2025年4月上旬にNEXCO中日本管内でシステム障害が発生し、悪い意味で注目されてしまったETC。しかし、使えない状態が生じたことで、かえってその便利さに光が当たることにもなりました。
そもそもETCはどんな仕組みなのでしょうか? そして、ETCをおトクに利用する方法はあるのでしょうか? 本記事では、クルマビギナーを対象に、意外と知らないETCの基礎知識や、ETCマイレージやETCカードといった「ETCをおトクに使う方法」を紹介します。
▽おすすめETCカード(クレカ付帯型)3選。詳しくは最後の章で解説しています
取材協力・解説 会田肇(あいだ・はじめ)さん
モーターマガジン社に編集者として勤務後、1987年よりフリージャーナリストとして活動。カーナビ、カーオーディオなどの車載電化製品や、自動運転をはじめとするITS分野などを中心に、国内外を精力的に取材。日本自動車ジャーナリスト協会会員
ETCは、「Electronic Toll Collection System」の略称です。直訳すると「電子式料金自動収受システム」となり、高速道路や有料道路の料金所で、クルマを止めることなく、現金不要で料金決済を可能にするシステムのことを意味します。
クルマがETC対応の料金所を通過する際、ETCレーンのアンテナとETC車載器(後述)との間でデータが無線通信によって交わされ、ETC車載器にあらかじめ挿入しておいたETCカード(後述)で通行料金を支払う仕組みです。
現金不要で料金所を通過できるETC
ETCの出発点は1994年。当時の建設省(現国土交通省)と道路4公団(日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団)が研究開発を始め、1997年3月に、日本初の導入試験が小田原料金所で実施されました。これを皮切りに、各地での試験運用や「ETCカード」を発行するクレジットカード会社の決定などを経て、2001年に一般の利用がスタートしました。
●ETCの利用率は全国平均で95.3%
私も2000年に実施された、東関東自動車道での実証実験を取材しました。クルマが料金所をノンストップで通過していくのを見ながら、担当者から「ETCが普及すれば料金所での渋滞はほぼゼロになる」と説明されたのをよく覚えています。
ETCは着実に普及し、国交省によると、2025年1月時点のETC利用率は全国平均で95.3%、首都高に限ると全車種平均で98.5%にまで達しています。
現在、高速道路の料金所は「一般レーン」と「ETCレーン」に分かれています。しかし、それもやがて過去の話になるかもしれません。
首都高は、2025年度中に55か所の料金所の「ETC専用化」を進めています。これが終わると、すでに専用化済みの35か所と合わせ、全料金所のおよそ半数がETC専用になります。さらに首都高は、2028年春までに、本線料金所など一部を除きETC専用とすることも発表しています。
都市部だけではありません。国交省や各高速道路会社からは、地方の高速道路も、2030年度をめどに料金所をETC専用にする計画があることが発表されています。つまり、近い将来、高速道路は「現金払い」ができなくなる公算が大きく、これからクルマに乗ろうと考えている人は、おのずとETCの利用が前提になりそうです。
高速道路のETC専用化が着々と進んでいます
では、どうすればETCを利用できるのでしょうか? すでに利用している人にとっては常識ですが、必要なのは「ETC車載器」と「ETCカード」です。
ETC車載器は、カーディーラーやカー用品店などで購入します。価格.comにも人気ランキングを掲載しているので、興味のある人は価格帯やトレンドをチェックしてみてください。
ETC車載器は、車内に設置後、車両番号などを登録するセットアップが必要です。これらの作業は、カーディーラー、カー用品店など正規の「セットアップ登録店」に依頼します。
●これからはETC2.0対応の車載器がおすすめ!
2016年4月より、従来のETCより高性能化したETC2.0の本格導入が始まっています。ETC2.0は高速大容量の双方向通信が可能で、料金収受の自動化だけでなく、多彩な情報サービスや特典が提供されます。
たとえば、最大1,000km圏内の広域かつ詳細な交通情報を取得でき、リアルタイムの渋滞状況から最適な迂回(うかい)ルートを案内してくれます。また、一定の条件下(※)で、高速道路からの退出や再進入時に料金がかからないサービスも導入されています。
※休憩所間の距離が長い高速区間において、対象ICで退出後、対象の道の駅に立ち寄り、2時間以内に同じICから再進入
ETC2.0を利用するには、対応の車載器と、ETC2.0対応カーナビが必要です。ETC2.0対応車載器は従来型より価格が2〜3割ほど高いこともあり、現在の利用率は36.5%(2025年1月時点。国交省調査)と低い状況です。ただ、メリットを考えると今後ETC2.0が主流になることが予想されます。
価格.comで、ETC2.0対応の車載器やカーナビをチェック!
