いま、心拍トレーニングが注目されている。心拍トレーニングとは、運動中の心拍数を計測し、その数値を指標として行うトレーニング。身体への負荷の量が心拍数という具体的な数値で把握できるため、効率よく身体が鍛えられるというわけだ。かつては、一般人が心拍数を気軽に測るのは難しく、心拍トレーニングは上級アスリート向けだった。しかしいまは、腕に着けるだけで心拍数が計測できる活動量計が多数登場し、誰でも簡単に行えるようになった。
そこで今回は、心拍トレーニングを手軽に始めたい人に向けて、Fitbit、ガーミン、エプソンの人気ブランド3社から1万円台の心拍計内蔵活動量計をピックアップ。3モデルを数日使ってみて、計測能力、使い勝手、専用アプリの3項目で比較した。ちなみに、3モデルともGPS機能は搭載しない。
【目次】
・2万円を切る心拍計内蔵モデル3機種を紹介
・心拍数の目安はブランドによって微妙に異なる
・比較1 計測能力
・比較2 使い勝手
・比較3 専用アプリ
・まとめ
左から、Fitbit「Fitbit Alta HR」(価格.com最安価格18,874円)、ガーミン「vivosmart 3」(価格.com最安価格17,820円)、エプソン「PULSENSE PS-600」(価格.com最安価格18,800円)
まずは、3モデルの簡単な紹介から。
「Fitbit Alta HR」のブラックモデルのLサイズ。標準カラーのバリエーションはほかに、ブルーグレー、コーラル、フューシャを用意する
「Fitbit Alta HR」は、累計販売台数6000万台を超える人気ブランド「fitbit」の最新モデル。心拍計を搭載しながら、実測値で幅が約1.55cmというスリムさを実現した。
「vivosmart 3」のパープルモデル(Sサイズのみ)。カラーのバリエーションはほかに、ブラックを用意する
「vivosmart 3」は、GPSウォッチに定評があるガーミンの活動量計の新モデル。有機ELディスプレイを採用し、明るい日光の下でも計測数値が見やすい。50m防水対応なので、入浴時に外す手間が少ないのもうれしいポイント。
「PULSENSE PS-600」のエナジャイズドカッパーモデル。カラーバリエーションはほかに、エナジャイズドブラックを用意する
「PULSENSE PS-600」は、運動強度を5つの「心拍ゾーン」に置き換えてメーターで表示する腕時計タイプ。運動量と脈拍数から、“心のバランス”も記録できる。
各モデルのレビューに行く前に、心拍トレーニングのやり方について触れておく。まず知っておきたいのが、心拍トレーニングは目的に合わせた運動強度の調整ができるものだということ。運動したときに、だいたい最大心拍数の40〜70%であれば、脂肪燃焼や疲労回復、酸素摂取量の向上するゾーン、80%以上になれば筋力や運動能力が向上するゾーンとされている。その心拍ゾーンの設定は各ブランドによって多少異なり、この3ブランドではPULSENSEが一番細かく設定されている。
心拍の%は、PULSENSE Viewでプロフィールに入力した内容を元に、カルボーネン法で算出。心拍(%)=(心拍数−安静時心拍数)÷(最大心拍数−安静時心拍数)×100
最大心拍数を一般的な算出方法、(220−年齢)で計算。心拍(%)=心拍数÷(220−年齢)×100
筆者は35歳なので、だいたい185が最大心拍数。ダイエットをしたいときは100〜130くらい、運動能力を上げたい場合は約148以上の心拍数になるように運動をすればよいわけだ。また、心拍トレーニングは、運動の効果も見えやすくする。たとえばランニングで5分/kmで走って最初は平均心拍数が120だったとして、そのあと練習を重ね、後日に同じコースを同じ速度で走ったときに平均心拍数が110や100になっていたら、心肺機能が向上している証拠と言えるのだ。
ここからは、3つのモデルを比較していく。
まずは、3モデルが計測できる項目を紹介。
