2025年9月30日、三井住友カードは、“プラチナ以上”の最上位クレジットカード「三井住友カード Visa Infinite(ビザインフィニット)」の発行を開始した。
カード名の「Infinite」は「無限の、果てしない」という意味だが、その名のとおり、スケールの大きさを感じるスペックや特典となっている。どんな人に向いているカードなのかチェックしたい。
リアルカードは両面ナンバーレス仕様でカラーはグレイッシュブランの1種類。プレミアムカード=ブラックという固定観念を払拭(ふっしょく)する狙いがあるとのこと。なお、2026年には追加カードとして利用できるメタルカードの発行も予定されている。発行手数料は3万3,000円とのことで、プロダクトとしても凝ったものになりそうだ
「三井住友カード Visa Infinite」と、プラチナランクの人気カード「三井住友カード プラチナプリファード」のスペック比較表 ※「三井住友カード Visa Infinite」の国内、海外旅行傷害保険は、現時点では「自動付帯」。2025年10月16日出発分より「利用付帯」に変更される
「三井住友カード Visa Infinite」の年会費は9万9,000円で、家族カードは年会費無料で申し込める。
「三井住友カード プラチナ 」(年会費5万5,000円)や、「三井住友カード プラチナプリファード 」(年会費3万3,000円)といった、既存の上位カードを上回り、三井住友カードが発行するクレジットカードとしては最も高い価格となる。
一般的に、このクラスの年会費がかかるクレジットカードだと、申し込みにインビテーションが必要なことも多い。しかし、「三井住友カード Visa Infinite」は、20歳以上の安定した継続収入のある人なら誰でも申し込める。
もちろん、申込後には独自基準の審査が実施されるというが、この“間口の広さ”は同カードの特徴のひとつと言っていいだろう。
三井住友カードによると、「三井住友カード Visa Infinite」は、“抜群の経済価値”と“異次元の体験価値”の2つの方向性において、妥協することなく価値を提供する点が強みだという。
それぞれ、具体的に内容を見ていこう。
リアルカードはカードの世界観を伝えるアートブックとともに届く
前者の“経済価値”は、「ポイントの貯まりやすさ」と言い換えたほうがわかりやすい。
「三井住友カード Visa Infinite」の基本還元率は1%。そして、既存の三井住友カードでおなじみの「対象のコンビニや飲食店で最大7%還元(条件達成状況により最大20%還元)」となる特典(※)も付帯する。
※対象のコンビニ、飲食店でスマホのタッチ決済、または対象店でのモバイルオーダーでの支払いが対象
「三井住友カード Visa Infinite」で最大7%還元(条件次第で最大20%還元)となる対象店(一例)
●コンビニ/セブン-イレブン(※)、ポプラ、ミニストップ、ローソンなど
●飲食店/マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキン、吉野家など
●ファミレス/サイゼリヤ、ガスト、バーミヤン、しゃぶ葉、ジョナサンなど
●モバイルオーダー/スターバックス、マクドナルド、モスバーガーなど
※セブン-イレブンのみ最大10%還元(条件次第で最大20%還元)
これだけなら特段おトクな印象はないかもしれないが、前年の年間利用額に応じて付与される「継続&利用特典」を加味すると印象が変わってくる。
仕組みは下記のとおりで、いずれも基本ポイントとは別に付与される。
●年間400万円以上利用し、翌年もカード契約を継続……4万P付与(基本ポイントとの合計で8万P)
●年間700万円以上利用し、翌年もカード契約を継続……11万P付与(基本ポイントとの合計で18万P)
これを見てもわかるとおり、「三井住友カード Visa Infinite」の「継続&利用特典」の特徴は、「年間700万円」利用すると付与ポイントが“跳ね上がる”点にある。
「年間400万円」利用時は、基本ポイントと特典ポイントの合算で8万Pとなり、還元率は2%(貯まる「Vポイント」は1P=1円相当で利用可能)。いっぽう、「年間700万円」利用時は、同条件で18万Pとなり、還元率は2.6%ほどになる。
