2024年4月、「Tポイント」と「旧Vポイント」が統合して「新Vポイント」が誕生しました。“第5のポイント経済圏”として注目されるいっぽう、SNSなどでは「わかりにくい」という声もちらほら見かけます。その背景には、2つのポイントそれぞれの「貯め方・使い方」を残す形で統合したことによる影響がありそうです。
そこでこの記事では、「T」と「旧V」という2つのルーツを持つ「新Vポイント」の仕組みのうち、似た印象を受ける「新Vポイント」関係の複数のアプリの役割の違いや使い分けのコツを中心に解説します。
※本記事では、「Vポイント」の表記を下記で統一しています。
・統合前の「Vポイント」 → 「旧Vポイント」
・統合後の「Vポイント」 → 「新Vポイント」
まず、「新Vポイント」を理解するための基礎的な仕組みから見ていきましょう。「新Vポイント」を貯める方法は、大きく2つに分けられます。それぞれ、統合前の2つのポイントを貯める方法に由来しています。
「新Vポイント」を貯める方法のひとつめが、「モバイルVカード」(あるいはリアルカードの「Vポイントカード」)を、「新Vポイント」の加盟店で“提示”して買い物することです。これは「Tポイント」の貯め方を受け継いでいます(一時期店頭でよく聞かれた「Tポイントカードはお持ちですか?」のアレですね)。
「新Vポイント」誕生時点の加盟店数は約15.5万店舗。これらの店舗でカードを提示することで、買い物金額の「0.5%」分の「新Vポイント」が貯まります(この還元率はキャンペーンやクーポンなどで変動することも)。この“提示”に使うアプリやカードについては、第2章で詳しく解説します。
現在、“提示”はアプリ上に「モバイルVカード」を表示してバーコードを読み取ってもらうやり方が主流。画像は「新Vポイント」公式サイト
「新Vポイント」を貯める方法の2つめが、「クレジットカードで支払うこと」です。こちらは、「旧Vポイント」の貯め方に由来し、三井住友カードが発行するクレカの利用で、原則0.5%の還元率で貯まります。
「旧Vポイント」は、元々、SMBCグループ(三井住友フィナンシャルグループ)の共通ポイントとして2020年に誕生。これにより、三井住友カードの利用で貯まるようになったほか、三井住友銀行の各種取引などでも貯まるようになりました。近年は、三井住友カードとSBI証券との関係が強まり、三井住友カードを使ったSBI証券での「クレカ積立」でのポイント獲得も定番になっています。これらの仕組みは「新Vポイント」にも受け継がれています。
なお、さきほど「原則0.5%の還元率」と書きましたが、上位カードにはこれ以上の還元率になるものもあります。また、コンビニ・飲食店など、三井住友カードの対象カードで支払うと最大7%還元となる店舗や(この店舗群は、“「新Vポイント」の加盟店”とは異なります)、利用状況によってこの還元率をさらに上げる特典もあります。
SMBCグループの共通ポイントとして存在感が高まっていた「旧Vポイント」
このように、「新Vポイント」には、“提示”と“クレカ決済”という2つの代表的な貯め方があります。
“提示”は、三井住友カードを持っていなくても貯めることができるので、比較的誰でも始めやすいでしょう。「新Vポイント」ビギナーの人は、お試しでまず“提示”で貯め始めてみるといいかもしれません。
いっぽう、積極的に「新Vポイント」を貯めたい場合は、三井住友カードを持つことを検討するといいでしょう。たとえば、「三井住友カード(NL)」や「Oliveフレキシブルペイ」など、年会費は永年無料ながら、先ほどあげたコンビニ・飲食店などの対象店で最大7%還元になるなどのおトクなメリットのあるカードもあります。
“提示”と“クレカ決済”は併用できるので、利用する「Vポイント加盟店」がクレカ決済に対応していれば、“ポイント2重取り”も可能です(下記図)。
“提示”と“クレカ決済”で2重取りできるのが、「新Vポイント」のウリのひとつ。「旧Vポイント」側(三井住友側)のIDを「新Vポイント」に連携させる「ID連携」という手続きを済ませると、“提示”で貯めたポイントと“決済で貯めたポイントをひとつの「V会員番号」(旧T会員番号)で合算できます。「ID連携」は、Webサイトの「VpassWeb」や、アプリの「VポイントPay」や「Vpass」から手続きができます
