エリアの釣りがさらに楽しくなるロッド&リールを選ぼう!
エリア(管理釣り場)での釣りを始めたばかりの人であれば、友人からの借り物やエリアのレンタル用品で満足できるだろう。しかし続けていくと、次第に自分のロッドやリールが欲しくなってくる。そんなときは、ぜひ専用タックルをそろえてもらいたい。そうすれば、“釣り欲”は高まり、より釣りが好きになるはずだ。
とはいえ、エリア専用ロッドの種類は実に多彩。リールとセットで売られているような廉価版から、エリアトーナメントで活躍するアングラーが使うハイエンドロッドまで、ラインアップされている。そんな中から、最初の1本を選び抜くにはどうすべきか? タックル&ルアーメーカー、ヴァルケインの菊地栄一さんに聞いてみた。
アドバイザー/菊地栄一さん
【PROFILE】
タックル&ルアーメーカー「ヴァルケイン」の代表。高い開発能力と豊富な経験値でハイポテンシャルなルアーやロッドを生み出し続けている。ビギナーへのわかりやすい解説にも定評がある
まず押さえておきたいのは、ビギナーにとってハイエンドのロッドが必ずしも使いやすいわけではないということ。
「エリアフィッシングを始めるのであれば、高級なハイエンドモデルにこだわるより、エリア専用モデルを選ぶことを優先してほしいです。また、フィーリングも大事なんです。それさえマッチすれば、エントリーモデルでもまったく構いません」(菊地さん)
最初の1本として選ぶべきロッドは、エリアでさまざまな釣りがストレスなく楽しめる汎用性の高いロッド。それは、必ずしもハイエンドというわけではない
菊地さんいわく、ロッドは価格やスペックにとらわれず、自分が手にしたときや振ってみたときの「使いやすそう」というフィーリングで選んでもよいという。使用目的が細分化されたエリアロッドの場合、高価なハイエンドモデルほど、使用目的を特化させたモデルが多い傾向にある。その半面、そういったモデルは汎用性を狭めているケースも少なくない。つまり、特化型のハイエンドモデルを最初から選んでしまうと、汎用性の高い1本が必要なビギナーにはマッチしないケースが出てくるというわけだ。
「もちろんハイエンドモデルにはハイエンドモデルのよさがあります。しかし、それを使おうとすることで釣行回数に制約が出るくらいなら、エントリーロッドを使い倒すくらいのほうがいいと思います」(菊地さん)
まず結論から言うと、ハイエンドモデルほど、高感度なセッティングを採用している。
菊地さんは、ハイエンドロッドをF1マシンにたとえる。F1マシンは、サーキットを速く走るためのクルマであり、そのサーキットやドライバーごとに異なるセッティングが必要だ。対してエントリーロッドは市販車にたとえられる。誰もが快適に一般道を走らせることができるというわけだ。つまり、ハイエンドロッドのポテンシャルを最大限引き出すには、それを使いこなせるスキルも必要なのだ。
ハイエンドモデルは、アタリだけでなく、ルアーの状態や水流の変化まで感じ取れる高感度なモデルが多い。使いこなすスキルがあれば、それはアングラーに大きなメリットをもたらす。それがハイエンドロッドの魅力だ
「ロッドに求められる要素のひとつに感度があります。その感度を上げるためにブランク(ロッド素材)やガイドといった各パーツに最高級品を使用し、より高感度に仕上げられているのがハイエンドの大きな特徴です」(菊地さん)
このようにセンシティブに仕上げられたハイエンドロッドは、スキルアップしたアスリート的なアングラーには強い武器となる。しかし、自分がビギナーから中級者くらいのレベルであるなら、エントリーロッドで場数を踏んだほうが腕は磨かれるかもしれない。
また、自分の腕が磨かれても、エントリーロッドの価値が下がるわけではない。エリアトーナメントに出場する菊地さんは、ハイエンドモデルとともにエントリーモデルであるヴァルケインの「ブレイクスルー ゼロヴァージ6’3L」を使い続けているという。