主要な計測項目と各モデルの可否。運動強度を計る乳酸閾値など、細かい計測項目は「vivosmart3」が得意
活動量計の基本的な計測項目である歩数や消費カロリー、動いた距離、そして心拍数は、3モデルとも網羅している。項目数としては「vivosmart3」が一番多く、そのうちのVO2Max(最大酸素摂取量)予測や乳酸閾値は、高度なトレーニング用の数値となる。
次に、各3モデルがどのように数値が測れるのか、1日着けっぱなしにしてアプリで記録をチェックしてみた。
「Fitbit Alta HR」のアプリ「fitbit」(iOS版)のメイン画面「ダッシュボード」。左にスワイプすると前日、右にスワイプすると次の日の「ダッシュボード」が閲覧可能。各項目をタップすると、1週間のデータの棒グラフが表示される
主要な活動量である歩数/移動距離/消費カロリー/アクティブな時間の合計がしっかり記録されていた。写真右下の心拍数も1日中計測できていた。
「vivosmart3」のアプリ「Garmin Connect Mobile」(Android版)のメイン画面「マイデイ」。各項目をタップすると1日ごとの記録が、横にスクロールすると自分が選択した項目の詳細なデータが閲覧できる
「Garmin Connect Mobile」は過去のデータは、「マイデイ」ではなく、「カレンダー」でこのようにまとめて表示される
1日のあらゆる活動量がバッチリ記録できていた。データはグラフ化されて見やすい。ウォーキングやランニングは自動的に認識して記録してくれるのもうれしい。
「PULSENSE PS-600」のアプリ「PULSENSE View」(Android版)のメイン画面「ライフログ」。上にスクロールするとリアルタイムの心拍数、下にスクロールすると日/週/月ごとに過去のデータが閲覧できる
「PULSENSE View」は、過去データを「ライフログ」に似た形式で表示する
「PULSENSE PS-600」も計測できる項目はすべてしっかり記録していた。ちなみに、食事内容を記録するアプリ「MyFitnessPal」と連携すると、摂取カロリーも「PULSENSE View」に表示できて便利だった。
どれも数値としてはしっかり計測されており、あらかじめ設定した目標値に対してどの程度達成したかもわかりやすい。3モデルの差が出たのは、ランニングの数値だ。3モデルをそれぞれ腕に着けて、だいたい20分ほどで約3km走ってみた結果が下記の通りだ。
「Fitbit Alta HR」は、走り始めると自動的にランニングだと認識してしっかり計測してくれた。データ項目は、走った時間、消費カロリー、平均心拍数、心拍ゾーンの4つとシンプル。中でも、心拍ゾーンの割合がひと目でわかるグラフが便利だ
「vivosmart3」は自動的にアクティビティを認識してくれるが、今回は走る直前にランニングモードにして計測。「vivosmart3」は3モデルの中で、一番データ項目が細かくて多い
特に便利なのは、平均速度やラップタイム、ペースグラフ、心拍数グラフ。走行中どの時点で自分がどの状態なのかを確認できるので、トレーニングの参考になる
心拍数はグラフ化もできる。好きな場所でタップすると、その時間の脈拍数まで閲覧できる。右上の「オーバーレイ」を使うと、このグラフの上にペース(分/km)の折れ線グラフをのせることも可能
「PULSENSE PS-600」は、手動認識機能「ワークアウト」で計測。こちらもそこそこデータ項目が多め。中央の心拍数グラフは、タップするとその時間の脈拍数値を確認できる。下部には、5つの心拍ゾーンの割合時間を表示
3モデルとも数値は似通っているので、多少の誤差はあれど参考程度の数値は記録できると言って問題ないだろう。“次のランニング”の参考にしやすいデータが揃うのは、「vivosmart3」。「Fitbit Alta HR」は、走った距離が出ないのが残念だった。