ニュース
ダイナミクス性能を突き詰めた、最後の「NSX」

2022年に生産終了、ホンダ「NSX」の最終モデル「Type S」を正式発表!

ホンダは、生産終了が予定されているスーパースポーツカー「NSX」(2代目)の集大成となる新型モデル「NSX Type S」を正式発表した。

2022年に生産終了が予定されている、ホンダのフラッグシップスポーツカー「NSX」。最後の新型モデルとなる「NSX TypeS」が、世界350台限定で発売される

2022年に生産終了が予定されている、ホンダのフラッグシップスポーツカー「NSX」。最後の新型モデルとなる「NSX TypeS」が、世界350台限定で発売される

NSXの製品画像
ホンダ
-
(レビュー12人・クチコミ319件)
新車価格:2420〜2794万円 (中古車:599〜3380万円

NSX Type Sは、NSXの加速性能やコーナーリング性能、空力性能などのパフォーマンスがさらに引き上げられているモデルだ。グローバルで350台、そのうち日本では30台が限定で販売される。購入については、2021年9月2日から、全国のNSXパフォーマンスディーラーにおいて申し込みが開始される。納車をともなう発売日は、2022年7月の予定だ。価格は、税込みで27,940,000円。当記事では、NSX Type Sの詳細について解説するとともに、なぜこのタイミングで発売するのかなど、開発者やデザイナーへのインタビューもあわせてお届けしたい。

「人間中心のスーパースポーツ」がコンセプト

ホンダ 初代「NSX」

ホンダ 初代「NSX」

初代NSXは、1990年に誕生した。そのコンセプトは、「誰もが快適に操ることができる “人間中心のスーパースポーツ”」。当時、このコンセプトに対しては「誰もが操れるスポーツカーとは、どうなんだ」といった議論も噴出した。しかし、現在ではスーパースポーツカーの多くが、誰もが乗ることのできる、運転しやすいクルマであることに気付く。たとえば、マクラーレンであっても乗降性や視界などは重視されているし、ランボルギーニやフェラーリでもそれは同様だ。つまり、NSXは当時からかなり先を見据えていたクルマだった、とも言えるだろう。

ホンダ 2代目「NSX」(2020年モデル)

ホンダ 2代目「NSX」(2020年モデル)

そして2016年、人間中心のスーパースポーツというコンセプトが継承され、いち早く電動化技術を取り入れた、2代目のNSXが登場した。「新しい走りの体験」を提供価値として、キーテクノロジーである「スポーツハイブリッドSH-AWD」を搭載。エンジンとモーターの融合により、新たな加速フィールやハンドリングのレスポンスのよさなどを突き詰めて開発された。

その後、さまざまな改良が加えられるとともに、個性豊かなカラーリングのモデルも登場し、これまでホンダのフラッグシップスポーツカーとして、NSXは君臨してきた。だが、2022年いっぱいで、その生産が終わることが告げられたのである。

ホンダ 新型「NSX TypeS」と、本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター NSX Type S 開発責任者の水上聡さん

ホンダ 新型「NSX TypeS」と、本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター NSX Type S 開発責任者の水上聡さん

新型「NSX TypeS」のリアイメージ

新型「NSX TypeS」のリアイメージ

NSXは北米を主力としたモデルながら、数年前からは日本を中心に企画開発が進められている。本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンターの水上聡さんは、ダイナミクス性能や車体開発の責任者として、さまざまな車種を歴任。そして、現在はNSXの開発責任者として、“最後の”NSXを作り上げた。

コンセプトは「スーパーカーを極める」

ホンダ 新型「NSX TypeS」のフロントフェイス

ホンダ 新型「NSX TypeS」のフロントフェイス

NSX Type Sのコンセプトは、NSXのヘリテージたる人間中心のスーパースポーツを土台に、“スーパーカーを極める”とされている。そこで、改良点のひとつとして、さらなるスペックの向上が図られたことがあげられる。それは、目に見える数値のみならず、「体感できるエモーショナルなドライブフィール、電動車が得意なエレガンスな動きなどをきちんと体感できるクルマとして、”S”というバッジを付けたスーパーなNSXにしたい。そういった思いで、開発を進めてきました」と、水上さんは語る。

大きくは、トータルパワー、軽量化、エアロダイナミクスという3つのパフォーマンスを向上させている。さらに、SH-AWDを含めたダイナミック性能についても見直され、NSX Type S専用のセッティングが施されている。

