2024年もいよいよ終わりを迎えるが、今年も数多くのゲームが発売された。2023年は面白いゲームが豊作だったため、2024年は少し見劣りする印象を年初は抱いていたのだが、フタを開けてみるとまったくそんなことはなかった。
今回は、数多くのゲームをプレイする筆者が、2024年にプレイしたPS5向けゲームの中で特に面白かった10本をランキング形式でまとめて紹介しよう。ちなみに、ランキングの順位は完全に筆者個人による独自の見解、価値観によるものなので、その点は留意していただきたい。
2024年を振り返ったときに、時間が経ってもずっと印象に残る作品があった。それが「Stellar Blade」だ。韓国のゲームスタジオ、SHIFT UPが手掛けたアクションアドベンチャーゲームで、これまでソーシャルゲームを作ってきたスタジオのコンシューマー機向け初作品としては上々の完成度だったと思う。
美しいキャラクタービジュアルと、やりごたえのあるアクションが相乗効果を発揮し、プレイヤーを視覚で楽しませつつ、本作ならではのバトルはほかのタイトルにはない独自性を放っている。
こういった工夫によって飽きずにクリアまで遊べ、ゲーム全体として適切なボリュームにまとめられている。誰でも楽しめるわかりやすいアクションゲームであった。
世界観や物語は既存の作品やから影響を受けすぎており、本作独自のものを提供できているとは言い難く、上半期は相対的に評価が低めだった。しかし、可憐なキャラクタービジュアルと華麗なアクションが織りなす美しいゲーム体験は、時間が経ってもう一度遊びたいと思わせる魅力を秘めている。
「十三機兵防衛圏」など数々の名作を生んできたヴァニラウェアの最新作。将軍ガレリウスによって国を奪われた王子アレインと、その仲間たちが解放軍として戦う過程を描いた戦略シミュレーションゲームだ。
初心者ゲーマーにはハードルが高い戦略シミュレーションゲームのシステムを、ていねいなチュートリアルとオート機能によって格段に遊びやすくしただけではなく、探索性と自由度が高いオープンワールドチックなワールドデザインを取り入れることでより遊びやすいゲームに昇華させた。
さらに、わかりやすいRPGの王道ストーリーながら、膨大な登場人物1人ひとりにスポットを当てる緻密なストーリーテリングや、2Dゲームとしては異様なまでに描き込まれた人物の表情や動き、風景など、ビジュアル面のすばらしさもヴァニラウェアのよさが存分に発揮された点と言える。
2024年は国内外で多くの大作が発売されたにもかかわらず、戦略シミュレーションゲームがここまで存在感を残せたのは、ほかならぬヴァニラウェアの作品だからこそだと感じる。
今まで戦略シミュレーションゲームを遊んだことがない人にも、その奥深さ、面白さが一発でわかる作品にまで仕上げられた精密なゲームデザインは、今年トップクラスの評価に値するはずだ。
PS5のスペックを最大限に生かし、「ファイナルファンタジーVII」(1997年発売)の世界を現代によみがえらせた本作は、正真正銘スクウェア・エニックスの本気度が感じられた作品だった。
原作のワールドマップを忠実に再現し、原作リスペクトの探索システムを採用しつつも、さまざまなアクティビティやミニゲームをオープンワールド式のフィールドに散りばめることで“FF7”という体験を一気に膨らました。合体技や新たな召喚獣をはじめ、ビジュアル的な演出面をよりパワーアップさせた戦闘。そして「クライシスコア」のザックスを交えながら、重大局面「忘らるる都」で待ち受ける運命へと導いていく物語。原作ファンが興奮する瞬間がふんだんに詰め込まれており、新たなFF7を満喫できる作品だ。
原作への思い入れが本作の魅力の大前提となっており、単一のゲームとしての構成やデザインの面で新鮮さに欠ける点は否めないが、ゲーム規模感やビジュアルの作り込みは圧巻のクオリティで、2024年トップレベルの作品だったと思う。
