イベントレポート

【サイクルモード後追いレポ】どんなフィールドも自由に駆け抜けられる最新MTBを語らせてくれ!

これまで2回に渡り「サイクルモードインターナショナル2016」で見つけたロードバイク電動アシスト自転車を紹介してきたが、筆者の本命はマウンテンバイク(以下、MTB)だ。例年MTBの出展数は少ないのだが、今年はさらにその傾向が強まり、展示されていたMTBの割合は全体の2%ほどと無類のMTB好きとしては悲しい限り。しかし、トレンドを垣間見ることはできた。MTB業界では近年、27.5インチというタイヤ径が主役に躍り出てきているが、当イベントに出展されていたモデルもほぼ27.5インチのみ。さらに、より太いタイヤを履かせた「27.5プラス」規格や「ファットバイク」と呼ばれるジャンルも注目を集めている。そんなMTBの今を、注目度の高いモデルとあわせて語らせてもらおう。

【KONA】走破できない場所はない!? スタイルで選べるMTB続々

ドロップハンドルでオフロードを走る「シクロクロス」と呼ばれるモデルをはじめ、“土の匂い”を感じさせるラインアップが中心に揃うカナダのブランド「KONA(コナ)」のブースには、当イベントにおいてもっとも多くのMTBが展示されていた。前だけにサスペンションを装備したハードテイルモデルや、前後ともにサスを搭載したフルサスモデルといった多くの車種が並ぶ中、ひと際目を引いたのがMTB遊びの基本を感じられる27.5インチのハードテイルモデル「CINDER CONE(シンダーコーン)」だ。冒頭にも記したとおり、現在の主流は27.5インチであるゆえタイヤ径のサイズが特徴というわけではないが、「CINDER CONE」はエントリーグレードながら近年のトレンドであるフロントシングルの変速システムを搭載しているのがポイント。このシステムは前側のギアを1枚にして荒れた道でのチェーン落ちを防ぎつつ、後ろ側にサイズの大きなギアを採用することで激しい登り坂などにも対応するギア比としたもの。前後のギア比バランスを考えながら変速する必要がないため、初心者でも安心してオフロード遊びを楽しめる。少し前まで変速システムだけで10万円を超えていたものが、完成車を15万円を切る価格でゲットできる「CINDER CONE」は、かなり狙い目だ!

14万6000円という手ごろな価格が魅力の「CINDER CONE」は、エントリーグレードながらも27.5インチタイヤと前側の変速を搭載しない近年のトレンドを押さえている

続いて目にとまったのは、27.5インチサイズに太いリムを装備し、幅2.8〜3インチのエアボリュームのあるタイヤを履かせた「27.5プラス」規格を搭載した「BIG HONZO(ビッグホンゾ)」。27.5プラス規格はタイヤの外径が29インチとほぼ同等となるため、スピードの乗りはよいものの小回りが効きにくい傾向にあるが、「BIG HONZO」はシート下のフレームを湾曲させることでリアタイヤを少し前に配置し、キビキビした走行感を実現した。タイヤの外径が大きいので街乗りで使っても速度を維持しやすく、段差もものともしない走破性を備えており、使いやすいモデルと言える。価格は前述の「CINDER CONE」よりも3万円ほど高いが、27.5プラス規格のリムとタイヤだけでその価格差はゆうに超えてしまうもの。高い安心感を得つつ、アクティブに遊びたいなら「BIG HONZO」を選ぶのもありだろう。

「BIG HONZO」はアルミフレームのハードテイルではあるが、27.5×2.8インチという太めのタイヤを装備することで後ろのサスペンションがなくても快適な走行性能とグリップを実現。フロントシングルの変速システムも採用する。価格は17万4000円

KONAのブースで最後に紹介するのは、どんな路面でも走れるようにさらに太いタイヤを装備したファットバイク「WOZO(ウォーゾー)」だ。もともとファットバイクは雪の上でも滑らないグリップ力を発揮できるように開発されたもので、MTBのジャンルのひとつ。「WOZO」はKONAブランドのファットバイクではトップグレードに当たり、フロント4.8インチ、リア4.0インチという極太のタイヤを装備。リム径は26インチだが、タイヤの外径は29インチ規格を超える太さとなる。この太いタイヤにより、雪や砂の上など通常のMTBでは難しい場所も走行可能。実際にトレイルで乗ると、サスペンション非搭載でもみずから道を作りながら走っていくような感覚を味わえる。だが、「WOZO」のすごさはこれだけではない。フロントにファットバイク専用のサスペンションを備えており、さらにワンランク上の走破性が得られるのだ。もはや「WOZO」で走れないフィールドはないのでは? と思わせる完成度に胸が高鳴る。

「WOZO」には「HONZO」シリーズのジオメトリーを採用。シート下のフレームを湾曲させることでホイールベースを詰め、極太タイヤを履かせながらも小回りの効くハンドリングを実現した

フロントには4.8インチの圧倒的な太さのタイヤを装備し、サスペンションも搭載している。このスペックで23万9000円という価格は安い!

