実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
チェーンスパイクやスノーシューも装着可能

雪中でもあったか! 雪山から街中まで使えるキーンのウインターシューズ「ウィンターポート2」


本格的に冬がやってきた。今季は暖冬との予想もあるようだが、そうは言っても山に入れば間違いなく厳しい寒さが襲ってくる。特に足先は冷えやすいため、保温力が高く、雪が内部に入りにくいシューズを履かなければ凍傷の恐れさえ生じてくる。

「ウィンターポート2」とは、どのようなシューズ?

寒風吹きつける高山の頂上を目指したり、深い雪の稜線を歩き続けたりするような場合は、鋭い爪を持つアイゼン(クランポン)が取り付けられる堅牢な構造のアルパイン系ブーツが望ましい。冬季用のエッジが効いたソールや、体重をしっかりと支えてくれる硬いアッパーによって体のバランスがとりやすく、凍てついた氷の上で安全性を高められるからだ。

だが、足の可動性を考えると保温素材をたっぷりと使うのは難しく、保温力は限定的である。ゆるやかな低山をゆっくりと楽しむスノーハイクのような時は、より温かなタイプを選んだほうが快適だろう。たとえば、今回ピックアップするキーン「ウィンターポート2」のようなタイプで、スノーブーツやウインターシューズなどといわれるカテゴリーに入るものだ。

大きな特徴は、アッパーの丈の長さ。ソールの下から測ると、最上部まで25cm(今回テストに使ったサイズ29cmの場合)にもなり、短めの長靴といった趣だ

シューレース(靴ヒモ)は使わず、ゴムのドローコードでフィット感を調整する仕組み。足首が曲がる部分より上は単なる筒状で、最上部のみドローコードで絞れる

後ろ側にはテープが縫い付けられ、上部はシューズを脱ぎ履きする時に指をかけられるループになっている。ここには白いステッチが入っているが、リフレクターのような機能は特にないようだ

2003年に創業されたキーンはアメリカの比較的若いメーカーで、同社の顔となるモデルには発売当時としては画期的な「トゥ・プロテクション」を全面的に押し出した「ニューポート」というサンダルがある。今回のウィンターポート2はそのニューポートのアッパーやソールの設計概念を受け継ぎつつ、保温性を高めた“冬バージョン”とも言える存在だ。いまやウィンターポート2自体もキーンの大定番という位置付けだが、今期からはアッパーの素材がやわらかく進化を遂げ、より使いやすくなっているという。

全体的に柔軟な構造だが、小さな指が集まっていて足の弱点とされているつま先は、硬いゴムで覆われている。これこそがキーンの製品の一大特徴で、同社ではこの部分を「トゥ・プロテクション」と呼んでいる

つま先と同様、かかとも硬いゴムで守られている。この部分は「シェルバック」といい、スノーシューやチェーンスパイクを取り付ける際にストラップ類を安定させるのに役立つ

ニューポートが原型にあるとはいえ、ウィンターポート2はやはり寒い時期に履くブーツだ。硬い雪に合わせてトゥ・プロテクションはサンダルであるニューポートよりも大きく、かかともシェルバッグで保護されている。また、スリップ防止効果を高めるためにソールの幅は広がり、ソールパターンの溝も深い。ミッドソールとアウターソールを合わせた厚みも増している。その結果、全体的に大ぶりだ。このボリューム感は、同じ冬季用のアルパインシューズと比べてもかなりなもので、アッパーの面積にも余裕があり、その分だけ保温材をたっぷりと使えている。

やわらかで強靱、そして温かいシューズを構成する素材の工夫

各部の素材も工夫されている。たとえば、アウトソールの素材はデュアルクライメートラバー。気温によって硬度が変わり、比較的暖かい街中の路上ではやわらかさを増してすべりにくくなり、より寒冷な山中では硬くなって雪面へ食い込みやすくなる。リニューアルされたアッパーはポリエステルとマイクロファイバーを組み合わせたもので、軽量でいて強靭だ。そして、アッパーの内側には独自の防水透湿素材である「KEEN.DRY」が使われている。