本作はホラーゲームの最高傑作のひとつとも呼ばれる「サイレントヒル 2」(2001年)の忠実なリメイクであるだけでなく、現代ホラーゲームとしても間違いなくトップレベルの完成度を実現したホラーゲームの傑作だ。
「サイレントヒル 2」特有の不快感や精神的ストレスなどはしっかり踏襲し、現代のTPSらしいゲームデザインに落とし込みながら、原作をブラッシュアップしている。
暗闇で制限された視界の中で探索を続けなければならないゲームプレイや、急に襲い掛かってくる敵、とどめをさすときの何とも言えない鈍く不快な音、制限された武器、PS2時代特有の難しさをそのまま残した謎解き、そして突如始まる恐怖のボス戦。さまざまな要素が主人公ジェイムスの不安や恐怖を反映しており、プレイヤーを精神的にどんどん追い込んでいく。
ホラーゲームと銘打っていながら中身はシューティングやアクションというゲームが多いなかで、ここまで恐怖を追及するAAA級タイトルが生まれたこと自体に少し感動すら覚える。
「龍が如く8」はシリーズ作品の中でも、群を抜いたボリュームでありながら、ストーリーやアクティビティの随所で贅沢感が味わえるすばらしい作品だった。
美しく壮健な新マップや、「スジモンバトル」「ドンドコ島」をはじめとする大型アクティビティ、マップを回るほどに仲間との絆を深められる探索要素、そして桐生の過去を1つひとつ巡っていくエモさ抜群の「エンディングノート」など、遊び要素が詰め込まれまくっている。すべてのアクティビティを回らずにストーリーを進められない、誘惑だらけの作り込みは贅沢の極みといった完成度だった。
何より印象的だったのは、春日と桐生のダブル主人公で送る「人がそれでも生き続ける理由」を描く物語。現代の情報化社会への皮肉も込めながら、残酷すぎる桐生の運命とその意志を引き継ごうとする春日、そしてその2人を囲む仲間たちの熱い想いと行動を描くストーリーは最後の最後まで本当に目が離せなかった。
2022年に発売され世界中で大絶賛されたフロム・ソフトウェアの「ELDEN RING」の大型DLCとして配信された本作。DLCでありながら「Game of the Year」(The Game Awards 2024)にノミネートされたことで話題となった。
評価を高めた理由のひとつは、本編の”オマケ”としては考えられないほど、広大な新マップをはじめとするゲームボリュームだろう。本編以上に高低差があり複雑化したダンジョン構造を持つ新マップ「影の地」は、新装備やアイテムが用意され、探索の末に新たな発見ができる本編の楽しさをもう一度味わえる。
そして何より注目されたのは本編から異常なまでに強化された新ボスの数々だ。新たに登場したボスたちはどれも非常に攻撃力が高く、本編以上に徹底したオープンワールド探索が求められる。また、DLC追加要素も含め各ボス撃破のためプレイヤーが入念に戦略を研究する必要がある。しっかりとゲームと向き合い、思考と挑戦を繰り返すなかでボスを撃破する。
本編の「ELDEN RING」はオープンワールド化したことでボス撃破までの工程が従来作に比べ簡単になったが、本DLCはフロム・ソフトウェアの元祖となるゲーム体験を味わえる方向に「ELDEN RING」を揺り戻した。高く評価される理由はここにもあるだろう。
アトラスの「ペルソナ」シリーズを手掛けたスタッフたちによるファンタジーRPG。「Game of the Year」(The Game Awards 2024)にもノミネートされ、「Best Narrative」を受賞するなど、世界中のゲーマーから高い評価を受けた。
大きな特徴は壮大なファンタジー世界を舞台しながら、ゲームの世界が我々の現実世界の比喩になっている点だ。特定の種族に対する差別や、宗教など思想による暴虐、社会への不安に駆られる民衆たちなど、ファンタジーという幻想を借りているものの、ゲームを進めれば描かれている現象や問題は我々が生きる現代社会に通じていることに気づくだろう。
