もうすぐ冬休みがやってきますね。正月休みは家でゴロゴロしながら、積みゲーを遊び倒すという人もいるのではないでしょうか。そんなマッタリゲームホリデーを過ごす人に遊んでほしいのが、今回紹介する「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S」(以下、ドラクエXI S)です。
Nintendo Switch「ドラゴンクエストXI S」
2017年に発売され、その年を代表する作品として大ヒットを記録した「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」(ドラクエXI)。勇者が世界を救うという原点に戻り、これぞドラクエというストーリーと世界観、そしてゲーム性は、懐かしいいっぽうで、新しさも感じさせてくれました。
この「ドラクエXI」に新要素を追加したのが、2019年9月27日に発売されたNintendo Switch「ドラクエXI S」なのですが、よくある移植版の範疇を上回り、これこそが決定版と言えるくらい、完成度が高い作品になっています。
「ドラクエXI」の大ヒットとなった要因のひとつは、PS4版とニンテンドー3DS版で異なるグラフィックが用意されていたことでしょう。PS4版は、最新のゲームエンジン「Unreal Engine 4」で描かれる美麗なグラフィックが楽しめ、ニンテンドー3DS版は3Dモードと2Dモードが選べるのが特徴でした。
Nintendo Switch向けの「ドラクエXI S」は、ニンテンドー3DS版と同じように3Dモードと2Dモードを選べます。3Dモードは、PS4版と比べても遜色がなく、リアル頭身が美麗な世界を駆け巡るグラフィックを楽しめます。2Dモードは、昔ながらのドット絵表示を楽しめるモードで、往年のファンならプレイするだけで懐かしい気分に浸れるはずです。
3Dモードでは、鳥山明氏による個性豊かなキャラクターたちが実際に動くのを楽しめるのですが、ただ動くだけでなく、キャラクター固有のしぐさや表情などまで細部の作り込みがすばらしいんです。
流れる水や、揺れる草木までもが美しく描写された3Dモード。キャラクターたちの動作や仕草も細かく生き生きとしている
スーファミを思い出させる2Dモード
これに加えて、「ドラクエXI S」は「ドラクエXI」にはない、キャラクターボイスが実装されました(3Dモードのみ)。ドラクエと言えば、キャラクターの声は「トゥルルルルル」という音でしたが、「ドラクエXI S」ではガンガンしゃべります。
しかも、イベントのムービーシーンだけではありません。バトル中にもしゃべるんです。これにより、キャラクターや世界そのものが命を吹きこまれたかのように生き生きとします。まさにドラクエの世界がそこに存在しているという気分に浸れるんですよね。
バトル中でもキャラクターがしゃべります。声があるだけで、まったく違った印象です
「ドラクエはキャラクターがしゃべらないのがいいのに!」という人も心配は無用。キャラクターボイスはオフにすることもできるので、ノーマルのままのドラクエも遊べます。
サウンド面では、従来のシンセサイザー音源に加えて、オーケストラ音源が選べるようになりました。生オーケストラの音源を聞きながらゲームをプレイできるのは、ものすごく贅沢。シンセサイザー音源と比べると臨場感は段違いです。
臨場感のあるオーケストラ音源を選べるのもポイント
ドラクエの世界という部分では、細かいですが、フィールドで仲間が追従してくるのは地味にうれしかったですね。バトルではみんなで戦っていたはずなのに、フィールドに戻るとひとり、というのはさみしいものがありましたから。
フィールドでも仲間が見える! これだけで雰囲気がグッと増します
こういった新要素は、すべて「ドラクエXI S」の世界への没入感を高めてくれます。
「ドラクエXI S」が単なる移植版ではない理由は、グラフィックやキャラクターボイスだけではありません。ゲームの根本であり、ドラクエでもっともユーザーが期待するストーリーについても、「ドラクエXI S」ではキャラクターごとにシナリオが追加されるなど新要素があります。
そして、ドラクエファンにとっては重要なクリア後のお楽しみ。「ドラクエXI S」では、ある人物と結婚することができましたが、「ドラクエXI S」では全仲間から好きなキャラクターを選んで一緒に暮らせるようになるイベントに進化しました。
仲間を選んで一緒に暮らせる!
