レビュー

まさかのゲームで復活したPS5「ロボコップ」全クリレビュー! 想定外の面白ゲー

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1988年に日本で公開された映画「ロボコップ」を題材にしたFPSアドベンチャーゲーム「RoboCop: Rogue City」。今さらなぜロボコップなのだろうと思うだろうが、筆者もわからない。なぜ、今ロボコップなのか。しかし、発売以降、海外プレイヤーからの評価が非常に高く、単なるネタゲーではないようだ。

筆者は、世代的にも外れているためあまり興味がわかなかったが、海外で絶賛の声を聞いてから関心が一気に高まり、今回のレビューにいたる。実際に全クリまで遊んでみると、高評価の理由にもうなずけた。

なお、本記事はストーリーについても触れており、場合によってはネタバレに感じる可能性があるので注意して読み進めていただきたい。

「RoboCop: Rogue City」とは?

原作である「ロボコップ」は、1988年に日本で公開されたSFアクション映画であり、「ターミネーター」と並ぶ1980年代SFアクション映画の巨頭として欧米では現在でも多くのファンを抱えている。本作は、そんな「ロボコップ」の世界を限りなく原作に近い形で再現しているだけでなく、戦闘から物語にいたるまでさまざまな部分でロボコップになりきれる体験を追求した作品だ。

映画で登場した場所や武器、登場人物にも出会え、原作ファンを楽しませる制作人の意気込みがいたるところに感じられる。次からは、本作の詳細について掘り下げてみよう。

「Unreal Engine 5」のレイトレーシングをフル活用した写実的な世界

本作で特に話題だったのは、ゲームエンジン「Unreal Engine 5」を使用した写実的なグラフィックだ。荒廃したデトロイトの街は、その写実性により陰鬱さを増し、主人公であるロボコップもまるで映画からそのまま飛び出してきたように感じる。原作の舞台である1980年代のアメリカと映画の雰囲気を非常にリアルに映し出している。

本作のグラフィックがリアルに感じるのは、レイトレーシング機能を常時フル活用していることによる。マップはエリア式を採用しているため、広大なオープンワールドゲームなどに比べマップ内の風景が限定されている。これにより、レイトレーシングによる臨場感と高フレームレートの両方を実現することができているのだ。

レイトレーシングは、PS5を始めとする家庭用ゲーム機やPCのゲームに登場しているが、フル活用しようとすると解像度やフレームレートを下げなければならない作品が多い。そのため、本作はレイトレーシングをフルで楽しめる数少ない作品であり、その表現力は高いものがある。

ただし、本作のグラフィックはレイトレーシング以外の部分は特筆する部分はなく、場合によっては粗いとすら感じることもある。レイトレーシングのおかげで意識しなければ気づかないが、テクスチャーはあまり作り込まれていないし、物理エンジンによるリアリティー描写は前時代的だ。

特に、モーショングラフィックやキャラクターの表情の動き、物体の質量描写はかなり粗く、ひと時代前のゲームかと思う部分もあった。人体や重いオブジェクトがまるで空箱のように軽く吹っ飛び、激突してもその重厚感がまるで伝わってこないなどのチープさがある。

正直に言うと、キャラクターの表情筋の動きなどはかなり古臭く感じる

正直に言うと、キャラクターの表情筋の動きなどはかなり古臭く感じる

それもそのはず、本作はAAAタイトルを量産している大手デベロッパーの作品ではなく、あくまで小規模スタジオによる作品なので、グラフィックなどの作り込みに関してAAAタイトル並みのクオリティーを期待するのは禁物だ。それさえ理解していれば、特段気になることもなく、レイトレーシングによる臨場感が本作のゲームプレイ全体の大きな支えとなっていることに気づくはずだ。

ロボコップとなって犯罪者達に容赦なく銃弾をぶち込む爽快感MAXの戦闘

本作は、プレイヤー自身がロボコップとなって犯罪者を相手に激しい銃撃戦を展開するのがメインのゲームプレイなのだが、これが非常に楽しくゲーム開始5分で心をつかまれた。

