ホンダは、主力車種のコンパクトSUV「WR-V」に新たな装備を追加、変更するとともに、特別仕様車を設定した。発売予定日は、Z、Z BLACK STYLE、Z+ BLACK STYLEは2025年3月6日。XとZ+の発売は2025年夏が予定されている。
ホンダ「WR-V」の商品改良によって、ZとZ+へ新たに追加された特別仕様車「BLACK STYLE」
「WR-V」は、発売後11か月でおよそ3.3万台を販売し、月販目標の3,000台を達成した。コンパクトSUV市場で21%ものシェアを獲得し、さらに新規顧客が半数以上を占めているという結果を、ホンダも高く評価しているようだ。
主な購入理由を「『WR-V』のラギッドな外観デザインや価格が魅力的」と話すのは、本田技研 総合地域本部 日本統括部 国内四輪営業部 商品企画課主任の佐藤大輔さん。
本田技研 総合地域本部 日本統括部 国内四輪営業部 商品企画課主任の佐藤大輔さん(左)と、ホンダR&Dアジアパシフィックアシスタントチーフエンジニアの平村亘さん(右)
購入者層は、主に2つに分かれる。まずは、20〜30代の独身者やDINKSだ。「見栄えがよく、コスパの高い流行のSUVを求める人々です。視界がよいので、背の低い女性でも扱いやすい」とのこと。
もういっぽうは、ミニバンからのダウンサイザーだ。「ミニバンと変わらない目線の高さや室内空間のゆとりがあり、豪華な装備や機能などは求めないというユーザーニーズに合っています」と説明する。
今回の改良では、前述のような「WR-V」の強みは生かしつつ、「SUVっぽく明るい外装色を用意したり、内装の質感を向上させたりするなど、市場の声を受けて商品力を向上させました」と、ホンダR&Dアジアパシフィックアシスタントチーフエンジニアの平村亘さんは語る。
具体的には、新たに「オブシダンブルー・パール」と呼ばれる深いブルーのボディカラーを追加。この色は、「大自然の中に駆け出したくなるような開放感があり、オフロードにおいてもタフで頼れる相棒を感じさせるいっぽう、街中では洗練された印象を与えるという、自然と都会の二面性を持つボディカラーです」と平井さんは説明する。
ホンダ「WR-V」Zの特別仕様車「BLACK STYLE」のフロント、リアエクステリア。ボディカラーは新色の「オブシダンブルー・パール」
また、内装はインパネ中央部とリアドアのアームレストにソフトパッドを追加して質感向上。さらに、Z+はブラウンの「フルプライムスムースシート」へ変更されており、上級グレードならではのプレミアム感が高められている。「都会的な雰囲気と、自然の中に溶け込むような絶妙なバランスを持たせました。長距離ドライブでもリラックスできて、どのようなシーンにもなじみ、相棒感の強いジャケットのような存在を目指しました」と言う。
Zのインパネ周りは、助手席前から中央にかけてソフトパッドが追加されている
リアドアにも新たにソフトパッドが採用された
Z+へ新たに採用されたブラウンの「フルプライムスムースシート」
ちなみに、後述する「ブラックスタイル」の特別仕様車の内装は、Z+についてもブラックのプライムスムースとファブリックのコンビシートが採用されている。
今回の改良によって、ZとZ+へ新たに用意される日本独自の特別仕様車「ブラックスタイル」。エクステリアは、ベルリナブラックの17インチアルミホイールやホイールナットが装着され、サイドミラーやドアミラー、シャークフィンアンテナなどにクリスタルブラック・パールを採用している。
ホンダ「WR-V」Zの特別仕様車「ブラックスタイル」のエクステリア。ボディカラーはプラチナホワイト・パール
すべてをブラックにするのではなく、一部にシルバーを残すことで「『WR-V』であることを大切にしながら、存在感や洗練された印象を持たせています。目立つための派手さではなく、そのものが目を惹くカリスマ的な存在を目指しました」と平井さんはコメントする。
インテリアもエクステリアとともにコーディネートされており、エアコンアウトレットやコンソール、ステアリング周りにはピアノブラックを配し、シートなどにはブラックステッチが採用されている。
特別仕様車「BLACK STYLE」のインテリア
「WR-V」は、発売からまだ1年ほどしか経過していないのだが、なぜこれほど早く商品力の強化が行われたのだろうか。佐藤さんによると、「SUV市場の成長とともに、他社からも数多くのSUVが発売されています。そのため、できるだけ早く(商品力強化を)行いたかった」と話す。
今回の仕様は、インド工場のラインアップを元に、日本仕様としてふさわしいものが組み合わせられている。たとえば、現地の上級グレードに採用されているインテリアのソフトパッドやブラウン内装、オブシダンブルー・パールのボディカラーなどもそうだ。
「WR-V」は、パワートレインをガソリンエンジンと前輪駆動のみにすることで開発コストを抑え、販売価格を安く設定している。それが市場でも評価されて、好調な販売台数へとつながった。
そして、質感に対する若干の不満を解消したのが今回の「WR-V」だ。価格はおよそ5〜6万円ほど上がってしまったが、これは為替の影響が大きいとされている。新型「WR-V」は、競争の激しいSUV市場でバリューフォーマネーを武器に戦っていくことが期待される。