ヴァルケイン「ブレイクスルー ゼロヴァージ6’3L」。「『ゼロヴァージ6’3L』は、全体的に曲がるロッドなんですが、これがマイクロクランクの釣りにマッチしており、バレにくいんです。表層付近でシャロークランクを食わせた場合、硬めのロッドだとグンッときた瞬間に跳ねてバラしてしまうことがある。そんなシーンにおいても、このロッドはしっかりと曲がって、魚を跳ねさせず寄せてこられる。だから試合にも投入しています」(菊地さん)
「どんなルアーでも幅広く使いやすいロッドを求めるなら、『M』や『ML』と表記されているモデルを選ぶといいと思います」(菊地さん)
エリアフィッシングのエキスパートになると、釣り場に数本のタックルを持ち込み、使うルアーや状況によって、それぞれを使い分けるようになってくる。しかし、ビギナーがまず欲しいのは数本中の1本ではなく、最初の1本。つまり、使用状況の特化したロッドでなはく、スプーンからクランクまで幅広く使える汎用性の高いロッドだ。その目安となるのがロッド名にある番手表記の文字。そこに「M」や「ML」と書かれたモデルがベターだという。
「弊社のモデルだと「L」「GL」という表記に当たるんですが、硬過ぎずやわらか過ぎず、いろいろなルアーの操作性に富んだモデルだと思います」(菊地さん)
ヴァルケイン「ブレイクスルー ゼロヴァージ6’0GL」は、操作性に富んだ6フィートモデル。スプーンからミノー、ボトムまで、幅広く対応するハイポテンシャルなエントリーシリーズだ
ヴァルケイン「ブレイクスルー ゼロヴァージ6’1L」は、スプーンとクランクをメインに多くのタイプのルアーに対応するコスパの高いオールラウンドモデル
2本目は、1本目と対極にあるロッドを選ぶと釣りの幅が広がる……と思うのは間違い!
たとえば、1本目にやや硬めの「M」を選んだ場合、次はやわらかめの「UL」を選んだほうが、1本目でできないことが可能になるため釣りの幅が広がると考えがちだ。しかし、ポテンシャルが対極にあるようなロッドを2本目に選んでしまうと、それぞれが連動せず、釣りの幅は広がらないという。
「1本目を気に入っていることを前提に、釣りの幅を広げたいなら、2本目に選ぶべきは同じモデルか、ひとつ隣のモデルです」(菊地さん)
「ボトムの釣りに特化したロッド」または「マイクロスプーン専用のロッド」と目的が明確な場合はその限りではないが、1本目のロッドが6フィートの「L」であれば、次のロッドも6フィートクラスの「L」か「ML」を選んだほうが1本目との連動性によって「手数が増える」というのが菊地さんの考えだ。そして3本目、4本目を求めるときにこそ、使用目的が明確なロッドを選ぶのがベストだという。
ヴァルケイン「ブレイクスルー ゼロヴァージ6’0UL」。マイクロスプーンなど、軽いウエイトのルアーの飛距離が出しやすく、トラウトのバイトにフレキシブルに対応しながら、そのパワーを吸収して寄せるウルトラライトモデルだ
ヴァルケイン「ブレイクスルー ゼロヴァージ6’0ISS」は、ソリッドトップを採用したモデルをビギナーでも使いやすく再設計した1本。伸び率の低いラインとのセッティングで、ショートバイトをキャッチにつなげる
ロッドを変えずに、セッティングを変える方法もある。
2本目のロッドでは、1本目と少し違う釣り方がしたいと考える人は多いだろう。そんなときに菊地さんが提案するのが、使用ラインの変更だ。たとえば、1本目のロッドでナイロンラインを使っていたなら、2本目の同じロッドではライン素材をフロロやPEにする。それだけで、タックルバランスも使用感も変えることができる。このように、ロッドはライン素材を変えることでも、その特性やフィーリングを自分好みに調整することができるのだ。
「ラインとの組み合わせを変えることで、これまで『ちょっとな……』と思っていたロッドのベストセッティングが見つけられることもあります。どんなロッドにも、自分にとってベストなセッティングや活躍する用途が必ずあるんです」(菊地さん)
同じロッドでも、ライン素材をナイロン、フロロ、PE、エステルと使い分けることで、そのセッティングは4通りにも広がる。その違いを理解すると、ロッドのポテンシャルはこれまで以上に引き出される