▼下記の記事では、三井住友カードを使って「新Vポイント」をより多く貯める方法を解説しています。 “提示”だけではどうしても獲得できるポイント数に限りが出てきますが、三井住友カードやそのほかのSMBCグループ系サービス、SBI証券などを活用することで、ポイント獲得の機会が大きく広がります。
ここからは、「新Vポイント」の2つの代表的な貯め方のうち、“提示”に必要なツールを紹介していきます。現在は、アプリにカードを表示して提示するのが主流ですが、“あのリアルカード”も使えます。
2024年4月22日以降、リアルカードの「Tカード」が「Vポイントカード」として扱われるようになりました。そのため、このカードを加盟店で提示することで「新Vポイント」が貯まります。もし、お手元に下の画像のようなカードがあれば、それを現役の「Vポイントカード」として使うことができます。
公式サイトには、今後も「V」の名を冠したポイントカード(リアルカード)が発行される予定はないとの記載があるため、リアルカードで「新Vポイント」を貯めたい場合は、この「Vポイントカード」(旧「Tカード)が唯一の選択肢です。現在も各加盟店やWebで新規に「Vポイントカード」(旧「Tカード」)を発行することはできるようですが、店舗の在庫状況により発行できない場合もあるようです。
このような状況から、リアルカードを提示して「新Vポイント」を貯める方法は、徐々に“レガシー化”していくかもしれません。
アプリを使う場合は、「モバイルVカード」を画面上に表示させ、これを加盟店で提示し、バーコードを読み取ってもらうことで「新Vポイント」が貯まります。
「新Vポイント」に関連するアプリは、「Vポイント」アプリ、「VポイントPay」アプリ、「Vpass」アプリ、「三井住友銀行」アプリの4種。この4アプリすべてに、「モバイルVカード」を表示させる機能があり、“提示”でのポイント獲得に使えます(※)。
また、保有する「新Vポイント」の範囲内であれば、「新Vポイント」加盟店で「モバイルVカード」を提示することで、1P=1円で支払いに使うこともできます。筆者も前出の4アプリで試してみましたが、加盟店で「モバイルVカード」を見せながら、「ポイントで支払います」と伝えると、スムーズに支払えました。
このほか、「新Vポイント」の獲得や利用履歴の確認機能、「新Vポイント」の加盟店を探す機能、キャンペーン情報の確認機能なども共通して備わっています。
赤枠内が、加盟店で「モバイルVカード」を提示して「新Vポイント」で支払った際の利用履歴。6月19日の「-1」は、キャンペーンで付与された期間限定ポイントが優先的に使われたものと思われます(この日のファミリーマートでの買い物は合計184円だったので)
※厳密には、これら4種に加えて、チェーンの飲食店・ドラッグストアなどが展開する独自のアプリに「モバイルVカード」機能が搭載されたものもあるようです。
この4つのアプリですが、「『新Vポイント』をメインにしたアプリ」2種と、「『新Vポイント』以外の用途がメイン」の2種とに分けられます。
「新Vポイント」に関連する4アプリ
最初に後者について説明すると、「Vpass」アプリは、三井住友カードユーザー向けのアプリという位置付けです。三井住友カードの利用明細や支払額の確認などに使えます。SBI証券の資産残高を表示させる設定も可能なので、三井住友カードで「クレカ積立」している場合はチェックに役立ちます。
「三井住友銀行」アプリは、その名のとおり、三井住友銀行の口座を持っている人向けのアプリで、同行の預金残高の確認や、入出金明細、他行への振り込みなどができます。
この2つのアプリに関しては、こうしたメインの機能に加えて、「モバイルVカード」機能が搭載されているイメージになります。基本的には、三井住友カードや三井住友銀行のユーザーの人が、「新Vポイント」を“提示”で貯めたり、使ったりする場合に便利な存在と言えるでしょう。
したがって、現在、三井住友カードも三井住友銀行も使っていないという人は、「Vポイント」アプリか、「VポイントPay」アプリが候補になります。では、この2つのアプリは、どう使い分ければいいのでしょうか?