ETCカードは、高速料金を支払うためのICカードのこと。ETC車載器に挿入して使います。ETCカードには高速道路会社が発行するタイプと、クレジットカードに付帯するタイプの2種類あります。前者はデポジットタイプで、後者はETCカードの利用分とカード利用分が合算で引き落とされます。
現状、クレジットカードに付帯するタイプのETCカードが主流です。具体的な選び方やおすすめのカードは最後の章で解説しています。また、価格.comに「ETCカード」が作れるクレジットカードの人気ランキングを掲載していますので、こちらも参考に。
▽おすすめETCカード(クレカ付帯型)3選。詳しくは最後の章で解説しています
ETCをおトクに利用するコツは、「ETC限定の時間帯割引」や「ETCマイレージサービス」をうまく使うことにあります。
ETC搭載車には、特定の日時や時間帯に走行すると料金が割引されるサービスがあります。ここでは一例として、NEXCO3社(東日本、中日本、西日本)が管理する高速道路(東京、大阪近郊の区間は対象外)や一部有料道路の割引サービスを中心に紹介します。
土日・祝日に、対象道路のETCが整備されている入口から入って走行すると、通行料金が30%割引されます。「進入が平日→土日・祝日に走行」や、「土日・祝日に走行→平日に退出」といったケースでも割引の対象です。普通車と軽自動車などが対象で、大型車などは対象外です。
対象となる道路
・NEXCO3社が管理する地方部の高速道路
・宮城県道路公社の仙台松島道路
平日(月〜金)の6時から9時の間と、17時から20時の間に対象道路を走行すると、1か月の利用回数に応じて、通行料金の30%または50%が割引されます。午前か夕方のどちらかの対象時間内にETCが整備された入口から進入、もしくは退出することが条件です(※)。
※進入、退出とも対象時間外の場合、仮に対象時間内に走行していても割引対象外
割引は、「ETCマイレージサービス」(要事前登録・後述)での「還元額の付与」という形で適用されます。月間利用回数5〜9回で約30%分還元(月間最大100kmまで適用)、同10回以上なら約50%還元(月間最大100kmまで適用)です。車種の制限はありません。
対象となる道路
・NEXCO3社が管理する地方部の高速道路
・宮城県道路公社の仙台松島道路
※本州四国連絡高速道路にも同様の割引サービスがありますが適用される還元率などが異なります
曜日を問わず、毎日午前0時から4時の間に対象の道路を走行すると通行料金が30%割引されます。ETCが整備されている入口から入場していることが条件で、「対象時間前の進入」や「対象時間後の退出」でも割引対象です。また、車種に制限はありません。
対象となる道路
・NEXCO3社が管理する全国の高速道路
・宮城県道路公社の仙台松島道路
※京葉道路、第三京浜道路、横浜新道、横浜横須賀道路は対象外
※首都高にもETC車を対象とした深夜割引がありますが、午前0時から4時までの間に首都高の入り口を通過することが条件。通行料金の割引率は20%です
※参考:深夜割引以外の、首都高のETC割引例
都心流入割引……外環接続部相当の放射道路の端末部と都心環状線間の利用は、端末部から一番近い都心環状線の出入口までの料金が上限となる
外環道迂回利用割引……都心環状線内の出入口などを発着し放射高速道路を利用する際に、外環道を1JCT間のみ迂回した場合、原則として直行した経路と同じ通行料金になる
など。詳細は首都高公式サイトなどをご参照のこと
●注意! 深夜割引は2025年夏に内容が変わります
深夜割引は今年2025年7月頃をめどに内容の見直しが予定されています。現行制度では、割引対象時間に走行することを狙って、業務車両などがサービスエリアやパーキングエリアに滞留し混雑を招いており、これを改善するのが目的です。
新制度では22時〜翌5時の間と割引適用時間が拡大。ただし、この時間帯に走行した距離分のみが3割引の対象です(※)。また、今回の見直しでは割引方法も変わります。現行制度では「3割引の料金が適用」ですが、新制度では、「平日朝夕割引」と同じく、「ETCマイレージサービス」での「還元額の付与」での割引になります。
※22時台に退出した場合は2割引
ゴールデンウィークなど、割引適用外期間もあるのでご注意を
「平日朝夕割引」と「深夜割引の新制度」で必要なのが「ETCマイレージサービス」の事前登録です(登録費・年会費などは無料)。これは、ETCの利用金額に応じてポイントが貯まり、貯まったポイントを「還元額」に交換することで、通行料金の支払いに使えるサービスのこと。前出の割引サービスとは関係ない走行でもポイントが貯まるので、ぜひ、事前に登録しておきましょう。
※このポイントは、後述するETCカードで貯まるポイント(クレジットカードのポイント)とは別物です
「還元額」は、同サービスが独自の意味で使っている用語で、通行料金の支払いに利用可能な「残高」のこと。貯まったポイントを使うには、一度「還元額」に交換する必要があります。
ややこしいのですが、「ETCマイレージサービス」での「ポイントの付き方」(ポイント還元率)は、下記の表のように道路事業者で異なります。
画像は「ETCマイレージサービス」公式サイトより。表の中に「+α」とある事業者は、別途、月間利用額に応じた加算ポイントあり。詳細は公式サイトご参照
また、「ポイント→還元額」の交換レートも、「そのポイントを貯めた道路事業者」によってばらつきがあります。
画像は「ETCマイレージサービス」公式サイトより
交換前のポイントを発行した道路事業者に関わらず、「還元額」は、「還元額」が使える道路にて共通で利用できます。高速道路のなかには、「ポイントは付かないが、還元額は使える」という道路もあります。これらは、「ETCマイレージサービス」公式サイトで公開されています。
”ETCのコスパ”が上がる「ETCマイレージサービス」。登録にはETCカードが必要です
最後に、ETCカード(クレジットカード付帯タイプ)の選び方と、おすすめの3券種を紹介します。本記事で紹介した節約術やETCカードで、カーライフをおトクに楽しみましょう!
