ゲーミングデバイス専門ブランドのSteelSeries(スティールシリーズ)から、初の配信向けマイク「Alias」「Alias Pro」が発表された。発売は10月20日で、市場想定価格は「Alias」が32,970円前後(税込)、「Alias Pro」が58,270円前後(税込)だ。
SteelSeries「Alias Pro」(写真左)と「Alias」(写真右)
ゲーミングヘッドセットやゲーミングキーボード、ゲーミングマウスといったメジャーどころから、ゲーミングDACやゲーミングスピーカーといったちょっとニッチなジャンルまで、幅広いゲーミングガジェットを取り揃えるSteelSeriesだが、意外にも配信向けマイクを手掛けたのは今回が初。
とはいえ、そこはゲーミングデバイス専門ブランドの老舗。これまでのSteelSeries製品同様、ゲーマーやストリーマー向けにしっかりと作り込まれた製品に仕上がっていた。2023年9月に開催された東京ゲームショウ2023の会場で実機にいち早く触れることができたので、実機の写真を交えながら「Alias」と「Alias Pro」の特徴をレポートしていこう。
SteelSeries初の配信向けマイクとして投入される「Alias」と「Alias Pro」。ファブリック素材を使用したマイク本体のルックスは似ているが、ハードウェア構成は両モデルで若干異なっている。
「Alias」(写真上)と「Alias Pro」(写真下)のパッケージ
「Alias」は付属のUSBケーブルでマイク本体をPCに接続する、配信向けマイクとしてはかなりオーソドックスなタイプの製品だ。ヘッドホンゲイン調整ダイヤル、マイクミュート専用ボタン、マイクゲイン調整ダイヤルといった機能をマイク本体側にすべて集約したオールインワンタイプの製品となっており、初めて配信向けマイクを使うという人でも簡単に使える1台に仕上がっている。
シンプルなUSB接続タイプの「Alias」。オールインワンタイプで、正面にはヘッドホンゲイン調整ダイヤルやマイクミュート専用ボタンを用意。背面には、マイクゲイン調整ダイヤルやヘッドホン出力が用意されている
マイクミュートや入力レベルは正面のステータスLEDから確認できる。写真の赤いバツ印はマイクミュートの状態だ
もういっぽうの「Alias Pro」は、XLRケーブルで接続するマイク本体とミキサーがセットになったハイエンドモデルという位置づけ。「Alias」とは異なり、マイク本体側には操作ボタンなどは一切なく、各種機能はすべてミキサー側に集約されている。ミキサー背面にはXLR端子が用意されており、XLRケーブルで接続するマイクから入力されたアナログ音声をミキサー内でデジタル変換する形だ。
「Alias Pro」のマイク本体。「Alias」にあった操作ボタンやステータスLEDはなし
「Alias Pro」のマイク本体とミキサーはXLRケーブルで接続する。もちろん、製品パッケージにはXLRケーブルも付属する
「Alias Pro」に付属するミキサーがこちら。左側がマイク、右側がヘッドホンの操作に割り当てられている。入力レベルは左上のマイクゲイン調整ダイヤルの周囲に配置されているLEDの色から確認する形。マイクミュートやヘッドホンミュート時はボタンの周囲に配置されているLEDから確認できる
「Alias Pro」に付属するミキサーの背面には各種インターフェイスが並ぶ
さらに、ミキサー背面には、2つのUSB Type-Cポートが用意されており、同時に2台までのPCに入出力が行えるのも「Alias Pro」ならではの特徴。片方のPCでゲーム、もう片方のPCでOBSを使った配信を行うなど、オーディオインターフェイスを別途用意しなくてもこれ1台でデュアルPC配信が行えるなど、ストリーマー向けの本格仕様が特徴の1台となっている。
「Alias Pro」のミキサーには2つのUSB Type-Cポートを用意。特別な機器を用意しなくても、本機1台だけでデュアルPC配信が行える
オーソドックスなUSBマイクの「Alias」と、XLRマイク&ミキサーで本格的な配信にも使える「Alias Pro」。両者で若干毛色が違うようにも見えるが、兄弟機ということで共通する部分も多く、配信向けマイクらしい充実の機能を有している。以下、共通する機能を抜粋してみた。
・1インチの大型コンデンサー型マイクカプセル搭載
・PCソフト「Sonar」に対応
・マイクスタンド取り外し&アーム取り付けに対応
・マイクミュート専用ボタン搭載(「Alias」はマイク本体正面、「Alias Pro」はミキサー)
