レビュー

プレイしてないのがもったいない! PS5「ユニコーンオーバーロード」全クリレビュー

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2024年3月8日に発売され、発売後およそ1か月で販売本数が50万本を突破し、一時は店頭で品切れにもなったアトラスの「ユニコーンオーバーロード」。シミュレーションゲームというカジュアルプレイヤーに届きにくいゲームながら、異例とも言えるヒットを記録した。

「ユニコーンオーバーロード」は、シミュレーションゲーム愛好家向けのゲームに見えるが、実は初心者こそハマる要素を秘めている。本作の魅力を全クリレビューで解説しよう。

なお、本記事はストーリー部分についても触れており、場合によってはネタバレに感じられる可能性があるので、注意していただきたい。

「ユニコーンオーバーロード」とは?

「ユニコーンオーバーロード」は、アトラスより発売されたシミュレーションバトルRPGの最新作である。開発元のヴァニラウェアは、美麗な2Dイラスト式グラフィックのゲーム作品を得意とするデベロッパー。2019年に発売されたSFアドベンチャーゲーム「十三機兵防衛圏」は100万本を突破する異例の大ヒットとなった。

「ユニコーンオーバーロード」は、王道ファンタジーの世界で、コルニア王国を追われた王子アレインが解放軍を結成し、各地で仲間を集めながら将軍ガレリウス率いる帝国ゼノイラと戦う冒険劇が描かれる。初心者でもわかりやすいように徹底的に配慮されつつ、本質的な面白さにまでこだわり抜かれたシミュレーションバトルや、秀逸なフィールドデザインなどが特徴だ。

目を見張る完成度のシミュレーションバトルステージ

本作の醍醐味は、ステージ攻略型のシミュレーションバトルだ。3×2の6マス・ユニット編成で構成を組み(最大所持数10ユニット)、自軍ユニットを本拠地から出撃させ、制限時間内に敵の本拠地を落とすなどの勝利条件を達成したらステージクリアとなる。

何よりも注目したいのは、60種類以上も用意された豊富なクラス(職業)。ストーリー進行やサブクエスト達成で多くのキャラクターが仲間になる。それぞれのクラスには、固有のスキルや特技があるだけではなく、クラス同士での有利不利関係が明確にされている。

たとえば、地上の前線を張る歩兵系のクラスや騎馬兵は、グリフォンナイトやワイバーンナイトなどの飛行系クラスに対して不利である。いっぽう、飛行系クラスは、一発で撃ちぬかれてしまうアーチャーなどのシュータークラスを苦手とする。

飛行系クラスは地上からの近接攻撃を高確率で避けられるが、遠距離攻撃は避けにくいうえダメージも多くなる

飛行系クラスは地上からの近接攻撃を高確率で避けられるが、遠距離攻撃は避けにくいうえダメージも多くなる

ほかにも重装備クラスは通常攻撃をほとんど通さず味方の盾にもなってくれる半面、魔法攻撃に弱い。特に、近接魔法攻撃を使うクラスの攻撃をまともに喰らうとすぐやられてしまう。

味方の盾となれる重装備クラスのホプリタイだが、魔法攻撃にはほとんど耐性がない

味方の盾となれる重装備クラスのホプリタイだが、魔法攻撃にはほとんど耐性がない

このようにユニットの編成次第で、ゴリゴリに前線を張る部隊にするか、後方支援に徹する部隊にするか、より多くの状況に対応できるバランス型の部隊にするか、これらもおのずと決まってくる。

ゲームが進むと夜間に行動性能が格段にアップする獣人など、より特殊なクラスが仲間に入ってくる。クラス解放にともなうバトルの多様な展開は見事なほど尽きない

ゲームが進むと夜間に行動性能が格段にアップする獣人など、より特殊なクラスが仲間に入ってくる。クラス解放にともなうバトルの多様な展開は見事なほど尽きない

このようなキャラクターの有利、不利関係や各クラス専用の動きは膨大に用意されているので覚えるのが大変だが、チュートリアル段階では何となく覚えておけばよい。

また、本作のバトルは最初から結果がわかることも見逃せない。バトルの結果は味方部隊と敵部隊が接敵する前段階でわかるので、どの部隊で戦うのが有利か? あるいは不利か? が一目瞭然である。