戦闘は標準装備しているピストルと、フィールドから拾える各種武器を切り替えて戦うのが基本。何十人もの犯罪者たちがロボコップに次々と銃弾を浴びせてくるうえに、ロボコップらしさを表現するためにあえてカメラワークが鈍重に作られており、ADS(スコープを覗き込むこと)すらもスムーズに行うことができない。一般的なFPSやTPSであれば、銃撃だけで敵をさばくのは厳しく、慎重に立ち回らないとすぐやられてしまうだろう。
 
しかし、鋼鉄で作られたロボコップの前では犯罪者の攻撃はほぼ無力に等しい。ロボコップは攻撃を受ければ体力こそ減っていくものの銃口がブレることはなく、銃弾を浴びながらも問題なく反撃できる。しかも、減った体力は〇ボタン長押しで簡単に回復できるうえに、回復アイテムはエリア内で十分補給できる。銃弾も敵を倒すたびに拾えるため節約する必要はほぼない。

敵の目の前で身体を全部晒し、アサルトライフルやマシンガンを敵に合わせて乱射し無双していく。そんなゲームプレイすら本作では可能だ。さらに、ヘッドショットを決めれば犯罪者の頭が吹き飛ぶ強烈なゴア表現もあり、その残虐さが戦闘の快感を倍増させる。

クリティカルヒットで人体が吹き飛ぶゴア表現は原作の映画らしさすら感じさせる

クリティカルヒットで人体が吹き飛ぶゴア表現は原作の映画らしさすら感じさせる

ロボコップは少なくとも犯罪者達に対してほぼ無敵に作られており、暴虐の限りを尽くしながら空しい抵抗を続ける犯罪者たちに容赦なく正義の銃弾を頭にぶち込める。この背徳感混じりの快感は、ほかのゲームではなかなか味わえない。

一般的なFPSであればありえないが、本作の主人公はロボコップだ。銃弾の雨を浴びても怯むことはないし、多少のダメージでやられることはない。

その瞬間、「自分は今、ロボコップである」という現実を認識し、あとは一般的なFPSの立ち回りなど忘れて銃を乱射し犯罪者を木っ端みじんに吹き飛ばしていくだけであり、そこから格別な快感を得られるのだ。

敵の前に身体をさらけ出しても危機感はほぼなく犯罪者を一掃できる

敵の前に身体をさらけ出しても危機感はほぼなく犯罪者を一掃できる

本来FPSに限らず、ゲームにおける戦闘の楽しさとは、制約によって行動が制限されることで、プレイヤーみずからが戦略を練り、目の前の障害物をうまく排除していく楽しさによって構築される。「遮蔽を使い被弾を抑えること」はFPSにおける制約のひとつである。簡単に敵を倒せてしまうゲームプレイは普通つまらないのだ。

しかし、本作は典型的なFPSの制約をとっぱらい、通常のFPSではできない行動をプレイヤーにとらせるだけではなく、「簡単に敵が倒せてしまうこと」をロボコップらしいゲーム体験としてしっかり昇華させている。ありふれたFPSの戦略と立ち回り、それによってユーザーが無意識にとってしまう行動を逆手にとることで、本作ならではのFPSデザインを実現しているのだ。

まさに、これはロボコップだからこそ成立したゲームデザインであり、ほかのFPS作品ではなかなか受け入れられないように思う。

もちろん、ゲームが進むと強敵が登場してくるため「簡単に敵を倒せるゲーム」ではなくなっていく。強敵に対してはスキル習得をはじめロボコップを成長させることで対処していかなければならないのだが、この成長要素の部分も本作には深みがあるのだ。

プレイヤーの選択が変わるロボコップの育成と奥深いサブストーリー

本作は、経験値が溜まることでスキルポイントを獲得できるという一般的なRPGのシステムを育成に採用している。ロボコップの育成は、このスキルポイントを消費することで能力値アップ、スキル獲得ができるスキルボードと、探索などから入手してロボコップ自身を強化するマザーボード(基盤)に分かれる。

スキルボードは8種類の項目に分かれており、どの項目を強化するかによってロボコップの特性が変わってくる。通常の犯罪者との戦闘で苦労することは少ないのだが、ゲームが進むとロボコップと同等かそれ以上の戦闘力を持った敵と戦うことになるので、そういった場面でスキルは役立つ。

