2019年3月11日、日本で初めて乳児用液体ミルク(以下、液体ミルク)「アイクレオ 赤ちゃんミルク」の全国販売がスタートし、大きな話題になりました。熱湯で溶かした後に冷ましてから飲ます乳児用粉ミルク(以下、粉ミルク)とは違い、常温で保存でき、かつ、開封後にすぐ飲めるため、手間や時間が粉ミルクに比べてかからないことが、育児を行う家庭から注目されています。
本記事では、生後3か月の子どもを持つ筆者が、江崎グリコの液体ミルク「アイクレオ 赤ちゃんミルク」を実際に使ってみて、粉ミルクとの違いや、メリット、デメリットに迫ります。
目次
1. 液体ミルクがようやく国内でも販売開始へ
2. 「アイクレオ 赤ちゃんミルク」を実際に使ってみました
3. 液体ミルク「アイクレオ 赤ちゃんミルク」を使って感じたメリットとデメリット
3月11日に店頭販売がスタートした「アイクレオ 赤ちゃんミルク」
日本では、医薬品や医薬部外品を除く「すべての飲食物」が、食品衛生法(所管は厚生労働省)の規制対象になり、販売用飲食物の成分や製造、加工、使用、保存方法などには厳格な規格基準が定められています。
一般的に広く使われている粉ミルクは「調製粉乳」として、食品衛生法の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)と「食品、添加物等の規格基準」により成分を始めとした規格基準が定められています。
しかし、液体ミルクについては、そもそも規格基準が定められていないため、これまで国内では生産や販売が一切できませんでした。液体ミルクを入手するには、一部諸外国で販売されている製品を個人輸入で購入するしか方法がなかったのです。
しかし、2016年に駐日フィンランド大使館が液体ミルクを熊本地震の被災地に救援物資として送ったことをきっかけに、液体ミルクの災害時における有用性を認める声が高まりました。これを契機に国内でも議論が進み、「乳等省令」と「食品、添加物等の規格基準」が改正されることに。これにより、液体ミルクの製造基準や成分規格などが定められ、国内での製造と販売が可能になりました。
ただし、製造基準や成分規格が定められただけでは実際に販売することはできません。粉ミルクは、乳児や妊婦、病者、高齢者などの健康を維持、回復させる用途に適することを表示可能な「特定用途食品」の中の「母乳代替食品」に指定されています。ここに、液体ミルクも区分しないと、「赤ちゃんを育てるという特別な用途に適した製品(特別用途食品)ですよ」といった表示ができません。
表示できない=販売できないので、消費者庁が「健康増進法施行令」と「特別用途食品の表示許可等について」を改正し、液体ミルクは「母乳代替食品」の「乳児用調整液状乳」に区分されることになりました。
ざっくりとですが、こういった経緯を経て、液体ミルクはようやく国内で販売されることになったわけです。
なお、消費者庁は「乳児用液体ミルクって何?」というリーフレットを公開しています。この中では、母乳代替食品や特定用途食品マークの詳細、粉ミルクとの違いや使い方、注意点などが説明されているので、液体ミルクについてより知りたい人は、こちらも目を通すとよいでしょう。
3月11日に店頭販売が開始された江崎グリコの液体ミルク「アイクレオ 赤ちゃんミルク」。筆者は発売直後にヨドバシ・ドット・コムで購入。注文時は「取り寄せ」となっていましたが、3日後には自宅に届きしました。
購入したのは「アイクレオ 赤ちゃんミルク 125ml×12本入り」。希望小売価格は2,592円(税込)。1本からでも販売しており、こちらは216円(税込)です
パッケージには、母乳に近い栄養成分、常温で飲めること、調乳が不要であることなど「アイクレオ 赤ちゃんミルク」の特徴が表記されています
側面には種類別や原材料などを表記。アレルギー物質では乳成分と大豆が含まれます
フタはキレイに取り外せ、パッケージごと保管できる親切設計
「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は紙パックタイプの液体ミルク。手のひらに収まるくらいコンパクトなので、外出時の携帯性は◎