ソールの幅は、最大の部分で12.5p。接地面積が広く、その分だけグリップ力が増してすべりにくい

ソールの幅は、最大の部分で12.5p。接地面積が広く、その分だけグリップ力が増してすべりにくい

アウトソールの溝は深め。前部は蹴り出しやすいパターン、後部は接地した時にすべりにくいパターンになっている

アッパーが格段にやわらかくなったので、暖かい時はこのように上部を折りたたんで履くこともできる。山中というよりは街履きに使う際の一例ではあるが、参考までに

さて、ウインターブーツではもっとも重要な機能である「保温性」について、より具体的に見ていこう。ウィンターポート2に採用されている保温材は「KEEN.WARM」というポリエステルと竹炭をブレンドした同社独自のもの。履き心地のよさを向上させるために、あえて前シーズンよりも量を減らして100gに抑えているが、同時に起毛を増やすなどの工夫を加えることで、なんと-20℃に対応するという。しかも、遠赤外線効果や抗菌防臭、吸湿の効果も高いらしいのだ。

ブーツの内側には、目のつまったフリースのようにもやわらかなフェルトのようにも見える「KEEN.WARM」のライナー。手を入れてみると、ほんのりと温かさを感じる

靴ヒモではなく伸縮性のドローコードでやわらかにフィットさせるだけなので、硬い構造の上に靴ヒモで締めるアルパインブーツのように血流が阻害されることは少なく、つねに血行は良好に保たれる。これが間接的に冷えにくい一因にもなっている

地面からソール越しに伝わってくる冷たさを遮断するサーマルインソール(フットベッド)。速乾性も高く、湿気をブーツ内から迅速に排出するのを手助けする

「ウィンターポート2」を履いて雪山を歩く!

便宜上、ここまでの撮影は雪が積もっていない平地で行っているが、ここからがテストの本番だ。僕が向かったのは、北関東某所の山中。駐車場がある峠から登山道を歩き始めると、平日とあってほかに誰もおらず、もちろん踏み跡も残っていない。それどころか横殴りに雪が吹き付けてきて、もはや完全な吹雪だ。無理はしないと心に決め、僕はウィンターポート2の内側にパンツの裾を押し込んで歩き始めた。

駐車場に近い場所でも、一歩足を踏み込むと脛まで隠れてしまい、吹き溜まりでは太ももまで埋まることも。柔軟な造りで低山ハイク向けのウィンターポート2には、少々過酷な環境であった

しかし、このような状態で雪の中へ長時間立ち止まっていても、まったく冷えを感じない。歩いているとむしろホカホカしすぎるくらいだ

脛以上に雪が深い場所に足を突っ込むと、ブーツとパンツの隙間から雪が侵入しようとする。だが、ドローコードでしっかりと絞っておけば、ほとんど雪は内部に入らない

ブーツ上部に付けられたドローコードは単純な工夫ながら思いのほか効果があり、簡単にはブーツ内に雪が入り込まない。これが雪ではなく雨であれば、すぐに浸透して流れ込んでくるだろうが、さすが雪は固体である。入口に隙間さえなければ、内側はほとんどドライなままだ。とはいえ、長時間行動していれば粉雪のように粒子が細かいものが少しずつ入り込んでくるのは避けられない。そこで、僕はゲイター(スパッツ)を併用することにした。これによって、ある意味ではブーツのアッパーは膝下まで延長されることになる。

ブーツの上に、ブラック×グレーというカラーリングのゲイターをプラス。ちなみにゲイター内部では、パンツの裾をブーツから出し、ブーツを覆うようにかぶせている。そのような重ね方のほうが、上部から雪が入り込んできてもブーツ内には入りにくいからだ

ウィンターポート2はゲイターと組み合わることも想定し、甲の部分にDリングがあらかじめ取り付けられている。ここにゲイター前部のフックを引っかければ、深い雪の中に足を踏み入れても、ずり上がることがない

片方だけゲイターを取り付けた様子。見るまでもなく、深い雪の中ではゲイターありのスタイルのほうが機能的だ。アクティブに雪山を楽しみたい人は、別途ゲイターも用意しておきたい

ゲイターを組み合わせると、ウィンターポート2の実戦能力はいち段と高まった。しかし、さらに深い雪の中ではどうするか? ひとつの答えは、スノーシューを履くことだ。大半のスノーシューはビンディングでブーツに固定するが、ストラップなどで強く締め付けなければならず、華奢なブーツでは圧迫感が強すぎて使えない。しかし、そんなことも想定してウィンターポート2はかかとにシェルバックという硬いパーツを備えており、スノーシューとの相性はよい。

