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購入検討の際に知っておきたい、資産性を測る2つの指標を解説

【首都圏】中古マンションが高値で売れる、新築を“割安”で購入できるエリアは?

「価格」「間取り」「通勤アクセス」……。
マンションを購入するとき、皆さんはこうしたことを当然、チェックすることと思いますが、もうひとつ意識しておきたいのは「資産性」という観点。もちろん、購入した住宅に一生住み続けるなら、資産性を気にする必要はないかもしれません。ただ、当初は永住するつもりでマンションを購入したとしても、転勤や定年退職などのライフスタイルの変化によって、予期せぬ形で住んでいるマンションを売却したり、貸し出したりしないといけない事態が出てこないとは限りません。

そこで、不動産専門のデータ企業「東京カンテイ」が独自に算出している「中古マンションのリセールバリュー」と「新築マンションPER」という2つの指標を紹介。そして、この指標について識者に取材し、首都圏のマンション状況を解説するとともに、指標の活用方法についても説明していきます。

〈1〉首都圏の新築マンション平均価格は6083万円、中古は3599万円。いずれも上昇傾向

まずは、首都圏のマンション価格の現状について押さえておきましょう。住宅ジャーナリストの山下和之さんは「首都圏のマンション動向は新築・中古いずれも売れ行きが非常に好調で、価格も上昇を続けています」と説明します。

不動産経済研究所と東日本不動産流通機構のデータを基に作成

不動産経済研究所と東日本不動産流通機構のデータを基に作成

不動産経済研究所の調査によると、新築マンションについては、2020年の首都圏の平均価格は6083万円。2011年の平均価格4578万円と比べると32%アップし、6000万円を超えるのはバブル景気さなかの1990年以来といいます。2021年に入ってからも上昇傾向は続いており、8月には東京23区に限っては平均価格は1億812万円と1億円を突破しました。いっぽうの中古マンション。東日本不動産流通機構のデータでは、成約物件の平均価格は8年連続で上昇し2020年は3599万円。2011年(2530万円)比で42%アップしました。

「新築に関しては、富裕層やパワーカップル(夫婦ともに高収入世帯)が都心部の高額なタワーマンションを中心に購入している状況があり、右肩上がりの状況です。中古についても上昇が続いています。新築物件の価格高騰に付いていけない顧客が比較的手ごろな価格で、なおかつ供給数も多く探しやすい中古のほうに流れてきており、それが価格上昇につながっていると考えられます」(住宅ジャーナリスト・山下さん)

〈2〉中古マンションのリセールバリューとは?

首都圏の中古および新築マンション価格の上昇。
それは、「東京カンテイ」が独自に算出する、マンションの資産性を測る2つの指標にも表れています。そのひとつが「中古マンションのリセールバリュー」です。

リセールバリューは、新築時の価値を高く維持できているかを測る指標

中古マンションのリセールバリュー(%)は「中古流通時の価格」÷「新築分譲時の価格」という計算式で算出。10年前に分譲マンションが販売され、現在も中古マンション取引が活発な駅を抽出し、現在の取引価格が分譲時価格の何%になっているかを計算したものです。

たとえば、10年前の分譲時の1坪(=約3.3u)単価が200万円で、現在の中古マンションとしての取引価格が同150万円であれば、リセールバリューは「150万円÷200万円×100=75%」。いっぽう、分譲時価格が同じ200万円でも、現在の取引価格が250万円であれば「250万円÷200万円×100=125%」。この数値が大きい駅(エリア)ほど、新築時の価値を高く維持できている(上昇している)ことを意味します。

2020年の首都圏のリセールバリューは初の100%超え

2020年の首都圏のリセールバリューの平均は101.9%と、調査開始以来初めて100%を突破。首都圏の平均で見ると、10年前(2010年)の分譲時の価格より、2020年に中古で売却したときの価格が上回っていることを意味しています。

東京カンテイ主任研究員の高橋雅之さんは、この状況を次のように説明します。
「基本的にモノの値段は経年劣化していく分、安くなるのが一般的。マンションも例外ではありません。2019年と比較して2020年のリセールバリューは約7ポイントと、大きく上昇しましたが、これは、首都圏全体で中古マンションの価格が上昇したためです。2020年は新型コロナウイルスによる営業自粛などの影響で新築供給戸数が大幅に減少し、住宅需要が中古市場に流れ込み、その結果として、中古マンション価格上昇につながったと見られます」

(東京カンテイ公式サイトより)

(東京カンテイ公式サイトより)

ここ数年でリセールバリュー100%超えの駅が大幅に増加

また、東京カンテイの高橋さんは首都圏では近年、リセールバリューが高い数値を示す駅が急速に増えてきたことを指摘します。2017年の首都圏のリセールバリュー平均値は91.5%。算出可能だった683駅のうち、100%を超える駅は全体の5分の1程度の154駅でした。しかし、2020年の調査では、調査した412駅のうち、約半数の214駅で100%を超えました。「2017年の調査では、リセールバリュー100%を超える青色の地点は、山手線の内側やその周辺、横浜エリアが中心で限定されていました。しかし、2020年になると大宮といった都市部近郊のターミナル駅、東急東横線の沿線などにも広がってきています」(東京カンテイ・高橋さん)

