レビュー
エンジンやトランスミッションの刷新でトルク感がアップ

VW新型「ティグアン」はマイチェンで完成度の高さに磨きがかかった

フォルクスワーゲン グループ ジャパン(以下、VGJ)は、同社のミドルサイズSUV「ティグアン」のマイナーチェンジモデルを、2021年5月12日に発売した。今回、その新型ティグアンの試乗会が開催されたので、試乗レビューをお届けしよう。

2021年5月12日にマイナーチェンジモデルが発表、発売されたフォルクスワーゲン「ティグアン」

2021年5月12日にマイナーチェンジモデルが発表、発売されたフォルクスワーゲン「ティグアン」

ティグアンの製品画像
フォルクスワーゲン
4.11
(レビュー85人・クチコミ1314件)
新車価格:413〜695万円 (中古車:45〜508万円

世界的なベストセラーSUVのマイナーチェンジ

まずは、ティグアンのおさらいから。ティグアンは、VW本国のドイツで2007年にデビュー。その後、現在まで右肩上がりで販売台数を伸ばし、2019年には世界累計で90万台を超える生産台数を記録した人気車種だ。「ドイツのみならず、ヨーロッパのベストセラーSUVとしてのポジショニングを確立しています」と、VGJ広報 マーケティング本部 広報課の山神浩平さんは言う。

ティグアンは、日本市場では2008年に初代モデルが導入された。そして、2017年には2代目の現行モデルへフルモデルチェンジされている。初代ティグアンは、日本では約7,000台が販売され、2017年のフルモデルチェンジ以降は、現在までに約17,000台超が販売されている。

さて、今回のマイナーチェンジにおける大きなポイントは、デザイン、パワートレイン、コネクティビティの3つだ。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)のフロントエクステリアとリアエクステリア

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)のフロントエクステリアとリアエクステリア

ボディサイズは、全長が先代より15mmほど長くなった以外に変更点はない。エクステリアは、ヘッドライトやフロントグリルに新デザインのものが採用されている。また、ヘッドライトには、LEDのマトリクスヘッドライト「IQライト」が新たに採用された。IQライトは、片側32個ずつのLEDライトを、それぞれ個別に点灯、消灯させることで、先行車や対向車の眩惑を抑えてくれるものだ。そのほか、2020年に発表されたVWの新エンブレムが、フロントとリアにそれぞれ配されている。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)のインテリアと、新たに採用されたエアコンコントロールパネル

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)のインテリアと、新たに採用されたエアコンコントロールパネル

インテリアは、最新世代のインフォテインメントシステムの採用に加えて、新しいフルオートエアコンの操作パネルが、インフォテインメントシステムの下に配置されている。これは、指でスライドさせることで温度調節ができる、新たな操作方法を用いたコントロールパネルだ。先日、マイナーチェンジされた「パサート」から採用が始まっている。

全車速運転支援システムをボタンひとつで作動させることができる「トラベルアシスト」スイッチは、ステアリングスイッチの左側(赤丸部分)に備えられている

全車速運転支援システムをボタンひとつで作動させることができる「トラベルアシスト」スイッチは、ステアリングスイッチの左側(赤丸部分)に備えられている

また、新デザインのマルチファンクションステアリングホイールにも、新エンブレムがセンターに置かれたほか、「トラベルアシスト」の起動ボタンが新たに追加されている。トラベルアシストとは、同一車線内の全車速運転支援システムのことで、このボタンを押すだけでシステムが作動するという便利なスイッチだ。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」に搭載されている、4気筒直噴ガソリンターボエンジン「1.5TSI Evo」

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」に搭載されている、4気筒直噴ガソリンターボエンジン「1.5TSI Evo」

搭載されているエンジンは、4気筒直噴ガソリンターボ「1.5TSI Evo」(ハイパフォーマンスモデルの「R」グレードのみ「2.0TSI」)で、最高出力は110kW(150ps)/5,000-6,000rpm、最大トルクは250Nm(25.5kgm)/1,500-3,500rpmを発生させる。従来の「1.4TSI」エンジンから排気量は100ccアップしたものの、最高出力と最大トルクの数値そのものは変わっていない。ただし、「気筒休止システム」が採用されるなど、環境性能に対応したエンジンとなった。また、トランスミッションも「6速DSG」から「7速DSG」へと刷新されている。

