冒頭でも記しましたが、大人用紙おむつは内側に尿とりパッドを装着し、パッドを交換していくのが基本的な使い方となります。おむつと尿とりパッドを組み合わせたほうが尿もれしにくいほか、おむつを替えるよりもパッドを交換するほうがラク。そして、コストも抑えられるのもポイント。交換頻度などによって違ってきますが、大王製紙の試算によると、テープ止めタイプのおむつ単体で使うよりも、尿とりパッドを併用したほうが1か月のおむつ代が約4,000円安く済むといいます。
尿とりパッドは、パンツタイプ用とテープ止めタイプ用とそれぞれ専用のものが用意されています。同じ吸収量でもサイズなどが異なるので、必ずタイプに合う尿とりパッドを装着しましょう。なお、テープ止めタイプの尿とりパッドは種類が多いのが特徴。これは、テープ止めタイプのおむつを使わなければならない要介護者のほうが、排泄状況も体の状態もさまざまなケースが想定されるからです。たとえば「アテント」シリーズの吸収量だけ比べても、パンツタイプ用の尿とりパッドは2回分、4回分、6回分のリリースなのに対し、テープ止めタイプ用は2回分、3回分、4回分、6回分、10回分、12回分と幅広くラインアップされています。なお、パンツタイプのおむつ同様、「吸収量3回分のおむつ」+「吸収量3回分の尿とりパッド」=「6回分の吸収量」にはなりません。尿とりパッドの吸収量を目安に交換しましょう。
尿とりパッドを2枚重ねても吸収量は増えないので、必ず、1枚のみの装着としてください
ギャザーの中に尿とりパッドがしっかりと収まるようにセットしましょう
さらに、パンツタイプ用の尿とりパッドは基本的に男女兼用ですが、テープ止めタイプには明らかに形状が異なる男性用が用意されています。これは、パンツ止めタイプの紙おむつは、体の前側をテープでしっかり止めることができるため。性器を包み込む使い方となるので、要介護者に抵抗感がないようなら、男性用を試してみてもいいでしょう。
男女兼用の尿とりパッドはナプキンのような1枚の形状ですが、男性用は円すい形に組み立てて性器を包み込みます
原則的に尿とりパッドは1枚で使用しますが、男性器を包み込むタイプの男性用尿とりパッドの場合、パッドが外れてしまった時のために下にもう1枚パッドを敷くのもありです
男女兼用の尿とりパッドはお尻側が幅広くなっているので、男性に使用する場合、前後を逆にして装着すると尿もれしにくくなることもあります
1枚で使用するのが尿とりパッドの基本ですが、麻痺があったり、寝方に特徴があるなど、体の状態によっては複数枚を組み合わせることも。利用者の状況に合わせて柔軟に装着してかまいませんので、「基本に忠実にしなければ!」と思い詰めず、うまくいかないときはいろいろ試してみることをおすすめします。
基本的に、尿の吸収量によって昼用、長時間用、夜用というように使用シーンが想定されています。ここでは、使用シーンに合わせた尿とりパッドをいくつかピックアップしてみました。
日中、こまめに交換できる際には吸収量2、3回の尿とりパッドを使ってあげましょう。この吸収量の尿とりパッドには、性器を包む形状の男性用がラインアップされています。なお、男性用のある商品には女性用も用意されていますが、女性用は男女兼用で使用可能。包み込むタイプが苦手な人は女性用と記されたものを使ってかまいませんが、男性用の多くも平らなまま使うことができます。要介護者の反応がわからない時は、平らなままでも使える男性用パッドを購入したほうがムダにならないのでいいでしょう。
大王製紙「アテント 尿とりパッド 強力スーパー吸収 男性用」
吸収量3回分で、円すい形にすることで男性器を包み込んで、尿もれをブロック。円すい形にせず、平らなまま使用することも可能
