サムスンは現行Androidタブレットのなかで最大となる約14.6インチの有機ELディスプレイを搭載した「Galaxy Tab S8 Ultra」を2022年6月23日に発売した。本製品はプロセッサー(SoC)にクアルコムのハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」を採用。デジタイザーペン「Sペン」を標準で搭載し、専用キーボード「Book Cover Keyboard」を別売で用意するなど、Androidタブレットのなかで最高峰とも言えるモデルだ。今回本製品の試作機を借用したので、実機レビューをお届けしよう。
サムスン「Galaxy Tab S8 Ultra」をレビュー。価格.comでの最安価格は141,800円(2022年7月1日時点)
「Galaxy Tab S8」には、今回レビューする「Galaxy Tab S8 Ultra」(メモリー12GB/ストレージ容量256GB)に加えて、「Galaxy Tab S8+」(8GB/128GB)の2モデルが用意されている。メモリーとストレージ容量、ディスプレイサイズなど以外の基本スペックは同様だ。
OSは「Android 12」、SoCは「Snapdragon 8 Gen 1」を採用。ディスプレイは約14.6インチのWQXGA+(2960×1848)有機EL(239ppi、リフレッシュレート:最大120Hz対応、色深度:12M)を搭載。生体認証は画面内指紋認証に対応している。
カメラは、リアに広角(約1300万画素、F2.0)+超広角(約600万画素、F2.2)、フロントに広角(約1200万画素、F2.2)+超広角(約1200万画素、F2.4)を搭載。「Galaxy Tab S8+」は約12.4インチの有機ELディスプレイ搭載を搭載し、かつ、フロントカメラがシングルカメラになっており、ダブルカメラを搭載していることは「Galaxy Tab S8 Ultra」のアドバンテージだ。
外部インターフェイスはUSB Type-Cポートに加えて、最大1TBに対応するmicroSDメモリーカードスロットを装備。ワイヤレス通信はWi-Fi 6(11ax)、Bluetooth 5.2をサポートする。
本体サイズは約326.4(幅)×208.6(高さ)×5.5(厚さ)mm、重量は約726g。11200mAhのバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間はインターネット利用で最大8時間、ビデオ再生で最大14時間とされている。
重量こそ最軽量クラスのノートPCを上回るが、実際に持ってみるとサイズ感より軽く感じられる。ただし、ディスプレイのベゼルが実測6mm強と細いため、片手で持つと指や手の腹が画面を触ってしまい誤操作してしまうことがあった。基本的には両手でホールドするべき端末と考えたほうがいい。
アクセサリーは前述のとおり、デジタイザーペン「Sペン」が同梱されており、専用キーボード「Book Cover Keyboard」(希望小売価格は税込30,800円)がオプションで販売されている。
薄型の製品パッケージ。梱包用のフィルムは使われていない
パッケージにはUSB Type-Cケーブル(CtoC)、「Sペン」、イジェクターピン、説明書(クイックスタートガイドなど)が同梱
約14.6インチのWQXGA+(2960×1848)有機ELディスプレイ(239ppi、リフレッシュレート:最大120Hz対応、色深度:12M)。写真の画面右側に画面内指紋認証センサーが内蔵されている
スペック表に視野角は記載されていないが、ほぼ真横からでも画面に何が映っているのか確認できる
フロントカメラは広角(約1200万画素、F2.2)+超広角(約1200万画素、F2.4)
本体背面
リアカメラは広角(約1300万画素、F2.0)+超広角(約600万画素、F2.2)
天面には電源ボタン、ボリュームボタン、マイク、microSDメモリーカードスロット、底面には専用キーボード「Book Cover Keyboard」用金属接点を配置
右側面にはスピーカー×2、USB Type-C、左側面にはスピーカー×2、マイクが用意されている
最大1TBのmicroSDメモリーカードに対応する
本体の実測重量は728.5g。カタログ値よりわずかに重いが、製造上の誤差だと思われる
