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社内で年間1,000本の会議を仕切ったスキルにニーズが?

社外にチャンス。会社員が平凡スキルで副業を実践。しかも成功して独立へ!【会議の仕切り 編】

8兆円に迫ろうとしている副業市場(※)。副業で売れているのはどんなスキルなのか? 求められているのは「高度なスキル」ばかりではなく、むしろ「会社員としての普通のスキル」なのではないだろうか? そんな仮説からスタートした本企画。前編の「プレゼン資料作り」のスキルで副業をした園塚充弘さん(社外にチャンス。会社員が平凡スキルで副業を実践。しかも成功して独立へ!【資料作り 編】)に続き、今回は「会議を仕切る」スキルで副業、独立へと至った園部浩司さんの事例を紹介します。

※出典:ランサーズ「フリーランス実態調査2018」(https://www.lancers.co.jp/news/pr/14679/

大手電機メーカーのグループ企業に25年間勤めていた園部さん。副業で販売したのは「会議を仕切る」スキルでした。前編に登場した園塚さんが「自分のスキルが会社の外で売れるか半信半疑だった」と話していたのと対照的に、園部さんには「売れる自信があった」と言います。ただしそれは「会社員時代のうまくいかなかった経験があったからこそ」とも。一体どういうことなのでしょうか?

「会議を仕切る」スキルが副業で人気に

「会議を仕切る」スキルが副業で人気に

※企業によっては従業員の副業を禁止している場合があります。会社員の方が副業を行う場合は、勤務先の就業規則等をご確認ください。

【会議の仕切りで副業 編】「ファシリテーション」で副業できたのは、会社での失敗経験があったから

園部さんは新卒で入社後、10年間経理部に在籍したのち、事業計画部に異動。当初は損益管理を、その後、人材開発や組織風土改革までを担当するようになります。

「人を育てたり、組織のあり方を考えたりする仕事に移ってから、会議の数が格段に増えていきました。数字を扱う仕事と違って、人材開発や組織風土改革の仕事にははっきりとした正解がありません。ひとりで完結するのではなくチームをまとめる必要も生じます。いくら会議を重ねても、なかなか問題解決につながらず、まとめられないことも多々ありましたね」(園部さん)

園部浩司(そのべ・こうじ)さん。48歳。新卒で大手電機メーカーのグループ企業に入社。人材開発、組織風土改革など幅広く活躍する中で磨いた「ファシリテーション」のスキルを生かし、スキルシェアサービス「ストアカ」で副業。人気を博し、3年前に独立を果たす

園部浩司(そのべ・こうじ)さん。48歳。新卒で大手電機メーカーのグループ企業に入社。人材開発、組織風土改革など幅広く活躍する中で磨いた「ファシリテーション」のスキルを生かし、スキルシェアサービス「ストアカ」で副業。人気を博し、2016年に独立を果たす

▼園部さんの副業の概要
本業⇒ 電機メーカーのグループ企業のサラリーマン(当時)
副業⇒ ファシリテーションスキルを教える講師
お客さん⇒ 会社員 など
集客方法⇒ スキルシェアサービスの「ストアカ」をメインに活用

会議で失敗。口をきいてもらえず

園部さんは当時を振り返り、手痛い失敗例を明かしてくれました。各事業部の代表を集めたある会議のこと。園部さんは進行を任されていたものの時間ばかりかかり、なかなか結論に至らなかったそうです。

「自分にうまく意見を引き出すスキルがなかったからと今ならわかるのですが、当時の私はまだ会議を仕切る役として未熟で。イライラが募り、結局私が押し切って結論を決めて会議は終了に。参加者に不満が残ったんでしょうね。会議の後、『園部は強引だ』と悪評が立ち、あらゆる事業部に私のネガティブキャンペーンが水平展開されてしまって……。参加者の⼈たちとはしばらく⼝を聞いてもらえず、とんでもなく痛い⽬に(笑)。コミュニケーションをちゃんと学ぼうと反省しました」(園部さん)