100ml(左)と200ml(右)の紙パック飲料と比べると、サイズのイメージがつくでしょうか
紙パックのため賞味期限(開封前)は6か月。ちなみに、明治が3月下旬に発売予定の液体ミルク「ほほえみ らくらくミルク」は、スチール缶のため賞味期限が1年となっています
ここからは使い方を説明。まずは容器をよく振ります
次は備え付けのストローを差し込むのですが、ストローの先端付近に付いている突起(ストッパー)に注目
この突起が差し込み口より下側にくるようにブスッと挿し、少し引いて差し込み口に引っかけるようにします
あとは、ほ乳瓶にそのまま移し替えればOKです
粉ミルクは人肌くらいの温度ですが、液体ミルクは室温程度(今回は21℃前後)のため少し冷たく感じました
いつものミルクより冷たいため飲んでくれるか心配でしたが、ぐいぐい飲んでくれてひと安心
粉ミルクの場合、我が家では粉を計量してほ乳瓶に入れ、水筒(事前に沸かしたお湯を保存)からお湯(70°以上)を注いで溶かし、さらに、煮沸して冷ました水を加え、人肌の温度まで冷やしてから、ようやく飲ませることができます。家庭によって作り方に多少の差異はあれど、準備から飲ませるまでに10分以上はかかるでしょう。
江崎グリコの粉ミルク「アイクレオ バランスミルク」の作り方。手間と時間がかかり、おなかをすかせた赤ちゃんを待たせてしまったり、外出先では作るのが大変
いっぽうで、「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は開封してほ乳瓶に入れるだけなので、準備から飲ませるまで1分もかかりません。かなりの時短になります。お腹をすかせた赤ちゃんを待たせる時間が少なく、外出先でも飲ませやすいです。
また、外出時の荷物を減らせることも液体メリットの利点でしょう。ちょっとしたお出かけでも、おむつや着替え一式など荷物は多く、遠く離れた実家に帰るなど長時間の移動をともなう場合はさらに荷物が多くなります。
粉ミルクを使う場合は、上記の荷物に加えて、お湯用の水筒、冷ますための水、ほ乳瓶が必要ですが、液体ミルクであれば、液体ミルクとほ乳瓶だけで済むので、荷物の軽量化に適しています。
外出時、ミルク1回分の持ち物。左が粉ミルク、右が液体ミルク。どちらが荷物になるのかは明白です
ここまで液体ミルクの利点について紹介しましたが、もちろん欠点もあります。液体ミルクは、一度開封すると衛生上の観点から再度保存することはできません。そのため、過不足がでてしまいます。
たとえば、母乳と粉ミルクの割合が半分ずつの我が家の場合だと、1回で125mlの液体ミルクを使い切れません。余った液体ミルクは処分せざるを得ず、非常にもったいないです。
粉ミルクの場合は、作る量を調節できるので、必要なときに必要な分だけ作ることができます。そのため、あくまでも我が家の場合ですが、「液体ミルクが粉ミルクに“完全に”取って代わる」ことはないでしょう。
また、価格が粉ミルクより高いのも、液体ミルクを常用するのがためらわれる点。「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は1本125mlで216円(税込)。粉ミルクの「アイクレオ バランスミルク」は800g缶が2,654円(税込)で、125ml(約15.87g)当たりのコストは約52円。粉ミルクのほうが断然安いというわけです。
このように、粉ミルクと液体ミルクには、それぞれのメリットとデメリットがあり、家庭の状況や必要に応じて使い分けるのがベターです。これまで、母乳以外の選択肢としては粉ミルクしかなかったところに、新しく液体ミルクが加わり、育児をサポートしてくれる強い味方が増えたという感じです。
我が家では、常用は粉ミルクにし、外出時や緊急時用に液体ミルクを備えておく、といった使い方に落ち着きそうです。
なお、2019年3月下旬には、スチール缶入りの「明治ほほえみ らくらくミルク」が発売予定で、こちらは賞味期限が1年と長いため、災害時の備蓄用としても注目されています。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。