2021年8月、「Ploom S(プルームS)」を進化させた高温加熱式タバコデバイス「Ploom X(プルームX)」がJTより発売された。
フラッグシップとなる本モデルで吸えるスティックは、現在「メビウス」シリーズ8種類と、「キャメル」シリーズ8種類の計16種類だ。その16種類のうち9種類は、元々「プルームS」で吸えたスティックをリニューアルしたもので、2021年6月より発売。そして、「プルームX」の発売に合わせて新しく追加されたのが、「メビウス・リッチ」、「メビウス・メンソール・フレッシュ」、「キャメル・リッチ」で、2021年11月からはカプセルメンソールタイプ「メビウス・オプション」シリーズが追加された(現在4種類)。
ここでは、現在ラインアップされている「プルームX」用タバコスティック全16種類を、ヘビースモーカーの筆者が吸ってみて、それぞれの味わいを評価した。
加熱式タバコデバイスの新モデル「プルームX」(写真右端)で使用可能なタバコスティックの一部。「メビウス」シリーズは、20本入りで税込570円、「キャメル」シリーズは20本入りで税込500円
カプセルメンソールタイプの「メビウス・オプション」シリーズ4種類
<「プルームX」のデバイスレビューはこちら!>
吸い応え超強化! JTの新・加熱式タバコ「Ploom X(プルーム・エックス)」実機レポート
「プルームX」の最大の進化ポイントは、従来モデル「プルームS」では約200℃だった加熱温度を、一気に約295℃にまで引き上げ、加熱式タバコの対抗馬「アイコス」に迫る吸い応えを実現したこと。この約100℃近い加熱温度の向上は、スティックを周囲から温める従来の加熱方法に加え、スティックの内部に熱風を送り込む新加熱技術「ヒートフロー」を採用することで実現した。
本体内部の加熱炉(チャンバー)を周りから温めつつ、熱風をスティック内部に送り込むことで、タバコ味を濃くすることができるという
「プルームX」を約1か月間使い続けてみてわかったのは、「プルームX」はわずかな雑味を出しつつも、タバコ葉のうまみと吸い応えを強調する方向へ進化したということである。ちなみに、「アイコス」の新型「アイコス イルマ」は、吸い応えはそのままに雑味とニオイを抑えた進化を遂げた。つまり、「プルーム」は、ニオイは控えめだが吸い応えも控えめ、「アイコス」は、ニオイはきつめだが吸い応えは強いという従来のブランドイメージを、両モデルともに覆したのである。
本体の進化に合わせて、専用スティックもさまざまな改良が加えられている。リニューアルされた9銘柄は、「プルームX」で味わいを最大限引き出せるように、タバコ葉のブレンドを改良。また、レギュラータイプ4種類には、葉肉部分「ラミナ」が新しくブレンドされた。これにより、タバコ葉の味わいが深くなり、うまみが強烈にアップ。特に、「メビウス・リッチ」で、その差が顕著に表れていた。
また、メンソールタイプも進化している。「メビウス・メンソール・コールド」と「メビウス・メンソール・フレッシュ」には、「プルーム・テック・プラス」のタバコカプセルでも使用されていたような「天然メンソール」を100%使用。いっぽう、「キャメル」のフレーバー系メンソールタイプのスティックには、「フレーバーマイクロチップ」という技術が採用され、香りが長続きするようになったという。
さらに、2021年11月から、カプセルメンソールタイプの「メビウス・オプション」シリーズも加わった。
「プルームX」専用タバコスティックは、従来スティックよりも長さが少し伸びている。これは、使用中における口元とデバイスの最適な距離を考慮したもので、フィルター部分がわずかに伸長しているという