ストーリーを進めていくと、自然と愛着のあるキャラクターが出てきます。こういった思い入れの大きいキャラクターと一緒に暮らせるわけです。これは、かなりうれしい追加要素ですね。
極めつけは、最強の敵が追加されたこと。ドラクエをプレイしたことがある人にとって、エンディング後の裏ボスがでてくるのは当たり前。これを楽しみにしている人も多いでしょう。「ドラクエXI S」では、詳しくは書きませんが、過去最強クラスの強さを誇る敵が登場します。やりこみ勢にとっても、なかなかの強敵になるはずです。
「ドラクエXI S」のバトルは、今では珍しくなったコマンド方式です。フィールドで敵と接触するとバトルが始まり(2Dモードはランダムエンカウント)キャラクターの行動を選択して実行する、というドラクエファンにとってはおなじみのものです。
JRPGならではと言えるコマンド方式は、最近のゲームを遊ぶ人にとっては“遅い”と感じる人がいるかもしれません。最近のゲームは、オンラインにしろオフラインにしろアクションがメインで、とにかく展開がめまぐるしく入れ替わるのが一般的です。
2Dモードだと、これこそがコマンド式バトルというなつかしのUI
FPSやTPSをメインに遊ぶ筆者としても、久しぶりのJRPGとなった「ドラクエXI S」ですが、殺伐としないマッタリとしたドラクエの世界を楽しめました。
コマンド方式のバトルはゆっくり考えながら遊べますし、忙しくボタン操作を行う必要がありません。そのため、バトルをいったん放置して用事をこなすこともできますし、アクションゲームではあまり味わえない、まぶたが自分の意思に反して下がってくる寝落ち寸前まで遊んでしまう、ということもあったり。Nintendo Switch Liteを握りしめたまま寝てしまい、気づいたらまだバトルが行われていたときは、子どものころに戻ったような懐かしい気持ちになりました。
バトルスピードは3段階で調節可能で、ドラクエと言えばの“さくせん”も使えます。「ドラクエXI S」ではキャンプでしか使えなかった「ふしぎな鍛冶」がどこでも使えるようになっているなど、世界観を壊さずにゲームの快適性を向上させる新要素がたくさんあるので、今さらシンボルエンカウント&コマンド方式のJRPGは……という人も心配無用です。
バトルスピードは「ふつう」「はやい」「超はやい」の3つから選べます
ドラクエ好きの人の中には、ゲームをとことんまでやりこみたいという人もいるでしょう。そういった人にピッタリなのが「しばりプレイ」です。今までは、ユーザーが自分で決めたルールに沿ってプレイしていたしばりプレイですが、「ドラクエXI S」では、公式の「しばりプレイ」モードが搭載されています。
「ドラクエXI」の「買い物ができない」「防具が装備できない」「はずかしい呪い」に加えて、「楽な戦いは経験値なし」「すべての敵が強い」「超はずかしい呪い」「町の人に嘘をつかれる」「主人公がやられたら全滅」が追加されました。これによっては、ゲームの難度が大きく左右されます。
「しばりプレイ」は冒険の書を作成するときに設定可能
「ドラクエXI S」は、非常に評価の高い「ドラクエXI」の世界観やストーリーはそのままに、本レビューで触れた新しい要素を加えることで、エンターテインメント性の高い作品になっています。いろいろなゲームをプレイしていますが、「ドラクエXI S」は自分の子どもにもプレイしてほしいと思える数少ない1本です。
困っている人を助けていいことをする。そして、その対価として自分が助けてもらったり、新しい道が開けたりする。これは、やさしさと思いやりの精神を、そして、誠実に生きることがいかに大切かということを教えてくれます。
「ドラクエXI S」では、長い旅を通して、仲間との出会いや別れを経験します。時間をかけて強くなる仲間同士の絆、そして、自分ではどうすることもできない出来事 に一喜一憂することでしょう。
モンスターを倒してレベルを上げ、お金をためて武器や防具をそろえ強敵を倒すことは、努力を積み重ねて大きな問題に立ち向かう難しさや、困難な壁を乗り越えたときの達成感につながるものがあります。
このように過去の「ドラクエ」シリーズで学んだ大事なことが、すべて詰まっているのが「ドラクエXI S」です。こういったゲームで大人でも楽しめる作品というのは少なくなってきており、「ドラクエXI S」は貴重な存在と言えます。
「ドラクエXI」をすでにプレイした人でも、もう1度あの感動を味わうにはうってつけです。まだプレイしていない人は、冬休みに遊ぶゲームにリストアップしてみてはいかがでしょうか。持ち運びできるNintendo Switch用タイトルなので、里帰りの新幹線の中など移動中でもきれいなままのグラフィックで楽しめるのもうれしいですね。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。