ソニーは2023年7月12日の23時、「αシリーズ」の新しいミラーレスカメラ「α6700」を発表した。APS-Cサイズの撮像素子を採用する「α6000シリーズ」としては約4年ぶりの新製品だ。静止画撮影と動画撮影の両方が充実した、ハイスペックなカメラに仕上がっている。特徴をまとめよう。
「α6000シリーズ」の新モデル「α6700」
「α6700」のハードウェア面で注目したいのは、撮像素子に、「αシリーズ」のAPS-Cミラーレスとして初めて裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサー(有効画素数:最大約2600万画素)を搭載していること。画像処理エンジンは、下位モデル「α6600」の「BIONZ X」と比べて最大約8倍の処理性能を誇る最新の「BIONZ XR」だ。
さらに、「α7R V」などで好評を得ている「AIプロセッシングユニット」を搭載するのもトピック。これにより、後述する高精度な被写体認識を実現している。
細かいところでは、AEアルゴリズムが進化し、露出制御の安定性が「α6600」比で約20%向上。5段分の補正効果を持つボディ内手ブレ補正も搭載している。
裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサー(有効画素数:最大約2600万画素)を搭載
「AIプロセッシングユニット」を搭載
「α6700」のAFは、「AIプロセッシングユニット」の搭載によって、被写体認識機能が進化。「α7R V」と同様、高度な姿勢推定技術を用いて人物の動体や頭部などの位置認識が可能な「リアルタイム認識AF」に対応している。認識可能な被写体は「人物」「動物/鳥」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」に拡充。「α6600」と比べて、人物の瞳の認識精度は約60%、動物の認識精度は約40%以上向上している。
多彩な被写体認識機能を搭載(この画像は動画撮影時のモニター画面を撮影したもの)
像面位相差AFは最大759点で撮像領域の93%をカバー。AFの低輝度限界値は「α6600」よりも1段分性能が向上したEV-3.0(ISO100相当、F2.0レンズ使用)だ。機能面では、AF撮影中にフォーカスリング操作で一時的にMFに切り替えられる「フルタイムDMF」に対応。フォーカスブラケット機能も備わっている。
連写性能は最高約11コマ/秒。UHS-II対応のSDメモリカードスロットを採用したことで、JPEG記録時で1000枚以上の連写持続性を実現している。
静止画撮影の機能では、「αシリーズ」のAPS-Cミラーレスとして初めて10bitのHEIF記録に対応。4:2:2/4:2:0のカラーサンプリングも選べる。RAW記録はロスレス圧縮RAWを選択できるようになった。全10種類の仕上がり設定「クリエイティブルック」も搭載する。このほか、「α6000シリーズ」として初めてフリッカーレス撮影が可能なのも押さえておきたい。
HEIF記録に対応
RAW記録はロスレス圧縮を選べる
仕上がり設定「クリエイティブルック」を搭載
「α6700」の動画撮影機能は、全画素読み出しの6Kオーバーサンプリングによる高画質な4K記録が可能。4K/120p記録にも対応している。「S&Qモード」では4Kで最大5倍、フルHDで最大10倍までのスローモーション映像の記録が可能だ。
4K/120p記録に対応
さらに、豊かな中間色と自然な肌色が特徴のルック「S-Cinetone」や「S-Log3」に対応。Log撮影時は、選択したLUTをモニター映像に表示することもできる。10bit 4:2:2 HLG撮影にも対応している。
ソニー独自のルック「S-Cinetone」に対応
機能面では、高性能な手ブレ補正「アクティブモード」を搭載。被写体を追尾しながら、動きにあわせて自動的にクロップして構図を変更する最新機能「オートフレーミング」も備わっている。このほか、カメラ内タイムラプス機能、AF中にMF操作が可能な「AFアシスト」、被写界深度を可視化する「フォーカスマップ」、フォーカス移動による画角変動を最小化する「フォーカスブリージング補正」といった多彩な機能も利用できる。
「α6700」は操作性も見直されている。
グリップは従来よりも厚みが増し、ホールディング性が向上。大きな望遠レンズ装着時でも、より安定した構えで撮影できるようになった。さらに、「α6000」シリーズとして初めて前ダイヤルを搭載したのも大きな変更点。静止画撮影/動画撮影/S&Qモードをダイヤルで切り替えられるようになったほか、動画の録画ボタンはボディ上面の押しやすい位置に移動されている。
厚みが増したグリップを採用
タッチパネル対応のバリアングル液晶モニター(3.0型、約103万ドット)を搭載
静止画撮影/動画撮影/S&Qモードの切り替えダイヤルを搭載
EVFは輝度が2倍に向上。ツァイス「T*(ティースター)コーティング」も採用している
デジタルオーディオインターフェイス対応の「マルチインターフェースシュー」に対応
ボディ左側面に、UHS-II対応のSDメモリーカードスロット、HDMIマイクロ端子(タイプD)、USB Type-C端子(USB 3.2 Gen1対応)、ヘッドホン端子、マイク端子を搭載。USB端子はUSB PDによる高速充電に対応している
左が「α6700」で、右が「α6600」。「α6700」のボディサイズは約122(幅)×69.0(高さ)×75.1(奥行)mmで、重量は約493g(バッテリーとメモリーカードを含む)。「α6600」とほぼ同等のサイズ感で、重量は約10g軽くなった
ズーム全域で最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ撮影が可能な望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」も登場。テレコンバーターを使用すれば、最大で焦点距離400mmまでの超望遠撮影と、ズーム全域で等倍マクロ撮影が可能になる。発売は2023年7月28日で、市場想定価格(税込)は250,000円前後
新しいショットガンマイクロホン「ECM-M1」は、ステレオを含めて8種類の収音モードをダイヤル操作で切り替えられるのが特徴。希望小売価格(税込)は45,100円
「α6700」は、高画素フルサイズ「α7R V」など「αシリーズ」の静止画撮影機能と、「FX3」「FX30」など「Cinema Line」シリーズの動画撮影機能のいいところを組み合わせた、最新機能満載のAPS-Cミラーレスに仕上がっている。ソニーの最新機能がほぼすべて搭載されており、静止画と動画のハイブリッド機として活躍しそうだ。
ラインアップは、ボディ単体と、高倍率ズームレンズ「E 18-135mm F3.5-5.6 OSS」が付属するレンズキットの2種類で、市場想定価格(税込)はボディ単体が218,900円、レンズキットが262,900円。2023年7月28日の発売が予定されている。
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。