借りる
考えたくもないことだけど……。心配性のライターが専門家に聞きました

ペアローンで背伸び物件を買った夫婦が離婚したら住宅ローンはどうなる?

タワマン

結婚し、マイホームを手に入れた共働き夫婦。憧れのタワーマンションで暮らす日々がスタートしたものの、幸せな生活はそう長く続かず……。数年後、性格の不一致から離婚を決意することに。別々の道を歩み始めようとした矢先、2人の頭を悩ませたのは「住宅ローンの残債をどうするか」という問題でした。返済もままならず、売るに売れずという事態に。

なぜ、こうなってしまったのか――。

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みなさんこんにちは。当サイトで、マネー記事を担当しているライターの百瀬です。冒頭で紹介したエピソードはあくまで仮定の話ですが、「事例としては決して珍しいものではないんです」と話すのは、今回お話をうかがった「住宅ローン問題支援ネット」代表の高橋愛子さんです。高橋さんは、離婚で生じる住宅ローン問題の支援を行っているスペシャリストです。

多くの人が結婚し、住宅ローンを組んで家を買っているわけですが、「離婚したら住宅ローンをどう処理するか」まで考えている人はほとんどいないはず(当たり前の話ですが……)。実は筆者自身も住宅ローンを抱える身。最悪の事態は考えたくはないですが、長いライター人生でさまざまな取材をしてきた経験から、人生に「絶対」がないことも知っています。

万が一にも起こりうるリスクに対して“無防備”でいるのはあまりに危険な状態ではないだろうか? そんな思いから、今回の記事を企画しました。やや"重い"内容かもしれませんが、知っているのといないのとでは大きな違いがあります。一緒に、高橋さんのお話に耳を傾けてもらえたら幸いです。

【内容】
 -全国の持家世帯の約4割が住宅ローンを抱えている
 -「離婚と住宅ローンの問題」にはある特徴が
・共働きに人気のペアローンとは?
 -ペアローンのメリットが一転……
 -”アンダーローン”で売って完済なら問題はない
 -「売らない」選択はありうるか?
 -オーバーローンでも売れるのか?
・"八方ふさがり"は事前に防ごう
 -「身の丈にあった物件」選びの大切さ

【教えてくれた人】高橋愛子(たかはし・あいこ)さん。住宅ローン問題支援ネット代表。宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザ−、不動産コンサルタント。全国無料相談窓口「住宅ロ−ン問題支援ネット」を開設し、不動産業者の垣根を越えた相談機関として年間300件以上の相談業務を行っているスペシャリスト

全国の持家世帯の約4割が住宅ローンを抱えている

現在、日本全国の世帯の持家率は、約8割。そのうち約4割の世帯が住宅ローンを抱えています(※1)。いっぽう、2018年の年間の離婚件数は20万7,000組。人口1,000人あたりの離婚率は1.66%です(※2)。離婚の件数は一定の割合で推移しているようです。

こうした状況の中、あまり表には出てこないものの、確実に存在しているのが、離婚によって住宅ローンの返済に問題が生じるケースです。

(※1)2018年、総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2018_gai4.pdf
(※2)2018年、厚生労働省「人口動態統計の年間推計」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei18/dl/2018suikei.pdf

「離婚と住宅ローンの問題」にはある特徴が

「私は2007年から離婚による住宅ローン問題の無料相談を始めました。ここ数年、相談件数は年300件を超えています。離婚には慰謝料や養育費などのお金の負担がついてまわりますが、なかでも住宅ローンは数千万円という高額の債務のため、大きな問題となるケースも少なくありません」(高橋さん)

離婚の事情が十人十色で異なるように、住宅ローンに関する相談内容もさまざま。しかし、近年、高橋さんのもとに駆け込む相談者にはある共通する傾向があるそうです。

「住宅ローンを『ペアローン』で組んでいた方々からの相談が増えています。ペアローンは、夫婦それぞれが1本ずつ住宅ローンを契約するタイプのもの。ひとりで借りられる以上のお金を借りることができるメリットがあるいっぽう、ひとたび離婚となると、逆にそれが問題解決のさまたげになる可能性があるんです」(高橋さん)

共働きに人気のペアローンとは?

まずはペアローンの仕組みを知っておきましょう。夫婦それぞれが、別の住宅ローンを組むのがペアローンです。たとえば、5,000万円のペアローンを組んだとしたら「夫は3,000万円、妻は2,000万円」というように、おのおのが1本ずつ住宅ローン契約を結びます。

このとき、お互いが相手のローンの連帯保証人になることが求められます。夫側の視点からすると、「妻を債務者とする2,000万円のローンの連帯保証人になる」ことを意味します。仮に妻の返済が滞った場合、夫が2,000万円の返済義務を負うことに。まさに一心同体のローンと言えます。

住宅の所有権は共有名義となり、住宅ローンを組んだ割合に応じてそれぞれの持ち分を決めるのが一般的です。先の例で言えば、夫の持ち分は5分の3、妻の持ち分は5分の2となります。土地・建物が共有になっているため、何らの理由で不動産を売却する際には、相手の同意が必要になります。これは、ローンの変更や借り換えでも同様です。