戦闘開始前にバトルの結果が表示される

戦闘開始前にバトルの結果が表示される

バトル中は経過をただ眺めるだけ

バトル中は経過をただ眺めるだけ

戦闘描写はスキップできるが、スキップせずにバトルを観戦することで試合の経過が見られる。スムーズに勝てた場合、「どのクラスの役割が貢献していたのか?」あるいはレベル差がないにもかかわらず負けた場合、「敵部隊とどの部分で相性が悪かったのか?」をおのずと考える。プレイ時間を重ねるほどバトルのシステムに加えて、勝利時や敗北時の因果関係への理解が深まるのだ。ユニット編成を変えるとまた違う連鎖反応が起こるので、戦闘描写を見る楽しみは最後まで尽きない。バトルへの理解度が深まっていくこと自体に一種の快感がある。

ステージ攻略のためには、クラス同士の相性だけではなく味方の進軍を助ける各キャラクター固有のスキル、ステージ内の施設、ギミック、アイテムの活用も重要となってくる。最終的に細かいスキルや装備による効果も含めた調整にも慣れてくると、ステージ攻略がよりはかどるだろう。

ステージ中にも敵の奇襲や勝利条件の変更・追加など予想外のアクシデントに見舞われるため、正攻法を見出すだけでなく、臨機応変に対応する能力も求められる。ゲームが進むとステージの難易度や複雑さもかなり上がってくるため、攻略する楽しさや達成感はどんどん上昇していく。場合によってはより美しいクリアを達成するため、何度もステージをやり直してしまいたくなるだろう。

オープンワールドの楽しさが過不足なく盛り込まれたフィールドデザイン

本作のもうひとつ大きな特徴として、フィールド探索の重要度の高さがあげられる。シミュレーションバトルに比べるとサブ的な要素ではあるが、ゲームクリアのためには事実上必須とも言え、プレイヤーがついつい熱中してしまう仕掛けがいくつも施されている。

本作のオープンフィールド

本作のオープンフィールド

本作は、2Dゲームながらすべてのフィールドがシームレスにつながっているオープンワールドのような構造になっている。フィールド内に用意されたステージをクリアすると、街や砦・探索領域が解禁され、さまざまな施設が利用可能になる。

フィールド探索において、ゲーム攻略のために最も重要になるのは”勲章”集めと”名声”レベル上げ。勲章はユニットの拡張やゲーム中盤から解放される上級クラスへの昇格などに必要なポイントだ。

名声レベルはアレイン率いる解放軍の評判を表すもので、名声レベルを上げないとユニット拡張に制限がかかる。さらに多くの人数を編成するために必要な勲章の数は増え続けるので、ゲームが進むほど大きなポイントを必要とするのだ。

最終的に1ユニット5人まで編成可能になるが、4→5人に拡張するには200ポイントの勲章が必要

最終的に1ユニット5人まで編成可能になるが、4→5人に拡張するには200ポイントの勲章が必要

よって自軍を強化するためにはフィールドを探索し、いわゆるミッション(依頼)をクリアして勲章のポイントを集めたり、名声を上げていかなければならない。ただし、一度に大量のポイントを獲得する方法はほぼ存在しないので、地道にコツコツとフィールドを探索する必要があるわけだ。

納品が条件の依頼をクリアすると勲章や軍資金がもらえる

納品が条件の依頼をクリアすると勲章や軍資金がもらえる

しかし、実はこの地道さを求めるデザイン自体が実に秀逸だと感じた。勲章や名声レベルを上げた先にあるユニット拡充や上級クラスの解放は、スムーズなステージクリアへの大きな助けとなる。

多くの勲章ポイントを必要とするものの、上級クラスになると戦闘力が格段に上がる

多くの勲章ポイントを必要とするものの、上級クラスになると戦闘力が格段に上がる

この明確な目的のためにフィールドをしらみつぶしに探索していく感覚が、オープンワールド的な面白さに直結していると感じる。オープンワールドをコツコツ回るためのモチベーションを損なわないデザインは、プレイヤーへの配慮が行き届いていると思う。