続いて、本機のパフォーマンスをチェックしていこう。Android用ベンチマーク3本を実施したところ、「AnTuTu Benchmark V9.4.0」の総合スコアは917880、「Geekbench 5.4.4」のマルチコアのスコアは3304、「3DMark」の「Wild Life Extreme」のスコアは2395となった。記事執筆時点(2022年6月23日)のAnTuTu Benchmarkのランキングトップは、同じく「Snapdragon 8 Gen 1」を搭載するゲーミングスマートフォン「RedMagic 7」で総合スコアは1042141を記録している。つまり今回の「Galaxy Tab S8 Ultra」は、その約88%のスコアということになる。
同じSoCを搭載している割には、ベンチマークスコアにずいぶんと差が開いている。「Galaxy Tab S8 Ultra」はゲーミングスマートフォンほどパフォーマンス、冷却効率を重視した設計になっていない可能性がありそうだ。
「AnTuTu Benchmark V9.4.0」の総合スコアは917880
「Geekbench 5.4.4」のMulti-Core Scoreは3304
「3DMark」のWild Life Extremeのスコアは2395
「AnTuTu Benchmark V9.4.0」実行中の背面の最大温度は32.5℃(室温23.3℃で測定)
スマートフォンの「Galaxy」シリーズは、カメラ性能に定評があることで知られている。その期待を裏切らず、タブレットである「Galaxy Tab S8 Ultra」のカメラもクオリティーが高かった。日中だけでなく、夜間撮影でも「夜景モード」によって明るく、かつ強い光源の白飛びを強力に抑えてくれた。ふいに訪れたシャッターチャンスにわざわざスマホに持ち替える必要はないだけの品質を備えていると言えよう。
リアの超広角カメラで撮影(2896×2176ドット、1/1179、F2.2、ISO32)
リアの広角カメラで撮影(4128×3096、1/761、F2.0、ISO32)
リアの広角カメラで撮影(8倍ズーム、4128×3096、1/633、F2.0、ISO32)
リアの広角カメラで撮影(4128×3096、1/405、F2.0、ISO32)
リアの広角カメラで撮影(夜景モード、4128×3096、1/10、F2.0、ISO160)
「Galaxy Tab S8 Ultra」は、前面に広角(約1200万画素、F2.2)+超広角(約1200万画素、F2.4)のダブルカメラを搭載している。こちらも使い勝手がいい。解像度や明るさはスマホのフロントカメラクオリティーで、明るく、正確な発色で、ノイズも少ない。
加えて、動画撮影時やビデオ通話時には「自動フレーミング」機能が利用でき、自動的にズームイン・ズームアウトして適切なフレーミングに変更し、ピントも自動調整してくれる。これはビデオ会議でも活用できる機能で、ノートPCの内蔵カメラよりも圧倒的に上質な映像を撮影してくれる。
フロントの超広角カメラで撮影(4000×3000、1/33、F2.4、ISO320)
フロントの広角カメラで撮影(4000×3000、1/33、F2.2、ISO320)
「自動フレーミング」を有効にして動画撮影してみた。被写体がオッサンで本当に申し訳ないが、どのようにフレームがコントロールされるのか参考にしてほしい。
最後に使い勝手についてレビューしていこう。まず、約14.6インチの大画面は、当たり前だが迫力がある。「12.9インチiPad Pro (第5世代)」と並べてみたが、縦はほぼ同等であるものの、幅は「Galaxy Tab S8 Ultra」のほうが51mmほど長い。特に「比率の合うコンテンツ」であれば、大きな恩恵を受けられる。
ディスプレイサイズの実測値
Galaxy Tab S8 Ultra 約14.6インチ(実測313×195mm)
12.9インチiPad Pro (第5世代) 約12.9インチ(実測262×197mm)
鈴木みそ氏「ナナのリテラシー1」より。左が「Galaxy Tab S8 Ultra」、右が「12.9インチiPad Pro (第5世代)」。本作品では「Galaxy Tab S8 Ultra」のほうがひと回り大きく表示される
「比率の合うコンテンツ」と但し書きを入れたのは、コンテンツによって表示比率が異なるためだ。ほかにもいろんな電子コミックを表示してみたが、「Galaxy Tab S8 Ultra」では多くの作品で上下に余白が大きく入ってしまった。余白が入っても「12.9インチiPad Pro(第5世代)」よりページを大きく表示できるが、映像コンテンツのほうが、約14.6インチの大画面には向いているだろう。