2025年9月29日に実施されたメディア向け説明会で「三井住友カード Visa Infinite」のコンセプトについて語る三井住友カード執行役員の伊藤亮佑氏(右)
「年会費9万9,000円の元を取る」という観点でも見てみよう。
前出のポイントアップ対象店やクレカ積立などで得られるポイントを除き、基本ポイントと「継続&利用特典」の合算で計算すると、「年間400万円」の利用では年会費に1万9,000円相当不足する。
●年間400万円利用×1%=4万P
●継続&利用特典 4万P
合計8万P(8万円相当)
損益分岐点は「年間590万円」で、これを超えると年会費よりもおトクになる。仮に「年間690万円」利用すると、年会費を1万円相当上回ることになる。
●年間590万円利用×1%=5万9,000P
●継続&利用特典 4万P
合計9万9,000P(9万9,000円相当)
●年間690万円利用×1%=6万9,000P
●継続&利用特典 4万P
合計10万9,000P(10万9,000円相当)
そして、「年間700万円」利用すると、「継続&利用特典」での付与ポイントが跳ね上がり、年会費を8万円相当ほど上回ることになる。
●年間700万円利用×1%=7万P
●継続&利用特典 11万P
合計18万P(18万円相当)
「年間700万円」
この利用額の多さだけを見ると「自分には関係ないカード」と感じてしまう人も出てくるかもしれない。
ただし、入会初年度については、入会月の3か月後末までに100万円以上利用すると、入会特典として10万Pが付与され、これだけで年会費分をペイできる。
“おためし”で使うには少々ハードルの高いカードかもしれないが、ライフイベントなどでまとまった出費が控えている人は検討してみてもいいかもしれない。
このほか、SBI証券のクレカ積立においても、「三井住友カード Visa Infinite」には「最大4%」と、ほかの三井住友カードと比べて高めの還元率が適用される(※)。ただし、この還元率にも年間のカード利用額が関わってくる。
※「三井住友カード プラチナプリファード」は「最大3%」、「三井住友カード プラチナ」は「最大2%」
「三井住友カード Visa Infinite」のクレカ積立では、ベースポイントとして、毎月の積立額に対して1%のポイントが付与される。仮に毎月10万円を積み立てる場合であれば、1,000Pが毎月付与される。
これに加え、前年の年間積立額に対しても年に1回ポイントが付与される。その際の還元率は前年のカード利用額に応じて変動する。
●年間利用額300万円以上……年間積立額の1%
●年間利用額500万円以上……年間積立額の2%
●年間利用額700万円以上……年間積立額の3%
※入会初年度については、ベースポイントの1%分のみが付与される
続いて、「三井住友カード Visa Infinite」が打ち出しているもうひとつの方向性である、“異次元の体験価値”についてもチェックしていこう。
まず、付帯特典の中で主だったものを紹介する。
●コンシェルジュサービス
トラベル、ダイニング、エンターテインメントなどの調べ物や予約手配を代行してくれる「コンシェルジュサービス」。
「三井住友カード Visa Infinite」では世界22か国で富裕層向けのコンシェルジュサービスを手掛けるテングループの日本法人が運営を担う。電話のほか、メールやLINE、専用Webサイトからアクセスが可能だ。
●プライオリティ・パス
世界1,700か所以上の空港ラウンジが利用できる「プライオリティ・パス」も付帯するが、注目したいのはその会員資格。「三井住友カード Visa Infinite」に付帯するのは「プレステージ」資格で、これは、3ランクある会員資格の最上位に当たる。
本人はもちろん、家族カード会員も利用回数の制限なく使えるため、空港をよく使う人にとっては利用価値の高い特典になりそうだ。
●ミュージアム・パス
国内を代表する、下記7つのミュージアムを無料観覧できる特典も付帯する。常設展や所蔵作品の観覧が無料観覧の対象となる。
ミュージアム・パスの対象施設
東京国立博物館/東京国立近代美術館/京都国立近代美術館/国立映画アーカイブ/国立西洋美術館/国立国際美術館/国立工芸館
