2023年8月25日に発売された「アーマードコア6」。すでに本作をクリアした人も多いと思うが、想像以上の難易度の高さに驚いた人もいるのではないだろうか? 特に、本作で初めて「アーマードコア」シリーズに触れた人にとっては非常に難しいと感じたことだと思う。
筆者も、予習程度に「アーマードコア2」と「アーマードコア3」の冒頭をほんの少し触れた程度のシリーズ未経験者であり、全クリまでは本当に心が何度も折れそうになった。しかし、実際にプレイしてみて、「アーマードコア」シリーズ特有の難しさに、開発元のフロム・ソフトウェアが手掛けてきた「ソウル」シリーズや「SEKIRO」、「エルデンリング」で培われた技術が加わることで、同社作品の中でも前例のない新領域の難しさが感じられた。
本レビューでは、フロム・ソフトウェアが「アーマードコア6」で具体的にどのような新領域を切り拓いたのか、筆者が実際にプレイした感想をもとに述べていく。
なお、記事ではストーリーにも触れており、場合によってはネタバレに感じられる可能性があるため、注意していただきたい。
「アーマードコア6」は、1997年に第1作が発売されたシリーズのナンバリング第6作に当たる。25年も前から続いているシリーズであり、本作が発表されたときにはゲーマー界隈で大きな話題を呼んだ。
本作では、未知の新エネルギー「コーラル」が眠る辺境の惑星ルビコンを舞台に、プレイヤーが独立傭兵として戦いに身を投じていくさまが描かれる。ゲームはメインメニューからのミッション受注という形で進み、各ミッションではクリア条件の異なる戦場を攻略していくだけでなく、ひと筋縄ではいかない強敵に次々と遭遇する。
そして、プレイヤーは100種類にも及ぶパーツから装備をカスタマイズし、理想の機体を自作してさまざまなミッション、強敵に挑むことになるのだ。戦闘やミッション、装備のカスタマイズといった各要素について解説し、本作の魅力を掘り下げよう。
メインガレージと呼ばれる場所、受注できるミッションの内容、種類は多岐にわたる。ミッションの道中に現れる敵は、その都度種類や特性が変わるのはもちろん、目の前の敵をただ倒していくという単純なものだけではない。
敵にバレないように遂行しなければいけないミッション、敵地に潜入し情報を探るミッションなどが用意されており、クリア条件や攻略方法はミッションによって異なるため、状況に応じて最適なゲームプレイを模索しなければならない。その最たる例が、各ミッションに用意された強敵の数々である。
ほぼすべてのミッションにボスバトルが発生するのだが、どのボスもひと筋縄ではいかない強敵ばかりだ。各ミッションの締めに登場する大ボスだけでなく、道中に突然出現する中ボスも攻略法を見出さないと苦戦を強いられる。このゲームデザインは、フロム・ソフトウェアならではの「死にゲー」を彷彿とさせる。
個人的には、本作のボス戦は「ソウル」シリーズなどの多くのユーザーが知っているであろうフロム・ソフトウェア作品のボス戦より難しいと感じる場面が多々あった。発売直後には、チュートリアルに登場するボス・惑星封鎖機構大型武装ヘリが容赦のない強さで初心者プレイヤーをコンティニューさせまくった報告がSNSで相次いだことも話題になった。
チュートリアルのボス・惑星封鎖機構大型武装ヘリは初心者にとって強敵だが、戦いを通して機体の操作や戦いのコツが掴める良ボス
本作のボス戦の難易度がこれほどまでに高く感じるのには、いくつかの理由がある。ひとつは「アーマードコア」シリーズ特有の操作の難しさによるものだ。右手武器、左手武器、右肩武器、左肩武器という4つの攻撃手段を随時使い分けるだけではなく、回避や敵への接近のために使用するブースト、地上戦と空中戦の目まぐるしい入れ替わり、そして操作自体にも一般的なゲームと比べてクセがある。難しいと評されるフロム・ソフトウェア作品のほかのゲームと比べても、戦いの最中に気を配らなければならない部分、慣れなければいけない部分が多い。
過去の「アーマードコア」シリーズ自体が縦横無尽に移動する機体をカメラで追い続け、照準を合わせること(6では自動ロックオン搭載)で敵機を撃破していく、ある意味非常に忙しいゲームだ。単純な敵の強さだけでなく、処理する情報量の多さが難易度に拍車をかける。