「Vポイント」アプリのトップ画面
まず「Vポイント」アプリですが、こちらは「新Vポイント」誕生前からあった「Tポイント」アプリがリニューアルしたものです。「新Vポイント」登場までに「Tポイント」アプリをインストールしていた場合は、2024年4月22日以降にアップデートすると、自動で「Vポイント」アプリに変わっているはずです。
今回の記事では、「新Vポイント」を、「T」と「旧V」という2つのルーツをフックにして説明していますが、その文脈で言うと、このアプリは「Tポイント」に由来するアプリに該当します。
主な機能は以下のとおりです。これらは、この後説明する「VポイントPay」アプリとも共通しています(前出の、「Vpass」アプリ、「三井住友銀行」アプリの共通機能でもあります)。
・モバイルVカード機能(加盟店での“提示”で貯めて、支払える機能)
・「新Vポイント」加盟店の検索機能
・「新Vポイント」加盟店で使えるクーポンの表示、使用
・「新Vポイント」関連のキャンペーン情報の確認、エントリーなど
いっぽう、2024年6月20日時点で筆者が確認した限りでは、以下の2点は、「Vポイント」アプリにしかないもののようです。
・ほかのカードからのポイントの移行機能
複数のカードで貯めていたポイントを、「新Vポイント」としてまとめる機能(「旧Vポイント」側のIDを「新Vポイント」に連携させる「ID連携」とは別の機能)。ただし、この機能はWebからも利用可能なようです。
・キャンペーンによっては「Vポイント」アプリが必須
2024年6月20日時点で開催中の「毎日まわせるガチャ」のように、「Vポイント」アプリをインストールし、使っていることが参加条件になっているキャンペーンもあるようです。
「VポイントPay」アプリのトップ画面
「VポイントPay」アプリは、旧「Vポイント」アプリがリニューアルしたものです。こちらも、「新Vポイント」登場前にインストールしていた場合は、2024年4月22日以降にアプリをアップデートすることで、自動で「VポイントPay」アプリに変わっていると思われます。本記事流に表現すると「旧Vポイント」由来のアプリと言えます。
「VポイントPay」アプリの最大の特徴は、Visaのタッチ決済に対応した店舗や、iDでの決済に対応した店舗での支払いに利用できる点にあります。具体的には、「VポイントPay残高」という、アプリ独自の残高にチャージすることで、これらの店舗での支払いに使えます。
チャージは、クレジットカード(三井住友カード利用のチャージの場合は0.25%のポイント還元あり)や銀行口座からできるほか、貯まった「新Vポイント」からも可能です。つまり、このアプリを使うことで、「新Vポイント」を、加盟店以外の幅広い店舗で支払いに使えることになります。
また、「VポイントPay残高」で支払うと、決済金額の0.25%が、翌月に「VポイントPay残高」としてチャージされます(キャッシュバックのようなイメージ)。「『新Vポイント』を店舗での支払いに使う」というケースでは、「VポイントPay」アプリにチャージして、Visaのタッチ決済やiDで支払うと少しおトクということになります。
このほか、「新Vポイント」関連のキャンペーンでは、景品として「VポイントPayギフト」という、支払いに充当できる残高クーポンがもらえることがありますが、これを利用する際は「VポイントPay残高」に一度チャージする必要があります。つまり、「VポイントPay」アプリが必須ということになります。
2つのアプリの機能の違いを踏まえると、「新Vポイント」を決済に使える店舗の多さとおトクさから、「VポイントPay」アプリを“提示”のメインとして使っていくのが便利かもしれません。ただし、先ほどあげたとおり、キャンペーンの参加に「Vポイント」アプリが必須となるケースもあるようなので、「Vポイント」アプリも使えるようにしておいたほうが安心でしょう。
また、これは筆者の個人的な感覚ですが、「VポイントPay」アプリと「Vポイント」アプリのインターフェイスを比較すると、若干ではあるものの、「Vポイント」アプリのほうが、
・モバイルVカード機能(加盟店での“提示”で貯めて、支払える機能)
・「新Vポイント」加盟店の検索機能
・「新Vポイント」加盟店で使えるクーポンの表示、使用
・「新Vポイント」関連のキャンペーン情報の確認、エントリーなど
といった機能にたどり着きやすい印象を持っています。おそらくこの印象は、「VポイントPay」アプリが、Visa加盟店やiD加盟店での支払いを“メイン機能”としていることから来ているのかもしれません。
「街中で加盟店を探しながら使いたい」「クーポンやキャンペーンをフルに活用したい」といった場合には、「Vポイント」アプリのほうがスムーズに使える可能性はありそうです。
もちろん、このあたりは感覚的な話になるので、実際に、2つのアプリの使い勝手をチェックしてみてください。「ID連携」済みであれば、どちらのアプリでポイントを貯めてもポイントは合算されるので、状況に応じてうまく使い分けるといいでしょう。
「VポイントPay」アプリの場合、「モバイルVカード」機能は画面下から引き出す形で表示させるので、「Vポイント」アプリと比べると、”提示”などに使うのにひと手間かかる印象を受けました
以上、「新Vポイント」を貯めて、使えるアプリを中心にチェックしてきました。
記事冒頭で書いたとおり、「新Vポイント」は2つのポイントをルーツに持っています。“提示”と“クレカ決済”という2つの代表的な貯め方に加え、「Vポイント」アプリと「VポイントPay」アプリという2つの似た存在のアプリが存在していることにも、このルーツが関係しているのでしょう。慣れるまでは混乱するかもしれませんが、記事を参考にうまく使いこなしていただければと思います。
▼下記の記事では、三井住友カードを使って「新Vポイント」をより多く貯める方法を解説しています。