足まわりのモレが防げるように、立体ギャザーが装備されています
・大王製紙「アテント 尿とりパッド 強力スーパー吸収 女性用」
サイドに設けられた立体ギャザーが尿モレを防ぐとともに、吸収体を二重構造にすることで尿の逆戻りしにくくしています。吸収量は3回分。
・ユニ・チャーム「ライフリー あんしん尿とりパッド スーパー (男性用)」
尿を素早く引き込む上層と、逆戻りを防ぐ下層という2層の吸収体構造の本商品は、包み込んだ際にズレにくいようテープに工夫を凝らしているそう。男性器を包み込まず、平らなままでも使用可能。同仕様の吸収量2回分「ライフリー あんしん尿とりパッド(男性用)」もラインアップされています。
・ユニ・チャーム「ライフリー あんしん尿とりパッド スーパー(女性用)」
上で紹介した男性用同様に、排尿を素早く引き込む層とキープする層という構造。サイドからのモレはギャザーでしっかり防ぎます。吸収量は3回分。
・白十字「サルバ尿とりパッドスーパー 男性用」
男性器を通してから包み込む「固定ホール」を装備。しっかり固定することで、男性器が外れてモレてしまう事態を軽減します。パッドを交換するタイミングが判断できるシースルーシートが付いているのもポイント。吸収量は2回分。
まめにパッドを交換できない時や排尿量が多い場合には、尿を4回以上吸収できる長時間用の尿とりパッドを使用しましょう。吸収量が増えると厚みも増しますが、フィット感や消臭性能、通気性もしっかり考慮されています。なお、吸収量が4回以上になると、男性器を包み込むタイプはないようです。
大王製紙「長時間もれ安心パッド ワイドタイプ 4回吸収」は、おしりを包み込めるように30(幅)×56(長さ)cmと丈も幅も広いのが大きな特徴
尿を素早く引き込むスリットや横モレを防ぐギャザーなどを装備
・ユニ・チャーム「ライフリー 長時間あんしん 尿とりパッド 昼用スーパー」
うしろモレを防げる28(幅)×55(長さ)cmの大型サイズ。姿勢がいろいろ変わっても、すき間を作らずフィットするように中央部が山折り形状になっています。吸収量は4回分。同仕様の吸収量5回分「ライフリー 長時間あんしん 尿とりパッド 昼用超スーパー 5回吸収」もラインアップされています。
・第一衛材「尿とじこめパッド長時間用」
横モレ防止対策を施している尿とりパッドは多いですが、本商品は「フチモレ」もブロックできるギャザーを採用しているのが特徴。弱酸性の天然桃の葉エキスを配合し、排泄物の刺激によるかぶれや肌荒れを軽減します。吸収量は5回分。
夜間、睡眠をとる時は介護される側もする側も、できるなら朝まで起きずにしっかり眠りたいもの。そんな睡眠時の負担を軽減するのが、夜用パッド。寝返りをうっても尿もれを防げる工夫が施されているのはもちろん、長時間使用しても不快にならないように通気性や消臭性もしっかり考慮されています。吸収量は4回分〜 12回分とたっぷり吸収できる大型サイズのパッドが揃えられており、ラインアップも豊富。朝、尿もれしていた際には、どこからもれているのかを確認しつつ、いろいろな尿とりパッドを使い比べてみるといいでしょう。
大王製紙の「アテント」には「夜1枚安心パッド」というシリーズがあり、吸収量4回分、6回分、10回分、12回分でラインアップされています。その中で注目したいのは、「アテント 夜1枚安心パッド 仰向け・横向き寝でもモレを防ぐ 6回吸収」
女性はお尻をすっぽり包め、男性は前側をしっかりくるんで装着可能。尿もれが起こると言われる部分すべてを包み込める幅63cmの大判サイズとなっています。高さのあるギャザーも装備されており、横モレにも安心
3本のスリットが尿を素早く吸収し、逆戻りをブロックしつつ、快適さも担保。お尻側にもスリットが入っているので、あふれモレも防げます
