iPhoneやApple Watchで利用できる「Apple Pay(アップルペイ)」。iPhoneを用いた電子マネーやクレジットカードの決済サービスが日本で導入されてから4年以上が過ぎた。Apple Payは徐々に進化を遂げてきたが、どのようなサービスを利用できるのか、そして利用上注意すべき点はどこにあるのかをあらためて、おさらいしておこう。
Apple Payは、iPhoneに搭載されている、電子マネーやクレジットカードなどの決済サービスだ。交通系電子マネー「Suica」や「PASMO」、クレジットカードなどをApple Payに登録することで、カードを持ち歩かなくてもiPhoneひとつで決済できるようになる。
(関連記事:「Apple Pay(アップルペイ)」と相性のよいクレジットカード6選(2021年版))
たとえば、SuicaやPASMOをApple Payに登録しておけば、iPhoneがSuicaやPASMOのかわりとなり、iPhoneをかざすことで駅の改札口を通過できる。もちろん、定期券を搭載したSuica、PASMOも使える。また、お店で店員にクレジットカードを渡さなくても、カードリーダーにiPhoneをかざせば支払いが済む。iPhoneが財布のような役割を果たし、使うたびに財布からカードを取り出す手間が省けるとともに、カードを落とす心配もなくなる。
iPhoneに登録したSuicaはカードタイプのSuicaと同様、リーダーにかざすだけで決済できる。もちろん駅の改札にかざして利用することも可能だ
SuicaやPASMOに関しては、すでにカードを持っている人であれば、iPhone標準搭載の「WALLET」アプリを用い、対応するiPhoneやApple Watchにかざすことですぐに読み込み、登録できる。
Apple PayではSuicaの利用が可能。すでにSuicaを持っているなら、iPhoneやApple Watchにかざすだけで登録できるので簡単だ
SuicaやPASMOを登録した後は、カードタイプのものと同じように、iPhoneまたはApple Watchをリーダーに直接かざすだけで決済できる。残高が少なくなれば、Apple PayやSuica・PASMOアプリに登録してあるクレジットカードを使い、チャージできる。
Suicaに加え、2020年10月からPASMOもApple Payに登録できるようになった。ただし、JR西日本の「ICOCA」や、 Androidスマートフォンなどの「おサイフケータイ」で使える「楽天Edy」、「WAON」、「nanaco」といった電子マネーは使えない
Apple Payに登録できるクレジットカードは多い。三井住友カードやアメリカン・エキスプレス、クレディセゾンなど主要なクレジットカード会社はもちろん、地方銀行の発行するカードも登録できるようになっている。Appleがネット上で対応するカードの発行元をリストにしているので、一度チェックしてみるとよいだろう。
参考:Apple Payに対応しているクレジットカード、プリペイドカード
クレジットカードは、後払い方式の電子マネー決済基盤である「QUICPay」と「iD」のいずれかを用いて決済する仕組みになっている。Suica同様に「WALLET」アプリを使ってカードを登録する。登録した後は、店頭で「WALLET」アプリを起動し、支払いしたいカードを選んだ後「QUICPay(iD)支払いで」と店員に伝える。
Face IDで認証する「iPhone X」以降の端末の場合、電源キーを2回押して、端末に顔を向けると認証されるので、その後にリーダーをかざせば決済できる。いっぽう、「iPhone 7」や「iPhone 8」では、Touch IDに指をかざして生体認証してリーダーにかざして決済する。
Apple Pay対応のネットサービスも少しずつ増えており、ネット上での決済もApple Payで簡単にできるようになってきている。買い物の際の支払い手段としてApple Payを選択した後、Face IDで認証するだけで、カード番号を入力することなく決済できる。対応サービスには、「Apple Store」「じゃらん」「ヤフーショッピング」「ユニクロ」「出前館」などがある。
クレジットカードを登録すれば、対応するサービスでのオンライン決済も可能になる。Apple Payを選んでTouch IDで認証するだけで決済できるので簡単だ
ただし、気をつけておきたい点もある。国際ブランドが「Visa」となっているクレジットカードは、Apple Payに登録できてコンビニエンスストアなどでも問題なく支払えるが、Apple Payを使ったSuicaへのチャージなど、ネットサービスでの決済はできない。VisaのクレジットカードでSuicaにチャージする場合は、Suicaアプリにクレジットカードを登録する必要がある。
iDとQUICPayのうちどちらの基盤を使うかは、登録するクレジットカードによって決まる。コンビニなどで使うカードリーダーの多くはiD、QUICPayのいずれにも対応し、たいていの場合で不都合ない。しかし、一部で片方しか使えない店舗もある。「QUICPayのみ対応」というカードリーダーがあったとしたら、iDとして登録されているカードは利用できない。使いたいカードが「iD」か「QUICPay」かは、「WALLET」アプリで確認できる。
2016年に発売された「iPhone7」「iPhone7 Plus」、そして「Apple Watch Series2」とともに、米アップルが日本でのサービスを開始したのが「Apple Pay」だ。
Apple Payは、iPhoneを使った非接触型の決済サービスのことで、店頭にある専用のリーダーにiPhoneやApple Watchをかざすだけで、クレジットカードや電子マネーで決済できる仕組み。14年から米国などでは提供されていたサービスだが、日本でサービスが提供されるようになった背景には「FeliCa(フェリカ)」の存在がある。
FeliCaは近距離無線通信規格「NFC」の通信方式の1つで、「NFC-F」として定義されているもの。日本では電子マネーの決済に用いる通信手段として事実上標準の方式となっており、実際、JR東日本の「Suica」や楽天の「楽天Edy」、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」など、国内の多くの電子マネーサービスがFeliCaを採用している。Apple Payと同様、スマートフォンを用いた決済サービス「おサイフケータイ」にもFeliCaが用いられている。
しかしながら、これだけFeliCaが広く活用されている国は日本だけ。日本以外では電子マネーによる決済に、同じNFCの中でも「NFC-A」「NFC-B」といった別の通信方式が使われている。それゆえApple Payも当初はNFC-A/B方式のみ採用していたのだが、iPhone7/7 PlusでようやくFeliCaに対応し、日本でも使えるようになった。
Apple Pay(アップルペイ)の主なメリットとデメリットをまとめると、以下のようになる。
メリット
○SuicaやPASMOを登録すればiPhoneひとつで公共交通機関を利用できる
○クレジットカードを登録すれば手元にカードがなくてもiPhoneで買い物代金を決済できる
○カード類を持ち歩かなくて済み、紛失のリスクが減る
○Apple Pay対応のネットサービスならカード番号を入力しなくても決済できる
デメリット
×WAON、nanacoなどは使えない
×国際ブランドが「Visa」のクレジットカードではネット決済できない
Apple Payはカードの登録や手続きにかかる手間が少なく、一度登録すればiPhoneやApple Watchだけで手軽に決済ができることから、使ってみると非常に便利なサービスだと実感できるはず。対応機種を持っているなら、大いに活用したいところだ。
関連記事:
「Apple Pay(アップルペイ)」と相性のよいクレジットカード6選(2021年版))」
「Suica対応になった『Google Pay』。Apple Pay、おサイフケータイと何が違うの?」
※本記事は、執筆者個人または執筆者が所属する団体等の見解です。
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。