運転支援システムは、前述のトラベルアシストのほか、VGJ初の「緊急時駐車支援システム」が採用されている。「ドライバーが意識を失うなど、運転操作ができない状態をシステム側が検知し、まずドライバーに対して注意喚起をうながします。その後、同一車線内で減速して最終的にストップさせ、これによって車両の暴走などの事故をできるだけ防ぎ、被害軽減につなげることを目的にしています」と、山神さんは説明する。

「ティグアン」にクルマ作りの良心を感じる

■フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込
TSI Active:4,079,000円
TSI Elegance:4,839,000円
TSI First Edition(特別仕様車):5,249,000円
TSI R-Line:5,039,000円
R:6,849,000円

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)のエクステリアイメージ

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)のエクステリアイメージ

今回試乗したのは「TSI R-Line」グレードで、オプションの「DCCパッケージ」が装着されていた。DCCパッケージは、走行モードをノーマル、コンフォート、スポーツ、エコ、カスタムから選べるようになる「DCC」(アダプティブシャシーコントロール)が搭載されているほか、レザーシートが採用され、タイヤは225/45R19から255/40R20へとインチアップされる。

初見のクルマを、しかも雨の箱根でいきなり走らせるのには、不安が付きまとう。そのクルマがどういう挙動を示すのか、具体的にはアクセルやブレーキペダルの踏み具合はもちろん、視界がどうかなどもわからないまま、走りださなければいけないからだ。もちろん、これは市街地でも同様だ。交差点での右左折時はもちろん、駐車する際の後退など、慣れないと不安が付きまとう。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)の試乗イメージ

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)の試乗イメージ

だが、ティグアンはまったくそういう感情を抱かせることなく、スッと走りだすことができた。その理由は、高いヒップポイントによる視界のよさをはじめ、ステアリングやアクセル、ブレーキペダルのフィール、そして乗り心地などすべてに違和感を覚えない、言い換えるとドライバーの思い通りの操作を受け付けてくれるからだ。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」のフロントドアシルトリム

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」のフロントドアシルトリム

ティグアンは、まるで乗員に寄り添っているかのような印象を受けたのだが、それはフォルクスワーゲンのクルマ作りにも現れている。たとえば、ドアを開けた時の乗降性を例にあげてみよう。SUVは最低地上高が高いので、どうしても乗り降りの際にパンツやスカートなどがクルマに触れてしまいがちになる。ましてや、今回の試乗日のように雨などが降れば汚れが気になってしまう。フォルクスワーゲンは、そこも加味してドアをサイドシル下側まで回り込ませることで、泥跳ねなどの付着を防ぐような工夫がなされている。いっぽう、あるドイツ車は、ドアの開口部下端のさらに下にサイドスポイラーが取り付けられており、それが若干横方向に出っ張っているので、どうしてもそこに触れながら乗り降りするしかなかったこともあった。そのあたりの違いが、フォルクスワーゲンのクルマ作り、つまりユーザーに寄り添ったクルマ作りを感じるところなのだ。

トルク感がアップして、さらに乗りやすくなった

実は、冒頭でオプションのDCCパッケージのタイヤサイズ(20インチ)を記したのにはわけがある。雨が降っていたこともあって、すぐにクルマに乗り込んでしまったため、最初はノーマルの19インチのままだと思って走っていたのだ。それでも、非常に乗り心地がよく、十分にタイヤを履きこなしている印象を受けたのだが、その後、撮影時に20インチを履いていることがわかって驚いた次第である。また、装備されているDCCは、減衰力も調整できるのだが、その効果も加味されているのか、まったくバタつくことがないのには驚かされた。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)の走行イメージ

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)の走行イメージ

エンジンは、1.4リッターから1.5リッターに排気量が増えたにもかかわらず、最高出力、最大トルクの数値が変わらないのは前に触れたとおり。だが、市街地や高速道路などを走らせていると、以前と比較してトルクが出ているような印象を受ける。つまり、低〜中速域でのトルク特性が、若干変わっているように感じたのだ。新型ティグアンでは、エンジンシリンダーの内径×行程が74.5×80.0mmから74.5×85.9mmと、ピストンサイズは同じながら上下する運動の距離が長くなっている。いわゆる、ロングストローク化されたということで、これまでよりも低い回転域で、トルクが出やすくなる特性になっていた。その結果、市街地でトルクをより感じられ、乗りやすさにつながったものと考えられる。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)の走行イメージ