同じく、「アテント 夜1枚安心パッド」シリーズから、もうひとつ注目商品をピックアップ。巻かないタイプの男性用「アテント 夜1枚安心パッド 巻かずに使える男性用 4回吸収」です
男性特有の尿もれの仕組みを研究した男性用尿とりパッド。横モレを防ぐギャザーのほか、中央に男性器を収めるポケットを装備。吸収量3回以下の尿とりパッドの男性用とは異なり、円すい形に巻かなくていいので違和感は少なくて済みそうです
・ユニ・チャーム「ライフリー 一晩中あんしん 尿とりパッド 夜用」
吸収量4回分の「ライフリー 一晩中あんしん 尿とりパッド 夜用」、6回分の「ライフリー 一晩中あんしん 尿とりパッド 夜用スーパー」、10回分の「ライフリー 一晩中あんしん 尿とりパッド 夜用超スーパー」がラインアップされている本シリーズ。吸収量によって若干構造は異なりますが、パッドの中央部に、姿勢を変えてもすき間ができない工夫を施しているのはすべてに共通しています。
・ユニ・チャーム「ライフリー 一晩中お肌あんしん 尿とりパッド」
かぶれが気になる人は、尿をしっかり吸収して表面に水分を残さない「ライフリー 一晩中お肌あんしん 尿とりパッド」がいいかも。パッドが尿を中に閉じ込める「さらさらドライシート」と、肌への接触面を減らす「なみなみシート」で構成されているので、排尿をたっぷり吸収しながら、ベタつき感が残らないといいます。吸収量4回分と6回分がラインアップ。
寝ている時間が多くなる要介護者は便秘になりがち。そんな時、下剤や浣腸を使って排便をうながすのですが、そうすると今度は軟便になるということがよく起こります。紙おむつをしているから問題ないと思われるかもしれませんが、軟便は通常の尿とりパッドでは吸収しづらいため、もれてしまうことも。さらに、肌トラブルが引き起こされる可能性もあります。軟便が続く時には、軟便用パッドを使ってあげるといいでしょう。
大王製紙「アテント お肌安心パッド 軟便モレも防ぐ」は軟便や下痢便を200g吸収可能。合わせて、排尿5回分の吸収にも対応しています
3層構造となった吸収体を採用。目詰まりしにくい網目状になった第1層から2層目に素早く案便が引き込まれ、第2層目で便をせき止めます。そして、水分は3層目へ。第3層目のポリマーが水分を吸収し、逆戻りを防ぎます
テープ止めタイプの紙おむつは、締めすぎると肌トラブルを起こしやすく、動きにくくもなります。逆にゆるいと、尿もれしやすくなるほか、紙おむつが外れることも。テープ止めタイプをはじめて使用する時は、紙おむつのメーカーのサイトで使い方をチェックしたり、訪問ヘルパーや看護師、介護経験者から着け方や交換のコツを教えてもらうといいでしょう。各自治体が介護教室を開催していることもあるので、チェックしてみてください。
この連載では2回にわたり、大人用紙おむつを紹介してきました。排尿関連は、介護する側、される側、どちらにとっても負担の大きいもの。それは肉体的、精神的なことだけでなく、費用においてもです。そんな時に利用してほしいのが費用軽減措置の制度。各自治体が行っている「おむつ助成サービス」や、確定申告時の医療費控除におむつ代を含むというものです。いずれも条件がありますので、くわしくは担当のケアマネジャー、もしくは地域包括支援センターに相談してみるといいでしょう。
【取材協力】
・大王製紙
http://www.elleair.jp/products/care/
・介護生活コミュニティ「けあのわ」
大王製紙が運営する介護のためのコミュニティサイト。介護する方、介護される方が気軽に悩みやちょっとしたことでも話せる場となっています。
https://www.beach.jp/community/ATTENTO/