新Vポイント始動――。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の「Tポイント」と、三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)の「Vポイント」が統合し、「新Vポイント」のサービスが2024年4月22日にスタートしました。単純合算で会員数約1億5000万人の国内最大級のポイントプログラムが誕生した格好です。両ポイントの運営会社は同日、記念イベントとサービス説明会を開催。その模様をお伝えしつつ、新Vポイントの特徴を紹介していきます。
新Vポイントのサービス開始イベントには、俳優の小栗旬さんと吉高由里子さんも登壇しました。「V」のポーズを取ってサービス開始をお祝い
TポイントはCCCが2003年に開始した、特定の業種や企業を超えて幅広く活用できる「共通ポイント」のパイオニア。TSUTAYAやENEOS、吉野家やガストなどの提携先でTカード・モバイルTカードを提示して、ポイントを貯めたり(100〜200円で1ポイント)、買い物の際に充当したりするのが基本的な利活用の方法となっていました。
いっぽうのVポイントは、三井住友FGが2020年6月に「SMBCグループ内の共通ポイント」としてスタート。TポイントがTカードの提示でポイントを貯めていくのに対し、Vポイントは三井住友カード発行のクレジットカード決済で貯めるのが一般的な方法です。貯めたVポイントは、カード利用金額に充当できたり、Visaのタッチ決済対応加盟店などで「1ポイント=1円」で利用できたりするほか、三井住友銀行での振込手数料の割引にも使うことができます。
Tポイントは高い知名度を誇るものの、近年は強力なポイント還元キャンペーンをひんぱんに行う「楽天ポイント」や「dポイント」の勢いに押されていました。そして、Vポイントは三井住友グループの資金力を背景に、ポイントアップの特典を充実させてきましたが、普及が十分に進んでいるとは言えない状況でした。
そんな互いの弱点を補完するのが狙いと見られますが、CCCと三井住友FGは2023年1月に資本業務提携に最終合意し、両ポイントの統合を決定。同年6月には、統合後の新名称を「Vポイント」に統一したうえで、新Vポイントのロゴについては、Tポイントの基調カラーである青と黄色を引き継ぐことを発表していました。
そして迎えた統合と新サービス開始となる2024年4月22日。
この日行われた記念イベントでは、新Vポイントを運営するCCCMKホールディングス(CCC傘下)の撫養宏紀(むや・ひろき)取締役が「新たなVポイントはポイント(機能)と決済が融合し、(Visa加盟店である)日本の750万店舗、世界の1億店舗で貯まって使える、経済圏にしばられない新しいサービスとして提案していく」とあいさつ。
新Vポイントが「ポイントカードの提示」と「クレカ決済」の2つのシーンで貯められ、貯めたポイントは世界中のVisa加盟店で「1ポイント=1円」で使える点を強調しました。
新Vポイントのサービス開始記念イベントであいさつする、CCCMKホールディングスの撫養取締役(画像はVポイントPR事務局提供)
続いて、俳優の小栗旬さんと吉高由里子さんが登壇し、トークセッションを実施。小栗さんは「(TポイントとVポイントの)2つが合算されると、どのくらいのポイントになるんですかね。想像するだけでうれしい」と話し、吉高さんは(ポイントカードの提示と決済の)2つの場面で貯められることについて、「欲張りだなと思いますし、貯まる場所が増えるのが楽しみのひとつになります」とコメントしました。
トークセッションで、小栗さんと吉高さんはTポイントのサービス開始年に関するクイズにも挑戦
その後のサービス説明会では、CCCMKホールディングス・カスタマーマーケティング部の坂浩明部長が新Vポイントの概要を説明。ID数で見るとTポイントが1億2800万、Vポイントが2600万となり、単純合算で1億5400万IDとなる点を紹介しました。
また、重複分を除いたアクティブユーザーだけ見ても、Tポイントは7000万人、Vポイントは1600万人となり、この点からも国内有数規模のポイントプログラムになると言えそうです。
主要な共通ポイントの概要
約1億5000万のID数となる国内最大級のポイントプログラムが誕生しました
新Vポイントの貯め方については、
(1)提携店でのポイントカード・アプリの提示(旧Tポイントでの貯め方)
(2)三井住友カードの決済(旧Vポイントでの貯め方)
の2通りあるとの説明がされました。
さらに(1)に関しては、従来からのTポイント提携店15万店に加え、4月22日から「すき家」「なか卯」「はま寿司」「ジュンク堂書店」など約5,000店舗も提携先に加わり、5月以降には「紀伊國屋書店」「上新電機」なども対象店になることが報告されました。
Vポイントは、ポイントカードの提示と三井住友カードの決済という2つの方法で貯められます