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)の走行イメージ

ティグアンの出力やトルクなどの数値だけを見ると、「もしかしたら、非力なのでは?」と思われるかもしれない。しかし、高速道路を含めて「もっとパワーが欲しい!」などとはまったく思わず、必要にして十分と感じた。また、エンジンやロードノイズなどを含めた静粛性はかなり高く、サイドシルまで回り込んだドア形状なども含めて、かなりの作り込みがなされていることがわかった。

新たに7速DSGとなった、トランスミッションの出来も秀逸だ。比較的低い回転域でシフトアップするのは、燃費に効果的であろうし、低回転域からトルクが感じられる。さらに、シフトショックもほとんどない。同乗者は、いつシフトアップしたのかなどを感じることすらないだろう。

シフトノブの右下に、走行モード切り替えスイッチが備わっている

シフトノブの右下に、走行モード切り替えスイッチが備わっている

また、キビキビと走らせたい方には、オプションで装着されていたDCCを「スポーツモード」にすることをおすすめしたい。スポーツモードは、信号からのスタートダッシュが気持ちよく、積極的に選択したいモードだ。ただし、若干乗り心地が硬めになって、ステアリングも重くなる。個人的には、カスタムモードで好みの仕様にセッティングしたい。たとえば、「ドライブモード」はスポーツだが、「ステアリング」や「サスペンション」はノーマルにするなど、好みの仕様を作り上げることで、より快適でストレスのない走りが味わえるだろう。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)のリアシート

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」(R-Lineグレード)のリアシート

後席の乗り心地も上々で、座った尻のすぐうしろにタイヤがあるような印象は受けない。シアターレイアウトのため、シートが若干高くなっていて見晴らしがよく、後席もかなり明るくて開放的だ。足元も含めてかなり広さがあり、不満は覚えない。

エアコンスイッチなどの操作性は、少し難あり

ここで、少し操作性について触れてみたい。今回、新たに採用されたエアコンスイッチだが、これについては決して使いやすいとは言えなかった。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」のエアコンコントロールパネルは、かなり下の位置に装着されているので操作しにくい

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」のエアコンコントロールパネルは、かなり下の位置に装着されているので操作しにくい

その理由だが、もともと独立していたエアコンコントロールパネルの位置にそのまま装着しているので、位置が低くて操作しにくいのだ。また、以前は物理スイッチだったので位置的に問題はなかったのだが、今回はタッチ方式になったのでなおさら使いにくく、どうしても視線をそちらに向けて位置を確認しながら調整してしまうので、危険がともなう。エアコンの温度を一気に上下させられるのはいいのだが、まずはドライバーオリエンテッドでの使いやすさを追求してほしかった。いずれは音声操作になるのだろうが、その過渡期とはいえ、もう少し工夫が欲しい。

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」のステアリング周り

フォルクスワーゲン 新型「ティグアン」のステアリング周り

そのほか、ステアリング上にあるトラベルアシストスイッチは使いやすく、場所さえ覚えれば見なくても操作が可能だ。ただし、若干ステアリング上のスイッチ類が多いことと、ステアリングの左側に安全運転支援機能系、右側にオーディオ系があるのに違和感を覚えた。オーディオは、ドライバーから見て左側に存在するのだから、スイッチ類もオーディオは左にしてほしかったと思う。また、ステアリングスイッチ周りはピアノブラックで加飾されているのだが、陽の当たり方で若干反射して、見にくくなることがあった。

今回、試乗で感じられたティグアンの印象は、“生真面目な優等生”だった。たとえば、レーダーチャートで言えばきれいに五角形とか六角形が描けて、飛びぬけた善し悪しが出てこない優等生なのである。これは、決して悪いことではない。たとえば、仕事に疲れて帰路に着くとき、クルマからさまざまなアピールがあったらどう感じるだろう。それよりも、「あ〜、疲れちゃったな」と感じながら、しなやかな足周りに身をまかせ、ゆったりと乗ることができたほうがいいだろう。あるいは、家族や仲間たちとワイワイおしゃべりをしながら出かけるときなどには、挑発的なエンジン音や乗り心地は必要ないだろう。ティグアンは、あくまでも控えめで、必要に応じて手を差し伸べてくれるクルマだ。それこそが、フォルクスワーゲンのクルマ作りなのである。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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