約14.6インチの大画面が最大限に活用できるのがゲームだろう。ゲームの多くは画面比率の違いに対応するように作られているので、余白が表示されることはまずない。また、TPS、FPSで6本指プレイをするなら大画面のほうが操作しやすいし、索敵でも有利だ。処理性能的にも「Snapdragon 8 Gen 1」は十二分なパフォーマンスを備えている。「Galaxy Tab S8 Ultra」はゲームにもってこいのデバイスだと感じた。
デフォルトのボタン配置でも4本指操作なら容易。6本指操作に最適化したボタン配置にカスタマイズすれば、複数の操作を同時に素早くこなせるようになる
Sペンを標準搭載するタブレットだけに、関連機能は充実している。「Sペン」は2.8msの低レイテンシーを実現しており、背面に装着することで充電可能だ。これまで「Sペン」対応端末で培ってきた、画像やテキストを素早くクリップする「スマート選択」、単語翻訳、テキスト入力欄への手書き入力、ジェスチャー操作を実現する「エアアクション」などのさまざまな機能が実装されている。「CLIP STUDIO PAINT EX」が6か月無料で使用可能となっており、お描き向けの大画面タブレットとしても活躍してくれるはずだ。
付属の「Sペン」のペン先は軟らかめ。アナログの筆記具に近い書き味だ
背面に「Sペン」を装着すれば自動的に充電される。こまめに装着すればバッテリー残量を意識する必要はない
これまでの「Sペン」対応端末で培ってきた各種ツールを、フローティングアイコンから素早く呼び出せる
画像やテキストを素早くクリップしてほかのアプリに貼り付けられる「スマート選択」。「Sペン」ならていねいに切り抜ける
わからない単語に「Sペン」をかざすだけで翻訳可能だ
テキスト入力欄付近で手書きすれば、リアルタイムにテキスト入力される。ただし本機能は事前に設定が必要
「Sペン」のボタンを押したままジェスチャーを中に描くと、「戻る」、「ホーム」、「履歴」などのコマンドを実行できる「エアアクション」。「カメラ」「ボイスレコーダー」などのアプリでも利用可能だ
もちろん、大画面はマルチウィンドウ環境でも重宝する。アプリは3分割したうえで、「フローティングウィンドウ」も表示可能。つまり同時に4つのアプリを利用できるわけだ。画面が大きいぶん、それぞれのウィンドウの表示面積は広い。スマホよりもマルチウィンドウ環境を実用的に利用できるわけだ。
フローティングウィンドウは好きな場所に配置可能
約14.6インチの大画面をさらに便利に活用できるのが、PCのようなデスクトップ環境を構築できるアプリ「Samsung DeX」。本体だけでも本アプリを有効にできるが、キーボードやマウスを接続すればPCとそん色ないウィンドウ環境で快適に作業できる。今回は機材の都合で試せなかったが、タッチパッドも装備した専用キーボード「Book Cover Keyboard」はぜひ手に入れたいアイテムだ。
キーボードとマウスを接続した「Samsung DeX」の使い勝手はPCと変わらない。専用キーボード「Book Cover Keyboard」ではなく、使い慣れたキーボード&マウスを接続してもよさそうだ
なお、ディスプレイ輝度50%でYouTube動画を連続再生したときのバッテリー駆動時間は9時間4分48秒となった。「Galaxy Tab S8 Ultra」は室内灯下であれば輝度50%で十分すぎるぐらい明るい。コンテンツプレーヤーとしても、「Samsung DeX」を使ったPCワーク環境としても、十二分なバッテリー駆動時間を備えている。
ディスプレイ輝度50%、ボリューム50%でYouTube動画をWi-Fi環境で連続再生したところ、9時間4分48秒動作した。ダウンロード済みの動画を再生したり、電子書籍を読むなどの用途であればバッテリー駆動時間はこれより長くなるはずだ
「Galaxy Tab S8 Ultra」は、現行のAndroidで最速のSoCに、約14.6インチの有機ELディスプレイを組み合わせ、サムスンがこれまで培ってきた「Sペン」用アプリ、PCと同等の環境を提供する「Samsung DeX」が搭載されている。スマートフォン「Galaxy」シリーズ譲りのカメラ性能も申し分ない。
そして、大画面に最適化された「Android 12L」はサムスン製タブレットに搭載されることが予告されている。現在最高峰、かつ長期的に利用できるAndroidタブレットを探しているのなら、「Galaxy Tab S8 Ultra」は真っ先に検討するべき1台だろう。
レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。