いつでもどこでも気軽に剃れるコンパクトなモバイルシェーバーは、旅行や出張に携帯できるほか、「夕方ヒゲ」にも対応できて便利。そこで今回は、人気のP&G「ブラウン ミニ(BRAUN mini)M-1012」と、2025年7月に発売されたフィリップスの新モデル「700シリーズ S791/06」を比較し、それぞれがどのような人に向いているのかをレビューする。
高さはあるけどスリムな「ブラウン ミニ」(左)と、背は低いが少し厚みのあるフィリップス「700シリーズ S791/06」(右)
「モバイルシェーバー」とは、機能が絞られている代わりに、軽量で持ち運びやすい小型の電動シェーバーのこと。「トラベルシェーバー」や「コンパクトシェーバー」とも呼ばれる。普段は、ハンドル付きの通常サイズの電動シェーバーを使っている人が、自宅以外でシェービングしたいときにバッグやスーツケースに常備することを主な目的としている。
それこそ、性能を問わなければ1,000円台から手に入るが、やはり旅先・出張先でもそれなりの満足感を得たいなら、いいモバイルシェーバーを選びたい。また、乾電池式が便利と思う人もいるかもしれないが、シェービングパワーが欲しいなら充電式モデルのほうがいいだろう。
以上のことから、「小型で高性能な充電式モデル」を選ぼうとすると、選択肢がグッと絞られるのも事実だが、今回はそのなかから代表的な2モデルをセレクト。往復式で、深剃りできる、ブラウンの小さな本格派「ブラウン ミニ M-1012」(以下、「ブラウン ミニ」)と、フィリップスの代名詞でもある回転式刃を2つ搭載した新モデル「700シリーズ S791/06」(以下、「700シリーズ」)を比較する。
なんと、両モデルの重量は同じ! 「ブラウン ミニ」は約60(幅)×27(奥行)×110(高さ)mmで150g。「700シリーズ」は約59(幅)×34(奥行)×88(高さ)mmで150g(どちらもキャップをした状態)
旅や出張では、荷物を減らして身軽に行きたいところ。となると、モバイルシェーバーもフル充電でどれだけ持つかは確認しておきたい。シェービング1回5分とした場合、ニッケル水素バッテリーを使用する「ブラウン ミニ」は、約1時間充電で約40分の使用が可能なので、8回程度の使用が可能だ。つまり、1日1回使った場合、1週間くらいはもつ計算になる(もちろん、ヒゲが濃くて1日2回剃る場合は4日程度)。
いっぽう、リチウムイオンバッテリーを採用する「700シリーズ」は、約1時間充電で約60分の使用が可能。つまり12回使用でき、ヒゲが濃くても6日はもちそうだ。本モデルはリリースしたばかりということもあり、価格もそれなりだが、Qi(チー)規格対応のワイヤレス充電パッドでも充電可能できるという特徴がある。スマホ用のワイヤレス充電パッド1台でこと足りるのも、本モデルの魅力だ。
「ブラウン ミニ」(左)の充電にはACアダプターのケーブルを使用。「700シリーズ」(右)の充電にはUSB Type-A端子のケーブルを使用する。どちらのケーブルも重くはないが、荷物がかさばることは間違いない。とはいえ両モデルともに、1週間くらいの旅・出張であれば、充電ケーブル持って行く必要はなさそうだ
「ブラウン ミニ」は、高性能モーターと肌にやさしいマイクロコームを備えるほか、同社の最上級モデル「シリーズ9」と同じ網刃とS字型トリマー刃の2枚刃を搭載した往復式モデル。同社の従来モデル(BRAUN M-90)と比較して2倍のカットパワーを実現している。まるごと水洗いできるため、メンテナンスが簡単なのも魅力だ。もちろん風呂剃りも可能。
フォルムはフタを閉めると往年の初代「iPod」のような趣き。軽量薄型なので、握り込んでも、つまむように持っても、楽に操作できるのがいい。
「シリーズ9」と同じ網刃と、長いヒゲをカットするS字型トリマー刃の2枚刃構成。トリマー刃のほうには、肌へのダメージを軽減するマイクロコームを備えている
2枚刃はそれぞれ浮き沈みするため、肌にしっかりと密着
ボディには滑り止めのゴム部分があり、フィット感が高く、持ちやすい
日頃からフィリップスの回転式シェーバーを愛用しているユーザーにとっては、外出先でも回転式で剃れたらうれしいはず。そんな夢をかなえるのが、回転式のモバイルシェーバー「700シリーズ」だ。
本モデルは、薄くなった外刃で集められたヒゲを、リフト刃(内刃)が根元から引き上げ、カット刃(内刃)がカットする2段階仕様で、肌の下−0.08mmの深剃りを実現。その「スーパーリフト&カットテクノロジー」の回転刃を採用したヘッドを2基搭載している。また、そのヘッドはそれぞれ4方向に可動し、肌に密着する。
ちなみに、この刃の技術は、同時期に登場したフラッグシップモデル「i9000 プレステージ ウルトラ」にも搭載されているということを考慮すれば、「700シリーズ」の少々高く見える価格にも納得がいくだろう。
ほかにも、ワイヤレス充電対応や、センサー式スライド電源ボタン(使うのにちょっと慣れが必要)の搭載、手のひらに収まる丸みのあるデザインの採用など、面白い特徴が満載。なお、フィリップスのシェーバーはすべて対応していることだが、本体丸洗いと風呂剃りも可能だ。
刃は、強靭なスウェーデン生産のオーステナイト系ステンレス鋼を採用。また外刃の素材には、刺激性が少なく肌荒れを起こしにくい低アレルギー性のサージカルステンレス刃を使用している。オイル差しは不要だ(写真はイメージ)
2つの丸い回転刃は、それぞれ4方向に傾斜して肌に密着
ボディ中央をスッとなでて起動させるのは、ちょっとコツがいる
ヘッド部分を交換すると、鼻毛カッターに変身!
