若い世代など新たな人たちにもバイクの世界に入ってもらいたいと、購入しやすい小排気量のコンセプトモデルに力を入れていたのがスズキだ。原付クラスの2車種を壇上に展示し、バイクのある生活の楽しさをアピールしていた。また、4輪車でも話題となっている燃料電池を搭載したスクーターも出展。新たな技術への取り組みも感じさせられた。
「Feel Free Go」と名付けられた50ccエンジンのコンセプトマシン。若い人に気軽に乗ってもらえるように、自転車を思わせる軽快なデザインだ。ハンドルやシート周りなど随所に自転車のパーツらしきものも採用されている
自転車のようなすっきりしたハンドル周りに、スマートフォンのようなメーターを装備する。変速操作も自転車のようなグリップシフトを採用し、左手側のグリップを回すことでギアを変えることが可能
シート下には後方を映すカメラも搭載。カメラの映像は、メーター部に表示させることができるという
“遊べる軽自動車”として登場した同社「ハスラー」は、個性豊かで楽しいデザインと機能性の高さで一躍人気に。そのイメージを踏襲したスクーター「ハスラースクート」も展示されていた。まさに、遊べるスクーター!?
多くの荷物を持って遊びに行ける「ハスラー」のコンセプトにならって、足を乗せるステップ部分に専用トランクを装備できる
空冷式の燃料電池を動力に用いた「バーグマン フューエルセル スクーター」も展示されていた。
大きくなりがちな燃料電池を空冷式とすることでバイクにも搭載可能な大きさに。減速時には回生ブレーキで電力をバッテリーに蓄え、その電力も使うことで力強い加速を実現する
燃料電池で作り出した電力とバッテリーの電力を用いて後輪を駆動
コンセプトモデルの展示が目立つ他メーカーのブースに比べ、市販車の展示に力を入れていたのがカワサキ。壇上の最も目立つ部分には、国内初公開となる海外向けのスポーツモデル「Ninja ZX-10R ABS」と小排気量モデル「Z125 PRO」が飾られていた。
今期のスーパーバイク世界選手権(市販車を使ったレースの最高峰クラス)で年間チャンピオンを獲得したマシンの技術を採り入れ、5年ぶりにモデルチェンジを果たした「NinjaZX-10R ABS」。多くの電子制御技術を採用し、走行性能を向上させている
「NinjaZX-10R ABS」のストリップモデルも展示。フレーム構造から新設計とすることで、コーナリング性能をアップさせた
125ccのエンジンを搭載した海外向けモデル「Z125 PRO」も国内初公開された。コンパクトな車体ながら、同社の人気シリーズ「Z」のイメージをしっかりと継承した迫力あるデザインが魅力。剛性の高い倒立式のフロントフォークを採用するなど、走りの性能にも期待できそうだ
ほかにも、すでに市販されているスーパーチャージャーエンジン搭載の「Ninja H2/H2R」に加え、そのエンジンをさらに発展させた「バランス型スーパーチャージドエンジン」も並べられていた。
1,000ccのエンジンにスーパーチャージャーを装着することで240kW(326ps)という最高出力を実現したモンスターマシン「Ninja H2R」。すでに受注は開始されているが、なかなかお目にかかれないマシンだけに来場者の注目度は“高”!
「Ninja H2R」に搭載されるエンジンをさらに進化させた「バランス型スーパーチャージドエンジン」も出展
海外メーカーとしては唯一バイクの展示を行なっていたのがBMWだ。4輪ブースの一部のスペースでの展示ではあったが、デザイン性にすぐれ現実感の高い電動スクーターを参考出品。人気の高い市販車も展示しており、バイクファンの足を止めていた。
電動のスクーター型「BMW C evolution」。空冷式のリチウムイオンバッテリーに蓄えた電気で水冷式のモーターを駆動する。最高出力は35kW(48ps)。参考出品ながら実現度の高そうなデザインだ
サスペンションやトラクションコントロール機能など、多くの電子制御技術を採り入れたロードモデル「R1000RR」
人気の長距離ツーリングモデル「R1200GS」にオプションのパニアケースなどを装備したマシンも出展されていた。見ているだけで旅に出たくなる雰囲気を持ったモデルだ
未来のマシンや夢を感じさせるマシンに出会えるのがモーターショーの魅力だが、少し先の現実感のある未来を提示するのもその役割のひとつ。今回のモーターショーでは各メーカーとも小排気量車の展示に力を入れており、新たなユーザー層を呼び込もうとする提案が感じられた。
ホンダは「EV Cub」などと並んで、人気の小排気量車「GROM 50」をベースにしたカスタムマシンを数種類展示。若い世代にアピールしようという狙いが感じられた。スズキも小排気量車のコンセプトモデルに力を入れており、ヤマハの電動モデルも排気量区分でいえば小排気量に当たるモデル。カワサキも「Z125 PRO」を目立つ部分に展示するなど、裾野を広げる小排気量車に注力していることが感じられた。
ホンダに展示されていた「GROM 50」のカスタムコンセプト。ちょっとしたオフロードなら気軽に入って行けそうな雰囲気が楽しそう
大きなパワーがありスピードが出るマシンは魅力的だが、小排気量車でパワーを使い切って走るのも楽しいもの。パワーやスピード一辺倒でなく、身の丈に合ったマシンが増えてくるとバイクの楽しみ方も広がっていきそうな気がする。