素早く前方に動く「ダッシュ」や一定時間スロー効果を与える「スロー」などがこれに当たる。通常時では圧倒的な無敵さを誇るロボコップだが、強敵との戦闘ではかなり堅実な戦いを強いられる。そのギャップも危機感や緊張感の際立つきっかけとして成立していて面白い。

映画にも登場したオムニ社の破壊兵器、ED-209と戦うパートも登場。通常の戦闘から打って変わり、苦戦を強いられる

映画にも登場したオムニ社の破壊兵器、ED-209と戦うパートも登場。通常の戦闘から打って変わり、苦戦を強いられる

スキルシステムにおいて特筆すべきなのは、戦闘向け以外にも大事なスキルがあることだ。本作は経験値の獲得量が比較的シビアなので、すべてのスキルを解放できるほどスキルポイントが溜まらない。加えて、スキルポイントの振り直しもできない。よってどの項目にスキルを振るか慎重に選ぶ必要があるのだが、スキルは単に戦闘力を上げるだけではなく、会話の最適解を導き出すものや、探索を簡単にするもの、さらに経験値の獲得量自体を上げるものまである。

どのスキルを優先してどのスキルを諦めるか、スキルボードの進め方にもプレイヤーそれぞれで違いが出てくる。プレイヤーの思考や性格次第でゲーム攻略上の有利不利が出てくるだけではなく、ロボコップ自体に違いが出てくるのがユニークな点だ。

本作のスキルは8種類の項目に分かれており、項目によって獲得できる能力が違う

本作のスキルは8種類の項目に分かれており、項目によって獲得できる能力が違う

もういっぽうの育成要素、マザーボードは、手に入れたパーツを利用して回路をつなげ、アビリティーや付加効果を解放するもの。ゲームが進むとより強力で豊富なアビリティーの詰まったマザーボードを獲得できるのだが、探索してパーツを集め、なおかつ考えて回路を組まないと、すべてのアビリティーを解放できないどころか、能力値ダウンというデメリットまで受けてしまう。

ロボコップを強くするために経験値を稼がないといけないのだが、そのためには犯罪の証拠品集めなどの探索とサイドクエストをこなす必要がある。サイドクエストは、ほかキャラクターとの関係性や、エンディングに影響を与えるだけでなく、内容も面白いものが多い。

薬物中毒でありながら映画など芸術への造詣が深く、それがきっかけでロボコップと友情を育んでいく中年男、企業のスパイと疑われながらもロボコップに警官のイロハを学んでいこうとする新米警官、企業の目論む闇を暴くためなら法を犯すこともいとわないジャーナリストなど、本作のサイドキャラクターは深みのあるキャラばかりだ。

関係性を深めていくサイドキャラクターは深く知れば知るほど魅力的な人物に思えてくる

関係性を深めていくサイドキャラクターは深く知れば知るほど魅力的な人物に思えてくる

ロボコップとなったプレイヤーは街中で起こるあらゆる出来事に対して、法を遵守して罰するか、あるいは慈悲によって見逃すか、判断を下していく。プレイヤーそれぞれの判断がロボコップの評価や各キャラクターとの関係性に関わってくるため慎重に、判断をしていく必要がある。

違法駐車をした車に違反切符を発行するロボコップ。プレイヤーの判断によっては見逃すことも可能だ

違法駐車をした車に違反切符を発行するロボコップ。プレイヤーの判断によっては見逃すことも可能だ

なお、サイドクエストはそのとき進行しているメインミッションやエピソードをクリアしてしまうと二度とプレイできない。なかなかシビアな設計になっており、やり込みプレイには気を配る必要があるだろう。

人間か、機械か? ロボコップの自我とプレイヤーの選択が交錯する物語

最後は本作のストーリーについて触れていこう。主人公であるアレックス・マーフィーは、殉職した後、身体を機械とするサイボーグ・ロボコップとしてよみがえった。そして犯罪、非行まみれとなった1980年代のデトロイトを舞台に「新顔」と呼ばれる謎の男を巡ってとある陰謀を暴いていくことになる。