4月22日から、「すき家」や「ジュンク堂書店」などでもポイントカードやアプリでの提示でVポイントを貯められるようになりました
また、三井住友カードは一部のコンビニや飲食チェーンでスマホを使ったタッチ決済をすると7%還元となる特典を用意しています。つまり、Vポイントの提携先かつ、7%還元の対象店で、ポイントカードの提示(0.5%還元)とスマホでのタッチ決済(7%還元)をすれば、7.5%ものポイント還元を受けられることになります。
〈7.5%還元となる店舗〉
ガスト、バーミヤン、しゃぶ葉、ジョナサン、すき家、はま寿司、ココス、ドトールコーヒーショップ、エクセルシオール カフェ
ガストやバーミヤンなどでは7.5%のVポイントの還元を受けられます
新Vポイントの使い方については、
(1)提携店でのポイントカード(アプリ)を提示し、「1ポイント=1円」として買い物代金に充当(旧Tポイントでの使い方)
(2)Visaのタッチ決済やiD対応加盟店、Visa加盟のオンラインショップで「1ポイント=1円」として利用(旧Vポイントの使い方)
の2通り用意されていることを紹介。なお、(2)の使い方をする場合、アプリ「Vポイント Payアプリ」をダウンロード後、Apple PayまたはGoogle ウォレットに設定することで、タッチ決済が可能となります。
Vポイントは提携先に加え、Visaのタッチ決済加盟店でも利用可能です
「Tカードは統合後もそのまま使えますか?」などの質問が多く寄せられているとのこと。これに対し「Tカードは引き続き利用可能」との説明がされました
旧TポイントとVポイントは、「VポイントPayアプリ」などで合算可能
続いて、ポイント、カードのポータルサイト「ポイ探」を運営する菊地崇仁さんらによるトークセッションが開催。菊地さんは最近のポイ活事情について、「物価高が続く中で、少しでもポイントを活用することで生活を防衛する意識が強くなっているのでは」と解説しました。
また、自身が2024年1月から4月中旬までの4か月足らずで、統合前のVポイントを約22,000ポイント貯められたことに触れて、「Vポイントは貯まりやすいポイントであり、Visa加盟店で使える点を考えても持っておいて損はないと思います」とコメント。
さらに、「従来はポイントをひとつに絞って利活用していくべきと考えられてきましたが、(ポイントサービスの対象が拡大するにつれて)絞りきれなくなってきています。今後は、メインで貯めるポイントとサブのポイントを使い分けるなど、併用することも検討したほうがよいかもしれません」とアドバイスをしていました。
「ポイ探」を運営する菊地崇仁さんが、最近のポイント事情について解説(画像はVポイントPR事務局提供)
こうして4月22日にスタートを切った新Vポイントですが、サービス開始から複数のトラブルに見舞われました。22日から23日にかけてアクセス集中などによって、三井住友FG提供の「VポイントPayアプリ」の残高表示ができなくなったり、CCCMK提供の「Vポイントアプリ」がつながりにくくなったりするなどの不具合が発生し、残念ながら順調な滑り出しとはいきませんでした。
以上、新Vポイントのサービス開始イベントの模様とともに、その特徴をお伝えしてきました。
筆者がイベントに出席して印象に残ったのは、運営会社のCCCMK幹部からたびたび発せられた「経済圏にしばられない」というフレーズ。楽天ポイント、dポイント、Pontaポイント、PayPayポイントの4つのメジャーな共通ポイントは、通信サービスや金融などを軸に強固な経済圏を築こうとしているように見えます。
菊地さんは新Vポイントを含めた5大共通ポイントの特徴についても説明
いっぽうの新Vポイントは、クレカ決済で多くのポイントを貯められ、Visa加盟店で消費できる点を大きな特徴にしており、ポイントの入り口と出口の間口の広さを考慮すると「経済圏にしばられないサービス」という発言は一定の説得力があります。
ただ、筆者の周囲に三井住友銀行や三井住友カードの利用者は少なくありませんが、自身がVポイントユーザーであると認識している知人は多くいません。今後は新Vポイントの認知度とともに、「Vポイント=Visa加盟店で使える」という点をどれだけわかりやすくユーザー伝えられるのかが、カギとなりそうです。
おりしも、新Vポイントのサービス開始に先んずる形で、NTTドコモは4月10日、アマゾンジャパンとの連携を発表し、「d払い」を使ったAmazonでの買い物時にdポイントを最大3.5%還元する施策をスタート。
また、楽天グループは4月18日、スマホ決済「楽天ペイ」と、「楽天ポイント」「楽天Edy」のアプリを統合させ、ユーザーの利便性を高める方針を発表しました。今後も、共通ポイントをめぐっては「5強」による激しい競争が続く状況が見込まれる中、ユーザーとしては、どのポイントが自身の生活にフィットし、貯めやすく・使いやすいかを見極めていくことが必要になりそうです。