レビュー

PS5「アサシン クリード ミラージュ」全クリレビュー! 原点回帰の傑作or凡作?

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2023年10月5日に発売された、ユービーアイソフトの「アサシン クリード ミラージュ」。シリーズの正史として13作目にあたる本作は、現代的なゲームプレイで原点回帰を目指したとうたわれており、さまざまな点でかつての「アサシン クリード」らしさをもう一度築き上げた作品だ。シリーズを通してプレイしてきた筆者も、プレイしながらノスタルジーを感じずにはいられなかった。そのいっぽうで、何か特別感に欠ける物足りなさを感じたのも事実だ。

今回は、この「アサシン クリード ミラージュ」をやり込み要素も遊びながらクリアまでプレイしたので、本作のゲーム性に関して評価できる部分と、物足りなさを感じた部分の双方を解説していこう。

なお、本レビューはストーリーについても触れており、場合によってはネタバレに感じる場合があるかもしれないので、その点は注意していただきたい。

「アサシン クリード ミラージュ」とは?

「アサシン クリード ミラージュ」は2020年に発売された「アサシン クリード ヴァルハラ」以来のシリーズ最新作。中東の大都市バグダッドを舞台に、主人公バシムがアサシン教団の一員として成長する過程を描いている。

本シリーズは、「アサシン クリード オリジンズ」(2017年)から「アサシン クリード オデッセイ」(2018年)、「アサシン クリード ヴァルハラ」(2020年)まで、広大なフィールドを基調にしたオープンワールドRPGという作風を継続してきた。

しかし、「アサシン クリード ミラージュ」ではゲームデザインを一新し、都市を中心としたマップ内を駆け回るかつての「アサシン クリード」のシステムに戻り、アクションも原点回帰を意識している。ゲームのボリュームも前3作品よりもかなりコンパクトで、手軽さを重視している。

原点回帰のゲームシステム

原点回帰を最も強く感じられるのは、戦闘やアクションを中心にしたゲームシステムに関する部分だろう。

「アサシン クリード オデッセイ」以降は、多彩な攻撃を使って正面から複数の敵を相手にするなどアクションゲーム寄りのデザインに傾倒していた。しかし、本作ではステルスや暗殺アクションが重要な本来の「アサシン クリード」のゲームデザインが徹底されている。

ステルスらしく、隠密に暗殺をこなし目的を遂行するゲームプレイがとりわけ重要になった。敵地に近づいたら鷲(エンキドゥ)の目で目標と敵をマークし潜入を開始する。敵の背後を取りながら、ひとりずつ迅速に暗殺し、目的を達成したら速やかに敵地を後にする。

一連の華麗な暗殺ゲームプレイは、まさに本来の「アサシン クリード」の体現であり、筆者自身も久しぶりの感覚に胸が高鳴った。

華麗なアサシンアクションは戦闘の楽しさを倍増させる

華麗なアサシンアクションは戦闘の楽しさを倍増させる

本作では、「暗殺の極意」というステルス状態独自の特殊アビリティーが登場し、プレイヤーの視界に入った敵を一定数まで瞬殺できるほか、道具を使って敵を陽動して撹乱することもできるようになる。こういったアサシンならではのアビリティーを活用して、ミッションをクリアしていく。

「暗殺の極意」を発動すれば密集した敵を一度に始末できる

「暗殺の極意」を発動すれば密集した敵を一度に始末できる

敵の視界を遮ることができる道具、煙幕。道具は強化でき、最大レベルまで強化すると強力な性能を備えるようになる

敵の視界を遮ることができる道具、煙幕。道具は強化でき、最大レベルまで強化すると強力な性能を備えるようになる

ただし、敵に見つかると増援がきてゲームオーバーというわけでなく、正面の戦闘でも巻き返せる作りになっている。それも、とにかく戦いまくるというよりは、敵の攻撃を受け流し体勢の崩れたところを一撃で倒す戦法が重要。落ち着いて敵の攻撃を見極めさえすれば敵に囲まれても切り抜けられることが多いのだ。また、防具で覆われていない部分に投げナイフを当てると敵がひるむため、ゲーム序盤でも瞬殺できる。

このように、本作は正面戦闘になっても泥臭い殴り合いをする必要はないため、敵にばれても華麗なアサシン体験がすぐ損なわれないようになっているわけだ。これもかつての「アサシン クリード」の面白さを甦らせている点だ。

守りの堅い重装備兵も投げナイフを正しく当てれば怯ませられる

守りの堅い重装備兵も投げナイフを正しく当てれば怯ませられる

このほかにも、NPCからスリでアイテムを盗んだり、公衆の面前で殺人などを犯すと指名手配度が上がったりといったゲームシステムが登場する。指名手配度が最大になると、街中の兵士がバシムを見つけ次第追いかけまわしてくるため、町中に貼られた手配書をはがして指名手配度を下げなければいけなくなる。これも過去作に登場したシステムだ。

スリでしか手に入らないアイテムもあるが、バレると衛兵を呼ばれる

スリでしか手に入らないアイテムもあるが、バレると衛兵を呼ばれる

このように、本作はバグダッド内を暗躍し、隠れし者として与えられた目的を達成するのがメインのゲームプレイだ。これは、ステルスゲーム時代の「アサシン クリード」を彷彿とさせる正に原点回帰と言える点だろう。