本作には映画でも登場した人物がほぼそのままの姿で登場するなど、随所に原作愛がにじみ出ているだけでなく、各キャラクターも深く物語に関わってくる。

映画でも登場したロボコップの相棒アン・ルイスも登場し、物語展開の重要な役割を担う

映画でも登場したロボコップの相棒アン・ルイスも登場し、物語展開の重要な役割を担う

機械であるロボコップが自身の人格や記憶を意識してしまう展開が、映画から続く「ロボコップ」の重要な要素であり、本作でもその部分が物語の核にとらえられている。

ロボコップは人間か、機械か? あるいはどちらでもないのか? その問いが常に物語の根幹にあり、プレイヤーもたびたびその選択を迫られる。ミッションの最後には専属の女医であるブランシェ医師からカウンセリングを受け、自身の自我がどのような状況かを選択肢つきで尋ねられる。プレイヤー自身がロボコップをどう見るかも、ゲームに影響を与えるのだ。

ブランシェ医師はロボコップの自己意識に興味を持っており、ミッション終わりに重要な質問を投げかけてくる

ブランシェ医師はロボコップの自己意識に興味を持っており、ミッション終わりに重要な質問を投げかけてくる

ロボコップは、人間をよみがえらせた存在であるものの法律上は「死体」として扱われており、その実態は巨大テクノロジー企業、オムニ社の道具である。そんなロボコップが、警察署でともに働く人々と交流し、本当の仲間の様な信頼関係を築いていくだけでなく、街での活動によってもロボコップへの世間の評価が変わっていく。機械らしくただ法律を守るだけでなく、相手によっては慈悲を見せ公共奉仕をすることによって、市民がロボコップをどう見るかが変わっていくのだ。

実を言うと、本作はゲーム内の選択肢によってゲームの進行自体が大きく変わるということはない。攻略するステージが変わることはないし、どのような選択をしても同じラスボスにたどり着く。重要なのはプレイヤーが「ロボコップは人間か? 機械か?」の選択肢に常にさらされることにより、ロボコップの自我とプレイヤーの思考がシンクロすることである。
 
温かい家庭を持ちながら非業の死を遂げたマーフィーは、ロボコップとなった後でも記憶(人格)に苦しめられる。人間と思い込もうとすればするほどロボコップ(機械)である現実が苦悩となりバグにつながっていく。人間と機械の間で揺れ動くマーフィーの心理を、プレイヤー自身が判断していくことによって感情移入が加速するのだ。

ゲーム内でマーフィーは“化け物”と揶揄される。確かに人間を何十人も一方的に射殺できる存在は“化け物”と言われても仕方ないのだろう

ゲーム内でマーフィーは“化け物”と揶揄される。確かに人間を何十人も一方的に射殺できる存在は“化け物”と言われても仕方ないのだろう

暴かれていく陰謀は、マーフィーの自我とも深く関わる展開へと発展していく。物語はわかりやすいがプレイヤー自身の選択がテーマに直結するからこそ最後までのめり込める。そしてラスボス戦後に迫られる、とある選択肢は作中のどんなものよりも秀逸だった。ぜひ最後までロボコップの自我に迫る物語を遊んでみて欲しい。

総評

「RoboCop: Rogue City」は、小規模スタジオ開発ゆえのチープさは存在するが、それが気にならなくなるほどの興奮に満ちた作品だ。むしろ、そのチープさもCGや合成技術がまだ発展途上であった1980年代の洋画の雰囲気とマッチしており、プレイしていてそれすら愛おしくなる。

ロボコップ的な体験へとつながる戦闘や、魅力的なキャラクターたちを交えてロボコップの自我を巡っていく物語。原作ファンはもちろん、新規勢でもこれ1本でロボコップの魅力が伝わるほどの作品に違いない。本作は、昨今のマンネリ化したFPS界にロボコップという題材を通じてダイレクトな刺激を投下している。生やさしいありふれたシューティングゲームに飽き飽きしているという人にこそ、ぜひ遊んでみてほしい。

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)
Writer
ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)
YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。
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水川悠士(編集部)
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水川悠士(編集部)
デジタル系メディアから価格.comへ。スマホ、スマートウォッチなどのガジェット周り、ゲーム関連を担当。触ってきた製品は数えきれないほど多いです。価格.comマガジンのYouTubeにも出演中。
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