園部さんは失敗を失敗のままで終わらせませんでした。なぜ失敗したのか、その原因を探り、対処法をインターネットで調べたり、書籍を読んだりして学んだのです。そんな中、会議を生産的かつ効果的なものに導く「ファシリテーション」という専門スキルを知ることになります。

スキルで会議を楽しく変えた

「ファシリテーションとは、会議やミーティングなどの場で参加者の発言をうながし、話を整理し、参加者の認識の一致を確認するなど、合意形成をサポートすることを指します。会議のプロフェッショナルスキルと言ってもいいでしょう。会議をスムーズに進行する役割の人を『ファシリテーター』と呼びます」(園部さん)

さっそくファシリテーションの知識を仕入れつつ、そのスキルを実地で使い、検証も重ねました。すると、

・時間が長くて何も決まらない
・みんなの意見が出ない
・不平不満が蔓延、場の空気が重苦しい
・楽しくない、暗くなる

といった会議が減り、

・時間どおりに物事が決まる
・みんなの意見やアイデアが吸い上げられる
・納得して一致団結、明るい雰囲気
・楽しく、元気になる

といった会議が増えてきます。

「もちろん、ファシリテーションを習得する過程でも失敗はありました。たとえば、『多くの人の意見を引き出そう』と意識して会議をすると、逆に普段活発に意見を言う人の発言機会を奪うことになりますよね? その人に不満がたまり、後になって会議の結論をひっくりかえされたこともありました。次からはそういう人にちょっと多めに声をかけてケアするなど、対処法を考え続けました。地雷を踏むような失敗体験を繰り返してきたからこそ、ファシリテーションのスキルが磨かれ、太く育っていったのだと思います」(園部さん)

こうして園部さんは年間1,000本以上の会議を仕切るまでになり、結果的に1年間で約2億円という営業利益の改善を実現。のちには最年少部長に抜てきされるまでに成果をあげます。

しかし社内の評価体制に物足りなさも

ファシリテーションのスキルが確立されると、園部さんの目は会社の外に向かうようになったと言います。社内で成果をあげていたのに、なぜなのでしょうか?

「私が担当してきた経理や事業計画など管理部門は数値で成果を図ることが難しく、それなりに高い評価をしていただいていましたが、どこかモヤモヤしていました。数字によって評価や待遇に反映される営業職などとは違っていたのです。そこに物足りなさを感じていました。そこで、自分のファシリテーションのスキルを社外で売って、市場でその価値を証明してみたいという思いが募ったんです」(園部さん)

会社の外で実力を試す近道が副業。園部さんがファシリテーションのスキルを販売する場に選んだのは「ストアカ」です。ストアカは、スキルや得意なことを教えたい人と学びたい人をつなぐ、国内最大級のスキルシェアサービスとして知られています。

「『誰でも先生になれる』というキャッチフレーズにひかれました。ストアカでは約2万人の先生が講座を行っています。私もそこでファシリテーションスキルを教えることにしたのです」(園部さん)

ストアカでの収入を所属する事業部の売り上げとして計上することを条件に会社の許可を取得。園部さんの、会社の外でのチャレンジがスタートします。

ストアカ
●運営会社:株式会社ストリートアカデミー
●サービス開始時期:2012年7月
●登録生徒数、講座数、先生数:約32万人、約3万人、約2万人
●アドレス:https://www.street-academy.com/

「いい会議」の需要があった! 1回で100万円超の売り上げも

ファシリテーション講座は開講当初から人気を博したと言います。

「本業の後の夜の時間を使い、2時間半で6,800円という講座を作ると、定員6人がすぐに満員に。4〜5回同じ状態が続いたため、会場を広くして定員10人、9,800円にアップしましたが満員状態は変わらず。1回講座を開催すると約10万円の売り上げになり、これを月に1〜2回開催していました」(園部さん)