・ヘッドホン出力調整ダイヤル搭載(「Alias」はマイク本体正面、「Alias Pro」はミキサー)
・マイクゲイン調整ダイヤル搭載(「Alias」はマイク本体裏側、「Alias Pro」はミキサー)
・ステータスLEDでマイクミュートや入力レベルを確認可能(「Alias」はマイク本体LED、「Alias Pro」はミキサーダイヤルLED)
・ヘッドホン出力端子搭載(「Alias」はマイク本体裏側、「Alias Pro」はミキサー左側面)
・イルミネーション機能(「Alias」はマイク本体底面、「Alias Pro」はミキサー底面)
ステータスLEDなど両モデルで共通する部分は多いが、LEDの光り方などが若干異なる
ざっと見ただけでもかなり見どころは多いが、なかでも注目してほしいのがマイクとしての基本性能とPCソフト「Sonar」への対応だろう。
まずは前者のマイクとしての基本性能だが、「Alias」と「Alias Pro」には、1インチ(口径25mm)の大型コンデンサー型マイクカプセルが本体正面上部に1基搭載されている。1インチというサイズは、一般的な配信向けマイクに搭載されているものと比べると約3倍の大きさだという。
一般的な配信向けマイクに搭載されているマイクカプセル(写真左)と、「Alias」「Alias Pro」に搭載されているマイクカプセル(写真右)。大きさの違いは一目瞭然だ
マイクカプセルは本体正面上部に配置
正直、このサイズのマイクカプセルを搭載しただけでもすごいことなのだが、「Alias」と「Alias Pro」ではさらに指向特性に関しても追求。一般的な配信向けマイクでは単一指向性の中でも前方の集音角度が狭いスーパーカーディオイドを採用することが多いのだが、「Alias」と「Alias Pro」ではスーパーカーディオイドよりも集音角度の広いカーディオイドをチョイス。大型のマイクカプセル1基で配信者のいる正面位置の領域をしっかりとカバーすることで、マイクと口元の位置関係がとてもシビアなスーパーカーディオイドでは難しい配信者の距離感が見える音を実現したという。
指向特性は集音角度の広いカーディオイド。大型のマイクカプセル1基で配信者のいる正面位置の領域をしっかりとカバーすることで、マイクと口元が多少離れてもしっかりと声を収音できるのが利点
後者のPCソフト「Sonar」への対応もSteelSeriesならではの特徴だ。SteelSeriesといえば、これまでにもハードウェアとソフトウェアを組み合わせてさまざまな便利機能を実現してきたが、配信向けマイクの「Alias」と「Alias Pro」にもこの考えを導入してきた格好。
なかでも、「Alias」と「Alias Pro」では「AIノイズキャンセリング機能」というソフトウェアベースのノイズキャンセリング機能を利用できる点が大きな強みだ。実際、東京ゲームショウ2023のかなり騒がしい会場の中で「AIノイズキャンセリング機能」を体験してみたが、周囲の環境騒音をほとんど拾わず、自分の声だけをしっかりと収音できていた。
「AIノイズキャンセリング機能」は、PCソフト「Sonar」から有効化できる
ほかにも、音声の出力先の切り替えやサイドトーンの調整、ヘッドホン出力端子から出力するサウンドのイコライザーを調整できるなど、「AIノイズキャンセリング機能」以外にもPCソフト「Sonar」に対応した利点は多く、この部分だけでも「Alias」と「Alias Pro」を選ぶ理由にはなりそうだ。
PCソフト「Sonar」を使えば、ステータスLEDやイルミネーション機能のカラーをカスタマイズすることも可能。ほかにもさまざまなカスタマイズが可能だ
マイクミュート専用ボタンやヘッドホンゲイン調整ダイヤルの搭載、アーム取り付けの対応、LEDによるステータスの確認のしやすさなど、配信向けマイクに求められる機能をしっかりと網羅しつつ、こだわりのマイク構造やPCソフト「Sonar」を使った「AIノイズキャンセリング機能」の対応で“周囲の環境騒音を拾わず、人の声を正確に収音する”という配信向けマイクとしての基本性能もしっかりと追求してきた「Alias」と「Alias Pro」。昨今の円安の影響で価格面がやや気になるが、初の配信向けマイクとは思えない完成度の高さはさすがSteelSeriesといったところ。特に上位モデルの「Alias Pro」は、オーディオインターフェイス不要でデュアルPC配信が可能なストリーマー向けの本格派マイクとして注目されそうだ。