この操作は、ほかのゲームではあまり見られない特有のスタイルであり、初心者は慣れることからスタートしなければいけない。これが本作の難易度が異様に高く感じる理由のひとつである。
もうひとつの要因は、ミッションや敵、状況に応じた装備を選択し適宜変更する必要があること。このカスタマイズ要素は“アセンブル”と呼ばれるのだが、そもそも装備の相性によっては過度の苦戦を強いられ、場合によっては倒すことが不可能な場合もある。
たとえば、武器には銃やミサイルなどの遠距離武器と、ブレードなどの近距離武器があるのだが、チャプター2に登場するボス、スマートクリーナーとの戦いでは、相手の近距離での攻撃範囲、および威力がすさまじいため、距離を詰めることが死のリスクを高める。近距離武器で挑むこと自体が無謀なのだ。
スマートクリーナーは、近距離で戦うのが危険なうえに、ダメージが有効な部分も限られているため、正確に高火力を出せる武器を装備しなければいけない
ほかにも、移動スピードなど機動力重視の装備にしなければいけなかったり、空中戦に特化した装備にしなければならなかったりなど、プレイヤーは戦いを繰り返し行いながらアセンブルを考え、より適した装備を探っていく必要がある。
地上から攻撃することが難しいボスには空中特化のカスタマイズで応戦するなど工夫が必要だ
ボスの行動や攻撃パターンを把握しなければいけないのは、ほかのフロム・ソフトウェア作品と変わりないが、それによってプレイヤーが動きを変えるだけでなく、装備もじっくり考えなければスムーズに攻略することができない、力押しが通用しないゲームデザインは、ほかのフロム・ソフトウェア作品と比べてもより顕著と言えるだろう。
しかし、苦戦を強いられるがゆえに、ボスを倒せたときの達成感は格別だ。この醍醐味は、ほかのフロム・ソフトウェア作品と同じレベルであり、さすがだと感心する部分でもある。
降り注ぐ攻撃を回避しつつ有利なポジションを探しながら攻撃を与え続け、蓄積されたダメージにより敵が行動不能になった瞬間に、すべての武器による攻撃を叩き込み、一気に体力を削っていく。こういった複雑なプロセスをへてボスを倒したとき、筆舌に尽くしがたいほどの快感が頭から足先まで駆け巡るだろう
何度もトライしてボスを撃破したときに発生するスローモーション演出には、「やってやった」という達成感に加え、ボス戦から解放されたという安堵の気持ちが入り交じり、ほかのゲームでは味わえない極度の快感に浸ることだろう
いっぽうで、「ソウル」シリーズに慣れ親しんだ筆者にとって、本作で味わえる達成感はまた別ものだとも感じた。「ソウル」シリーズは、絶対的な強敵を打ち負かし、ようやく次のステージへと駒を進めることができるワクワク感を内包していたのに対し、「アーマードコア6」は長期間続いた過酷な仕事をようやく終えたときのような解放感であった。
だからこそ、ミッションが終わると少し休憩したくなるし、次のミッションに挑むときには気合いを入れて臨まなければならなかった。こういった感想を抱くのは筆者がシリーズ未経験者であるからにほかならないと思うが、ほかのゲームでは味わえない絶妙な疲労感こそ、本作にやりがいを感じるためになくてはならない部分にも感じる。ただし、この部分を楽しめるかどうかは、本当に人によるとも思う。
機体のカスタマイズを意味するアセンブルは、本作のミッションに挑む準備段階としてとりわけ重要な部分であり、ここについて熟慮することも本作の醍醐味である。先述したように、アセンブル次第でミッション攻略自体が不可能になるほど、重要なパートであり、常に気を配る必要があるシステムなのだ。
アセンブル用に用意されたパーツは実に100種類以上で、武器の種類だけではなくボディや機脚なども変えられる。これにより機体のスピードや姿勢の安定性までもが変わってくるのだが、装備の積載容量に制限がかけられているため、常に試行錯誤しながら望むことになる。
アセンブル画面
戦闘に慣れないうちは、機動力重視で俊敏に立ち回ることができるカスタマイズが無難に感じる半面、操作に慣れてくると、地上戦が得意なボスに対して、空中でホバリングができる機体にして有利なポジションを取るなど、アセンブルのコツがわかってくる。