その後、園部さんはストアカで特別講座を作ります。2日間みっちりファシリテーションを学習できる内容で、受講料は強気の8万5,000円に設定。

「これが高額な設定にもかかわらず売れたんです。20人の募集があっという間に集まりました。約170万円の売り上げです。これを計3回行いました」(園部さん)

参加者からも絶賛の感想が多く、直接感謝の言葉をもらうこともあったそうです。

「『すごく勉強になりました』『人生が変わりました』といった言葉をいただき、とてもうれしかったですね。誰かの役に立っていると感じられることは、会社ではなかなか味わえない喜びでしたから」(園部さん)

ストアカでの園部さんの商品販売画面の一例(画像はストアカより)

ストアカでの園部さんの商品販売画面の一例(画像はストアカより)

「意見を否定されたらどうしよう」のブレーキを外す

ここで、園部さんの講座の人気の秘密を探る意味で、ファシリテーション講座の中身を少し教えてもらいましょう。多くの会議は、参加者の意見がなかなか出ず、時間だけが過ぎて結局結論が出ないことも少なくありません。参加者はもやもやし、なによりつまらない……というのがダメな会議の典型です。これをファシリテーションのスキルで、どう改善するのでしょうか?

「会議で意見が出ないのはなぜだと思いますか? 『意見がないから』ではないんです。多くの人は『意見はあるけど、言うのをやめておこう』と心の中でブレーキをかけています。なぜか? 正しいことを言わなきゃいけないとか、反対されたらどうしようとか、的外れだったら恥ずかしいといったことを考えてしまうからなんです」(園部さん)

その心理的なブレーキを外し、みんなが意見を出しやすくする環境を作るのがファシリテーターの役割のひとつだと園部さんは言います。

「簡単に言うと、『では、端の人から順番に意見をどうぞ』と水を向ければいいんです。みんなが発言する仕組みを作ってしまうことですね。みんな意見を持っているわけですから。ただし、なかにはすぐに意見を言えない人もいるので、『パスは何回でもOK』と逃げ道を作ってあげることも大切です。もうひとつ、付箋紙を使うやり方もあります。各自の意見を付箋紙に書き出してしてもらい、これを並び替えたりして整理し、話をまとめていく手法です。これは『KJ法』と呼ばれることもあります」(園部さん)

全員平等に発言の機会が与えられる――。会議への「参加感」「貢献感」が必然的に高まりそうです。もっとも、前述のとおり、普段活発に意見を言う人の発言機会が減ってしまうことのケアも怠らないように園部さんは気を払います。

「人は、自分の意見が反映されることで納得することが多いので、こうすることで合意形成がスムーズにいきます。その結果、自然な流れで会議が結論に向かえるのです。『時間どおり』『納得する』『決まる』の三拍子と、プラスアルファで『参加者が楽しく、ワクワクして、終わった後に元気になる』というのが園部流のベストな会議のあり方。『また仕事が増えたよ』とか『自分の意見を否定された』……と、落ち込むような会議では、いい結果につながりにくいですよね」(園部さん)

ファシリテーターのスキルで、会議の生産性が変わります

ファシリテーターのスキルが、会議の生産性を左右します

「スキルの言語化」と「がら空きだった市場」

磨きあげたファシリテーションスキルを武器に、ストアカで実力を証明した園部さん。副業の成功の要因を尋ねると、2つのポイントをあげてくれました。

まずは「スキルを言語化できたこと」。

「いくら会議を仕切るスキルがあったとしても、それを言語化して、人に教えることができなければ売り上げにはつながりません。すなわち『稼げる副業』にするのは難しかったと思います。言語化とは『言葉にすること』。自分で言うのは何ですが、私はこの言語化が比較的すんなりできていたのだと思います。といっても、何か特別な練習をしたわけではありません。私は会社の中で、会議を仕切ることで失敗を重ねてきました。そのたびに理由を調べたり、対処法を考えたりし、次の会議で実践してきました。このプロセスを経ていたからこそ言語化できていたんだと思います」(園部さん)