改良のポイントについて、水上さんは「全速、全域において、スーパーカーを体感できることに注力しました。ドライバーとクルマが一体になり、操る喜びが得られ、それがさまざまなシーンで感じられるようなクルマにしたかったのです」とコメントする。そこでキーとなるテクノロジーが、エンジンとモーターを融合させたスポーツハイブリッドシステム「SH-AWD」だ。

ホンダ 新型「NSX TypeS」のミッドシップに搭載されている、3.5L V6ツインターボエンジン

ホンダ 新型「NSX TypeS」のミッドシップに搭載されている、3.5L V6ツインターボエンジン

ミッドシップにレイアウトされている3.5L V6ツインターボエンジンは、高耐熱化されたターボチャージャーを採用することによって過給圧をあげ、インジェクターの燃料噴射量を上げることなどによって、最高出力を+16kW(22PS)、最大トルクを+50Nm(5.1kgf・m)アップさせている。また、インタークーラーの放熱量も、フィンピッチを変えるなどによって効率化が図られている。

モーターは、フロントのツインモーターユニットを20%ローレシオ化。また、インテリジェントパワーユニットも、バッテリーはそのままで使用容量を20%増やすとともに、出力を10%引き出している。その結果、7PSのアップに貢献しているという。

エンジンとモーターを組み合わせたシステム出力は、最高出力が610PS(2020年モデルは581PS)、最大トルクは667Nm(2020年モデルは646Nm)を達成している。

9速のデュアルクラッチトランスミッションは、パドルホールドの「ダウンシフト機能」が追加されている。パドルをコンマ6秒長く引くことによって、瞬時に最も低い適切なギヤにシフトダウンしてくれる機能だ。

ホンダ 新型「NSX TypeS」では、ホイール、タイヤともに新開発のものが装着されている

ホンダ 新型「NSX TypeS」では、ホイール、タイヤともに新開発のものが装着されている

そのほか、タイヤは専用開発のピレリ「P ZERO」が新たに採用されているほか、ホイールはインセットを変えることでワイドトレッド化が図られ、限界性能のコントロール性を含めて引き上げられている。

また、磁性流体式のアクティブダンパーは、減衰力の使える領域や範囲が広げられ、乗り心地とハンドリングを両立させているという。

F1やスーパーGTなど、レースの知見がふんだんに盛り込まれた

左が2020年モデルの「NSX」で、右が新型「NSX TypeS」

左が2020年モデルの「NSX」で、右が新型「NSX TypeS」

NSX TypeSのデザインは、“パフォーマンスデザイン”というキーワードのもとに開発が進められた。「本質的な機能を表現する上で、全体のフォルムを大事にし、それに溶け込むたたずまいを重視して開発しました」と水上さん。

フロントは、インテークのエアフローイメージをデザインで表現。さらに、より低くワイドに見えるように、アグレッシブなスタイルが採用されている。特に、各機関を効果的に冷却させるために、大型の開口部が採用されているのが特徴的だ。ダクトの内部へ、効率的に導風させるような構造となっている。

新型「NSX TypeS」と、本田技術研究所 デザインセンター オートモービルデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオ アシスタントチーフデザイナーの原大さん

新型「NSX TypeS」と、本田技術研究所 デザインセンター オートモービルデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオ アシスタントチーフデザイナーの原大さん

NSXの製品画像
ホンダ
-
(レビュー12人・クチコミ319件)
新車価格:2420〜2794万円 (中古車:599〜3380万円

ここからは、エクステリアデザインを担当した、本田技術研究所 デザインセンター オートモービルデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオ アシスタントチーフデザイナーの原大さんにお話をうかがってみたい。

まず、フロントに関しては、「冷却のために、フロントのエアインテークを大きくしましたが、現行のデザインを単に大きくしたものを装着しても、アンマッチになってしまいます。そこで、開口部を強調するためにノーズを下げて、前に出しています」と話す。そして、「エンブレムの位置を、ボンネットフードの上からノーズの先に変更しました。ぱっと見たときに、直感的に低くなったとわかってもらえるようにしています。実は、ここはすごくこだわったところで、シルエットにもつながってくる部分になります」とコメントする。