いっぽうで、「アサシン クリード ヴァルハラ」で見られたオープンワールド要素も用意されている。これらを最新作に引き継ぐことで、ただ決められた場所を周っていく単調なデザインにとどまらず、プレイヤーに思考と工夫を求めるデザインにもなっているわけだ。

また、歴史的に重要な場所を巡るアクティビティーも用意されており、アッバース朝時代のバグダッドを旅行感覚で探索できる。このような歴史的リアリティーを反映させるゲームプレイは「アサシン クリード」の最も得意とする領域だが、本作でもその手腕は遺憾なく発揮されていた。栄華を誇ったイスラム帝国の都市を闊歩することは、歴史好きの人にとっても面白い体験になるはずだ。

バグダッドは荘厳で美しいだけでなく、さまざまな歴史的名所に出会える

バグダッドは荘厳で美しいだけでなく、さまざまな歴史的名所に出会える

バグダッドで暗躍する「古き結社」を巡る物語

昨今の本シリーズでは長大なオープンワールドRPGという趣向によって物語も非常に重厚なものが用意されていたが、本作では主人公バシムがアサシン教団に入団してから成長するまでの過程をコンパクトかつドラマチックに描いている。

舞台は9世紀の栄華を極めたアッバース朝時代のバグダット。主人公バシムは、元々バグダット市内のゴロツキであり、親友のネハルらとともに日々を過ごしていたが、とある出来事をきっかけに凄惨な事件に巻き込まれてしまう。その後、アサシン教団に拾われ、教団の本拠地で隠れし者としての修行を積んだのち、バグダットに戻って「古き結社」の正体と秘密を暴いていくことになる。

アサシン教団の本拠地、マムルーク砦

アサシン教団の本拠地、マムルーク砦

物語は、バグダット市内で調査を進め「古き結社」の情報を集めることで進んでいき、「古き結社」を巡る物語の核心に迫っていくことになるのだ。

長編オープンワールドRPGとしてのコンセプトを変えたことにより、物語がコンパクトにまとまっており、わかりやすいものの重厚感に欠ける。そのため人によっては満足できない場合もあるだろう。ただし、ストーリー自体は20時間ほどでクリアできるため、手軽に遊んでみたい人にちょうどいいボリュームだ。

ゲーム全体に感じる冗長さ。本作には何が足りないのか?

原点回帰というコンセプトはよかったものの、ゲーム全体では何かが足りないと感じた。やはり「いつかプレイしたことがあるアサシンクリード」という印象が付き纏うのだ。

キャラクターのモーションや操作感など随所に感じる古臭さ。それによって必然的に起こるゲーム世界のリアリティーや没入感の欠落。本作は、PS5専用タイトルの他作品に比べると、どうしても前時代的な部分があり、それがゲーム全体の冗長さを増す結果になってしまっている。

グラフィックはある程度美しく感じるが、暗殺アクションを入れると敵が時折不自然な動きをしするときがあるし、パルクールの感度やスムーズさが鈍いときもあって、どうしても没入感が削がれてしまう。やはり、PS5などの新世代家庭用ゲーム機基準ではなく、PS4にも対応したいわゆる縦マルチで開発が行われたためいたし方ない部分ではあるのだが、それが新鮮なゲーム体験を提供できない原因のひとつではないかと思う。

また、本作が3年ぶりのシリーズ最新作という点も大きい。3年という年月は、ファンからすると「今までに味わったことがないアサクリ体験」を期待してしまうし、既視感を強く感じる本作のシステムは、現代の幅広いゲームユーザーの期待に応えられなかったように思う。原点回帰というコンセプトは、もともとの「アサシン クリード」らしい体験を提供することはできたものの、新鮮な体験を追求する点には向いていなかったのかもしれない。

ただし、これはシリーズをプレイしてきた筆者の意見であり、未プレイの新プレイヤーが「アサシン クリード」の世界を初めて体験するには、ボリュームもコンパクトで遊びやすいと思う。

総評

「アサシン クリード ミラージュ」は、原点回帰を成し遂げた点や、これまで培ったオープンワールド技術を踏襲した点、コンパクトに、かつドラマチックにまとめられた物語など、高く評価できる点はあるものの、ゲーム全体に影を落とす冗長感は拭えないものがある。

個人的な見解としては、本作は、「アサシン クリード」を追い続けている熱心なファンだけでなく、今までほとんど遊んだことがない人、手軽に遊んでみたい人にとって購入する価値があると思う。

元々、本シリーズは長期作ゆえのマンネリ化に悩まされており、さまざまなゲーム要素を足し算的に加える進化を成し遂げてきた。このマンネリを原点回帰で打破しようとするのであれば、むしろPS5の性能をフルに生かした、誰も見たことがない「アサシン クリード」最新作を提供しほしかったところだ。

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)
Writer
ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)
YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。
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水川悠士(編集部)
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水川悠士(編集部)
デジタル系メディアから価格.comへ。スマホ、スマートウォッチなどのガジェット周り、ゲーム関連を担当。触ってきた製品は数えきれないほど多いです。価格.comマガジンのYouTubeにも出演中。
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