2023年11月9日に発売された「龍が如く7外伝 名を消した男」(PS5/PS4/XBOX Series X/S /Steam)。シリーズ最新作「龍が如く8」の発売が2024年1月26日に迫っていることもあり、ファンにとっては気になるタイトルだろう。
この「龍が如く7外伝 名を消した男」をやり込み要素も遊びながらストーリークリアまでプレイしたので、その感想を元にレビューしていこう。
なお、本記事ではストーリーについても触れており場合によってはネタバレに感じる可能性があるので、その点に関しては注意して読み進めていただきたい。
「龍が如く7外伝 名を消した男」は、2020年に発売された「龍が如く 7」の裏で起こったもうひとつのストーリーが描かれる。本シリーズで長年主人公を務めていた桐生一馬の物語が「龍が如く 6」で完結し、「龍が如く 7」では新主人公の春日一番によるどん底からの成り上がり物語が描かれた。本作ではその裏で桐生に何が起こっていたのかが遂に判明する。
シリーズでおなじみの喧嘩バトルを始め、ミニゲームやサイドクエストといったアクティビティーの部分においても新システムや懐かしいゲーム要素が登場。こういったサブ要素を楽しみつつ、熱い極道ドラマが展開される。
細かなディテールまで徹底的に作り込まれた街中を探索し、さまざまなミニゲームやサイドクエストを遊び尽くすのが本シリーズの醍醐味。今回は大阪・蒼天堀や新ロケーション・キャッスルを中心に遊びまわることになる。
船上に浮かぶ娯楽施設、キャッスルは荘厳な見た目と過剰に感じるほどのきらびやかな装飾で作られており、まさに「欲望の塊」を感じさせる
本作で登場する数多くのミニゲームの中でも、最も注目なのはキャッスルで行う闘技場だろう。これは、ルール無用の激しいバトルを繰り返していき、強敵と思う存分に殴り合うミニゲームだ。闘技場で好成績を残し、ランクを上げていくことで、キャッスル内の新しい場所に出入りできるようになり、新たなゲーム要素が解放されていく。
闘技場にはいくつものモードが用意されているのだが、そのなかのチームデスマッチというモードでは、ゲームで出会った仲間たちと集団の戦闘を行えるほか、主人公のお桐生以外を操作することもできる。
闘技場では個性豊かな強敵との死闘が味わえるほか、桐生以外のキャラクターも操作できる
もうひとつ、個人的に面白かったのは新たな美女イベント「生キャバ嬢」だ。キャバクラやガールズバー、出会い系アプリで美女とのデートや恋愛イベントを楽しめるのは、本シリーズならではの醍醐味。それがさらにパワーアップし、本作のキャバクライベントは「生キャバ嬢」へと進化。なんと、実際の女優さんやホステスさんが実写で登場し、会話を楽しむことができる。
まさに“バーチャルキャバクラ”と呼べるミニゲームであり、実際にキャバクラに行ったような疑似体験が可能。美女との親密度が上がると特殊イベントが発生するため、ついつい遊んでしまうのだ。
実写によるキャバクライベントはシリーズ初の試みだが、これまでの3DCGよる美女との交流とはまた違い、より没入感が高くなっている。
実写で描かれるキャバクライベント。これはゲームのはずだが!?