ウィンターポート2のソール幅は広めだが、スノーシューのデッキの上にも問題なく収まり、前傾した時につま先が引っかかることもない。しかし、スノーシューの種類によっては使いにくいこともあり得るので、事前に合わせてみたほうがよい

スノーシューを組み合わせることで、雪上での機動力はますます向上。足が深く雪中に沈み込むことがなくなり、こうなるとゲイターは使わずに済む

ますます風は強くなり、雪の量も多くなってきた。登山道はますます歩きにくくなる。ブーツを自分の足にフィットさせているのは伸縮性のドローコードのみ。急斜面ではわずかでも足元にゆるみがあると力が入りにくく、靴ヒモでがっちりと合わせるアルパイン系ブーツほど歩行時の安定感はない。丸みを帯びたつま先は雪の中でも前方へ蹴りだしやすいが、その半面、雪が硬いと雪中に蹴り込みにくくもあり、細かなステップを作るのは容易ではない。このまま進んでいくと、ウィンターポート2ではなく、アルパイン系ブーツが得意とする状況になってしまう。だが、気温は-5℃程度とはいえ、風速を考えれば体感温度は-15℃を下回ると思われる山中でも、僕の足はつま先まで温かさをキープできている。保温力はさすがのものだ。

登山道の斜度がきつくなる前に、僕は同じ道を引き返し始めた。今回のテストはまだ12月中旬だったため、雪が深く積もっている場所を探すと険しい奥山ばかりだった。そもそもウィンターポート2が得意とするゆるやかな雪面の場所は少なかったのだから、撤退も仕方ない。

駐車場へ戻るとアスファルトの上の雪は吹き飛ばされ、凍結した氷が露出していた。ほぼ水平に近い道路だが、雪以上にすべりやすいシチュエーションである。しかし、ソールのグリップ力は十分で、足を強く置いたり、故意にすべらせてみたりしてもほとんどスリップする感覚がない。だが、もう少し斜度がある坂道であればさすがにすべりやすくなるだろうと、僕は持参してきたチェーンスパイクを合わせ、凍り付いた車道も少し歩いてみた。

半透明に凍り付いた氷の上でもグリップ力は上々。正直なところ、これは想像以上だった

半透明に凍り付いた氷の上でもグリップ力は上々。正直なところ、これは想像以上だった

チェーンスパイクを取り付けた状態。この時もスノーシューと同様、かかとのシェルバックと、つま先のトゥ・プロテクションの硬さがとても有効で、スパイクをしっかりと固定できた

ウィンターポート2とチェーンスパイクの相性も良好だった。この手のスパイクは、やわらかなシューズを合わせるとアッパーごと足の甲を強く押さえつけ、痛みを生じさせることがあり、血行を阻害して足先の冷えの原因にもなることも多い。しかし、ウィンターポート2ならば問題はないようで、アスファルトの上を長いことウロウロしていても足のコンディションはいつまでも保たれていたのだった。

山行を終えて

ウィンターポート2は、雪中でも温かなブーツであることは確かなようだ。十分に使われた保温材、ドローコードで締め付けるだけのゆるやかな造りが、その機能性を実現している。ただし、険しい高山で使うアルパインブーツのようなタフなアッパーやソールを持ちあせているわけではなく、12本爪や10本爪の本格的なアイゼンを取りつけることもできない。組み合わせられるのは軽アイゼンやチェーンスパイク程度で、傾斜が厳しい場所を歩くのも不得意だ。活躍するのは、主に起伏がゆるやかな山となるだろう。だが、低山を中心にウィンターポート2で歩ける山は全国に広がっている。

僕が特に評価したいのは、その応用力の高さである。このようなウインターシューズには、そのシューズそのものが持つ保温力やグリップ力には問題がないものの、軽量性を追求しすぎて華奢な造りになり、チェーンスパイクなどを併用しにくいものも多い。街で使用するならばそれでもいいが、山中で使う場合は頼りなさを感じてしまう。だが、ウィンターポート2は、チェーンスパイクに加えてスノーシューも問題なく組み合わせられる。しかもゲイター用のDリングまで付属しているとは、気がきいているではないか。

ウィンターポート2はデザイン性も高く、日常生活では街履きにも使えるウインターシューズだ。雪山にはあまり行く機会がなく、冬は街にばかりいるという人でも、大雪の日に出番があるかもしれない。メーカー希望小売価格は17,064円(税込)と価格もそう高くはないので、1足持っていても損はないだろう。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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