リセールバリューの結果を落とし込んだ2017年の路線図(上)と2020年の路線図(下)。100%超を示す青色の駅が目立ってきました(画像は東京カンテイ公式サイトより)

リセールバリューの結果を落とし込んだ2017年の路線図(上)と2020年の路線図(下)。100%超を示す青色の駅が目立ってきました(画像は東京カンテイ公式サイトより)

首都圏リセールバリューのトップ15を紹介

首都圏でリセールバリューで上位に入ってくるのはどのような駅なのか。2020年のトップ15は以下のとおりです。

1位は東急東横線の「代官山」で164%。中古価格が分譲時の約1.6倍に

1位は東急東横線の「代官山」。分譲時の坪単価は420万円とこれでも高額ですが、渋谷エリアでの大規模再開発や東横線が東京メトロ副都心線と相互直通運転を開始したことで資産価値が大きく上昇。2020年の中古マンションとしての坪単価は691万円に上がり、リセールバリューは164%。これを専有面積70uという一般的なマンションで計算すると、2010年の新築時は8909万円だったものが、2020年には中古マンションとしての価値が1億4657万円に値上がりしていることになります。

複数の駅が上位に入ってきた城東エリアは狙い目!?

「代官山」に代表されるように、リセールバリュー上位の駅は東京都の都心部がほとんど。一般的な会社員ではなかなか手が出ない価格相場ですが、中には何とかなりそうな駅も。たとえば、10位の東京メトロ銀座線の「田原町」は専有面積70uのマンションで計算すると、新築分譲時の価格が5069万円で、中古流通時は6851万円と、購入を検討できる方の層も広がりそうです。

住宅ジャーナリストの山下さんによると、近年、リセールバリューの上位に東京の城東エリア(中央区、台東区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区)の駅が入ってきているのが特徴的だと言います。「2020年のランキングでは、『田原町』のほかにも9位に都営新宿線の『浜町』(135%)が、12位に都営浅草線の『東日本橋』(134%)が入ってきました。こうした城東エリアは、2010年当時の新築時の価格は比較的手ごろだったいっぽう、丸の内や品川のオフィスエリアとも近く、交通アクセスのよさが注目され始めています。さらに、日本橋界隈の再開発で商業施設や飲食店が増えたことで、住みやすさも向上し、リセールバリューが上昇していると考えられます」

人気路線でも駅によって差があるのは注意

ただ、人気の路線でもリセールバリューは駅によって差が出てくる点は注意が必要とのこと。「東急東横線は人気の高い路線ですが、タワーマンションで有名な武蔵小杉駅のほか、綱島駅や大倉山駅、終点の横浜駅などは100%を超えているいっぽうで、100%未満の駅もあります。人気沿線だからといってどの駅でも一定のリセールバリューが確保されているわけではないのは注意しておきたいポイントです」(住宅ジャーナリスト・山下さん)

〈3〉新築マンションPERとは?

もうひとつ、マンションの資産価値を測る東京カンテイの指標が「新築マンションPER」です。

新築マンションPERは賃料相場との見合いで、購入価格が「割高」か「割安」かを表す

これは、株価の状況を判断する指標のひとつ「PER(株価収益率)」をマンションに応用したもの。購入するマンションを賃貸で運用した場合、分譲価格を何年分の賃料収入で回収できるかを、以下の計算式で算出します。
新築マンションPER=マンション価格÷(月額賃料×12か月)

〈PER〉
株価が1株当たり純利益の何倍まで買われているか、つまり1株当たり純利益の何倍の値段が付けられているかを見る指標。現在の株価が企業の利益水準に対して割高か割安かを判断する目安として利用され、PERが低いほうが株価は割安と判断されます

たとえば、月20万円の賃料収入が見込めるマンションの販売価格が5000万円であれば、新築マンションPERは「5000万円÷(20万円×12か月)」=約20.8倍。賃料収入が同じでも販売価格が4000万円なら「4000万円÷(20万円×12か月)」=約16.7倍。PERが高ければ家賃相場と比べて「割高」、低ければ「割安」と判断することができます。マンションの選択に迷ったときには、周辺駅の賃料相場を調べてPERを算出すれば、どちらが割安でどちらが割高かわかり、参考のひとつにすることができます。

2020年の首都圏マンションPERは24.69と割高感が鮮明に

首都圏のマンションPERの平均は、下記のグラフを見てわかるとおり上昇傾向となっています。2011年のPERは19.63だったのが、アベノミクスが始まった2012年から上がり始め、2020年は11年比5ポイント増の24.69。2011年だったら購入に充てた資金を20年弱で回収できたのが、現在は25年弱かかるようになったことを意味します。「賃料相場はさほど大きく変動しない反面、新築マンションの価格は景気動向などを受けて値上がりしやすい傾向があります。PERの上昇は首都圏の新築マンション価格の高騰を受けてのことで、『割高感』は一層強まっています」(住宅ジャーナリスト・山下さん)

