2016年は、「PlayStation VR」(以下、PS VR)や「Oculus Rift」、「HTC Vive」といったヘッドマウントディスプレイが発売を迎え、VR元年と呼ばれるほど業界は大きな盛り上がりを見せた。そんな多数登場したヘッドマウントディスプレイの中で最もユーザー数が多いのが、PS 4に接続するだけという手軽さでVRコンテンツを楽しめるPS VRだ。
現状PS VR向けには、VRゲーム以外に360°動画も配信されているが、そのコンテンツの数や質はまだまだ満足できるレベルに達していない。そこに参入するのが、本日4月12日よりPS VRで本格的なサービスを開始する「360Channel」。同サービスは、2016年5月にOculus RiftとGear VR向けにローンチした360°動画配信プラットフォームだが、今回満を持してPS VRでサービスを開始する。
PS VR向けにサービスを開始したVR動画プラットフォームの「360Channel」。バラエティや動物番組などVR向けコンテンツとしては珍しい動画を取り揃えている
「360Channel」の魅力は、何と言っても幅広いジャンルのVR動画を取り揃えたコンテンツ。昨年のローンチ以来、同サービスのコンテンツは増え続け、ローンチ時には約20本しかなかったものの、現在では約339本にまで増え、PS VRでのローンチに合わせて50本の動画が新しく追加予定だ(動画はアーカイブ方式のため一定期間後に削除されるものもある)。配信されている動画は、風景やスポーツ、音楽ライブといったVRコンテンツのジャンルとしてオーソドックスなものから、バラエティや動物番組といった日本向けのコンテンツもある。
配信中の動画は「バラエティ」「音楽」「アニマル」「体験」「映画」「トラベル」「ドキュメンタリー」の7カテゴリーに分けられており、各カテゴリー内に多数のチャンネルが登録されている
チャンネルによりけりだが、少ないもので1本、多いものになると42本もの動画を配信しているチャンネルもある。 動画の長さは、1本数分から10分程度。バラエティなどの尺の長い動画もあるが、連続視聴による目の負荷を配慮し、10分程度の長さに分割して配信されている
VR動画配信プラットフォームの中には、どこから動画を探せばいいのか迷ってしまうUIになっているサービスがある。現実世界から切り離されるVRという特性上、操作がわからないというのはユーザーに大きな負担がかるため、UIは非常に重要だ。その点、「360Channel」のメインメニューは、左から「新着動画」「ピックアップ」「ランキング」が並び、その下に各カテゴリーを表示する形で、非常にわかりやすいデザインになっていた
実際に「360Channel」のVR映像を何本か体験してみた。すべての動画が360°というわけではなく、中には220°や180°のものもある。これは、カメラの背後にある機材やスタッフなど余分な要素を排除し、視聴に集中しやすい環境を提供するため。また、VR動画特有のスティッチが目立たないように処理されているのもポイントだ。VR制作では、複数のカメラで撮影した映像をつなぎ合わせる“スティッチ”という作業が行われるのだが、「360Channel」は専門のチームを立ち上げスティッチ作業に対応し、違和感のない動画制作に取り組んでいるそうだ。
VRコンテンツでは比較的珍しいバラエティチャンネル「チュートの真夜中にヤリたい事!」は、司会のチュートリアルとゲストがトークを交わすスタジオトークを見られるほか、グラビアアイドルと妄想デートを楽しむこともできるコンテンツ。スタジオトークで実際にスタジオに見学しにきているような臨場感を味わったと思いきや、セクシーなグラビアアイドルと近すぎる距離感でドキドキの妄想デートを楽しむことも可能だ。このほかにも4人目のメンバーを探す「求む!4人目のダチョウ倶楽部」や、グラビアアイドルの自撮りを体験できる「グラドルデリバリー箱」など、合計9つのバラエティチャンネルがある
動物を扱うカテゴリー「アニマル」の「ぶるる・べるるのオヤツ獲得大作戦」は、2匹の猫にスポットを当てた番組で、1〜2分の短い動画を配信している。VRでも猫は猫、と思っていたのだが、実際は違った。VRで見るほうがディスプレイで見るよりも “かわいらしさ”が増すのだ。目の前に広がる大画面ででかわいいしぐさを見せられるとニヤニヤしてしまう
カテゴリー「体験」には、プロレスやバスケットボールといったスポーツから、渋谷のハロウィンやANAの機体工場見学など、さまざまなイベントを疑似体験できる動画が配信されている。特に人気なのがANAの機体工場見学で、通常は見られない場所を没入感満載のVR動画で疑似体験できる
PS VRの「360Channel」では、カメラを搭載したバルーンを成層圏まで打ち上げて撮影した「SPACE DRIFTERS」や、話題の最新車をバーチャル試乗できる「360度試乗」などのVR動画が配信されている。地震から1年が経過した熊本県各地を取材した「熊本地震 震災からの1年」は近日配信予定だ
このほかにもVR動画は多数取り揃えられていて、1日ですべてを見るのは不可能。今後も定期的に動画を配信してコンテンツを充実させるとのことで、非常に楽しみだ
「かねてよりどのようなコンテンツがVRに向いているかを調査してきた」というだけあって、「360Channel」で配信中の動画はどれもクオリティの高いものが多い。また、PS VRで配信中のVR動画プラットフォーム「Littlestar」とは異なり、日本向けのコンテンツがたくさんあるのも興味深い。足りない点をあげるとすれば、VRゲームと違い、「360Channel」で配信されている動画はプレイヤーの動きと連動しないということ。定点カメラで撮影されているため、見ている人が頭を動かしても、VR動画内の視点は動かない。しかし、これだけのコンテンツをすべて無料で見られるのは、弱点を補って余りある大きな強みと言える。PS VRを持っている人は実際に試してみて損はないはずだ。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。