ポイントを集めるためのミッションのなかでも、個人的に最も気に入ったのは食事イベント。宿屋で料理を注文すると、仲間同士で食事できるのだが、そこで出される料理のおいしそうな見た目といったら堪らない。

宿屋で食べられる料理たち

宿屋で食べられる料理たち

食事すると、各キャラクターとの親密度が上がり、特定のキャラクター同士ではサイドエピソード的な会話イベントに発生する。このイベントを鑑賞しても勲章がもらえる。これもすばらしいフィールドデザインの一要素と言えるだろう。

このように本作は2Dゲームでありながらも、オープンワールド的探索の面白さのツボを確実かつていねいに押さえている。これが本作の熱中度をより促進させているのは間違いない。

作り込まれた王道物語と徹底的に描き込まれたイラスト

本作の物語自体はわかりやすい王道ファンタジーだ。物語冒頭で主人公アレインの国・コルニア王国が将軍ガレリウスによって反乱を起こされ、母である女王イレニアは命を落とす。養父であるジョセフと共に生き延びたアレインは、ガレリウス率いる帝国ゼノイラを倒すため解放軍を結成。時を待たずして、かつての同胞や各地の有力者がゼノイラの術によって操られていることを知り、アレインたち解放軍は世界各地を回り、仲間を増やしながらゼノイラ軍との戦いへ身を投じる。

物語冒頭のワンシーン。女王イレニアは幼い王子アレインを逃がし、将軍ガレリウス(旧ヴァルモア)との戦いで命を落とす

物語冒頭のワンシーン。女王イレニアは幼い王子アレインを逃がし、将軍ガレリウス(旧ヴァルモア)との戦いで命を落とす

物語で特筆すべきなのは、60人以上いる仲間キャラクター全員にエピソードが用意されていること。これだけ仲間が多いのにもかかわらず、彼らがどういった経緯で解放軍に入り、どうやってアレインたちと関係を築いていくのか? こういった細かい部分まで隙なく描かれている。

ていねいに作られた会話ベースのアニメーション

ていねいに作られた会話ベースのアニメーション

仲間キャラクターだけではなく、敵のゼノイラ軍にもさまざまな事情を抱えたキャラクターが登場するなど、双方の背景を描くことで、物語の深みが増している。見方を変えると善人に思えるキャラクターを、プレイヤーの選択やステージ攻略の仕方によって仲間にできることもあり、ここも本作の面白いポイントだ。

物語自体もプレイヤーの選択により展開が変わるし、ステージの難易度や攻略方法にも影響する。そのため、プレイヤーも最適なルートを選べるようおのずと思考し、ていねいにプレイするきっかけになるのだ。

このように奥深い物語を、ヴァニラウェアの美麗なイラストが彩り、すばらしさをさらに加速させる。本スタジオのキャラクターや背景への描き込みの細かさは異様であり、キャラのモーションや豊かな表情、光や風の表現までくまなく描き込まれた風景など、見れば見るほど描き込みへのこだわりに圧倒される。

2Dゲームであっても、3Dゲームと同等、あるいはそれ以上のスケールや手間を惜しまないヴァニラウェアの神髄を本作でもしっかり感じ取れた。

総評

 「ユニコーンオーバーロード」は、シミュレーションゲーム特有のスムーズにステージをクリアする気持ちよさの追及と、オープンワールド的探索の面白さが相乗効果で噛み合うことによってすばらしく熱中できるゲームになっている。

じっくりプレイするとクリアまで50時間以上は確実にかかるうえに、エンドコンテンツまで用意されており、その完成度は大手企業のAAAタイトルにまったく引けを取らない。これまでシミュレーションバトルゲームをやってこなかった人は、その面白さに一発で気づけるすばらしい作品なので、ぜひ遊んでみてほしい。

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)
Writer
ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)
YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。
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水川悠士(編集部)
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水川悠士(編集部)
デジタル系メディアから価格.comへ。スマホ、スマートウォッチなどのガジェット周り、ゲーム関連を担当。触ってきた製品は数えきれないほど多いです。価格.comマガジンのYouTubeにも出演中。
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