もうひとつは「ブルーオーシャンだったこと」。

「社外でスキルを売ろうと考えたとき、自分の中にはいくつか候補がありました。プレゼンや企画の立て方、問題解決の方法などですね。ただ、自分の仕事人生を一番変えたのがファシリテーションのスキルでしたし、教えられる人も少なそうだった。この2点をかけ合わせると、『ファシリテーション』はブルーオーシャンだろうと判断しました」(園部さん)

園部さんの「ファシリテーション講座」の様子(園部さん提供)

園部さんの「ファシリテーション講座」の様子(園部さん提供)

あなたが仕事人生で「苦労・克服」したものは?

2つのポイントを整理して考えてみましょう。言語化のカギは、「過去は苦手だったけど、すでに克服したビジネススキル」にあるかもしれません。

「『できる』と『教えられる』は違います。人にうまく教えるには、スキルやノウハウをどれだけ言語化できているかにかかってくると思います。その意味で、天然で意識せずにできてしまうことよりも、苦手や失敗経験を克服して身につけたスキルのほうが、副業に向いているかもしれませんね」(園部さん)

ブルーオーシャンを見つけるのはなかなかハードルが高そうですが、園部さんはちょっと角度を変えて既存のスキルをとらえ直してみることを勧めます。

「『社内でやるべきこと』と思い込んでいる仕事を、いったんゼロベースでとらえ直してみるとヒントが見つかるかもしれません。たとえば、採用の面談が得意だとしたら、『できる人材を見抜く面談術』を教える。朝の朝礼が得意なら、『盛り上がる朝礼のやり方』を教える。部下との面談がうまい人なら『部下が元気人なる面談のやり方』でもいいと思います。社内で掘り起こされていないスキルをうまくアレンジすれば、教える副業としてチャンスは十分あると思いますよ」(園部さん)

副業で得た自信と実績をベースに、2016年、園部さんはプロのファシリテーターとして独立します。プロを名乗るファシリテーターはまだまだ少なく、現在は個人向けのほか企業向けの講座も展開しています。

「副業でも本業でも、スキルのシェアは今後より活発化していくと思います。自分の得意なことを教えて、人や社会に貢献する。それでお金とやりがいを得られたら最高ですよね」(園部さん)

普段使っているスキルに別の光を当ててみる

前編・後編と2回にわたり、一見平凡なビジネススキルを会社の外の副業で活用した実例をお届けしてきました。”平凡”と表現したものの、2人のスキルはもともと人より秀でていた点は注意が必要でしょう。しかし2人に共通するのは、そのスキルを「再現可能」なレベルにまで高めた点にあるのではないでしょうか? 前回紹介した「プレゼン資料作成」の園塚さんは「プロと名乗る」ことで自分にプレッシャーをかけてスキルを上げていきました。今回の園部さんは、社内での失敗経験をバネにスキルを磨いています。そこに「社外」という広いマーケットがかけ合わされることで、会社の中にはなかった可能性が花開くことになりました。

本企画が、皆さんが持っているスキルに少し別の角度から光を当て、「副業」という形にとどまらず社内外のさまざまな可能性に出合うきっかけとなれば幸いです。

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※本記事は、取材者及び執筆者個人の見解です。企業によっては従業員の副業を禁止している場合があります。会社員の方が副業を行う場合は、勤務先の就業規則等をご確認ください。
百瀬康司

百瀬康司

フリーランスのライター。副業をはじめ、投資、貯蓄、節約などマネー企画全般を幅広く取材。ビジネスや働くママのジャンルでも取材経験が豊富。雑誌、Web、夕刊紙、書籍で執筆を行い「真に価値ある情報提供」を使命とする。

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