ペアローンは、

ペアローンは、"夫婦2つの財布”で借りるローン

ペアローンのメリットが一転……

「ペアローンの一番のメリットは、単独で借りるよりも借入額を増やせることです。住宅ローンは年収に応じて借り入れできる額が変わります。ひとりの年収では希望のマイホームを買える金額に届かなくても、2人の年収を基準とするペアローンだと世帯合計で借入額は大幅にアップし、ひとりでは買えないような物件にも手が届くのです。このほか、夫婦それぞれがローンを組むため、2人とも住宅ローン控除を受けられたり、団体信用保険に加入できたりするなどの利点があります」(高橋さん)

夫婦で協力してローンを返済しているうちはペアローンには問題はありません。これが離婚の際どう変貌を遂げるのか?

「結婚し、マイホームを検討するのは幸せの絶頂期ですよね。おまけに共働きで返済にも自信があるという状況。つい背伸びをして、高価なマンションなどを選ぶこともあるでしょう。しかし、マイホームを手に入れてからそれほど年数がたたないうちに離婚したら、高額なローンの残債がそのまま“負の遺産”になるわけです」(高橋さん)

アンダーローンで「売って完済」なら問題はない

ただし、すべての人が負の遺産に悩まされるわけはないようです。仮に離婚の可能性が出たとき、多くの人の頭に浮かぶのは「物件の売却」ではないでしょうか? このとき「アンダーローン」と「オーバーローン」のどちらかによって、事情は大きく異なると言います。

「アンダーローンとは不動産の価格(時価)に対してローンの残債が下回る状態。オーバーローンはその逆で不動産の価格に対してローンの残債が上回る状態です。アンダーローンであれば、物件の売却によって問題は比較的スムーズに解決します」(高橋さん)

たとえば不動産価格2,000万円、ローン残債1,500万円のアンダーローンであれば、物件の売却によってローンを完済できるわけです。あとは残った500万円をお互いに財産分与すればいいだけという状態です。

▼アンダーローンの状態

住宅の価値 > 住宅ローンの残債

⇒差額を、2人で財産分与

問題はオーバーローンのケース。たとえば、不動産価格が2,000万円で、ローンの残高は2,000万円以上といった場合です。

「売却だけではローンを完済することができません。残ったローンが2人で支払えるレベルの金額ならまだいいのですが、そうでない場合、債務を背負って別れることになります」(高橋さん)

▼オーバーローンの状態

住宅の価値 < 住宅ローンの残債

⇒差額が残債となって残る

「売らない」選択はありうるか?

では、オーバーローンで、かつ「売らない」選択をした場合はどうでしょうか? 高橋さんによると、どちらかいっぽうが「住み慣れた自宅に住み続けたい」という希望を持つケースも少なくないようです。「オーバーローンで、かつ物件を売らない」場合、考えられる選択肢は2つあります。

▼オーバーローンで「売らない」場合の選択肢

1. どちらが自宅に住み続け、ローンの残債は2人で返済していく

2. 住み続ける人単独のローンに借り換えする

1. どちらが自宅に住み続け、ローンの残債は2人で返済していく場合

オーバーローンで売るに売れない状況だと、1のパターンになることが多いと高橋さんは話します。自宅の名義も住宅ローンの名義もそのままにして、2人が返済を続けるパターンです。

「一見、なんとかやっていけそうにも見えますが、よくよく実態を考えていくとハードルの高い選択だとおわかりいただけると思います。仮に夫が家を出て、妻がそのまま住み続けるとしましょう。夫には新たな住居費が発生しますし、子どもがいれば養育費も発生するかもしれません。『住んでいない家』のローンを払い続けるのは、精神的にも経済的にも楽ではないですよね。

仮に、夫の返済が滞ると妻に連帯保証人として返済義務が生じます。ペアローンで負担を分担していたゆえに、仮にそれが破綻すると、ひとりに対して2人分のローンが重くのしかかってくることになるわけです。そうでなくても、離婚後は2人とも新しい生活に踏み出すわけです。新しい出会いの機会もあるでしょう。そうしたとき、これまでどおり、”かつて”の住宅ローンを返済し続けられるかといったら……」(高橋さん)

さらに、あまり知られていないリスクも潜んでいると言います。

「住宅ローンは“契約者本人が住んでいること”を前提に組まれています。ですから、ペアローンを組んでいてどちらかひとりが家を出ていってしまった場合、そもそも契約違反になるわけです。住宅ローンを融資した金融機関にこの事実が知られると、場合によってはローンの一括返済を求められることも考えられます」(高橋さん)

2. 住み続ける人単独のローンに切り替える場合

こちらのケースはどうでしょうか?