このほかにも「SHARE LOUNGE ギフトチケット」や「ファインダイニング by 招待日和」など、注目の特典が付帯する。概要は下記をチェックしてもらいたい。
「三井住友カード Visa Infinite」にはさまざまな特典が付帯する。画像は三井住友カードのプレスリリースより
上記の付帯特典に加え、「三井住友カード Visa Infinite」は会員限定のイベントにも注力していく。
そのひとつが、2026年2月に開催される、「ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック」関連のイベントだ。
現地での特別観戦チケットや、日本で実施されるオープニングナイトパーティーへの招待、スキージャンプ日本代表の小林陵侑選手や梨沙羅選手の壮行会への招待などが予定されている。どれも、オリンピックをより身近に感じられる特別感あるイベントと言っていいだろう(※)。
※会員が応募のうえ抽選を実施。内容は2025年9月29日時点のもの
三井住友カードによると、このような会員限定イベントは月に4回以上実施予定。今後の予定などの詳細は2025年11月に発表予定とのことだが、いくつか先行して発表されているものを見ると、人選や企画内容から三井住友カードの力の入れようがうかがえる。
日本の中華料理界をけん引する脇屋友詞シェフと、日本を代表するパティシエである鎧塚俊彦シェフとのコラボレーション企画や、元サッカー日本代表の小野伸二さん、中澤佑二さんによるサッカートークショーなども予定されている
主に知的障害を持つアーティストの活動を支援する「ヘラルボニー」CAO最高芸術責任者の黒澤浩美さんによる講演およびアート鑑賞会、ゴルフプレイヤー石川遼選手とのラウンドなども開催予定だ。上記イベントはいずれも会員の応募のうえ抽選を実施。内容は2025年9月29日時点の情報
すでに触れているとおり、このカードの評価は「年間700万円」利用するかどうかで大きく変わる。
筆者の肌感覚では、「年間700万円」をクレジットカード決済する人の数は相当限られている印象がある。いっぽう、三井住友カードは「富裕層の増加」に本カードのニーズを見い出しているようだ。
「三井住友カード Visa Infinite」は年間700万円以上利用するとメリットが大きくなる
2025年9月29日に実施されたメディア向け説明会で紹介された野村総合研究所の調査では、純金融資産保有額1億円以上5億円未満の「富裕層」と、同5億円以上の「超富裕層」を合わせた「富裕層・超富裕層」の世帯数は、2013年以降一貫して増加傾向にあるという。
2023年には「富裕層・超富裕層」の世帯数が165.3万世帯に達し、2021年と比べて+11.3%と大きく増加。背景には、NISAなどによる資産運用の普及や、株式や投信などの資産価値の上昇があるとされている。
同調査では、「一般生活者がいつの間にか富裕層になっているケースが多い」と分析。今後もこの傾向は続く見込みであると伝えている。
富裕層の増加とキャッシュレス決済比率の高まりにより、クレジットカード決済額の増加を見込む
三井住友カードは、こうした富裕層の増加と、約43%にまで高まった国内のキャシュレス決済比率を踏まえ、「年間2,000万円支出する人が、そのうち43%をクレジットカードで支払うと860万円に達する」(三井住友カード執行役員、伊藤亮佑氏)と、「年間700万円」の実現性を説明する。
国内において、“誰もが申し込めるプラチナ以上のカード”は比較的新しいマーケットと言える。「三井住友カード Visa Infinite」がそれを切り拓くことになるのか注目したい。
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2026年5月には「Olive Infinite」(仮称)も登場予定!
銀行、証券などと一体で利用できる「Olive」においても、2025年6月に「Olive Infinite」(仮称)の発行が予定されている。年会費は9万9,000円で、「三井住友カード Visa Infinite」と同等の基本的なスペックに加え、銀行、証券など多様な金融サービスと連携して使える強みがあるという。
現在、最大3万3,000円相当の「Vポイント」が受け取れる事前キャンペーンも実施されている。