●ETCカードは3つの観点で選ぼう
1. コスト(発行手数料、年会費)
ETCカードには、クレジットカード側のコストとは別に、発行手数料や年会費がかかるものがあります。コスパを考えるとどちらも無料のものがベストです。「楽天カード」のように、クレジットカードの年会費が無料でも、ETCカードの年会費(550円・カードの種類によって無料になる条件付き)は有料という場合もあるので要注意。
2. ポイント還元率
ETCカードは、通行料金の支払いに対してクレジットカード側のポイントが付与されます。したがって、高還元のカードのほうがおトクです。なかには、ETC利用時限定で高還元となるカードもあります。
3. クルマ関連の特典
ETCカードが付帯するクレジットカードには、クルマ関連のおトクな特典が付帯するものがあります。クルマの用途や乗り方に合わせて選ぶといいでしょう。
「コスモ・ザ・カード・オーパス」は、イオンカードの一種で、コスモ石油との提携カードです。クレジットカードの年会費は永年無料。ETCカードの発行手数料や年会費も無料です。本カードのETCカードの利用では「WAON POINT」が貯まります。ETCカードでは通常還元率の3倍に該当する1.5%の還元率が適用されます(200円で3P)。
また、新規入会後、「コスモSS Pay」(コスモ石油系の決済アプリ)に登録すると、全国のコスモステーションでの燃料油が、請求時最大400Lまで10円/Lキャッシュバックされます(最大4,000円分)。また、「コスモ・ザ・カード・オーパス」を使うと全国のコスモステーションでの燃料油が会員価格で購入できます(サービス内容はステーションによって異なる。一部対象外のステーションあり)。
首都高でのおトクさが際立つのが「イオンカード首都高カード」です。年会費無料で、ETCカードの発行手数料や年会費も無料です。ETCカードは自動付帯されるため、申込手続きは不要です。
最大の特徴は、毎週日曜日、首都高で本カードのETCカードを利用すると、通行料金が20%オフになることです。また、首都高パーキングエリアの買い物に本カードを使うと、通常比5倍の「WAON POINT」が貯まります(2.5%還元・200円で5P)。
「JCB CARD W」は、ジェーシービーが発行する年会費永年無料のクレジットカードです。ETCカードの発行手数料や年会費も無料です。18歳から39歳以下の人が申し込めます(申込後は40歳以上も利用可能)。
「JCB CARD W」は、通常のポイント還元率が1%と高めです(※)。さらに、パートナー店と呼ばれる優待店で本カードを使うと、通常よりも多くのポイントが貯まります。下記のように、パートナー店の中には複数のクルマ関連の店が含まれています。
※「Oki Dokiポイント」を「JCB PREMO」に交換した場合の還元率
クルマ関連のパートナー店とポイントアップ倍率
・タイムズパーキング(タイムズクラブアプリ清算限定)……ポイント2倍
・apollostation……ポイント2倍
・タクシーアプリ「GO」……ポイント10倍
・ニッポンレンタカー……ポイント6倍
・S.RIDE……ポイント10倍
・ジェームス……ポイント2倍
・オリックスレンタカー……ポイント6倍
・フジ・コーポレーション……ポイント2倍
・バジェット・レンタカー……ポイント3倍
・タイムズロードサービス……ポイント4倍
※2025年4月時点