ややプラグが浮いてしまうのが気になった
左から集じんボックス、外側のフィルター、内側のフィルターに分解でき、いずれも水洗い可能。これは今回の3機種に共通した構造だ。なお、「RSC-2」の交換用フィルターはオフィシャルオンラインストアで1,100円(税込、1個)
集じんボックスとフィルターの接合部が曲げられており、一度吸ったゴミが戻らないように工夫されている。ボックスのゴミを捨てる際、吸引口からゴミが散ってしまうことが少なく、使いやすかった
さて、「RSC-2」だけ吸引力のスペックが弱めに見えたことが気になっていたのだが、まったく心配には及ばなかった。実際にコーヒーの粉を吸引してみると、吸引口の幅が狭いことによるハンドリングの違いは感じたが、「Eufy HomeVac H11」よりも吸引力が断然弱いかと言われると、そうは思わなかったのだ。
ただ、吸引口が狭く、一度に吸える範囲は狭めのため、広範囲に飛び散る粉体を吸引するにはやや不利であることは間違いない。そこで使ったのが付属ノズルのうちのひとつ「ウェットノズル」だ。このノズルを付けるとやや幅が広がるため、一度に吸引できる範囲が広がるだけでなく、シリコン素材が吸引面にうまくフィットしてくれる。
広範囲の吸引しやすさ、すきまの吸引しやすさ、どちらをとっても、3機種を通じて「ウェットノズル」使用時の「RSC-2」が最もすぐれていたと思う。というわけで、液体を吸わなくとも機能性は5点満点。
ただし、本体の大きさ以外にも気になることがなかったわけではない。スイッチにまつわる動作だ。「Eufy HomeVac H11」の項目で触れたとおり、「RSC-2」にはハイパワーとローパワーモードがあり、同じスイッチを繰り返し押すことでモードが切り替わる。電源を入れるとハイパワーになり、もう一度押すとローパワーになり、さらにもう一度押すと電源が切れる。
しばらく使っても、この動作にあまり慣れなかったのだ。一度ボタンを押して電源を入れた時点でさっと掃除を済ませ、次のボタン操作では電源が切れてほしいところ、ボタンを押すとモードが切り替わり、まだ動作している。これがどうにも期待外れだと感じてしまった。
しかも誤動作を防ぐためなのか、ボタンの反応があまりよくない。軽くボタンを押しても電源が入らず、充電が切れてしまったのかと思うこともあったほどだ。これだけを使い続ければ慣れていくのかもしれないが、ハイパワーモードの切り替えは別ボタンにすることとあわせて、ぜひ改善してほしいポイントだ。
吸引口を比べると、「RSC-2」の幅がいちばん狭かった。実測では、「RSC-2」が約2.5mm、「CellCube CC-VC01」が約3.6mm、「Eufy HomeVac H11」が約3.8mm。この違いが吸引時のハンドリングに直接影響している印象だった
最後に紹介するのがFUNMAXJAPANの「CellCube CC-VC01」。500mlサイズのペットボトルよりも小さく、軽いことを謳う“おしゃれ”訴求型製品のようだ。本体色も少し変わっていて、「生成り(ベージュ)」「薄桜(ライトチェリー)」「白藍(ライトブルー)」の3色が用意されている。いずれも彩度低めの「くすみカラー」の風合いで、確かに見栄えがよい。
運転時間が長めなどの特徴はあるものの、基本機能や構造は「Eufy HomeVac H11」に近く、スタンダードなハンディ掃除機だと言えそうだ。
選んだ本体色は「生成り(ベージュ)」。大きさといい、落ち着いた色といい、とてもなじみがよい
FUNMAXJAPAN「CellCube CC-VC01」の主なスペック
●吸引力:最大15,000Pa(パワーモード)/最大10,000Pa(ノーマルモード)
●最長運転時間:約15分(パワーモード)/約35分(ノーマルモード)
●充電時間:約150分
●フィルター丸洗い:○
●本体色:生成り(ベージュ)、薄桜(ライトチェリー)、白藍(ライトブルー)
●寸法:55(幅)×55(奥行)×260(高さ)mm
●重量:450g
●佇まいの美しさ:★★★★
●吸引力を含む機能性:★★★★
●扱いやすさ:★★★★
ほかの2機種とは違い、フタなどは付属せず、集じんボックスがむき出しのスタイル。吸ったゴミの捨てどきがわかるのはよいが、常にゴミが見えることがデメリットにもなりそうだ
狭い場所の掃除用にブラシのノズルが付属する
充電口は本体の表側にあり、端子形状はUSB Type-C。充電時にやや不格好かと思われたが、すっきりした裏側を見せていれば特に違和感はなかった
左から集じんボックス、外側フィルター、内側フィルターに分解できるのはほかの機種と同じ。もちろんいずれも水洗いできる
「CellCube CC-VC01」のスペック上の吸引力は飛び抜けて高いのだが、やはりそれに比例した吸引力は感じられなかった。とはいえ、3機種の中では強めの吸引力であったことは間違いなく、コーヒーの粉を吸うという用途は必要十分以上に果たしてくれた。平面も、棚板のすきまも、ノズルなしでしっかり吸引できる。
構造が似ていることもあり、使い勝手自体は「Eufy HomeVac H11」ととてもよく似ている。ただし、こちらも「Eufy HomeVac H11」の項目で触れたとおり、ハイパワーモードの切り替えが同じボタンを複数回押すという方式で、ここにやや使いづらさがあった。「CellCube CC-VC01」では一度ボタンを押すと電源が入りローパワーモードになり、もう一度ボタンを押すとハイパワーモードに切り替わる。ボタンの反応はよいので「RSC-2」よりは使いやすいものの、今後の製品で改善してほしいと思う。
吸引力は比較的強めで、使いやすさは「Eufy HomeVac H11」と「RSC-2」の間と言ったところ。見栄えがすることも相まって、バランスのよい製品に仕上げられていると感じた。
最終的に自宅用に選んだのは、見栄えのする「CellCube CC-VC01」。ラッセルホブスの電動ミル「7921JP」と並べると、掃除機感がさらに薄れる
独自に選んだ3機種のハンディ掃除機を3か月にわたって並行して使ってきたが、最終的に自宅への正式サブ機として迎え入れることにしたのはFUNMAXJAPANの「CellCube CC-VC01」。抜きんでた機能性があったわけではないが、必要十分以上の吸引力と見栄えのよさがバランスしているところが気に入った。
今回はすでにできあがっている自宅環境への導入が前提になったため「CellCube CC-VC01」を選んだが、コストパフォーマンスを重視すれば「Eufy HomeVac H11」だし、機能性を重視すれば「RSC-2」だっただろう。選ばなかった2製品も、ハンディ掃除機としての機能をまっとうしてくれるよい製品だと思う。
また、各機種の項目では触れなかったのだが、駆動時間や充電時間については実運用上気にすることはなかった。これは用途によるはずだが、基本的に一度に使う時間は10秒前後なので数日や一週間で電源が切れることはなく、どの機種も快適に使えたことは伝えておきたい。
必要に迫られて試用したハンディ掃除機だが、製品の充実ぶりには非常に驚かされた。とても実用にならない……という結果も覚悟していたのだが、どれも基本性能が高く、技術の進歩を痛感した次第だ。
今やハンディ掃除機は筆者が毎日使う重要な家電として手放せない存在になっている。スティック型の掃除機をいちいち出すのが面倒、と感じるシチュエーションがある人は、サブ機としてハンディ掃除機の導入を検討してはいかがだろう。