「プルームX」について筆者が何より気に入ったのは、喫煙時間の5分以内なら、パフ数無制限で吸うことが可能で、ふかし気味にスパスパ楽しむこともできる点だ。「プルームS」などの従来の加熱式タバコでは、短いインターバルで吸ってしまうと、次の加熱が間に合わずに味が出ないことがあったが、「プルームX」では毎回しっかりと味わえる。この技術力には、素直に感激した。
1か月利用していて唯一気になったのが、本体の動作ステータスを表すLEDの見にくさ。屋外の明るい場所などでは、ほぼ視認できなかった
ここからは、「プルームX」で吸える専用タバコスティック全種類を、実際に吸い比べて解説する。まずは、「メビウス」ブランドの4種類から。
※製品画像下の●の数は、筆者独自の評価
香り:●●●●●、コク:●●●●●、強さ:●●●●●
「プルームX」専用「メビウス」のレギュラータイプ。
加熱時に加熱式タバコ独特の“ポップコーン臭”は香るのだが、従来モデルのそれよりは嫌なニオイではなく、どちらかと言うと“香ばしくておいしいトウモロコシ”という印象。
実際に吸ってみると、今まで加熱式タバコでは味わったことのない、ほんのり甘い「メビウス」特有のアロマが広がり、ノドに重厚なキック感が伝わってきた。蒸気を吐いた時には、ほんの少しシャープな焦げ感と酸味が混じり、紙巻きタバコの煙感を演出する。また、ノドにピリッとした刺激がありつつ、タバコ葉の葉肉部分「ラミナ」をブレンドしたことで得られる濃厚なうまみが押し寄せてくるのだ。これは、スゴい……。本作でやっと、紙巻きタバコ「メビウス」からの乗り換え組も満足できる味に近づいた、と言えるのではないだろうか。
「プルームX」の魅力を象徴する濃厚喫味を味わいたいなら、「メビウス・リッチ」1択だ。
香り:●●●●○、コク:●●●●○、強さ:●●●○○
タール値の低いマイルドな紙巻きタバコ「メビウス(旧・マイルドセブン)」に近い感覚で楽しめるレギュラータイプ。
「スムース」とは言っても、吸い終わるまでうまみが持続するので、満足感は高い。これも、フワッとした焦げ臭があり、紙巻きタバコらしい味仕立てだ。
香り:●●●●○、コク:●●●○○、メンソールの強さ:●●●●●
辛めの清涼感がノド奥にビリビリ来るメンソールタイプ。
ペパーミント的な辛みとともに、スペアミント的な甘みも入っているので吸いやすい。天然メンソールならではの自然なおいしさだが、スロートキック感はメンソールの分強く、刺激的な味わいだ。個人的には、後半にミント感が落ち着いたあたりが、タバコ味とのバランスがよくておいしいと感じた。
香り:●●●●○、コク:●●●●○、メンソールの強さ:●●●●○
スースー感と言うよりは、冷感がじんわりと伝わってくる天然メンソールタイプ。
落ち着いた深い味わいで、ゆっくり吸うとうまみが増す印象だ。ただ、後半には冷涼感が落ちてきて、地味な味わいに。
香り:●●●●●、コク:●●●○○、メンソールの強さ:●●●●●
2021年11月、「Ploom X」用「メビウス」シリーズに新たに追加されたフレーバーメンソールタイプのひとつ「メビウス・オプション・パープル」。ベリー系メンソールタイプとしては、すでに「キャメル・メンソール・パープル」が存在するが、価格差とともにその味わいはかなり異なる。
「メビウス・オプション・パープル」は、「Ploom X」用「メビウス」のメンソールタイプなので、「キャメル」シリーズと異なり、天然メンソールを使用しているのが特徴。さらに、紙巻きタバコ版「メビウス」のオプションシリーズの流れをくみ、フィルター部にはカプセルを搭載している。
ただ、BATの「グロー」シリーズのカプセルメンソールとは異なり、途中で味変するためにカプセルをつぶすのではなく、加熱前の段階でカプセルをつぶしておくことが推奨されている。加熱してつぶそうとすると、蒸気熱の問題で、カプセルがはじけにくくなってしまうのだとか。
