スペースオペラ映画の金字塔「スター・ウォーズ」のエピソード8「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」が、2017年12月15日に公開される。
2015年12月公開のエピソード7「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、2016年12月公開のアナザーストーリー「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」に続き、2017年の年末も世界中で「SW」熱がグッと高まるのは間違いなさそうだ。
そんな新作を多くのSWファンと同じように楽しみにしている筆者は、玩具の展示会「東京おもちゃショー2017」(2017年6月に開催)で衝撃を受けたあるホビーを思い出した。バンダイのプラモデル「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」だ。
「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」を正面から撮ったメーカー写真。バンダイ直販サイト「プレミアムバンダイ」で予約を受付中
「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」は、1977年に公開された第1作「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」に登場した宇宙船「ミレニアム・ファルコン」を、バンダイの最高峰ブランド「PERFECT GRADE」シリーズで再現したプラモデル。
本モデルは、開発において実際に劇中で使用された1.7mの撮影用モデルを徹底的に研究。「完全再現」をテーマに、外観やコクピット内部に至るまで、忠実に再現されているという。1/72スケールで全長は約482mm。パーツ数は約680パーツにも上る。メーカー希望価格は43,200円(税込)。
ちなみに、「ミレニアム・ファルコン」とは、主要登場人物のひとり、ハン・ソロが所有する宇宙船で、銀河内戦で大活躍する、同シリーズで“一番有名な”一隻。見た目はオンボロだが高速スピードが出せるとあって、「銀河系最速のガラクタ」の異名を持つ。
4万円のプラモデル――。
なかなか聞いたことがない。ガンプラの1/60スケールの「PERFECT GRADE」でも4万円を超えるモデルはほんの数点。また、筆者は「東京おもちゃショー2017」で実際に同モデルの完成品サンプルを見たのだが、プラモにしては尋常ではない巨大さと精密さだった記憶がある。そこでわき上がるのが、そんなプレミアムなプラモデルは初心者でも作れるものなのかという疑問。早速、実際に作ってみることにした。
ちなみに、製作者は筆者を含む編集者2人。筆者はプラモ歴としてはガンプラの1/100スケール「マスターグレード」のモデルを10個前後作ったことがあるエントリーモデラー。もうひとりは、戦闘機や戦艦の模型を数個作ったことある、こちらもプラモ初心者の女性編集者だ。
「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」の全パーツ。その多さに製作スタート前からダークサイドに落ちるところだった
パーツの一部。機体の配管となる極細パーツがたくさん
全パーツの中で一番大きなパーツ。機体の上部になる外装パーツで、敵からの砲撃による傷などが初めから成形されている
コクピットの一部のパーツ。機体の極小の機械類が再現されている
最低限必要な道具は、ニッパー、デザインナイフ、ピンセット、ヤスリ、ドライバー、接着剤など。説明書をざっと読んだ感じ、さすがのバンダイのプラモ、ガンプラのように基本的には接着剤の必要はないはめ込み式。金属のエッチングパーツ(後述)の接着にのみ、接着剤を使用する
「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」は、ガンプラと同じように説明書通りに作っていけば完成する。最初に組み立てるのは、コクピット部分だ。
登場キャラクターのパーツは6種類。「19」が「ミレニアム・ファルコン」の船長、ハン・ソロ、「20」がハン・ソロの相棒、チューバッカ、「21」が「エピソード4」などの主人公、ルーク・スカイウォーカー、「22」が伝説のジェダイ・マスター、オビ=ワン・ケノービ、「23」が反乱同盟の指導者のひとり、プリンセス・レイア・オーガナ、そして「24」がドロイド、C-3PO
劇中シーンのように、前列にチューバッカとハン・ソロ、後列にルークとオビ=ワンをのせてみた。レイア姫とC-3POのパーツと入れ替えることもできる
ちなみに、上の写真のチューバッカとハン・ソロの前にあるコクピットのハンドルのパーツがこれ。5mmもないほどの小ささだ
コクピット完成! これだけでも、レイア姫を助けに行くシーンが思い起こされ、ファンなら興奮できるだろう。前面のガラス部分は、透明パーツかフレームのみのパーツの好きなほうを選べる
「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」には、ほかのプラモに入っていないパーツがいくつかある。そのうちのひとつが、エッチングパーツだ。これは金属パーツで、プラスチックパーツには出せない本物感を演出できる。
この10個のエッチングパーツのみ接着剤で取り付ける。なお、代替用のプラスチックパーツも付属
エッチングパーツの先端にちょこっと接着剤をつけるだけで取り付けられるので、初心者でも難しくはない
この細長いエッチングパーツは湾曲させて取り付ける。プラスチックパーツには出せない金属の輝きがかっこいい
「ミレニアム・ファルコン」は、外装に計器類がむき出しになっている部分が多いのが特徴。その大半は、もともとパーツとして形成されているのだが、浮き出た配管は作り手が取り付ける必要がある。
配管のひとつをランナーから切り出したもの。赤い丸をつけた個所が余分なゲートだ。パーツが極細なので折れないようにゲートを切り離すのにひと苦労! はめ込み用の突起を間違えて切らないように細心の注意も必要だ
上のパーツのゲートを処理したもの。パーツが折れないように、きれいにゲートを処理するのは手先の器用さとニッパーやデザインナイフの切れ味が重要になってくる