【Devinci】登りも下りも楽しそうなフルサスモデルに注目

日本国内での知名度は低いものの、海外のハードなMTBレースで好成績を収めている「Devinci(ダヴィンチ)」も見逃せない。ダウンヒルなどで活躍し、下り系のイメージが強いメーカーだが、出展されていたのはトレイルバイクに分類される幅広いシーンで遊べるモデルだ。なかでも気になったのが、27.5モデル「Django Carbon(ジャンゴ カーボン)」と27.5プラス規格のタイヤを履いた「Marshall 27.5+ Carbon(マーシャル 27.5プラス カーボン)」。どちらも前後にサスペンションを装備したフルサスモデルで、スプリット・ピボットシステムという独自の機構によりペダリングによるサスペンションの動きを最小限に抑え、路面からの衝撃をしっかり吸収する。ペダルを踏んだ力が逃げないだけでなく、サスペンションが前後タイヤを路面に押し付けてくれるので登りも下りも快適に楽しめそう。

カーボンフレームに前後サスペンションを装備した「Django Carbon」。価格はフレームセットが29万4000円で、完成車は82万円となっている

より太いタイヤを装着した「Marshall 27.5+ Carbon」の価格はフレームセットが29万4000円で、完成車が50万円。29インチのホイールを履かせることもできる

【LAPIERRE】性格の異なる2種類の競技志向の高いフルサスモデル

フランスの「LAPIERRE(ラピエール)」のブースには、競技志向の高いフルサスモデルが展示されていた。その中のひとつ、「SPICY(スパイシー) 327」は昨今、欧米で絶大な人気を誇るエンデューロレース(登りの移動区間と下りのタイムアタック区間を組み合わせたレース)向けのモデル。エンデューロレースは登りも下りも走破する性能が必要とされるため、どんなシーンでも楽しめる仕上がりとなっている。そしてもうひとつ、クロスカントリー向けの「ZESTY(ゼスティー) XM 227」にも注目したい。「ZESTY XM 227」もフルサスモデルだが、ペダルを漕いでスピードを競う区間が多いのでペダルを漕いだ時の効率がより高められているのが特徴。里山を走るような使い方をする場合には、「SPICY 327」よりも「ZESTY XM 227」のほうが適していそうだ。

エンデューロレース向け「SPICY 327」は前後にサスペンションを装備し、下りにフォーカスしたジオメトリーを採用。価格は45万9000円となっている

クロスカントリーレース向け「ZESTY XM 227」の価格は28万9000円

クロスカントリーレース向け「ZESTY XM 227」の価格は28万9000円

【MOOTS】ドロップハンドルなのにMTB!?

最後に紹介させてほしいのが、ハンドメイドのチタンフレームを製造する「MOOTS(ムーツ)」というメーカーの「BAXTER(バクスター)」。近年はロードバイクに太めのタイヤを装備して未舗装路を走れるようにした「グラベルロード」というジャンルが人気を集めているが、「BAXTER」は同社のグラベルロードよりもさらに太い29インチMTBのタイヤを履かせた「モンスタークロス」、または「アドベンチャーバイク」と呼ばれるモデルだ。ドロップハンドルを搭載しているため長距離移動も快適なうえ、太いオフロード向けのタイヤで走る路面を選ばない。日本国内だとどんなところを走るのかイメージしにくいが、このような自転車で自然の中を走り抜けるロングツーリングに出かけたいと思うのは筆者だけではないはず。

ドロップハンドルのため、遠目にはロードバイクに見えそうな「BAXTER」。フロントフォークも軽量で振動吸収にもすぐれたカーボン製がアッセンブルされていた。オーダーメードに近い受注生産となるが、日本向けのラインナップにはまだ加えられていない

変速ギアなどのコンポーネントにもMTB用であるシマノ・XTを採用している。ブレーキは前後ともに油圧式のディスク

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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