スントと言えば、そのプロダクトにおいて、機能性の高さとデザインの美しさを高次元で融合することで知られるフィンランドのブランド。北欧ブランドならではの洗練されたデザインは、ランニングを始めとしたアクティビティのときだけではなく、ライフスタイルの場においても活躍することから、最近では日本でも愛用者が着実に増えてきている。
スントのプライスゾーンは、他ブランドよりも高めで高級なイメージがあるが、最新モデルの「SUUNTO 5(スント5)」は、高級感をキープしながらリーズナブルなプライスを実現。同社のシェア拡大に大きく貢献しそうなプロダクトである。
「スント5」のホワイト。公式サイト価格は43,000円(税別)
筆者は、これまでにいくつものランニングウオッチを使用してきた。
ほぼ毎日走るようになった2007年11月当時、GPS機能付きウオッチは一般的ではなかった。しかししばらくすると、各ブランドから一斉にリリースされ、2010年代にはかなりポピュラーな存在となった。以来、数々の機種を使ってきたが、最も多くトライしたブランドがスントである。
スントはフィンランド発祥のブランドだ。古くからのファンなら、1990年代末期に同社の「ベクター」がスタイリッシュなデザインにより、ファッションシーンでもブレイクしたことを記憶しているだろう。その美しいデザインは現在のプロダクトにも継承されており、他ブランドとは明らかに一線を画す。ファッション業界関係者に同社製品の愛用者が多いのも、うなずける話だ。
現在は生産が終了している「スント ベクター」
そんなスントにも弱点がある。それは、高めのプライス設定だ。機能性が高く、現在もフィンランドで生産をしているモデルが多いことを考慮すれば致し方のないことだが、価格を理由に購入をあきらめたランナーも少なくない。最近では2万円台のGPSウオッチも珍しくないし、お小遣い制のビジネスパーソンにとっては、10万円近いランニングウオッチは高嶺の花なのである。
スントはそのような状況のもと、リーズナブルプライスの「SPARTAN TRAINER(スパルタン トレーナー)」などをリリースして一定の成功を収めたが、同社としては満足のいく販売状況ではなかった。
そこで、この状況を打破すべくリリースされたのが「スント5」なのだ。スントのみならず、GPSデバイスの最高峰といっても過言ではない「スント9」、フィットネストラッカーの「スント3 フィットネス」に続くナンバリングプロダクトで、すぐれた機能性と美しいデザインを、買いやすい価格で実現。まさに「スパルタン トレーナー」の後継モデルに当たるのだが、アジア生産ではなく、本国フィンランド製なのは、ガジェット好きにはたまらないポイントだ。
実際に使ってみてまず感じるのは、そのサイズ感。46mmというケースの直径は、最近筆者がメインで使っている「スント9 」(直径50mm)と「Apple Watch Series 4」(直径44mm)の中間の大きさで、大き過ぎず小さ過ぎない、ほどよい大きさ。文字盤の視認性もよい。ちなみに、46mmというサイズは、ロレックスの「デイトナ」と同じだ。
ハイエンドモデル「スント9」はタッチパネルを採用していたが、「スント5」はサイドの5つのボタンを押して操作する。最近はタッチパネル式のデバイスに慣れていたので最初は少しとまどったが、インターフェイスは同社製品とほぼ共通なので、しばらくするとスムーズに操作できるようになった。
右上のボタンを押すとメインメニューへ。「エクササイズ」を選ぶと、各アクティビティの項目が現われる
一般的なランニングなら、「ランニング べーシック」をセレクト
本体右上のボタンを押すと、エクササイズやログブックといった項目が現われ、ただ走るのであれば「ランニング ベーシック」の項目をセレクトし、GPSの捕捉と心拍の計測を待ってからスタートボタンを押せばいい。
画面上の「スタート」の文字の下にオプションの文字が見えたら、右下のボタンを押してみよう。トレーニングの各種オプションが表示されるが、「バッテリーモード」では、最も詳細なログを記録する「パフォーマンス」、バッテリー駆動時間の延長が可能な「エンデュランス」、そしてユーザーが細かく設定できる「カスタム」という3種類のモードからセレクトできる。最長で40時間という長時間のバッテリー寿命を確保しているので、ウルトラマラソンや長距離のトレイルランニングレースにも対応可能なのもうれしいポイントだ。
「ヨガ/ピラティス」のようなアクティビティも選択できる
計測データの表示は、ほかのスントのGPSウオッチと同様
心拍数は、心拍ベルトを使わずに手首部分で計測可能だ。また、カラー液晶の文字盤は視認性が高く、走行中もペースや距離を確認しやすい。重量は66gで、81gの「スント9」よりも15g軽いが、実際はもっと差があるように感じる。他ブランドの軽量タイプよりは重いが、一般的なランナーが日々のランやレースで使用するには何ら問題ない重量だし、柔軟なシリコン製のストラップも腕へのフィット感が高く、オーストラリアで開催された「ゴールドコーストマラソン」(フルマラソンの部)でも使用したが、スタートからゴールまで快適な着用感をキープしてくれた。
本体で計測したデータをスマートフォンへ転送するのも簡単。これまでスントのアプリといえば「Movescount」だったが、新たに「suuntoアプリ」が登場したのだ。筆者も長年使った「Movescount」のデータを「suuntoアプリ」に移し替えたが、使い勝手のよさは向上している。ログデータをもとに3Dアニメーションムービーを自動作成する「SUUNTO MOVIE」の機能がなくなったことだけは残念に思ったが、「Relive」という提携アプリを使えば、同種のムービーを作成できるのでひと安心だ。
新たに登場した「suuntoアプリ」。個人的には従来の「Movescount」よりも使い勝手がよいと感じた
スマートフォン版の「Movescount」では、1kmごとのラップは表示できなかったが、「suuntoアプリ」(写真)では可能
「スント5」は、46mmというスントのプロダクト標準よりもひと回り小さなサイズに、すぐれた機能と洗練されたデザインを結集。税別43,000円とは思えない高級感を漂わせているだけに、ランニングウオッチに機能性はもちろんのこと、デザイン性も求めるランナーには最適なプロダクトと言えるだろう。