東京カンテイの高橋さんも次の点を指摘します。
「一般的に、マンションPERは20を超えると割高とされます。2020年はPER20未満の駅(下記の路線図で緑と青の駅)は周辺3県に点在する程度で全体の約9%。2011年ごろは、川崎や北千住、武蔵浦和、西船橋などの都心近郊のターミナル駅はPER上位(数値が低く割安感が強い)に出てきていましたが、ここ数年は大手ディベロッパーがこうしたエリアにもタワーマンションを販売するようになり、PERが上昇しました」

2020年のマンションPERを落とし込んだ路線図。PER24以上と賃料見合いで割高であることを示す赤い点の駅が半数以上を占めています(東京カンテイ公式サイトより)

2020年のマンションPERを落とし込んだ路線図。PER24以上と賃料見合いで割高であることを示す赤い点の駅が半数以上を占めています(東京カンテイ公式サイトより)

2020年のマンションPERトップ15は?

2020年のマンションPERで上位(数値が低く割安感が強い)なのは以下の駅。リセールバリューの順位とは反対に、郊外の駅が上位に出やすくなります。この中で、住宅ジャーナリストの山下さんが注目したのは比較的便利な立地にありながらも、上位に入ってきた2つの駅です。

「1位になったのは、マンションPER16.96の東京メトロ南北線の『志茂』。JRに直結はしていませんが、JR赤羽駅まで徒歩約10分の『赤羽岩淵』の隣の駅で都心へのアクセスも悪くありません。また、5位のゆりかもめの『有明テニスの森』は、近隣の豊洲や月島などと比べると、マンション価格が手ごろなので上位に入ってきたと考えられます。『有明テニスの森』は大手ディベロッパーも大型のマンションを建設したほか、徒歩圏内に劇団四季の劇場もできており、狙い目エリアと言えるかもしれません」

〈4〉リセールバリューはどう活用する?

紹介した指標を、マンション購入時にどういった形で活用できるのでしょうか。
東京カンテイの高橋さんは資産性を重視する場合、とりわけリセールバリューについては頭に入れておいたほうがよい、とアドバイスします。「住みたいと思う人が多数いるいっぽう、条件に合致するマンション供給が少ない場合にリセールバリューが高くなる傾向になります」と説明し、具体的にリセールバリュー上昇の要因として以下の3つをあげました。
(1)新駅開設や延伸などによる、都市部への交通アクセス(交通利便性)の向上
(2)病院や学校、商業施設の開業などによる生活利便性の向上
(3)開発・再開発による発展性の有無

リセールバリュー上昇要素の有無をリサーチ

「(1)〜(3)は相互に関係してくる要素です。東京の湾岸エリアが顕著な例ですが、1990年代以降、開発が進んで大型の商業施設やスーパーができ、都心へのアクセスも便利になりました。かつては工場や巨大な倉庫街のイメージでしたが、今は『タワーマンションのメッカ』とも言われ、リセールバリューも大きく上昇しました。マンション購入時に、検討エリアの現在のリセールバリューを確認するとともに、(1)〜(3)の要素があるのかないのかを見て、リセールバリュー上昇が見込めるのかを押さえておくのも大事なポイントだと考えます。また、私たちの調査でリセールバリューは周辺の賃料相場と基本的には比例する(賃料相場が高いほど、リセール名リューも高くなる傾向)ことがわかっています。そのため、複数のエリアで検討している場合、その地域の賃料相場を調べる、というやり方もあるでしょう」(東京カンテイの高橋さん)

〈5〉まとめ

首都圏のリセールバリュー、マンションPERは上昇傾向が続いていますが、今回取材した2人の識者は「数値が下がる要素はなく、しばらくは若干上昇するか、少なくとも高止まりが続きそう」という見通しで一致していました。それは、需給や資材高騰などの状況から、2つの指標に影響を与える首都圏の中古・新築マンション価格の高止まり(あるいは若干の上昇)が続くと予想していることの裏返しでもあります。

住み替えの可能性が絶対にないとは言い切れない中、今回紹介した指標はマンション購入時には、把握しておきたい要素のひとつです。いっぽうで、リセールバリューの数字を重視するあまり、無理なローンを組んだり自分や家族にとって住みにくい街を選んだりするのは本末転倒。そうならないためにも、住みたいエリアをある程度絞ったうえで、これらの指標を参考に比較検討するという手順が有効と言えるでしょう。なお、今回は首都圏の数字のみ紹介しましたが、東京カンテイでは近畿圏と中部圏についても数値を発表しているので、そちらも参考にしてみてください。
【2020年リセールバリュー】
首都圏版
近畿圏版
中部圏版
【2020年新築マンションPER】
首都圏版
近畿圏版
中部圏版

(取材協力:回遊舎)

価格.comマネー編集部

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