上の配管を取り付けた。極細で長いパーツではあるが、はめ込み式なのでピタッとはまるのが気持ちいい。しかし、余分なゲートが残っていると、狭い隙間などにしっかりはまらないパーツもあるので、できるだけゲートをきれいに処理することが重要になってくる
機体の側面にも、配管パーツをたくさん取り付ける
「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」には、前述のエッチングパーツのほか、プラモでは珍しいLEDユニットが付属。単4形アルカリ乾電池を3本(別売)使用する電池BOXと、長短のLEDハーネスが6本同梱されており、それを機体の内部に張り巡らせる工程が、中盤にやってくる。LEDハーネスは、1本につき2つのLEDライトがついているので、全12個のLEDライトを設置することになる。
LEDハーネスもはめ込み式なので簡単に取り付けられる
機体後部の「亜光速エンジン」の発光を再現する部分。ここ以外にも、コクピットや昇降口にLEDライトを設置
電池BOXとLEDハーネスを取り付けた様子。試しに電源をオンにしてみたが、かっこよすぎる! なお、LEDハーネスと繋がった電池BOXは、機体の内部後方に設置するスペースがある。また、電池BOXには電源スイッチが4つ搭載されており、4個所のLEDライトのオン/オフを好きなように操作できる
機体ができ上がると、最後にデカールを貼り付けるステップが待っている。
デカールは全部で285番まである。枚数にしたら300枚以上! 中には米粒より小さいデカールも
デカールの貼る場所を説明したもの。細かすぎて、正直初見では頭がクラクラした……(苦笑)
詳細が見たい人はこちら(4271×2026、2.82MB)
デカールは数が多いうえに、近年のガンプラにも取り入れられている水転写式を採用。水転写式デカールは、シールタイプのように台紙からはがしてすぐに貼れるものではなく、台紙ごと切り取って、一度水につける必要がある。また、貼る際にもちょっとしたテクニックが必要なので、初めての人は慣れるまでてこずる可能性がある。
デザインナイフやハサミで、台紙ごとマークより大きめに切り出す
切り出したデカールは、ぬるま湯に3秒ほど浸し、ピンセットで引き上げる
デカールが台紙から滑るようになったら準備OK。ピンセットでデカールをスライドさせて貼りたい部分にのせる
最後に、綿棒で上から押すことで、水滴やデカールの下に入り込んだ気泡を取る
今回の製作レビューでは使用していないが、複雑な凹凸形状に貼る場合は別売の水転写式デカール用軟化剤や水転写式デカール用接着剤を使用しないと美しく貼れないので注意が必要だ。
今回の製作の一部始終をタイムラプス動画で1分にまとめてみた。徐々に「ミレニアム・ファルコン」ができ上がっていく様子が見られるはずだ。
製作時間は、プラモ初心者の編集者2人がかりで12日間かかった。実質の作業時間に換算すると約35時間30分ほど。素組み+デカール貼りのみでこの時間なので、作り応えは抜群だった。
まずは、飛行時の姿を台座にのせて。
正面
左側面
右側面
後部
前から斜俯瞰
後部から斜俯瞰
裏面
コクピット。コンソールパネルやシート、壁面の計器類まで形状を再現
上部の4連装レーザー砲。写真ではわからないが、内部にはコクピットのように砲手のシートやレーザー砲のトリガーなどが作りこまれている。砲手としてキャラクターをのせることも可能だ。底面にも4連装レーザー砲は搭載
機首サイドのディテールの密集部も効果的にパーツ分割し、立体的な表現を追求している。縦横無尽に走る管も独立したパーツを併用し、撮影モデルに近い形状を実現
入り組んでいる機首中央部もディテールをしっかり表現
機体後部のダクトの網部分は、エッチングパーツで再現性を追求。機器類も1/72スケールならではの高い密集度だ
機体の穴の内部はもちろん、側面まで構造物が作りこんである
「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」の最大の魅力のひとつであり、劇中の印象を補完するのがLEDライト。劇中では「ミレニアム・ファルコン」の機体後部にある「亜光速エンジン」が青く光るイメージがあるが、「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」公開当時のフィルムでは、実は発光色は白。そこで本モデルは、第1作をリスペクトして、あえて白色LEDで再現している。
それでは、LEDライトの4つのスイッチをすべてオン!
くぅ〜! かっこいい〜! 導光パーツを用いることで、帯状のエンジン部の発光を再現
本機は、台座の代わりに機体に3本脚を装着して、ランディングしたような自立状態にすることが可能。ここもLEDに照らされる
LEDに照らされた昇降口は、中まで緻密なモールドが彫り込まれており、いまにもそこからハン・ソロが降りてきそうなほどリアル!
写真では少しわかりづらいが、劇中同様にコクピットの後方パネルも発光!
「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」は、価格が4万円というお高め設定に見合う作り応えと、初心者が作っても美しい完成品ができ上がる高い品質を兼ね備えている。
ひとりで黙々と作ってもいいが、今回のレビューのように複数人で作っても盛り上がるプラモデルだと感じた。SWファンの友人たちを集めて、シリーズの過去作の話をしながら作るのにも打ってつけだ。
個人的には、次は「PERFECT GRADE 1/72 ミレニアム・ファルコン」の塗装に挑戦したい。日本を代表する映画監督の巨匠・黒澤明が「この映画は汚れがいいね」と評価したほど、第1作は汚し表現が徹底されている。そんなSW世界の中でガラクタ呼ばわりされる「ミレニアム・ファルコン」だけに、撮影用モデルは特に派手な汚し表現が入れられていたそう。だから汚し塗装こそ、本モデルの隠れた面白さかもしれないからだ。
シリーズ第8作目「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」の公開まであと2か月半ほど。その期間を使って本機を製作しながら、その日までSW熱を高めていってはいかがだろうか。フォースとファルコン号と共にあれ!
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●本稿のレビューに使ったモデルはサンプル版のため、製品版とは仕様が異なる場合があります。