ストーリーを補完する意味合いでのサブクエストは、単調でありながらも、コミカルに、時にはシリアスな物語が展開される。そのため、遊び始めるとなんだかんだローテーションしてしまうのだ。
それだけではなく、本作のサイドクエストでは桐生がこれまでに関わった人物に関連するイベントや、過去作で登場したキャラクターが再登場するイベントも発生する。シリーズのファンであれば懐かしさを覚えることだろう。反対に、新規プレイヤーは、桐生の人生の一端を、サイドクエストを通して知ることができるのだ。
なお、「龍が如く」以外のタイトルでの人気のキャラクターが登場するイベントにも遭遇した。ネタバレになるため、あまり多くは語れないが、作品の垣根を越えてキャラクターたちが相まみえる姿は、この作品でしか味わえない特別な瞬間だ。
ほかにも、ミニ四駆を模したポケサーやカラオケ、カジノ、賭場など、ミニゲームは豊富に用意されている。最初からすべてを遊ぶことはできず、サイドクエストをクリアしたり、困っている人の依頼を解決したりすることでレベルが上がる「赤目ネットワーク」を進めていくと、新たなミニゲームが解放されていく。ゲームを進めることで自然とさまざまなミニゲームが遊べるようになっており、この点も秀逸なゲームデザインが感じられた部分だ。
ミニゲームのポケサー(上)とカラオケ(下)
「龍が如く」といえば、喧嘩アクションバトルだろう。本作では、この部分にも新要素が追加されえており、本独自のバトルが楽しめる。
1vs1の戦闘が中心の戦闘スタイル「応龍」と、集団での戦闘に向く「エージェント」という2つの戦闘スタイルが用意されている。敵の人数や残り体力などの状況に合わせてスタイルをチェンジして戦っていくのだが、ここに「ガジェット」という新要素が追加された。
これは文字どおりガジェットを駆使して戦うスタイルで、たとえばタバコ型爆弾や、爆走して敵を押しのけるジェットシューズというものが登場する。お察しのとおり、ガジェット自体のシュールさもさることながら、発動すると敵がいきなり吹き飛んだりするので、バトルがよりコミカルに描かれるのだ。
アクティビティーをクリアしていくことで桐生自身が成長し、これにより新たな技やアクションが解放されるのはもちろん、ガジェットも強力になっていき、桐生の成長に合わせて戦闘の爽快感がどんどん増していく。
このように、桐生の成長がアクティビティーをまわるモチベーションにつながっている点は、シンプルながらも連動性の高いゲームデザインだと感じる。
本作のストーリーは、前述のとおり、かつての主人公である桐生の現在について語られ、時間軸は「龍が如く 7」と同時期だ。世間から存在を消すことになった桐生だが、大道寺一派と呼ばれる組織の末端として生きており、コードネーム「浄龍」という名で、与えられた仕事を日々こなすだけの暮らしを送っている。しかし、別の組織が桐生への接触を試みたことによって、その存在が知れ渡り、桐生を利用しようとする陰謀に巻き込まれていくというのが大筋だ。
ストーリーの構成についてすばらしかったのは、過去作の出来事が随所で振り返られるようになっていることだ。「龍が如く 2」で描かれた郷田龍司との死闘など、物語の展開の中で桐生がこれまで歩んできた伝説がさりげなく挟まれてくる。つまり、往年のファンにはノスタルジーを提供しつつ、新規勢には作品理解を促進するという2つの役割を自然に行っているというわけだ。
かつての名シーンが挿入され、これまでの桐生の人生がフラッシュバックする
「龍が如く」のように、物語がつながっている長期シリーズにとって新規層の獲得は苦戦する課題だが、本作はこの課題をうまく解決しているように感じる。そのため、過去作を未プレイのユーザーも、気にすることなくシリーズの系譜や世界観を理解できるだろう。
ストーリー自体は外伝ということもあって本編作品の半分程度であり、そこまで長くない。おそらく最速でプレイすれば10時間くらいでクリアすることも可能だろう。ただし、実際はアクティビティーを始めとするやり込み要素も遊ぶため、クリア時間はもっと長くなる。
やり込み要素をほどほどに抑えた筆者のクリア時間は約20時間だった。手軽に「龍が如く」シリーズの前主人公、桐生というキャラクターへの振り返りができる作品として、そして何より桐生目線で見た場合の6と8の間を埋めるミッシングリンクとしても、本作の位置づけは重要だ。「龍が如く 8」に興味があるユーザーはぜひプレイしていただきたい。