また、フロント開口部のデザインに関しては、空力的な要素が大きく関わっている。「開口部の形状は複雑です。中央はメインのラジエーターへ風を送り、サイドはサブラジエーターに風を送っています。その時に、風の動きや流速など、それぞれ最適な角度や速さがありますので、面の形状などをかなり作り込み、もっともいい向きと速さで風が入ってくるような断面になっています。また、中央には横バーがありますが、これによってセンターラジエーターへ入っていくときの風の向きをコントロールしています」と語る。

ちなみに、こういった知見は「F1マシンやスーパーGT、GT3のマシンなどを実際に見に行って、空力エンジニアと一緒に『ここは、どういった意図をもって作られているのか』、『どのような流れで、このパーツが付いているのか』などと話をしながら研究を重ねました。リアのディフューザーなどは、GT3のノウハウが生かされています」とのことだ。

左が2020年モデルの「NSX」で、右が新型「NSX TypeS」

左が2020年モデルの「NSX」で、右が新型「NSX TypeS」

その、リアのディフューザーは、「全体的へ後方に出して、横方向にも広げています。さらに、両サイドのアウトレットも2020年モデルでは赤いリフレクターが入っていましたが、それをナンバーの横に配することで、すべて“穴”にして風が抜けるようにしています。さらに、メッシュも2020年モデルは樹脂でしたが、Type Sではすべて金網にしています。これも、レーシングカーと同じです。いわゆるフェイクのような部分は、一切ありません」と述べる。

新型「NSX TypeS」のリアイメージ

新型「NSX TypeS」のリアイメージ

リアディフューザーは、カーボン製だ。そこにフィンが付いているのだが、樹脂では現在の4倍ほどの厚さがないと強度が保てないのだそう。また、成形の問題もあって樹脂では理想の形にはできないが、カーボンでは自由度が増すため「1本1本を裏側から見ると、全部違う角度と、カーブがついています。厚さも、4mmぐらいの薄さです。その位置も、若干横に寄っています。スタイリングの視点では、等間隔で並べたくなるのですが、これもテストをして、場所や向きを試した結果、ここがもっともいいということで、この場所にしています」と原さん。そして、「この不規則さ、ランダムさにロマンが感じられるかもしれませんね」と笑った。

最後に、究極の「NSX」をお届けしたい

新型「NSX TypeS」と、本田技研工業 日本本部 商品ブランド部 商品企画課 チーフの井村圭佑さん

新型「NSX TypeS」と、本田技研工業 日本本部 商品ブランド部 商品企画課 チーフの井村圭佑さん

最後に、営業面を担当されている本田技研工業 日本本部 商品ブランド部 商品企画課 チーフの井村圭佑さんに話を聞いて締めとしたい。

まず疑問だったのは、なぜこの時期にType Sを発表したのかだった。「技術者の思いや、プライドの部分があると思います」と井村さん。「最後にお客様にお届けできるNSXを、究極のものにしたいという思いが営業も技術側も一致したことで、最後にできることはやろうとした結果です」と言う。

生産終了に関しても、「クルマのライフサイクルは、おおよそ6年ぐらい。先代はもっと長く売っていましたが、このクルマが出た役割という意味では、世の中に向けてしっかりと果たせたと思っています。フラッグシップモデルとして、ホンダのチャレンジスピリッツを形として世の中に発信できました。そういう役割を担ったNSXを、究極の形としてお届けして終わろうという思いで、Type Sが完成したのです」とのこと。井村さんは、「時代を先駆けるのはホンダだと、個人的にも思っています。6年前に、すでにハイブリッドのスーパースポーツカーを登場させ、“時代に釘を刺した”と思えます」と話してくれた。

これから、ホンダのスポーツカーがどういう展開になるのか、いまの段階では明確ではない。井村さんも、「我々としても、どのような形で、どういったクルマを出していくのかは、本当に本気で議論をしています。もし、それがEVだとしたら、ホンダは新しい、面白いことをしてくれるなという登場の仕方になることでしょう。先日、社長が三部(敏宏氏)に変わりましたが、その三部も『新しい時代のスポーツカーはこういうものだというところを、発信していきたい』と言っています。新体制になり、攻めのホンダになると思っています」と語ってくれた。

最後の“攻め”というひと言は、今後のホンダの方向性を示唆しているように思えてならない。最近、NSXをはじめ生産終了車が相次いでいるホンダだが、それは一時的なことなのかもしれない。これから新たな一手を繰り出してくることを、期待して待ちたい。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
NSXの製品画像
ホンダ
-
(レビュー12人・クチコミ319件)
新車価格:2420〜2794万円 (中古車:599〜3380万円
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る