ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は2015年3月4日、「プレイステーション4」(PS4)向けのバーチャルリアリティ(VR)システム「Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)」の新しい試作機を発表した。ゲーム開発者やユーザーの意見を参考にして、昨年2014年3月に発表した試作機に改良を加え、視野角を広げ、120fpsの映像表示に対応した。これまで明らかになっていなかった発売時期に関しては、2016年上半期中の商品化を目指すことも明らかにした。
ソニー・コンピュータエンタテインメントが発表した「Project Morpheus」の新しい試作機。2016年上半期中の商品化を目指す
今回発表された新しい試作機は、ディスプレイを液晶から有機ELに変更したのが大きな改良点だ。1920×1080の5.7型の有機ELディスプレイを採用し、水平視野角を90度に広げるとともに、映像の残像感やブレの大幅な低減を実現した。有機ELディスプレイの採用にともない、120fps(frame per second)の映像表示にも対応。PS4もシステムソフトウェアのアップデートにより、120fpsの映像出力が可能になるという。これにより、「非常に滑らかに仮想世界を表現し、ゲームの世界の中に自分自身が存在するかのような体験を、より自然に楽しむことができる」という。具体的には、VR対応のヘッドマウントディスプレイで起こる「3D酔い」を防ぐ効果が期待される。
また、センサー検知用のLEDの数を6つから9つに増やし、ユーザーの頭部の位置を「PlayStation Camera」でより正確に検知できるようになった。システム全体の最適化により、検知した頭部の動きを映像に反映するまでの遅延時間の短縮も図っている。
装着感については、1本のバンドだけで頭部に固定する構造にすることで、より簡単に着脱することが可能になった。また、部品構造の見直しと最適化により軽量化も実現している。
ディスプレイを液晶から有機ELに変更し、視野角やフレームレートの向上を図ったProject Morpheusの新型試作機
LEDの数を6つから9つに増やし、PlayStation Cameraで正確にユーザーの頭部の位置を検知できるようになった
VR分野では、Oculus VRの「Oculus Rift」、サムスンの「Gear VR」が大きな注目を集めている。アプローチが違うものの、マイクロソフトの「HoloLens」も話題だ。Project Morpheusは、家庭用ゲーム機であるPS4の周辺機器という立ち位置で、ゲーム分野で先行するOculus Riftに近い。Oculus Riftは汎用機器でさまざまな機器と接続して使え、コンテンツ開発の自由度が高いのが特徴だ。ゲーム以外にもいろいろな分野での開発が進んでいる。
それに対して、Project Morpheusは、発売後16カ月で全世界累計実売2020万台を売り上げたPS4専用なのが強みだ。開発者はゲームメーカーであり、提供されるコンテンツもまずはゲームになることが見込まれる。接続する機器がPS4に限定されるので、ゲーム開発者は検証作業がしやすく、Project Morpheusの性能を最大限引き出したリッチなタイトルの開発が期待できる。なお、ゲーム開発者は、新しい試作機を用いて対応タイトルを開発できる。60fpsのゲームを120fpsで出力するためのSDKも提供予定で、従来機で開発していたゲームも新しい試作機を使って引き続き開発できるという。