「1.に比べて問題は単純で、高額なローンを支えるだけの年収が住み続ける人にあるかどうかによります。もともと、単独の年収では希望額を借りられずにペアローンを選ぶ人が多いので、こちらも簡単にはいかないケースが多いようです。

加えて、ローンの名義変更や不動産の名義変更も容易ではありません。どちらも金融機関の同意が必要になります。しかし、オーバーローン状態だと、担保として弱いことを意味しますので、交渉の難易度が上がります。不動産の名義変更は法務局に申請すればできてしまうのですが、こちらも金融機関の同意を得ずに変更したことが金融機関に知られると、ローンの一括返済を求められる可能性があることは覚えておいていただければと思います」(高橋さん)

物件価格と住宅ローンの残債のバランスによって状況は大きく異なります

物件価格と住宅ローンの残債のバランスによって状況は大きく異なります

オーバーローンでも売れるのか?

たとえオーバーローンであっても、物件の売却に踏み切ると判断する人もいるかもしれません。その場合の問題点は?

「金融機関は住宅ローンの対象となる不動産に担保(抵当権)を設定して融資を行っています。前述のとおり不動産の価格がローン残高を下回るオーバーローンは、いわゆる『担保割れ』の状態です。売却してもオーバーする残債を一括返済できる状態でないと、なかなか売却を認めてくれません」(高橋さん)

売却できず、ローンの返済が滞ると、 最悪の場合自宅を差し押さえられ、競売になってしまう可能性もあると言います。こうした事態を避ける方法はないのでしょうか?

「ローン滞納の早い段階で、金融機関にみずから申し出る『任意売却』という手段があります。任意売却は金融機関の合意のもとに実行されるため、オーバーローンでも売却可能です。また市場価格とほぼ同等の金額で売却できるのも利点です。ただし、デメリットを忘れないように。残債の支払い義務は当然完済するまで続きますし、ローンの返済が滞っていたという情報は信用情報機関に残ります」(高橋さん)

"八方ふさがり"は事前に防ごう

万が一のときに困らないための防衛策は?

万が一のときに困らないための防衛策は?

暗い話が続きましたが、これらはすべて「もし別れたら」という仮定の話のこと。夫婦円満が続けば何も問題はないわけです。しかし、心配症の筆者のように、どんなことが起きてもいいように準備しておきたい人は、どうすればいいのでしょうか?

「ここまで読んでもらった方ならすでにおわかりかと思いますが、アンダーローンの状態にしておくことが最強の防御策になります」(高橋さん)

具体的には、家を買う際に、次の2点を高橋さんは提案します。

▼オーバーローンを防ぐ2つのポイント

1. 頭金をある程度入れて家を買う

2. ローンの返済比率を20%以内に抑える

「どちらも、目新しい提案ではありませんが、ここまでお読みいただいた方にはその必要性を感じていただけると思います。まず『1. 頭金をある程度入れて家を買う』ですが、物件価格の1〜2割の頭金を入れておけば、いわゆる”新築プレミアム(新築物件に乗っている価格分。新築でなくなった際に下がるのが一般的)”にも対応できるでしょう」(高橋さん)

『2. ローンの返済比率を20%以内に抑える』もよく言われている比率です。返済比率は、年収に対する年間返済額の割合を指し、

「返済比率=年間返済額÷年収」

で計算します。金融機関がお金を融資してくれるからといって、夫婦で目いっぱいローンを組むのはNG。「借りられる額」と「返せる額」の違いを認識する必要があります。

「一般的に、30〜35%以内の返済比率であれば無理のない水準と言われます。心配な方は20%程度と考えてもらえればと思います」(高橋さん)

「身の丈にあった物件」選びの大切さ

いかがでしたか? ペアローンは夫婦合算の年収をテコに、金融機関からの借入額を増やせます。そのいっぽうで、ローンを2人で返すことを前提としているため、ひとたび足並みがそろわなくなると、多額の借り入れが一気にリスクに転じてしまうことが、おわかりいただけたと思います。

「離婚とまではいかなくても、たとえば、妻が出産後に仕事を辞めたり、正社員からパートなどに働き方を変えたりしても、同様のリスクは起こりえます。月並みですが、住宅ローンを借りるときは無理のない範囲で借り、ゆとりある返済計画を立てるのが大原則。この原則をしっかり守れば、仮にペアローンがシングルローンになっても、オーバーローンに陥る可能性は低くなります」(高橋さん)

住宅ローンで超低金利が続く昨今ですが、今回のお話をぜひ頭の片隅にでも入れておいてもらえればと思います。

※本記事は、記事監修者及び執筆者個人の見解です。

●記事監修者紹介
高橋愛子(たかはし・あいこ)さん。NPO法人住宅ローン問題支援ネット代表。宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザ−、不動産コンサルタント。不動産賃貸会社勤務を経て、任意売却を専門とする不動産コンサルティング会社を設立。その後、全国無料相談窓口「住宅ローン問題支援ネット」を開設し、不動産業者の垣根を越えた相談機関として年間300件以上の相談業務を行う。企業、商工会議所などで精力的にセミナーや講演を行うほか、テレビ、新聞、雑誌など、メディア出演も多数。

●高橋さんの著作紹介

百瀬康司

百瀬康司

フリーランスのライター。副業をはじめ、投資、貯蓄、節約などマネー企画全般を幅広く取材。ビジネスや働くママのジャンルでも取材経験が豊富。雑誌、Web、夕刊紙、書籍で執筆を行い「真に価値ある情報提供」を使命とする。

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