また、所有ロッドが増えていく中で「タックルに順位をつけない」ことも大事。たとえば、1本目に買ったエントリーモデルよりも3本目に買ったハイエンドモデルのほうがエースで、1本目はサブとして使う、みたいな決め方をしないこと。なぜなら、その順位をつけた時点で、下位のタックルのポテンシャルが引き出せなくなるからだ。
「どのロッドも、そのシチュエーションでの1番なんです。エントリーモデルでもハイエンドモデルでも差をつけない。それぞれのタックルに見合う使い方があるので順位はない。ゴルフクラブと同じだと思えばいいんです。ドライバーはドライバー。パターはパター。用途が違うから比べようがないんです。僕はゴルフ、やらないですけどね(笑)」(菊地さん)
リールは完全なる機械で、価格と性能が顕著に比例する道具だ。
ロッドに関しては、価格的性能よりも「フィーリング」を重視していいと考える菊地さんだが、ことリールに関しては少し考え方が違う。というのも、ロッドより精密な機械であるリールは、使用されているパーツや素材の内容によって性能の優劣がつきやすい道具だからだ。
「最初のタックルで、ロッドとリールどちらに予算をかけるかで悩んだら、リールに比重を置くのが僕の考えです」(菊地さん)
リールは、ダイワとシマノの2社が有名。どちらの場合も、エリア用で考えるなら、サイズの目安は「2000番台」で、スプールは「浅溝」が基準。そして、可能であれば実売価格で20,000円前後出せると、ストレスなく使えるうえ、タックルが増えた際にも残して使い続けられるモデルになるという。では大手2社、ダイワかシマノかの選び方だが、菊地さんはそれぞれの特性で使い分けている。
「これはあくまでも個人的な感覚ですが、シマノ製リールはどのタイミングでアタリが出てもスムーズにドラグが出る。ダイワ製リールは粘ってからギリギリでドラグが出る。その特性からかんがみると、エステルやPEのように伸びのないラインを使う釣りではシマノ製を、逆に伸びのあるナイロンやフロロを使う釣りではダイワ製を使うことが多いです。それぞれのメーカーの特性を生かす、自分なりの使い分けです」(菊地さん)
ダイワ「カルディアLT2000S」は、軽くて強い(ライト&タフ)をコンセプトに進化を遂げたコスパの高いモデル。「2000S」で170gという軽さが自慢だ(写真は「2500」)
シマノ「ストラディックC2000S」は、上位機種に迫る基本性能を備えたハイスペックな中価格帯モデル。ビギナーから上級者まで満足できる、巻き心地と耐久性能を持つモデルだ
以上で説明したタックル選びのコツをまとめてみた。
(1)大事なのは「フィーリング」。最初の1本では無理のないエントリーモデルでも十分。
(2)迷ったら6フィート〜6フィート3インチの「M」「ML」モデルを。
(3)2本目は1本目と同じロッドか隣のロッドを選ぶ。
(4)使用感はライン素材を変えることで調整可能。
(5)リールの性能は価格に比例。2000番クラスの浅溝を推奨。
以上の点を踏まえて、エリアの釣りがもっと楽しくなるタックルを選びたい。
筆者も実践してみた! なかなか実際の釣りで、いろいろなロッドを試せる機会は少ないが、今回おじゃました釣り場「アルクスポンド焼津」では、ヴァルケインの各種ロッドの試釣が可能。そんな釣り場でお気に入りの1本や、いつかは欲しいハイエンドモデルに触れてみるのもいいだろう。ちなみに筆者は、同じロッドでもライン素材を変えた際の使用感の変化に感動! タックルバランスって奥が深いと実感した
「フィッシングパーク アルクスポンド焼津」
●住所:静岡県焼津市利右衛門115
ベテランやエキスパートだけでなく、ビギナーや子ども&女性にもやさしい釣り場。ヴァルケインの各種ロッドの試投や試釣も可能
釣り雑誌を中心に取材&執筆を行うフリーランスライター。自身も渓流トラウトやライトソルトの釣りを楽しむ。エリアフィッシング専門誌「アングリングファン」などで執筆。シングルモルト好き。