往復式モバイルシェーバー「ブラウン ミニ」(左)と、回転式モバイルシェーバー「700シリーズ」を剃り比べ!
まずは、「ブラウン ミニ」で剃ってみた。
意外だったのは肌あたりのよさ。深剃りマシンという荒々しい感じではなく、やさしい感触だ。そのうえ、筆者のクセたっぷりのヒゲをうまい具合にキャッチしていく。ヒリヒリもしない。小さなボディで網刃は1つ。なのに、こんなにスムーズに剃れるのには驚いた。
剃りにくい唇のキワの部分も、小ぶりなせいか楽に剃り上げられた。本体が軽い分、角度を自分で微調整しやすいからだ。これは結構スゴいかも……。
柔軟に浮き沈みする刃も優秀な「ブラウン ミニ」
次に、フィリップス「700シリーズ」で剃っていく。
回転式シェーバーは、どれもそうだが動かし方にコツがいる。肌の上で回しながら動かすことで実力を発揮できるからだ。
とはいえ、さすがフラッグシップモデルと同じ刃の構造を採用しているだけある。軽く押し当てながら回転させていくだけで、あちらこちらの方向に曲がって生えている筆者のヒゲを面白いくらいにキャッチしていく。もちろん肌にもやさしい印象で、行きつ戻りつを繰り返しても、ヒリヒリしなかった。ただ、剃り上げるのに少し時間はかかってしまうので、素早く剃るというよりも、ゆったりとシェービングタイムを楽しむタイプだと思った。
肌の上を円を描くように回しながら、やさしく剃るフィリップス「700シリーズ」
価格.com最安価格は、「ブラウン ミニ」(「M-1012」(ブラック)/「M-1011」(ホワイト))が5,600円前後だ。掃除用ブラシが付属するAmazon限定モデル「M-1013」(ブラック)と「M-1010」(イエロー)もあるが、価格が変動的で、5,000〜9,500円くらいと少し割高。丸洗い対応モデルなので、あえて選ぶ必要は薄そう。いずれにせよ、2台目需要に適した価格と言えよう。
いっぽうで、フィリップス「700シリーズ S791/06」(アッシュゴールド)は、2025年7月に登場してから日が浅いこともあって、価格は21,990円〜。さらにカラバリによってはこれよりも数万円高く設定されている。
ここまで価格差があると、コスパはブラウンが現時点では圧勝だ。回転式が欲しいなら、もう少し時間が経ち、「700シリーズ」の価格がこなれてくるのを待つのも手だろう。
性能的な面で言えば、ヒゲが濃く、夕方にも剃るという人で、かつまっすぐなヒゲが中心なら、時短で深剃りできる「ブラウン ミニ」が有利。的確にコントロールすれば、5分でも余裕ですべすべルックスになれる。ちょっと使用時間は短いが、2〜3日の出張ならまったく問題ない。
「700シリーズ」は、回転刃特有のくるくる回しながら剃るスタイルに慣れる必要がある。ただ、普段からフィリップスの回転式シェーバーを使っているならそれも問題なし。むしろ、なれている人にとっては、回転刃が外出先で使えること自体に感動するはずだ。また、「700シリーズ」は2ヘッドで小回りが利くので、シェービングがより楽しい。向いているヒゲは、やわらかくてあちらこちらに向いて生えているタイプ。ワイヤレス充電できるのも人によっては大きな魅力だろう。