「ペルソナ」シリーズから改良されたバトルデザインや魅力的なキャラクター、音楽、演出によって紡がれる世界に対する不安に真っ向から挑んだ本作。まだ未プレイの人はぜひプレイしていただきたい。
「HELLDIVERS 2」はすぐれたシューティングアクションというだけではなく、PvEの新たな形とも言えるゲーム性を示した。フレンドリーファイアいう、協力プレイなのに自身の攻撃が仲間に当たってしまうゲーム性こそがその理由だ。
フレンドリーファイアによって、陣形や爆撃するタイミングなどを既存の作品以上に考慮しなければならなくなっただけではなく、突然味方や自分がバラバラになって死んでしまうハラハラ感が絶妙な中毒性を表現しているのだ。
1990年代のハチャメチャなアメリカンSF映画に飛び込んだような体験を秘めており、装備やマップをはじめ豊富なゲーム要素と、何とも言えないバカゲー感による化学反応が新鮮で奥深いゲーム体験に昇華している。
プレイヤーに不利を強いるフレンドリーファイアを取り入れたことで、これまでの作品にはなかった一歩踏み込んだPvEとして完成されているのが、2024年上半期、海外を中心に大反響を呼んだ理由だろう。余談だが、本作を手掛けたArrowhead Game Studiosは長年フレンドリーファイアを軸にしたゲーム開発に何度も挑んできたスウェーデンの老舗スタジオだ。本作の成功は、そんなスタジオの長年の苦労が報われた瞬間だったこともゲームファンとしてうれしい。
「黒神話:悟空」は数あるソウルライクゲームの中でも最高にアグレッシブなゲームだ。中国を中心に世界中で圧倒的な存在感を示した本作は、空前の悟空ブームを巻き起こした。
ヒット&アウェイや防御・回避を繰り返して敵の隙をうかがうソウルライクの基本に乗っとるのではなく、攻撃を仕掛けて強制的に敵を怯ませるデザインに着目したことが、本作がほかのソウルライクゲームとは一線を画した大きな要因だろう。
型の変化から繰り出される多彩なアクションによって、強敵であるボスに無理矢理隙を押し付けハメ殺しにするゲームプレイはまさに新境地とも言える爽快感。そして各章の最後に用意された超強力なボスを撃破できたときの達成感は筆舌に尽くしがたい。
硬派かつ快感に満ちたソウルライクゲームを基本に、Unreal Engine5によって描かれる古代中国・西遊記の美麗な世界を冒険するゲームデザインは、中国のスタジオでなければおそらく表現できなかっただろう。ソウルライクゲームをベースにしているものの、独創性という部分で大きな一歩を踏み出した作品だと思う。
総合レビューサイトMetacriticで94点という高得点を叩き出し、2024年の「Game of the Year」(The Game Awards 2024)にも輝いた「アストロボット」は、新時代の箱庭型3Dアクションゲームとして見事な存在感を発揮した。
かわいいアストロボットで銀河を冒険し、仲間を助けていくゲームプレイにはゲーマーにこそ響く幸福感が満ち溢れている。さまざまな風景で彩られたステージを進んでいくたびに出会う、PlayStationのゲームキャラクターに扮したアストロボットたちがその代表で、ゲーマーであれば自分の知っているキャラクターに出会うたびに興奮するはずだ。
多様なガジェットを駆使しながら進んでいくちょうどよい難易度のステージやボス戦、PS5用ワイヤレスコントローラー「DualSense」のハプティクス機能を生かした微細な触覚体験。クリアまで10時間前後という短いプレイ時間の間に味わえる感動は数知れず、今年最も“楽しい時間”を過ごせたゲームの1本となった。
SIEのIPの中で名作を生みつつも存在感に乏しかった「アストロボット」シリーズだが、本作によって本シリーズにしかない価値が多くの人に伝わったように思う。
以上が筆者の2024年PS5ゲームベスト10だ。ランキングには入れられなかったが、ほかにも面白かったゲームが数多くあった。あなたのベスト10は何だろうか?