レビューに移る。本体にスティックを装着し、加熱前にフィルター部分のカプセルをつぶしてみたが、これが結構硬いので注意。ブチッとつぶして実際に吸ってみると、天然メンソールならではの“強いけれど、辛さは少ない"スッキリ爽快な清涼感が大きく広がった。そのうえで、みずみずしい紫色のブドウのような味わいが、タバコのうまみとともにやってくる。これは、世に数ある「パープル・メンソール」タイプの中でも、格段においしい部類に入るはずだ。
香り:●●●●●、コク:●●●○○、強さ:●●●●●
「メビウス・オプション・パープル」と同じカプセル入りフレーバーメンソールタイプで、シトラス(柑橘)系の「メビウス・オプション・イエロー」。こちらも、天然メンソールならではの強めの清涼感を感じられるが、辛さを感じないタイプだ。
「シトラス・メンソール」タイプは、ケミカルさを感じやすい製品が多いが、これはまったく感じない。渦巻く清涼感の中で、緑や黄色の果皮を持つ柑橘類の酸味とわずかな甘みを見事に再現している。こちらも、数ある「シトラス・メンソール」タイプの中で、格段においしい。後半にメンソール感が落ち着いてくると、タバコ感が増し、より大人の味わいに変わった。
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香り:●●●●●、コク:●●●●○、強さ:●●●●●
すでに「オプション・パープル」という紫系ぶどうに近いベリーフレーバーは存在するので、色名だけでなく“マスカット”の名称を前面に押し出したと考えられる「オプション・マスカットグリーン」。カプセルをつぶす前は自然派メンソールが楽しめるのは、ほかの「オプション」シリーズと同様だ。
カプセルを弾けさせると、ほぼマスカットの果実そのものの風味が飛び込んでくる。ベイプリキッドはもちろん、清涼飲料水やケーキ類に至るまで、とかくケミカルな味わいになりがちなマスカットフレーバーだが、これはフルーツとしてのマスカット風味が忠実に再現されている。果肉と果皮部分の味わいさえ立体的に感じられる繊細さ、必要以上の派手さはない抑制された味わいが、吸いやすく、ウマい。ここまでリアルなマスカット味を再現できているスティックには、出会ったことがない。
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「プルーム・エックス」専用のカプセルメンソール新作は“マスカット感”抜群!
香り:●●●●○、コク:●●●○○、強さ:●●●●●
カプセルをつぶす前の段階では、ほかの「オプション」シリーズ同様、自然派メンソール。改めてグリーン感を感じさせてくれる、ナチュラルな清涼感はウマい。
カプセルをつぶして味わってみる。1服目は、みずみずしいすりおろしリンゴのような風味。しかし、それほど強くないフレーバーだ。さらに吸ってみると、今度はリンゴの甘さがふんわりと広がって、清涼感と混じり合ってグンとおいしくなった。
後半にさしかかると、今度はタバコ葉特有の深い味わいとほんの少しの苦みが感じられ、リンゴは次第に脇役に徹するようになる。
メンソールからアップルフレーバー、後半にタバコ感強めという3段階の楽しみが味わえるのに感動。また、リンゴと言えば通常甘酸っぱさが強調されがちだが、「オプション・レッド」は酸味よりも甘みをフィーチャリングした印象だ。決して派手ではないが、しっかりウマい。さすが高品質な「オプション」シリーズだ。
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「プルームX」専用の新作カプセルメンソールは、上品なアップルフレーバー!