加えて、アセンブルだけではなく、機体の性能を一律で上げられるOSチューニングと呼ばれる要素もある。いわゆる育成要素に近いシステムで、新たなアクションを解放したり、武器の攻撃力を上げたりできる。OSチューニングでは回復アイテムであるリペアキットの回復量も上げられるので、回復力が足らずに負けてしまうと感じる初心者のうちはついつい頼りたくなるだろう。
OSチューニングの画面
OSチューニングを利用するには敵機体との一騎打ちをシミュレートするモード「アリーナ」をクリアしてOSチップを手に入れなければならず、ゲームが進行すればするほど敵機体も強力になっていき、こちらもメインのミッション同様にひと筋縄ではいかない。
アリーナは敵機体との一騎打ち戦で、回復せずに敵機体を撃破しなければならない
アセンブルやOSチューニングを調整することで、ひとつのミッションでも攻略方法が変わってくるところが、非常に面白いポイントだ。新たなミッションに挑むたびに特性の違う敵やボスが登場するので、敵の種類や配置によって使用するべき武器や装備もおのずと変わってくる。
初挑戦のミッションではうまくいかないことが多々あるが、装備を見直すだけで勝利できるようになったりする。また、一度クリアしたミッションでも装備を変えることでより楽にかつ安定にクリアできるなどと、カスタマイズによって変わる攻略法は多岐にわたるだろう。
フロム・ソフトウェアのタイトルの中でも、「死にゲー」と評されるようなタイトルは、何度もプレイしてプレイヤースキルを上げて攻略につなげることが多いが、本作はアセンブルを極めていくことこそが攻略への糸口となる。シリーズ未経験者の筆者にとっては、これが非常に新鮮であり、プレイヤーを熱中させる要素のひとつだと感じだ。
最後に本作のストーリーを解説しよう。本作では「コーラル」と呼ばれる新たなエネルギーを巡り、各勢力が惑星ルビコンで激しい戦火を繰り広げていた。しかし、「アイビスの炎」と呼ばれる未曾有の大災厄が原因でルビコンは見捨てられた土地となり、長らく手つかずの星となっていた。
しかし、失われたはずの「コーラル」の欠片が発見されたことで、惑星外の企業らが再びその利権を獲得するためルビコンに侵入する。そんななか、主人公である強化人間C4-621は、独立傭兵として戦いに身を投じていくことになる。
ストーリーはムービーなどを通して一部始終をていねいに描いているというよりかは、キャラクターとの会話や文章を通じてプレイヤーの理解にゆだねる形式で描かれる。
ミッションの開始時と終了時にはキャラクターからのメッセージが入り、主人公への評価やルビコンでの勢力状況などが伝えられるほか、ミッション中に入手できるログからは物語の背景が読み取れるようになっており、ストーリーをしっかり把握するにはこれらの情報を見落とさず押さえていくことが重要だ。
こういった手法は、「ソウル」シリーズをはじめ多くのフロム作品で取り入れられてきた手法だ。
正直なところ、ストーリーの展開は会話やテキストを通じた部分が多いため退屈に感じることもある。しかし、物語の背景をしっかり理解していくと、秘められた内容の濃さに驚く瞬間が多々ある。特に、2周目以降は1周目では気づかなかった物語の核心が見えるようになる。
ミッション中に獲得できるログを読むと、ストーリーの展開にも熱く込み上げてくるものがある
本作は、ただミッションをクリアしていくのではなく、一度クリアしたミッションでよりハイスコアを目指すのがやり込み要素となる。初見では難しいかもしれないが、やり込み中にこそストーリーの詳細を見ていただきたい。きっと1周目には感じなかった奥深さに気づくだろう。
「アーマードコア6」は、これまでフロム・ソフトウェアが手がけてきたゲームの技術を「アーマードコア」シリーズ最新作として応用し、元々の魅力をすばらしいバランスで現代に再現させた作品だ。
シリーズのファンにとっては最新技術によって生まれ変わった「アーマードコア」を堪能でき、未経験者にとっては新鮮なゲーム体験を味わえる作品でもある。ただし、やはり難易度の高さから、万人におすすめできるゲームではないだろう。ゲームは難しいほうが遊びがいがあるという人には、ぜひ手に取ってみてほしい。