香り:●●●●○、コク:●●●●○、強さ:●●●●●
「メビウス・リッチ」より少々マイルドだが、香ばしさの強いレギュラータイプ。
タバコ葉の葉肉部分「ラミナ」をブレンドしたことで出てくるうまみは、軽快だがおいしい。
2021年10月のタバコ税増税にともなう値上げ後も、ワンコイン(税込500円)をキープするため、吸い応え強めタイプでは最安のレギュラータイプと言える。
香り:●●●○○、コク:●●○○○、強さ:●●●○○
どちらかと言うと、従来モデル「プルームS」寄りのおとなしい味わいが特徴のレギュラータイプ。
優等生的なおいしさとうまみは感じられたが、派手さはなし。ただ、このクセのなさにハマるユーザーは少なくないはず。
香り:●●●●○、コク:●●●○○、メンソールの強さ:●●●●●
いわゆる“ブラックメンソール”タイプ。
他社のブラックメンソールタイプは、甘さ控えめで苦みに近いインパクトを感じられるものだが、JTのそれはハーブ感が強め。本作もその傾向は踏襲しており、後半になるとエキゾチック感が増すので、吸う人を選ぶかも。
香り:●●●●●、コク:●●●○○、メンソールの強さ:●●●●●
ノドに強烈な刺激を与えるメンソールタイプ。
冷感も感じられるが、辛口メンソールのビリビリ感のほうが優勢だ。タバコ感より、メンソール感を優先で味わいたい人におすすめ。
香り:●●●●●、コク:●●●●○、メンソールの強さ:●●●●○
人気のパープルメンソールに属する、ベリー系のフレーバー系メンソールタイプ。
アロマが少々強めで、ケミカルな印象だ。フルーティーさは、ブドウなどの果実というよりも、海外製のバブルガムやチューインガムの味に近い。
香り:●●●●○、コク:●●○○○、メンソールの強さ:●●●●○
アップル味のフレーバーメンソールタイプ。
前半は、アップルパイ的な甘さが少々感じられるが、メンソールも強いので甘さが飛びがち。後半にかけてメンソールの味がなくなったあたりで、少々不可思議な味わいに変化する。
香り:●●●●●、コク:●●○○○、メンソールの強さ:●●●●○
「キャメル・メンソール・パープル」とは異なる、もうひとつのベリー系フレーバーのメンソールタイプ。
酸味と少々ケミカルな白ブドウアロマが香るので、好き嫌いは分かれそう。
香り:●●●●●、コク:●●○○○、メンソールの強さ:●●●○○
スキッとしたシトラス感が特徴のフレーバー系メンソールタイプ。
柑橘系のフレーバーが爽快なメンソールとからみ合っており、フレーバー系メンソールの中でいちばんおいしく味わえた。ただし、後半にかけてメンソール感が弱まると、ケミカル感が少々出てくる。
「プルームX」は、確実に理想的な進化を遂げた。特にレギュラータイプのスティックは、フラッグシップモデルにふさわしい味わいを実現したと断言したい。
メンソールタイプは、特に「メビウス・メンソール・フレッシュ」と「メビウス・メンソール・コールド」がJTのお家芸である天然メンソールを使用しているので、抜群においしかった。
フレーバー系メンソールタイプは、「メビウス・オプション」シリーズが格段においしかった。フレーバー系カプセルメンソールというのは珍しくないが、JTならではの天然感へのこだわりがあふれているので、ケミカルさを嫌う人におすすめだ。4フレーバーに拡充し、選択肢が充実してきたのもうれしい。いちいちカプセルをつぶさなければならないのは面倒だが、そのカプセルと天然メンソールのマリアージュにより、ナチュラルな清涼感とフレッシュなフルーティーさを存分に味わえる。
いっぽう、「キャメル」シリーズのフレーバー系メンソールタイプは、安価なのはよいが、どの味もケミカル感が少なからずあり、加熱温度を高めた分、クセが強くなった印象がある。種類によっては、吸う人を選ぶ印象だ。
ランニングコストを抑えたい人は、「キャメル」シリーズ1択。しかし、「アイコス」に近い吸い応えを望むなら、やはり「メビウス」シリーズの中から選びたい。
コスパを抑えた「キャメル」シリーズの中では、喫味の強さと価格の安さを両立した「キャメル・リッチ」が健闘
元「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。今はめおと編集ユニット「ゲッカヨ編集室」として活動。家電や雑貨など使って楽しい商品のレビューに命がけ!